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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) C7
管理番号 1036913 
判定請求番号 判定2000-60127
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2000-09-13 
確定日 2001-03-28 
意匠に係る物品 墓前花立筒 
事件の表示 上記当事者間の登録第0904734号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「墓前花立筒」の意匠は、登録第0904734号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、「イ号図面に示す墓前花立筒(以下「イ号意匠」という)は、登録904734号意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第6号証の書証及びイ号物件(検甲第1号証)を提出した。
1.本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)両意匠の共通点
(A)両意匠は、意匠に係る物品が「墓前花立て」で一致している。
(B)基本的構成態様において、花立て部をやや径大で上面を開口した略円筒状とし、その底面中央に垂直状に花立て部よりかなり径小で縦長の略円筒状の突き立て部を接合、垂設形成している。
(C)具体的構成態様において、花立て部は開口径と円筒状縦の長さがほぼ同じで開口部外縁を細い玉縁状に形成し、突き立て部は花立て部に比べ、その径が略1/3弱で縦の長さをやや短目に形成している。
(2)両意匠の差異点
(a)花立て部上方側面に本件登録意匠は上方円周方向に等間隔2本の細い凹状溝を施しているが、イ号意匠にはなく平滑面を呈している。
(b)突き立て部において、本件登録意匠は下方に徐々にすぼまり下端部を丸く形成しているが、イ号意匠では上下がほぼ同径で下端を開口している。
(c)花用支持具(仕切枠)は、本件登録意匠が角状筒を呈しているが、イ号意匠では井桁状に板状体を組合せ形成している。
(d)花立て部と突き立て部を接合した内側態様において、本件登録意匠は相互に連通しているが、イ号意匠で花立て部底面で遮蔽している。
2.本件登録意匠とイ号意匠の類否
この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、全体形状(外形)の構成態様にあることは明白で、本件登録意匠については他に全く見られない円筒状外形を有しシンプルな構成態様を呈しており、墓石の既存の花立て溝に突き立て部をそのまま装着し使用する等意匠全体の基調を表出している。
そこで、本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を検討するに、
(1)両意匠の共通点は、基本的な構成に係るものであり、特に要部である花立て部と花立て部底面と接合した突き立て部とでなす態様は、花立て部における開口径と円筒状の縦の長さが略同一である点、又、突き立て部は花立て部に比べその径が略1/3弱で縦の長さがやや短い点等は形態全体の構成比に係り、これら共通点が相俟って生じる意匠的効果が形態全体に基調を構成し、看者の最も注意を引くところであるから、両意匠の類否判断を左右するものである。
(2)両意匠の差異点(a)については、この種円筒状の形態において補強等の目的により円周方向に等間隔の細い凹状溝を施すことは、一般的手法であり、この種物品分野においても本件登録意匠と略同様の凹状溝を施した例(意匠登録第673782号意匠等参照)
が普通に見受けられるから格別の態様を表示したものでもないことから、この点の差異が両意匠の類否判断に与える影響は評価できない。
差異点(b)について、突き立て部のみを対比した場合、多少の差異は認められるが、この種物品分野において突き立て部の態様をイ号意匠と略同様に上下を略同径に形成する例(意匠登録第785891号意匠等参照)が普通に知られるから、突き立て部の態様として格別のものではなく、又、突き立て部の下端を開口したか否かは限られた部位の態様についての差異であり形態全体に与える影響が微弱であるから、その差異は軽微に止まり両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。
差異点(c)については、花用の支持具はいずれも花立て部の内側やや下方に設けたものであり限られた方向から見えるその態様も部分的に止まり、更に着脱可能に用いられる点も勘案すると、その差異が形態全体に与える影響は極めて軽微であり、両意匠の類否判断に与える影響は極めて軽微と言わざるを得ない。
差異点(d)については、内部構造上の差異にすぎず形態の外形状に殆ど影響しないものであるから、その差異が両意匠の判断に与える影響は評価できない。
