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審決分類 審判 判定   属さない(申立不成立) D5
管理番号 1020926 
判定請求番号 判定2000-60018
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 判定 
判定請求日 2000-02-02 
確定日 2000-08-14 
意匠に係る物品 コンロ付き流し台 
事件の表示 上記当事者間の登録第1048834号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「コンロ付き流し台」は、登録第1048834号及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1、請求の趣旨及び理由
請求人は、「イ号意匠に示す意匠は、登録第1048834号意匠(以下、「本件登録意匠」という)に類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由を要旨以下のように主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第28号証を提出した。
被請求人は、イ号意匠として示すコンロ付き流し台を平成11年秋より製造販売を開始した。
本件登録意匠とイ号意匠は、縦割区画を少なくした構成及びシンク及びコンロ下方に台輪から上まで横長の大型の引き出しを配置した点において共通し、しかもこの大型の引き出しを、三段の引き出しの左右に配置した点において酷似する。さらに、メインワークスペースの下の三段引き出しの最上段の引き出しの前面板を右方向に繋げるような前幕板等で横方向に表れる線をすっきりさせている点において共通する。
両意匠の差異点については、コンロ下の引き出しをイ号意匠が二つに分けている点については、一のキャビネットで分けたに過ぎず前面の縦方向の分割が四であるか五であるかということは、シリーズ商品のひとつとの認識を与える程度で類否の判断に影響を与えるほどの差異とはいえない。
本件登録意匠は、平面に表れるワークトップのドロップインコンロ、メインワークスペース、ドロップインシンク、サブワークスペースにほぼ対応してキャビネットを配置するものであるのに対して、イ号意匠では、ドロップインコンロを下方キャビネットより巾員の大きなものを用い、かつ、ドロップインシンクを若干右側に寄せて、サブワークスペースを狭くしてあるので、中央の三段の引き出しの巾員が狭くなっており、更に、正面右側上部は前幕板として引き出しはないものとなっている差異点については、両者が平面と正面で対応している点に関しては共通するもので、厳密な対応関係を想定することはないので類否判断に与える影響はほとんどない。
イ号意匠では全ての収納手段を引き出しとして片開き扉を備えないものであるが、閉じた状態では全体として前面板の配置構成に吸収され格別顕著な相違とはいえない。
取っ手については、特別な形態を採用しない限り類否に与える影響は微弱である。
第2、答弁の趣旨及び理由
被請求人は、「イ号意匠に示す意匠は、意匠登録第1048834号及意匠に類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」と主張し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至乙第5号証を提出し、要旨以下のように主張した。
両意匠は意匠に係る物品が一致し、形態についても共通点が認められるが、これらの共通点は、類否判断を左右する要素とはなり得ない。一方差異点のうち右端の収納部扉構成の違いは、本件登録意匠は上段を引き出し、下段を片開き扉とした構成としているのに対して、イ号意匠は上段を幕板、下段を引き出しとした構成であることから全く相違し、加えて本件登録意匠の当該構成は本件登録意匠の要部を成しており、当該差異点により両意匠は全く別異の印象を与えるものと判断される。コンロ下方に配された引き出しに関する差異点について、イ号意匠の引き出しは、両扉の横幅比を一致させずに非対称に分割した引き出しであり、今までにない新規な形状であることからイ号意匠の特徴をなしており、コンロ下方に一の引き出しを配した本件登録意匠とは明らかに相違する。加えて、取手形状及び取手の設置位置にも差異点が認められる他にも差異点が認められることから、イ号意匠は意匠全体として観察した場合、本件登録意匠とは明らかに相違し、看者に別異の印象を与える意匠と認められる。よってイ号意匠は本件登録意匠に類似するものとは認められない。
