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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立不成立) H3 |
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管理番号 | 1020924 |
判定請求番号 | 判定2000-60079 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2001-02-23 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2000-05-26 |
確定日 | 2000-08-09 |
意匠に係る物品 | 携帯電話機用アンテナのキャップ |
事件の表示 | 上記当事者の登録第1029360号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「携帯電話用アンテナ」は、登録第1029360号及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1.請求人の申立及び理由 請求人代理人は、「イ号図面に示す意匠は、第1029360号登録意匠の範囲に属するとの判定を求める。」と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張した。 即ち、第1029360号登録意匠(以下、「本件登録意匠」と云う。)とイ号意匠とは、共にトップピースが透明に形成され、全体の外形が同一と認められる程酷似しており、全体に対する透明部分の構成比率及び頂部内面に形成されているダイヤカットが八角形か六角形かの相違点があるとしても全体として類似している。 第2.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成9年2月14日に意匠登録出願し、その後平成10年10月30日に設定の登録がなされたものであって、意匠登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠に係る物品を「携帯電話機用アンテナのキャップ」とし、その形態は別紙第一に示すものである。 即ち、全体の形態を頂面が緩い弧面状をした略短円柱状とし、下部約2/3を不透明部に、その上部約1/3を透明部にして、その割合を約2:1とし、透明部内周面の頂面寄りに上面視正八角形状のダイヤカット様の模様を表し、下端は、稍細くて低い段状に形成した構成態様のものとし、更に詳細に観ると下部の内周面にねじが切ってあるものである。 2.イ号意匠 イ号図面によれば、意匠に係る物品を「携帯電話用アンテナ」とし、その形態は、別紙第二に示すものである。 即ち、全体の形態を頂面が緩い弧面状をした略短円柱状とし、下部約1/3を不透明部に、その上部約2/3を透明部にして、その割合を約1:2とし、透明部内周面の頂面寄りに上面視正六角形状のダイヤカット様の模様を、その下方全体に亘って極細の線条で螺旋模様を表し、下端を稍細くて低い段状に形成した構成態様のものとし、更に詳細に観ると透明部内側中央には小さなドーム状の素子を設けたものである。 3.本件登録意匠とイ号意匠との比較検討 本件登録意匠とイ号意匠とを比較し両意匠を全体として考察すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても、全体の形態を頂面が緩い弧面状をした略短円柱状にして、全体を不透明部と透明部とで構成し、透明部内周面の頂面寄りにダイヤカット様の模様を表し、下端を稍細くて低い段状に形成した構成態様が共通する。 他方、(1)本件登録意匠は、不透明部と透明部との割合を約2:1にしているのに対し、イ号意匠は、約1:2にしている点、(2)本件登録意匠のダイヤカット様の模様は、上面視正八角形状としているのに対し、イ号意匠は、上面視正六角形状としている点、(3)イ号意匠は、螺旋模様を表しているのに対し、本件登録意匠は、表していない点、更に詳細に観ると(4)イ号意匠は、内側中央に小さいドーム状の素子を設けているのに対し、本件登録意匠は、設けていない点、(5)本件登録意匠は、下部内周面にねじを切っているのに対し、イ号意匠は、その点が明らかでない点に差異がある。 そこで、両意匠を全体として考察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について総合的に検討する。 先ず、共通する構成態様のうち、全体を頂面が緩い弧面状をした略短円柱状とし、下端を稍細くて低い段状に形成することは例を示すまでもなくこの種物品に於いて本件登録意匠出願前より普通に見受けられるものである。しかし、不透明部と透明部とで構成した点は、この種物品の意匠としては創作を有し特色あるものと認められ本件登録意匠の特徴であり、イ号意匠もこの態様に於いては共通する。 しかしながら、この不透明部と透明部との割合に於いて前記(1)のような差異、即ち本件登録意匠は、約2:1としているのに対し、イ号意匠は、約1:2としている差異がある。 そこで、両意匠のこの点の差異について審案するに、この種物品は、需要者が常時繰り返し手にする物品であることから、各部の構成態様にも需要者は強く注意を惹かれると云える。そうとすると(1)の不透明部と透明部との割合の差は、特に看者の目につきやすい部分での差異であり、本件登録意匠は透明部を不透明部の約半分の大きさにしているのに対し、イ号意匠は、約2倍の大きさにしているものであるから、視覚的な影響は少なくないものと云える。したがって、この点の差異は類否を支配的に左右する要部と云わざるを得ない。 次に、透明部内周面の頂面寄りにダイヤカット様の模様を表した共通点については、携帯電話機用のアンテナのキャップの透明部のうちの更に頂面寄りの内周面と云う極く限られた部位のことでもあり、格別本件登録意匠の形態上の特徴として採り上げる程のものではない。また、その該部に前記のような差異があっても、請求人代理人も主張するように外観からは一見して判別できない程の微差であるから、何れにしても、類否判断に影響を与えるものではない。 更に、その余の差異点についてみるに(3)の螺旋模様の有無については、極細の線条で表したものではあっても特に看者の目につきやすい部分全体に表しており、類否判断を左右する一要素を成すものと云える。(4)の素子の有無については、物品の機能的必然性から内側中央に設けられているものであって、看者が格別注意を惹くものとも云えず、類否判断に何ら影響を与えるものではない。(5)のねじについては、不透明部の更に内周面と云う目に触れにくい部位であり、且つ、そのねじも極く普通にみられるありふれた態様で表したにすぎず、部分的な微差に止まる。 結局、全体として、本件登録意匠とイ号意匠とは共通する点があるものの、(1)の不透明部と透明部との割合の差が、両意匠の看者に与える印象に影響を及ぼし、本件登録意匠は、一部分を透明にした印象を与えるのに対し、イ号意匠は略ぼ全体を透明にした印象を看者に与えることとなり、この差異は両意匠を非類似とする要因として充分である。また、螺旋模様もイ号意匠の透明部を際立たせる一要素となっていると云える。 したがって、本件登録意匠とイ号意匠との共通点及び差異点を総合して対比すると、両意匠は、それぞれの意匠に於いて独自の意匠を構成し、前に共通するとした構成部分の態様が相俟って醸し出す印象を凌駕し、一定以上の差異感を奏し別異の印象を看者に与えていると云うことができる。 以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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判定日 | 2000-07-17 |
出願番号 | 意願平9-4177 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZB
(H3)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森川 幸俊 |
特許庁審判長 |
瀬尾 和子 |
特許庁審判官 |
松原 至 伊勢 孝俊 |
登録日 | 1998-10-30 |
登録番号 | 意匠登録第1029360号(D1029360) |
代理人 | 瀬谷 徹 |