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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) G2
管理番号 1025180 
判定請求番号 判定請求1999-60102
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-03-30 
種別 判定 
判定請求日 1999-12-24 
確定日 2000-10-02 
意匠に係る物品 フォ―クリフトトラック 
事件の表示 上記当事者間の登録第0917179号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「フォ―クリフトトラック」は、登録第0917179号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として要旨以下のとおり主張し、並びにその主張を立証するため、甲第1号証(枝番を含む)乃至甲第7号証を提出した。
イ号意匠は、意匠登録第917179号意匠(以下、「本件登録意匠」という)と、意匠に係る物品及び基礎的な骨格ともいうべき構成が類似すると共に、両意匠の類否の判断対象ともなる具体的な構成態様が、各部分において共通するものであり、その共通する部位は、本件登録意匠並びに同種物品における意匠の創作がなされる部位である。これに対し、両意匠の相違する点は、共通する部位における細部及びこの種物品において普通に見られるものへの改変にすぎないもので、イ号意匠の特徴ある態様とはいえないから、その相違は、共通点から強く印象づけられる共通感を破るものではなく、両意匠の類否判断を左右する要素としては微弱であり、これらの相違点を総合しても、前記の共通点を凌駕するものとはいえない。両意匠を意匠全体として観察する場合、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものと考える。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、「本判定の請求は成り立たない。」との判定を求めると答弁し、その理由として要旨以下のとおり主張し、並びにその主張を立証するため、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
即ち、両意匠に共通する基本的な構成態様、換言すれば、請求人が「骨格ともいえる基礎的な構成」は、殊更乙第1号証及び乙第2号証の登録意匠公報等を例示するまでもなく、本件登録意匠の登録出願時点で既に周知となっていたものであり、この種意匠における創作の主体をなし、類否判断を左右する主要素は、専ら各部の具体的な構成態様のうち、従来の意匠には見ることができない本件登録意匠独自の特徴ある形象にあるとするのが相当であり、その形象の中でも、意匠全体の印象を左右する点こそが本件登録意匠の要部である。
然るところ、イ号意匠は各部の具体的な構成態様が本件登録意匠のそれと明らかに相違しており、後述する本件登録意匠の要部と目される構成態様を具有していないのみならず、イ号意匠は独自の特徴ある形象を有するものであるから本件登録意匠とは非類似であって、本件登録意匠及び、これに類似する意匠の範囲に属するものではない。
本件登録意匠は、同一権利者が所有する乙第2号証の意匠とは非類似であるとして設定登録がなされたものであり、その権利範囲はさして広いものではない筈であるにも拘わらず、その類似意匠として設定登録された意匠をみると、乙第1号証(意匠登録第360985号)意匠や乙第2号証(意匠登録第671082号)意匠の類似範囲に位置するとも思える様な意匠までも含まれて、権利範囲が拡張された感じが否めず著しく妥当性を欠くものであって、既に権利が消滅、または存続期間の満了が近づいている意匠権の更新、または存続期間の延長に等しい効果を生じかねない疑義あるものである。
本件登録意匠の類似第10号乃至類似第13号の意匠は、イ号意匠が日刊工業新聞で最初に発表された平成7年5月11日の後日に係る登録出願であり、類似第12号意匠については、明らかにイ号意匠の創作骨子をコピーしたのではないかとも思われ、冒認の疑いさえ感じさせるものであり、その登録出願前に公知となっていた意匠に類似するものであるから、当然に無効となるべきものである。