第3、当審の判断
1、本件登録意匠について
本件登録意匠は、平成10年7月30日に意匠登録出願をし、平成11年6月4日に意匠権の設定の登録がされたものであり、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「コンロ付き流し台」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとしたものである。
2、イ号意匠について
イ号意匠は、イ号図面及び説明書に示す意匠であって、その記載によれば、意匠に係る物品を「コンロ付き流し台」とし、形態を別紙第2に示すとおりとしたものである。
3、両意匠の比較対比
そこで、本件登録意匠とイ号意匠とを比較すると、両者は、意匠に係る物品が一致し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
先ず、共通点として、
(1)全体が、略横長直方体形状のキャビネット本体の、上面側左寄りにグリル付きコンロを、中央右にシンクをビルトインし、コンロ面とシンク面を除く平面部を天板で覆い、正面部を複数の区画からなる開閉自在の開口部と蹴込み部で構成した基本的な構成態様のものである点、各部の具体的な構成態様を、
(2)正面開口部の左半部は、その右側に3段の小さい引き出しからなる小引き出し部を設け、その左側上方にグリル付きコンロの前面が現われる点、
(3)正面開口部の右半部は、その上方寄りで上下に、右寄り略3分の2で左右に、4区画に区分され、その左上方を幕板、左下方を大きな1つの引き出し部とする点、
(4)シンク部は、上方視その外周輪郭形状が略隅丸横長方形状で、その後辺側に余地を残して手前側に内周側面を略垂直面状、底面を略水平面状とするやや深い凹陥面部を設けた態様である点、
(5)コンロ部は、外周輪郭形状が略隅丸方形状で、外周縁を細幅の額縁状とし、その内方後辺側に細幅帯状の通風口部を配し、その手前の区画の前半側に略正円形状の火口2個を並べ、後半側中央に火口1個を設けたものである点、
(6)天板は、後辺側全長を細幅で垂直状に僅かに立ちあげて後縁部を形成し、前辺側を細幅で僅かに垂下させて前縁部を形成し、コンロ面とシンク面を除く上面全体を連続する水平平滑面状として調理台面を形成している点、
(7)蹴込み部は、細幅帯状で、正面部下辺側に上方の開口面部に比してわずかに奥まって設けられている点、
(8)グリル付きコンロの前面部は、その中央に横長方形状のグリル口部、その左右の区画を同形同大の操作部とし、その各々に操作ボタン2個を対称状に配している点、が認められる。
一方、差異点としては、
(イ)正面開口部の左半部において、本件登録意匠は、3段の小引き出し部が、左半部の大きさに対して略7分の3を占めるやや幅のあるもので、グリル付きコンロの下方の区画を1つの大きな引き出しで構成しているのに対して、イ号意匠は、3段の小引き出し部が略3分の1を占める狭い幅のもので、グリル付きコンロの下方の区画をその右寄り略3分の1で区分して大小2個の引き出しで構成している点、
(ロ)グリル付きコンロにおいて、そのコンロ面が、本件登録意匠は、縦横が略同長で、その前面部の横幅もコンロ面の横と同長で、その前面パネルは垂直面状で、その下辺寄りに操作ボタンが各1対が略横長長円形状で設けられているのに対して、イ号意匠は、コンロ面が、縦横比1対1.7の横長で、その前面部の横幅もコンロ面との横と同長で、その前面パネルの下辺側が前方に向けて僅かに突出しており、前面の操作ボタンは操作部中央に各個が大きい縦長の長円形状で設けられている点、
(ハ)グリル付きコンロのキャビネット本体上面側への取り付け態様において、本件登録意匠は、グリル付きコンロ前面部の左端側に略正方形状の小さい引き出しを介して、右端側は隣接する3段の小引き出し部に密接状にキャビネット本体上面側にビルトインして取り付けられているのに対して、イ号意匠は、グリル付きコンロの左右両端に同形同大の縦長方形状の区画を介してキャビネット本体上面側にビルトインして取り付けられている点、
