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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) L2
管理番号 1020920 
判定請求番号 判定請求1999-60071
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 判定 
判定請求日 1999-10-15 
確定日 2000-07-21 
意匠に係る物品 側溝用ブロック 
事件の表示 上記当事者間の登録第1039585号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「「側溝用ブロック」」は、登録第1039585号及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人代理人らは、「イ号図面およびその説明書に示す配線用地中埋め込み側溝ブロックの意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1039585号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める。」と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として資料1乃至資料9を提出した。
意匠登録第1039585号の意匠(以下、「本件登録意匠」と云う。)とイ号意匠とは、全体の構成比率において横の構成比率を本件登録意匠はイ号意匠の2倍とした点。本体に蓋板を被冠した状態の端面部において、管路部の形状に沿って突出した略「ロ」字状の嵌合突起部の外周形状において本件登録意匠は、直線状としているのに対し、イ号意匠は、隅丸状とした点及び嵌合溝部を嵌合突起部の形状に合わせて本件登録意匠は、直線状としているのに対し、イ号意匠は、隅丸状とした点。両側壁部において、本件登録意匠は、肉抜き凹部とリブ部を設けたのに対し、イ号意匠は平坦面とした点に差異があるが、公知意匠に徴すれば、この種意匠にとって、該部を一般化した公知形状へ変更し、また長手方向の構成比率を変更したことによる形状の差異は類否判断を左右する要素と成り得ない程度の微差に過ぎないものであるのに対し、両意匠の基本的構成態様において、断面形状を略コ字状とした長方体状の本体に雌雄状の本体係合部、蓋板係合部を介して箱状の蓋板を被冠し、蓋板の周側垂直壁が本体の側壁部、端面部の各形状と相互に連接され、全体として一体化したと云う共通点は、新規で、他に全く見られないところであるから全体の基調を表出し、両意匠を支配的に左右する要部に係わり、両意匠に前記の差異点があるとしても、全体として類似する。
第2.被請求人の答弁
被請求人代理人らは、結論同旨の判定を求める、と答弁し、その理由として要旨以下のように主張した。
本件登録意匠およびその類似意匠とイ号意匠とは、イ号意匠の長さが、本件登録意匠の半分の長さである点、イ号意匠は一枚の蓋体を被せているのに対し、本件登録意匠は二枚の蓋体を突き合わせて被せている点の基本的構成態様が相違し、具体的構成態様においても、イ号意匠は、本体の胴部が平坦であるのに対し、本件登録意匠は、上部と両端部と中央部とに下向きのE字状肉厚部を残して、長方形の肉抜き部が二個所に形成されている点は全体を観察したときに意匠として看過できない構成態様であり、嵌合用突出部の形態において、イ号意匠は四隅が円弧状に形成されているのに対し、本件登録意匠は、直角に角張って形成されている点に差異があり、これを取り扱う者が、土木建築の専門の技術者であることを考慮したときに、嵌合部の構成態様の差が重要視されることは明白である。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年5月2日に意匠登録出願し、その後平成11年3月12日に設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面並びに意匠登録原簿によると、意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とし、その形態は、別紙第一に示すものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、イ号図面及びその説明書(判定請求書に添付したカタログ「情報ボックス・ハンドホール」(発行:九州RC技研協会)の製品名「情報ボックス・トラフ型(L=1000)」の掲載説明、図面及び説明)によれば、意匠に係る物品を「配線用地中埋め込み側溝ブロック」とし、その形態は、別紙第二に示すものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠とを対比すると、両意匠は、地中に埋め込んで使用されるものであって、意匠に係る物品を共通のものとし、形態については、以下に示す共通点及び差異点が認められる。
即ち、両意匠は、略倒コ字状の本体と厚板状の蓋体とで全体が横長の角筒体を呈するものであって、その側面には、同様の角筒体同士を互いに接ぐための嵌合部を、本体と蓋体とで一体的に形成した基本的構成態様が共通し、各部の具体的構成態様について、本体は、前後壁の外壁面上端を小さく帯状に切り欠き段部とし、該部に対応する蓋体は、前後側の下端外側を小さく帯状に突出して、本体と蓋体とが全体の高さの約1/4の部位で接合するものとし、嵌合部は、一側面には、本体側を略U字状に、蓋体側は下端を除いて、外周面を細く浅く段状に切り欠き、全体として「ロ」の字状の嵌合突起部とし、該部に対応する他側面には、外周面を細幅の額縁様に残し、その余を本体側は略U字状に、蓋体側は下端を凹陥して嵌合溝部とした点が共通し、更に詳細にみると、本体の内方は、下端内角が隅丸のU字状とし、前後壁は、中央部稍下方寄りに小孔を穿ち、左右両端部の稍上方寄り外壁面には小矩形状に浅く抉って接続プレート用収納部を形成し、下端部を極く細く帯状に面取りしている点も共通する。
