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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 C4
管理番号 1036130 
審判番号 審判1998-5722
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-04-15 
確定日 2000-07-26 
意匠に係る物品 汗取りパット 
事件の表示 上記平成6年意匠登録願第27299号「汗取りパット」拒絶査定に対する審判事件(平成10年4月15日、平成10年審判第5722号)についてされた平成11年2月25日付け審決に対し、東京高等裁判所において、審決取り消しの判決〔平成11年(行ケ)116号、平成11年11月30日判決言渡〕があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願の意匠は、平成6年9月7日の意匠登録出願に係り、その願書及び願書添付図面の記載によれば、意匠に係る物品が「汗取りパット」であって、その形態は、添付図面のとおりである。(別紙第一参照)
2.経緯
(1)原審(審査)において、本願の意匠は、その出願日前の昭和60年5月21日(前実用新案出願日援用)に意匠登録出願された登録第911297号意匠(平成6年8月5日に設定の登録、意匠に係る物品、「汗とりパッド」、別紙第二参照)に類似し、意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないことを理由として、平成10年2月12日付けで本願意匠に対して拒絶の査定をした。
(2)これに対し、出願人(請求人)は、この査定を不服として、平成10年4月15日付けで審判を請求した。
(3)原審(第一次審判)は、これを平成10年審判第5722号事件として審理し、平成11年2月25日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。
(4)これに対し、請求人は、平成11年4月22日付けで、上記審決の取り消しを求める訴えを東京高等裁判所に提起し、同裁判所は、平成11年(行ケ)第116号審決取消請求事件としてこれを審理し、平成11年11月30日に「特許庁が平成10年審判第5722号事件について平成11年2月25日にした審決を取り消す。」との判決を言い渡し、同判決が確定した。
3.判決の理由の要点
(1)本願意匠と引用意匠との対比
本願意匠と引用意匠との間の共通点及び差異点を前提にして、両意匠の類否を検討する。
(ア)原告は、両意匠の共通点の一部である、全体がやや厚地のパッドを二つ折りにした二層構造の扁平略三日月形状のもので、その上方凹円弧状部を折り曲げ部、その余の下方を重合部とした点は、従来から存する同種の意匠等において周知ないし慣用の事項であり、当業者にとって極めてありふれた商品形態の選択にすぎず、また、重合部の縁辺部を左右対称の連なる峰状に小凸円弧状を表わした同種の物品(ドレス・シールド)も、米国においては今世紀初頭からみられていたもので、既に周知な形状であったから、意匠の類否判断に当たっては、原則として、要部たり得ないものであり、最も重要なのは、重合部の縁辺部に形成される凸円弧状が上方凹円弧状の折り曲げ部の両端からどのように形成されているかという点である旨主張し、被告はこれを争っている。
甲第9ないし第12号証及び第14ないし第23号証によれば、これら14件の実用新案公開公報等には、全体がやや厚地のパッドを二つ折りにした二層構造の扁平ほぼ三日月形状としたもので、その上方凹円弧状部を折り曲げ部、その余の下方を重合部とした形状が記載されていることが認められる。そして、被告が提出した乙第1ないし第3号証(実用新案公開公報等)には、身頃側と袖側の大きさが異なり、折り曲げ部が直線状、V字状のものや隅丸状に形成したものが記載されているが、その数は3件にすぎないこと、折り曲げ部の形状については、袖ぐりの形状に合わせる必要があり、凹円弧状とすることが自然であると認められることからすると、汗取りパッドの形状として、全体がやや厚地のパッドを二つ折りにした二層構造の偏平略三日月形状としたもので、折り曲げ部の形状が凹円弧状、重合部の大きさを同じとした形状自体は、周知ないし慣用の事項と認められ、この点に限れば、原告の主張は理由がある。
また、甲第29、第30号証によれば、ドレス・シールドとは汗取りパッドのことであることが認められるところ、甲第24号証によれば、1901年ころ発行の米国意匠登録公報には、小凸円弧状を左右対称に5個連ねて全体を大きな円弧状に形成したドレス・シールドのデザインが記載されていることが認められる。また、弁論の全趣旨によれば、甲第24号証の説明中に使用されている「scallop」という英単語は、帆立貝を意味するが、衣服などのへりの波形形状を意味するものとして、一般的な英和辞典にも掲載されていることが認められる。
そうすると、汗取りパッドの形状として、全体形状がやや厚地のパッドを二つ折りにした二層構造の扁平三日月形状としたもので、折り曲げ部の形状を凹円弧状、重合部の大きさと同じとした形状は、周知ないし慣用の事項であり、また、汗取りパッドにおいて複数の凸円弧状を左右対称に連ねて全体を大きな円弧状に形成したものは周知であったことが明らかである。