(ニ)正面開口面部の右半部において、本件登録意匠は、右上方の区画を小さい引き出し部、右下方を左開きの扉部としているのに対して、イ号意匠は、右上方を幕板、右下方を引き出し部とする点、
(ホ)シンク部において、本件登録意匠は、その上面の縦横比が、略1対1.5で、凹陥面部の後辺中央側が後方側に向かって大きくえぐれ、その上方に水切り板を架橋状に設け、その右側の後辺側余地部に楕円形状の凹陥面を、左に小円孔を設けているのに対して、イ号意匠は、その上面の縦横比が、略1対1.8で、凹陥面部の後辺側にえぐれを有さず、後方余地部は、水切り板を有さないもので、中央に小円孔、その左右に横長長円形状の凹陥面部を設けている点、
(ヘ)前面の各取っ手の形状において、本件登録意匠は、左端上方の方形状の小引き出しと右端の下方側の区画に短い取っ手を縦付けし、そのほかの取っ手は区画の横幅より僅かに短い細棒からなる長い取っ手を横付けしているのに対して、イ号意匠は、全てが同形同大の偏平角棒状の短い取っ手を横付けしている点、
が認められる。
そこで、上記の共通点と差異点について検討する。
(1)の点は、本件登録意匠の出願前において、広く知られている態様(参照、参考資料A,B,C,D,F)であって、本件登録意匠の特徴とは言えず、類否判断に与える影響は小さい。
(2)の点は、この種物品分野においては、グリル付きコンロの右側に数段の小引き出しからなる引き出し部を設けることは、一般的な態様(参照、参考資料B、D、E,F)であり、グリル付きコンロの前面下方の区画を引き出し部とすることも、本件登録意匠の出願前公知の態様(参照、参考資料D、意匠登録第1010728号)であって、本件登録意匠の特徴とは言えず、類否判断に与える影響は小さい。
(3)の点は、この種物品分野においては、複数の区画に構成することは周知の態様であって、シンクをビルトインしている右半部の上辺寄りで上下に区分することも一般的態様(参照、参考資料A,D)で、シンクを埋設している部分を幕板とすることも一般的態様(参照、参考資料A,D,F)であることから、左下方の大きな区画を引き出しとした点は、本件登録意匠の特徴ではあるが、右上下の区画の収納態様の差異点(ニ)が、この共通点の類否判断に与える影響をかなり希釈して、小さいものとしている。
(4)の点は、両シンク部の差異点(ホ)に比して、一般的なシンクの概括的特徴の域を出るものでなく、本件登録意匠の特徴とは言えず、類否判断に与える影響は小さい。
(5)及び(8)の点は、差異点(ロ)及び(ハ)に比して、一般的なグリル付きコンロの有する概括的特徴の域を出るものでなく、本件登録意匠の格別の特徴とは言えず、類否判断に与える影響は小さい。
(6)の点は、一般的な天板の態様(参照、参考資料A,F)であって、本件登録意匠の特徴ではなく、類否判断に与える影響は小さい。
(7)の点は、極一般的な蹴り込み部の態様(参照、参考資料A,B,C,D,F)であって、本件登録意匠の特徴とは言えず、類否判断に与える影響は小さい。
一方、差異点について検討するに、
(イ)の点について、この種物品分野においては、キャビネット本体正面部左半部の上面側にグリル付きコンロをビルトインし、その右側に複数段の引き出しからなる小引き出し部を設け、グリル付きコンロ下方を1つの大きな引き出し部とすることは、出願前より公知の態様(参照、参考資料A,D,E)であって、本件登録意匠のみの格別特徴を有する態様のものでなく、一方、イ号意匠のグリル付きコンロ下方の区画に大小の引き出しを並べた態様のものは、特徴のある態様であって、両意匠に別異感をもたらすもので、類否判断に及ぼす影響は、大きいものである。
(ロ)及び(ハ)の点については、本件登録意匠のグリル付きコンロの形状は一般的な態様のもので、そのキャビネット本体への取り付け態様も、この種物品分野のビルトイン取り付け態様として、広く知られている態様(参照、参考資料C)であって、本件登録意匠のみの格別特徴のある態様ではない。一方、イ号意匠のグリル付きコンロの形状は、その上面および前面の横幅が長い、形状も本件登録意匠の出願前においては一般的でない特徴のある形状であって、キャビネット本体への取り付け態様も、本件登録意匠の出願前においては一般的でない特徴のある態様で、本件登録意匠に比して全体に占める大きさが大きく目立つ態様でもあり、その取り付け態様ともあいまって、両意匠に視覚的に別異の印象を与え、この種物品分野においては、ビルトインされるグリル付きコンロの形状についてはかなり自由度があるのが通常であることを考慮しても、類否判断に与える影響はかなり大きいものである。
