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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない F4 |
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管理番号 | 1036764 |
審判番号 | 無効2000-35416 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2001-06-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-07-28 |
確定日 | 2001-02-16 |
意匠に係る物品 | 包装用袋 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1022448号「包装用袋」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1、請求の趣旨及び理由 請求人は、「登録第1022448号の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として大要以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証を提出した。 登録第1022448号意匠(以下、「本件登録意匠」という)は、出願前頒布された刊行物である実開昭61-150743公報記載の意匠(甲第1号証)と類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録が受けることができないものであるから、同法第48条第1項第1号の規定により無効とすべきである。 すなわち、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠(以下、「甲号意匠」という)と、基本形状において、底部をシールし、上端を開口した縦長方形状の袋体の下部を略逆台形状に形成し、袋体の上部に下部と同一形状の切り欠き部を形成している点が共通し、この点は、全体の構成に関するものであって、看者の注意を惹き両意匠の類否を左右する主要部と認められる。他方、シール部の位置と形状、切り込み及びまち部の有無という点において差異が認められるが、この点は、全体として観察すると部分的な変形であって、これが全体に影響を与え看者に別異の印象を与えるほどのものとは認められない。 第2、答弁の趣旨及び理由 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と答弁し、その理由として大要以下のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証を提出した。 すなわち、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においては、筒体の上端に略逆台形状の切り欠きを設けて、その両側に突出状に残る部分を結縛用の提げ手片としている点が共通するが、 イ、袋体の両側辺につき、引用意匠は谷山状を呈するマチ部を有するのに対して、本件登録意匠は、それを有しないものである点、 ロ、袋本体形状につき、引用意匠は幅方向両端からそれぞれ45度傾斜しその傾斜端が水平状に連なる略逆台形状シールからなる底を有し、略逆台形状底部付き縦長形状の袋体であるのに対し、本件登録意匠は下端を水平直線状にシールして、水平底とした縦長略長方形状の袋体である点、 ハ、本件登録意匠は、水平直線状の底シール線より下方を略逆台形状に突出させて、前後2片からなる手掛け片とし、かつその手掛け片の略中央に倒C字状の切り込みを配しているのに対して、引用意匠は、下端の略逆台形状シール線より下方には何も突出させていない点、の差異点が外観上目立つ部分の差異をなし、看者に両意匠の差異感を強く印象づける。 第3、当審の判断 1、本件登録意匠について 本件登録意匠は、平成8年2月5日に意匠登録出願をし、平成10年7月31日に意匠権の設定の登録がされたものであり、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「包装用袋」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとしたものである。 外周面に継ぎ目のない筒状体を左右にマチを設けず正面と背面の前後2面の連続からなる扁平状とし、その筒状体の下部を左右辺に対して直交する水平直線上で溶着してとじ合わせ、そのとじ合わせ線の全幅下方側に略逆台形状の前後同形同大2枚からなる突出片を残して切りそろえ、その突出片中央に略倒扁平C字状の切れ目を設けて、差し込み口付きの持ち手片を形成し、筒状体の上部全幅を、下部と同形同大の略逆台形状に切り欠き、左右両端に対称状に直角三角形の延設片状に結縛片を形成している態様のものである。 2、甲号意匠について 甲号意匠は、本件登録意匠の出願日前に国内において頒布された刊行物である公開実用新案公報に記載された実開昭61-150743号の縛り手付きプラスチックフィルム製連続袋の意匠であって、別紙第2に示すとおりとしたものである。 公報記載の内容から、甲号意匠は、「プラスチックフィルムの扁平チューブ帯の両側縁が内側にガゼット折り込みされ、、所定間隔を置いて横断方向にシール部の近傍にそれぞれ全幅にわたり、ミシン目状の切目が設けてある連続袋において、前記シール部及び切目は、ガゼットのない中央部においては連続袋の長さ方向に直角であり前記ガゼット折込部においては、各袋の口縁となる方向に45度傾斜して一連に形成してある縛り手つき角底プラスチック製連続袋。」