従って、少なくともイ号意匠に対する本件登録意匠の権利範囲を云々する場合には、類似10号以降の類似意匠は除外して考察すべきであり、これら類似意匠を含めずに、本件登録意匠及びその類似1号及び類似9号の意匠に共通する形象のうち、類否判断の要素となる各部の具体的な構成態様の中から、本件登録意匠の要部(特徴)と考えられる部位の抽出を試み、イ号意匠と対比してみれば、a.本件登録意匠はサイドカバー上端縁(エンジンフードとウェイト上部の下端縁)が後上がりの斜状直線であるのに対し、イ号意匠は、水平である点、b.本件登録意匠は、エンジンフードとウェイト部分の上面が同一平面状(側面視一直線)を呈するのに対し、イ号意匠は、段差で分断されている点、c.本件登録意匠は、ウェイト部分の上面が、パーティングラインや段部の無い平滑面であるのに対し、イ号意匠は、エンジンフード寄り中央広幅部分が台形状に一段落し、その内方が方形状に開口されており、後方寄りには2箇所の円形隆起部が表れている点、d.本件登録意匠は、ウェイト中間部の背面視が突弧状を呈しているのに対し、イ号意匠は、水平である点、e.本件登録意匠は、エンジンフード上面が、座席部後半の下端部のみが略一杯に納まる部位(僅かな部分)のみを、斜状に陥没しているのに対し、イ号意匠は、中央の広域部が略水平に大きく凹陥し、座席部の前方及び左右部分(特に右側は広く)に凹陥余地部が広く表れている点、f.本件登録意匠は、座席部の前半下端部が、エンジンフード上面と乖離して浮いた態様を呈しているのに対し、イ号意匠は、湾曲したフレームで支持されている点、g.本件登録意匠は、座席部の座部が、前方が肉厚で上面は前上がりの直線斜状を呈しているのに対し、イ号意匠は、前方が稍薄肉で上面は前下がりの弧状を呈している点、h.本件登録意匠は、座席部の背凭れが上窄まりの台形状を呈しているのに対し、イ号意匠は、左右両側が略平行に表れている点、i.本件登録意匠は、ヘッドカバーの天井ピラー(類似2号を除く)が、後方過半部を平板で遮蔽し、残余の前方部を棒体が並列した縦桟状を呈しているのに対し、イ号意匠は、前方が稍薄肉で上面は前下がりの弧状を呈している点等、本件登録意匠とその類似意匠に共通する処から抽出した本件登録意匠の要部と目される構成態様と、イ号意匠のそれとは明らかに異なっている許りではなく、イ号意匠には、(ア)エンジンフード、リアピラー、及びウェイト上部の各側面が、段差を付けて前方から後方に拡幅されている点、(イ)エンジンフードとサイドカバーの側面は、段差を付けてサイドカバーが拡幅され、サイドカバーと下部フレームとは、上下縁が弧状をなすV字溝を介して連続している点、(ウ)後方視において、肉厚なウェイト上部とウェイト下部に挟まれたウェイト中間部が極端に薄肉に形成されている点、(エ)後方視において、ウェイト上部とウェイト中間部の夫々の高さの略半分が、凍結した大きな排風口が表れている点、(オ)後方視において、ウェイト下部に設けられた特異な形象を有する穴が設けられている点、等々顕著な形象上の特徴があるものである。
この種物品の使用時を考慮すれば、側面は無論、後方(背面部)は最も目の付き易い部位であり、また、操縦者は保身上天井も注意して観察することから、前記した両意匠の明らかな差異点ともなっている、本件登録意匠の要部a.乃至i.の点は需要者の注意を惹く処であり、且つ、イ号意匠の特徴として挙げた(ア)乃至(オ)の態様もまた、需要者の注意を惹き全体の印象を支配する特異性があるものであるのに反し、両意匠に共通する点は、基本的な構成態様を初め、何れも本件登録意匠の登録出願前に周知、または公知となっていたものであって、類否判断の要素としては評価し難いものであるから、両意匠を全体として総合的に考察すれば、非類似の意匠であることは明らかである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成5年3月30日の意匠登録出願であり、平成6年10月25日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第917179号の意匠であって、その意匠登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠に係る物品を「フォークリフトトラック」とし、その形態を別紙第一に示すとおりとしたものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、本判定請求書に添付の甲第1号証の図面代用写真に現された意匠であって、意匠に係る物品を「フォークリフトトラック」とし、その形態を別紙第二に示すとおりとしたものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠との対比
本件登録意匠とイ号意匠とを比較し、両意匠を全体として考察すると、両意匠は、「フォークリフトトラック」であって、意匠に係る物品が一致し、その形態においては、以下に示す共通点及び差異点が認められる。