(ニ)の点については、上方の引き出しか幕板かの差異はビルトインされるシンクの横幅の長短によって生じる差異であって、キャビネット本体上方側を幕板で構成する態様も、引き出し部で構成する態様も、共に一般的な態様で、格別特徴を有する態様でなく、下方側の扉か引き出しかの差異も共にこの種物品分野における一般的な収納態様からの通常の選択の範囲内の差異に過ぎないものであるが、差異点(へ)と相俟って結局両意匠に別異感をもたらすものであって、類否判断に与える影響はやや大きいものである。
(ホ)の点については、この種物品においては、コンロ面、シンク面を設けた調理作業面である上面は主要な部位であって、その上面において目に付く差異であって、類否判断に与える影響はやや大きいものである。
(へ)の点については、個々の取っ手の形状は、この種物品分野においては、広く知られている形状(参照、意匠登録第863898号、同961264号、参考資料A,Bなど)であって、格別特徴を有するものでないが、全体が、本件登録意匠は、各引き出し部の上辺の長さに対応したかなり長いもので、大きい引き出しとしての構造を強調するのに対して、イ号意匠は、全部の引き出しに同形同大のものを設け、引き出しの大きさを格別強調しないもので、類否判断に与える影響は大きいものとなっている。
なお、請求人は、本件登録意匠の正面開口部の収納形式が大きな引き出し部を主体に構成した点が、大きな特徴である旨主張されるが、本件登録意匠の出願前より、ヨーロッパなどにおいては、この種物品分野においては、大きな引き出し部を設けることは広くなされていたところであって、日本国内においても出願前より広くなされており(参照、実用新案出願公開昭63-42241号、意匠登録第863898号)、本件登録意匠のみの格別顕著な特徴とは言えないものである。
以上、共通点(1)乃至(8)のうち、(3)の左下方の大きな区画を引き出しとした点は本件登録意匠の特徴であるが、その他の共通点は本件登録意匠の特徴とは言えず、一方差異点(イ)乃至(へ)は相まって、両意匠の別異感を強めているもので、イ号意匠が本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属するものとすることはできない。
よって、結論のとおり判定する。
参考資料A
国内刊行物「ニューレガセス(日刊工業新聞1 995,5,18P18)」
特許庁受入1995年9月29日、第110頁 所載 東陶機器(株)発行
公知資料番号HN07023464号
参考資料B
外国カタログ「LA MIA CASA」
第224巻64頁1990年1月31日発行
公知資料番号HB02030060号
参考資料C
国内カタログ「シェーヌPHOTCATALO G」第11頁
特許庁受入1997年5月7日、トヨタ自動車(株)発行
公知資料番号HC09007469号
参考資料D
国内カタログ「TOTO`93ー`94総合カタログ」
特許庁受入1993年7月22日東陶機器(株)発行第498頁
公知資料番号HC05030238号
参考資料E
国内カタログ「bulthaupSystem 25J」第25頁東陶機器(株)発行
特許庁受入1996年12月19日
公知資料番号HN09005782号
参考資料F
国内雑誌「オレンジページ」26号8巻35頁
1992年12月17日発行
公知資料番号HA04022807号
別掲
判定日 2000-07-25 
出願番号 意願平10-21937 
審決分類 D 1 2・ - ZB (D5)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 内野 雅子
特許庁審判官 秋間 哲子
西本 幸男
登録日 1999-06-04 
登録番号 意匠登録第1048834号(D1048834) 
代理人 小川 順三 
代理人 中村 盛夫 
代理人 渡邉 知子 
代理人 日高 一樹 

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