このような事情に鑑みると、両意匠の基本的構成態様の共通点が看者の注意を惹くところであるとしても、その共通点のみをもって類否判断を左右する支配的要素であると断定することはできず、両意匠の基本的構成態様及びこれに関する具体的な形状の共通点及び差異点並びにその他の差異点をも含めて総合的に対比し、類否判断をする必要があるというべきである。
(イ)そこで、本願意匠と引用意匠の共通点及び差異点を総合的に対比してみるに、全体の形状が略三日月形であり、重合部の外周の縁辺部を複数の小円弧を連ねて大きな凸円弧状に形成した基本的構成態様の共通点、すなわち、全体をやや厚地のパッドを二つ折りにした二層構造の偏平略三日月形状とし、その上方凹円弧状部を折り曲げ部、下方を重合部とし、その重合部の外周の縁辺部を左右対称の連なる峰状に複数の小凸円弧状を表わして縁辺部全体を大きな凸円弧状に形成したという共通点、及び、具体的な形状において、重合部につき、その縦幅と横幅との比を略1:2とし、その縁辺部について、上方の凹円弧状部の両端から下方に凹円弧状部よりやや外側に膨出するように小円弧状を表わし、下方に複数の小円弧状の峰を連ねて全体を大きな円弧状にしたという共通点は、その一部に、前記(ア)で認定したとおり、周知部分を含むものの、特徴ある美感を呈し、看者の注意を惹くところであることは否めない。
しかしながら、両意匠の間の基本的構成態様に関する具体的な形状の差異点、すなわち、重合部の縁辺部における小円弧の数が本願意匠では5個であるのに対し、引用意匠では3個であり、それに伴って繋ぎの部分(谷)の数が、本願意匠では4個で、浅く緩やかであるのに対し、引用意匠では2個で、深く明確であるという差異がある点、及び折り曲げ部である上方の凹円弧部の凹部が、本願意匠では浅いのに対し、引用意匠では深いという差異がある点は、看者に対し、本願意匠における縁辺部の5個の小円弧状部(峰)の繋がり方が引用意匠より緩やかで連続的な印象を与え、上方の凹円弧部の凹部が浅いこととあいまって、全体として丸みを帯びたややふっくらとした美感を呈しており、他方、引用意匠における縁辺部の3個の小円弧状部(峰)はそれぞれが大きく、2個の谷部分が深いため、それぞれの小円弧状部を明瞭に看取することができ、上方の凹円弧部の凹部が深いこととあいまって、全体として本願意匠よりやや細くシャープな印象を与え、3枚のクローバの葉が1つにまとめられたような美感を呈している。
以上のように、本願意匠と引用意匠とは、基本的構成態様に共通点があるものの、具体的な形状の差異点から看者に与える印象を異にし、美感が同一であるとはいえず、この美感の差異は、両意匠の共通感に埋没する微弱なものとはいい難く、むしろ共通点を凌駕するものと認めることができる。
また、引用意匠には、重合部の縁辺部の端に細幅の縁取りがあり、重合部下方の小円弧状中央に横長長方形のポケット部を設けているのに対し、本願意匠にはこれらがないという差異がある点も、部分的な差異ではあるが、看者に与える印象に影響を及ぼしており、殊に引用意匠の縁辺部の縁取りは3個の小円弧状部を際立たせる一要素となっている。
(ウ)したがって、本願意匠と引用意匠との共通点及び差異点を総合して対比するに、両意匠は、共通する基本的な特徴点はあるとはいえ、それぞれ別個の美感を呈しており、類似するものと判断することはできない。
以上によれば、本願意匠と引用意匠は類似するものとはいえないから、両意匠を類似するものとした審決の判断は誤っており、原告取消事由は結論において理由がある。
4.当審の判断
上記判決を受けて、当審においてさらに審理した結果、本願の意匠については他に拒絶の理由を発見しない。
5.むすび
したがって、上記判決は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当審を拘束するものであり、同判決の主文及び理由に基づき、本願意匠は、原審において引用した意匠に類似せず、意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当するものであり、他に拒絶の理由を発見しないから、意匠登録を受けることができるものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 1999-01-25 
結審通知日 1999-02-09 
審決日 1999-02-25 
出願番号 意願平6-27299 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (C4)
最終処分 成立  
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 市村 節子
瀬尾 和子
松原 至
伊勢 孝俊
登録日 2000-09-08 
登録番号 意匠登録第1090512号(D1090512) 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 
代理人 青木 博通 
代理人 足立 泉 

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