すなわち、両意匠は、トラック本体部と荷役部とで構成したものであり、トラック本体部は、横長の略直方体を基本形状とする基台部を形成し、その基台部を上中下の略三段構成とし、基台部全体の後方は、平面視して弧状面に形成したものであって、下段は、両側面に略横長長方形状の下部フレームを設け、その前方及び後方寄りに車輪を設けて成り、中段は、側面をサイドカバーで覆い、その後方と下段の後方とを、略逆台形状を呈するリヤバンパーを兼ねた下部ウェイトに形成し、上段は、基台部の後方約2/3に形成し、前方をエンジンフード部、後方を上部ウェイトとしたものであり、エンジンフード部の上面には、一人掛けのシートを設けたものであって、この基台部上面の前方寄りを操作部とし、トラック本体部の後面中央には、略横長矩形状の大きな凹部を形成したものである。また、4個の車輪と略同部位の基台部上面から4本のピラーを立設し、その上方に略矩形状に形成したヘッドガードを設け、荷役部は縦長矩形状の支持枠とこれに取り付けられた略L字状の2本のフォークとから成る全体の基本的構成態様が共通している。また、トラック本体部に設けた前輪を後輪より大きめとし、基台部全体を側面視してやや尻上がりに形成し、下部ウェイトの後面中央に略逆小台形状の凹部を設け、ヘッドガードは、前方に短い縦桟を配し、前方ピラーは後方に傾け、後方ピラーは基台上段の側面に食い込んで面一にし、僅かに前方に傾けて取り付けた各部の具体的構成態様においても共通している。
他方、両意匠の間には、a.イ号意匠は、基台部上段の前方のエンジンフード部と後方の上部ウェイトとに、僅かな段差を設けているのに対し、本件登録意匠は、段差を設けていない点、b.イ号意匠は、上部ウェイトの上面に僅かに隆起する2個の円形の隆起部分と略扁平台形状の凹陥部とを表しているのに対し、本件登録意匠は、当該凹陥部及び隆起部分を表していない点、c.本件登録意匠は、中段をやや尻上がりに形成しているのに対し、イ号意匠は、水平状に形成している点、d.本件登録意匠は、中段ウェイトの後方幅が後方全体の高さの約1/3の幅であるのに対し、イ号意匠は、約1/9の幅である点、e.本件登録意匠は、中段のサイドカバーに2本のライン模様を設けているのに対し、イ号意匠は、ライン模様を設けていない点、f.イ号意匠は、下部ウェイトの後面中央に略逆小凸字形状の凹部及び略逆小台形状の凹部を設けているのに対し、本件登録意匠は、略逆小台形状の凹部のみを設けている点、g.本件登録意匠は、ヘッドガードの後方をパネル状としているのに対し、イ号意匠は、後方も前方と同様に短い縦桟を配している点、さらに詳細にみると、h.本件登録意匠は、エンジンフード上面において、シートが略一杯に納まる程度の幅に極浅く凹陥しているのに対し、イ号意匠は、シートより大きめに浅く凹陥している点、i.本件登録意匠は、シートの座部について、前方が肉厚で上面は前上がりの直線斜状を呈しているのに対し、イ号意匠は、前方がやや薄肉で上面は前下がりの弧状を呈している点の各部の具体的構成態様において差異が認められる。
4.両意匠の類否判断
そこで、前記の共通点及び差異点を総合し、両意匠を全体として考察すると、前記に共通するとした全体の基本的構成態様及び各部の具体的構成態様は、両意匠の形態上の特徴を顕著に表しているところであり、かつ、形態全体の基調を決定づけるところとなり、両意匠の類否判断に重要な影響を与えるところといわねばならない。
これに反して、前記a.乃至i.の各差異点は、以下に示す理由により、いずれも両意匠の類否判断にあたって未だ微弱なものに止まるというほかない。
すなわち、a.の基台部上段の段差の有無について、イ号意匠と同様に、当該部位に段差を設けたものが従来より普通にみられ(例えば、意匠登録第360985の類似第2号の意匠)、この点がイ号意匠の独自の態様とはいい難く、意匠全体からみれば部分的で微弱なものといえるので、両意匠の類否判断に影響を及ぼす要素とはなり難い。次に、b.の上部ウェイト上面に2個の小円形の隆起部分と略扁平台形状の凹陥部とを表しているか否かの差異について、小円形の隆起部分については、極めて僅かな隆起であって、当該部分を注視して漸く分かる程度のものであり、また、凹陥部については、確かにこの点に差異が認められるものではあるが、上部ウェイトの前方寄りの奥まった部位での差異であり、かつ、意匠としてさほど美感を惹起させるものともいえず、形態全体からみた場合、共に前記した形態全体の共通する態様に包摂されてしまう程度のものであって、未だ部分的で軽微な差異といえるので、この点を捉えて両意匠を別異のものとする程の特徴をなすところとはいえず、両意匠の類否判断を左右する程のものとはいえない。次に、c.の中段の傾斜及びd.