他方、各部の具体的構成態様に於いて、(1)本件登録意匠は、本体の前後壁の外壁全面に、上部と両端部と中央部とに全体として略倒「ヨ」の字状のリブ部を残してその間を大きくて浅い矩形状の凹部に形成しているのに対し、イ号意匠は、平坦面としている点、(2)本件登録意匠は、高さに対する横幅の構成比を約1:5としているのに対し、イ号意匠は、約1:2.5としている点、(3)本件登録意匠は、蓋体二枚を突き合わせて被せているのに対し、イ号意匠は、蓋体一枚を被せている点。更に詳細にみると(4)イ号意匠は、嵌合突起部及び嵌合溝部の外角を何れも隅丸としているのに対し、本件登録意匠は、何れも角形としている点に差異が認められる。
そこで、両意匠を全体として考察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について総合的に検討する。
先ず、共通点について、両意匠は、基本的構成態様及び各部の具体的構成態様の一部分に於いて共通するものと認められるところ、基本的構成態様については、本件登録意匠の出願前より、略倒コ字状の本体の上面に厚板状の蓋体を被せて全体が横長の角筒体を呈する態様のものは、この種物品分野に於いて、本件登録出願前より広く知られた態様(例えば、昭和55年12月20日発行の意匠公報所載の意匠登録第547198号の溝用ブロックの意匠。昭和62年2月7日公開の実用新案出願公開昭62-21148号考案の名称「ブロック製地下構築物」第1図乃至第4図で表された意匠。)であり、また、その側面に、同様の角筒体同士を互いに接ぐために、本体と蓋体とで一体的に形成した嵌合部を形成することも極く普通に行われており(例えば、昭和55年11月10日発行の意匠公報所載の意匠登録第544144号の側溝ブロックの意匠。)、更に、各部の具体的構成態様のうちの請求人代理人らが基本的構成態様としている本体の前後壁の外壁面上端を小さく帯状に切り欠き段部とし、該部に対応する蓋体の前後側の下端外側を小さく帯状に突出して、本体と蓋体とが全体の高さの約1/4の部位で接合するものとした態様も、この種物品分野の意匠に於いては、本件登録意匠出願前より、普通に見受けられ(例えば、前掲実用新案出願公開昭62-21148号第1図乃至第4図で表された意匠。)、何れも本件登録意匠独自の特徴を有するものとは、認められない。したがって、請求人代理人らが「本件意匠はその基本的構成態様が新規で、他に全く見られないところであるから、これが本件意匠の全体の基調を表出する要部である。」とする主張は、上記の事実を勘案すると失当であり、採用することができない。また、その余の嵌合部の具体的構成態様についても、本件登録意匠出願前より広く知られた態様であることは請求人代理人らも認めており、何れの点に於いても本件登録意匠独自の特徴を有するものとは認められないものである。
したがって、本件登録意匠の構成のうちイ号意匠と共通する構成部分それぞれは、何れも本件登録意匠の出願前より広く知られた態様で占められ新規性に乏しいものと認められる。
そうとすると、これらの共通点のみをもって、直ちに本件登録意匠に対してイ号意匠が類似するか否かを判断することはできないので、次に、差異点について考察する。
(1)の前後壁の差異については、両態様とも本件登録意匠の出願前よりこの種物品に於いては、既に広く知られた態様であって、それ自体は格別特徴のあるものとは云えないが、前後壁の外壁全面に係るものであって特に看者の目につきやすい部分でもあるから、この点のみをとらえて別異の意匠とすることはできないものの、少なくとも類否判断を左右する一要素を成すものと云うことはできる。これに加えて(2)の構成比の差異についても、この種物品の意匠としては各種の構成比のものが本件登録意匠出願前より多数見受けられ、使用状況に応じてその長さを適宜選択し変更するものであるので、この点にも格別の創作があったとすることはできないし、この点のみで類否判断が左右されるものでもないが、前に共通するとした態様が看者の注意を惹くものでない場合には、イ号意匠が本件登録意匠の半分程度の長さとしていることの視覚的な影響は少なくないものと云わざるを得ない。(3)の蓋体を二枚突き合わせて被せているか否かの点については、(2)に起因して生じたものであって、中央に継ぎ目線が細く表れるか否かの差異にすぎず、この点が類否判断に影響を与えるものではない。(4)の嵌合部突起部及び嵌合溝部の外角の態様についても、該部を特に注視して初めて気がつく程度の差異であって、限られた部位の局所的で細部に係る微弱な差異にすぎない。
したがって、何れの差異点も個別的な構成として部分的にみると新規なものではない。
ところで、本件登録意匠は、広く知られた構成部分を組み合わせ、意匠として総合的にまとめあげた点に意匠の創作があると認められるところ、本件登録意匠とイ号意匠とは、特に看者の目につきやすく視覚的効果も顕著な構成部分である(1)の前後壁の外壁全面に係るリブ部とその間の凹部の有無、これに加えて(2)の横の構成比率に差異があり、これらを他の構成態様と一体にし全体的に観察したとき、それぞれの意匠に於いて独自の意匠を構成し、前に共通するとした構成部分の態様が相俟って醸し出す印象を凌駕し、両意匠に一定以上の差異感を奏し、それぞれの意匠に異なった基調を生じさせ、本件登録意匠とイ号意匠とは、別異の印象を看者に与えていると云うことができる。
以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2000-07-04 
出願番号 意願平9-53093 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (L2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 瀬尾 和子
特許庁審判官 伊勢 孝俊
松原 至
登録日 1999-03-12 
登録番号 意匠登録第1039585号(D1039585) 
代理人 飯田 秀郷 
代理人 重信 和男 
代理人 栗宇 一樹 
代理人 日高 一樹 
代理人 久保田 伸 
代理人 渡邉 知子 
代理人 七字 賢彦 
代理人 川村 恭子 
代理人 和田 聖仁 
代理人 早稲本 和徳 
代理人 秋野 卓生 
代理人 中村 智廣 
代理人 三原 研自 
代理人 佐々木 功 

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