、「ガゼット折り込み部のある部分の傾斜シール部14aにおいては、表裏の2枚づつのフィルムのみが溶着され、その中間は非溶着である」旨の記載と図面全趣旨から、甲号意匠は、 外周面に継ぎ目のない筒状体(プラスチックフィルムの扁平チューブ帯)の左右両側で左右同幅に内側に向かって筒状体全長を折り込みマチ部を形成して扁平状とし、その下部をマチ部がない中央部においては長さ方向に直交する水平直線上で、その左右のマチ部においては、左右方向に45度の傾斜直線上で溶着してとじ合わせ、その溶着線に沿って直下を切断し、筒状体の上部全幅を、下部と同形同大の略逆台形状に切り欠き、左右両端に対称状に直角三角形の延設片状に結縛片を形成している態様のものである。 包装収納時、底面部を横長方形状とする略横長方形状の角筒体状に現れるもので、上部四隅角部左右前後に三角片状の結縛片を有するもので、底面部下方に垂下片を有しないものである。 3、本件登録意匠と甲号意匠の類否判断 本件登録意匠と甲号意匠とを比較すると、両者は、意匠に係る物品が一致し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。 両意匠は、外周面に継ぎ目のない筒状体(プラスチックフィルムの扁平チューブ帯)の下部を溶着とじ合わせ、扁平にした状態の正背面部が、上辺及び下辺の外周輪郭線を同形同大の略逆台形状とし、三角形状の結縛片を有している点は、共通している。 しかし、それは、扁平にした状態での、正面図及び背面図の外周輪郭のみを比較した場合であって、包装収納時においては、以下のとおりの差異が認められる。 すなわち(1)本件登録意匠は、扁平時、筒状体の左右辺側にマチ部(折り込み部)を有さないのに対して、甲号意匠は、内側にマチ部(折り込み部)を有しているものである点、 (2)本件登録意匠は、下辺側を左右両辺に対して直交する水平直線上で溶着とじ合わせて、底部を形成しているもので、水平面状の底部は存在せず、底部の左右幅全長に略逆台形状の前後同形同大の、中央に倒逆C字状の切り込みを設けた二片が密接状に垂下して持ち手を形成しているのに対して、甲号意匠は、マチ部のない中央部においては袋の長さ方向に直交する水平直線上、その左右のマチ部においては左右方向に45度の傾斜直線上で溶着とじ合わせ、その溶着線に沿って切断したもので、包装収納時には底面部が横長方形状の水平面状に現れ、その底面部前後中央に、溶着とじ合わせ線が、左右端でY字状に外方に広がる線状に現れ、底面部に垂下片を有しない点、 (3)結縛片において、本件登録意匠は、四隅角部に各一本計四本同形同大の三角形の延設片を左右対称、前後対称に設けているのに対して、甲号意匠は、左右両端に各一本計二本同形同大の三角形の延設片を左右対称に設けている点、が認められる。 そこで、上記の共通点、差異点のそれぞれが類否判断に及ぼす影響について検討するに、 差異点(1)の点は、扁平状態においては、正面及び背面側に現れないため、両意匠の類似感をもたらす要因ではあるが、包装収納時の立体状態においては、甲号意匠は、底面部を横長方形状の水平面状に拡開し、折り込まれたマチ部を広げた場合、すなわち外周面を全開した場合、外周面は正背面及び左右側面の4面と底面からなる略直方体形状を形成し、マチ部は広げられて左右側面を形成するもので、そのマチ部の有無の差異が両意匠の類否判断にもたらす影響は、非常に大きいものである。 差異点(2)の点は、甲号意匠は、その底面部を、底部寄りの左右に折り込まれたマチ部が左右辺側に三角形に現れ、正背面側の台形状の延長面と水平面上に繋ぎ合わさって横長方形状の底面部を形成するのに対して、本件登録意匠は、明確な底面部を形成しない、逆台形状の差し込み口付き持ち手片を垂下するものであって、両意匠に、包装収納時、甲号意匠は、略直方体形状の袋、本件登録意匠は、正背面二枚でなる扁平縦長方形状で下辺に差し込み口付き持ち手片を有する袋という、全く別異の印象をもたらすもので、両意匠の類否判断に与える影響は、非常に大きいものである。 差異点(3)の点は、結縛の方法、提げ手とする場合の態様においても両意匠は大きく異なることになり、その差異が類否判断に与える影響は非常に大きい。 一方、共通点は、両意匠を扁平にした状態で、正面図及び背面図としての図面上に現れる外周輪郭のみであって、類否判断に与える影響は微弱に過ぎない。 以上のとおり、差異点(1)乃至(3)が相まって、両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きいものであるのに対して、共通点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響が微弱である以上、差異点が共通点より優っており、両意匠は類似しないものと言わざるを得ない。 4,結び 以上のとおり、本件登録意匠は、甲号意匠に類似するものと言えないから、請求人の提出した証拠を以て、意匠法第3条第1項第3号に該当すると言うことはできないから、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2000-12-07 |
結審通知日 | 2000-12-19 |
審決日 | 2001-01-05 |
出願番号 | 意願平8-2492 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Y
(F4)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
山田 啓治 |
特許庁審判官 |
藤 正明 秋間 哲子 |
登録日 | 1998-07-31 |
登録番号 | 意匠登録第1022448号(D1022448) |
代理人 | 平田 義則 |
代理人 | 黒田 泰弘 |