の中段ウェイトの後方幅の差異については、中段を水平状に形成したものが、従来からこの種のフォークリフトの分野においては普通に認められ(例えば、意匠登録第671082号の意匠、公開実用新案公報所載、実用新案出願公開昭63-180383号、考案の名称「フォークリフトのリヤマッドガード」、第1図及び第2図の意匠)、イ号意匠のみの格別の特徴ということはできず、また、イ号意匠の如く中段ウェイトの後方幅が後方全体の高さの約1/9の幅であるものも、従来より認められ(例えば、公開実用新案公報所載、実用新案出願公開昭62-95968号、考案の名称「フォークリフトトラック等の産業車両におけるヘッドガードの高さ調整機構」、第1図の意匠)、この点についても、イ号意匠のみの格別顕著な特徴とはいえず、c.及びd.のいずれの差異点についても、前記した両意匠の共通点が相俟って醸し出す共通する印象に埋没してしまう程度の差異であって、両意匠を別異のものとする程のものとはいうことができない。次に、e.の2本のライン模様の有無についても、イ号意匠の様にライン模様を設けていないものが、従来より普通にみられる態様であって、ライン模様を設けていないイ号意匠の方がむしろ特徴がなく、ライン模様を設けていないからといって、この点がイ号意匠の特徴とはいうことができず、両意匠の類否判断をするにあたって大きな影響を及ぼすものではない。次にf.の下部ウェイトの後面の凹部については、両意匠には、略逆小凸字形の凹部の有無に差異があるものの、両意匠は共にトラック本体部の後面中央に、略横長矩形状の大きな凹部を形成し、下部ウェイトに略逆小台形状の凹部を設けたという、両意匠の共通する態様の中にみられる差異といえるので、形態全体から観察した場合、未だ細部における部分的な差異というほかなく、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものである。次に、g.のヘッドガードの差異についても、ヘッドガードの一部をパネル状とすることも、桟状体とすることも、いずれの態様も従来より普通に見受けられ、当該部分を必要に応じて適宜変更する程度のことは、普通に行われている常套的変更の範囲内のものといえるので、この点についても両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといえる。次に、h.のシートの凹陥の程度の差異、及びi.のシートの座部の差異についても、両意匠間にみられる差異が極めて僅かであり、指摘され、注視して気付く程度の部分的、軽微なものであって、共に類否判断に大きな影響を及ぼすものではない。そうして、これらの差異点を総合しても、前記に共通するとした、全体の基本的構成態様及び各部の具体的構成態様から生ずる強い共通感を凌駕するものとは到底いえない。
なお、被請求人は、この他に、本件登録意匠の類似第10号以降の類似意匠について、イ号意匠が日刊工業新聞に最初に発表された日(平成7年5月11日)の後日に係る登録出願であり、冒認の疑いさえ感じさせるものであり、その登録出願前に公知となっていた意匠に類似するものであるから、当然に無効となるべきものである旨主張しているが、本件判定請求事件とは直接関わりの無い事由についての主張であって、その主張は採用することができない。
5.むすび
以上のとおり、前記の差異は、いずれも両意匠の類否判断を左右する要素としては、微弱乃至軽微な差異に止まり、これらの差異点が相俟って意匠全体に与える影響を考慮したとしても、前記の共通点を凌駕するものとは到底いえない。
したがって、本件登録意匠とイ号意匠とは、意匠に係る物品が一致し、その形態においても、形態全体の基調を決定づけ、かつ、類否判断を左右する全体の基本的構成態様における共通点に加え、各部の具体的構成態様においても共通する両意匠は、互いに類似するものというほかなく、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものと認められる。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2000-08-31 
出願番号 意願平5-9300 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊勢 孝俊 
特許庁審判長 瀬尾 和子
特許庁審判官 松原 至
斉藤 孝恵
登録日 1994-10-25 
登録番号 意匠登録第917179号(D917179) 
代理人 水野 尚 
代理人 板垣 孝夫 
代理人 砂川 昭男 
代理人 森本 義弘 

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