(3)したがって、意匠に係る物品が一致し、形態においても、共通点が相俟って生じる意匠的効果が形態全体に基調を構成し、看者の最も注意を引くところであり、両意匠の類否判断を左右するのに対して、差異点はそのいずれもが微弱な差異に止まることから、両意匠は類似する。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように主張した。
1.本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)両意匠の共通点
(A)両意匠は、意匠に係る物品が「墓前花立て」で一致している。
(B)構成態様において、やや径大で上面で開口した略円筒状の容器の底面中央に、垂直状にかなり径小で縦長の略円筒状の突き立て部(イ号意匠では花立て部)を接合、垂設形成している。
(2)両意匠の差異点
(a)花立て部側面は、イ号意匠は平滑面を呈しているが、本件登録意匠では、上方円周方向に等間隔に2本の凹状溝を施している。
(b)突き立て部(イ号意匠では花立て部)において、イ号意匠では上下が同径で、下端部を開口しているが、本件登録意匠は下方に徐々にすぼまり下端部を丸く形成して密封している。 (c)花用支持具(仕切枠)は、イ号意匠では井桁状に板状体を組合せ、対向する外側二対の仕切板の長さはそれ以外の仕切板よりもやや長く形成しているが、本件登録意匠では角状の筒を呈しており、その長さは同一である。
(d)花立て部と突き立て部を接合した内側態様において、イ号意匠で花立て部底面で遮蔽しているが、本件登録意匠では相互に連通している。
2.本件登録意匠とイ号意匠の類否
(1)両意匠の共通点については、この種の物品は名称のごとく墓石の所定の穴に差込んで使用するもので、おおむね似たような形をしたものが多いことは云うまでもない。
両意匠は共通点に記述した通りの外観を呈しており、外観上は請求人が指摘する通り、基本的にも具体的にもイ号意匠と同じ構成態様になっている。しかし、両意匠の差異点でも示したごとく、その相違はあまりにも明瞭であるがゆえに、「似て非なるもの」という言葉がある通り、かかる共通点が両意匠の類否を左右するものではない。
(2)両意匠の差異点(a)については、請求人と同意見であり異を唱える理由はない。しかし、請求人文面から推測するに「補強等の目的により円周方向に等間隔に細い凹状溝を施すことは・・・・」と述べていることは、通常の使用において考えられる衝撃による変形を防止するためと考えられ、一般的には軟弱な材料を用いて物品を製作する時に考えられた補強方法に過ぎない。
差異点(b)については、突き立て部の形状において上下同形である(イ号意匠)か、下方に徐々にすぼまり下端を丸く形成している(本件登録意匠)かは、主たる相違点ではない。もっとも重要な差異点は、突き立て部の下端を開口している(イ号意匠)か、下端を密封している(本件登録意匠)かが、看過できない事柄である。すなわち、イ号意匠は、墓石用花立てを上部の水溜め部と下部の脚部に区分している。一方、本件登録意匠の突き立て部は、水溜め部と突き立て部を同一の容器とした、花立てとしての形態をしている。突き立て部の下端を開口しているか、そうではないかは、両者の大きな差異点である。
差異点(c)については、イ号意匠では井桁状に板状体を強固に組合せ固定し、外側2対の仕切板の長さ(高さ)を、それ以外の仕切板よりも長く形成している。一方、本件登録意匠では花立て部底面に仕切板が全面にわたって接している。仕切板の下部の態様の差異は明らかな意匠上の相違点である。
差異点(d)については、花立てであるからには水をどの部分に溜めるかが、もっとも重要な用件である。イ号意匠においては、水溜部を上部のポット(壺)のみとし、下部の花立て脚部には、水を入れないために花立て部を独立した容器としている。一方、本件登録意匠では、花立て部と突き立て部とが連通している。このことは明らかな形態の相違であり、上記差異点(b)において述べたとおり、両者の重要な相違点であるといえる。
(3)以上両意匠は意匠に係る物品が墓石用花立てとして一致したものであるが、両意匠の差異点で述べたとおり明らかな差異が認められ、両者の共通点をはるかに凌駕するものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成3年6月6日の意匠登録出願に係り、平成6年5月13日に意匠登録第904734号として意匠権の設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「墓前花立筒」とし、その形態を別紙第一に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付されたイ号図面に記載された意匠であって、判定請求書の記載及び判定請求書に添付したイ号図面及びイ号図面説明書によれば、意匠に係る物品を「墓前花立筒」とし、その形態を別紙第二に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
(1)本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点について
両意匠は、その意匠に係る物品については、共に「墓前花立筒」であって共通し、その形態については、主として次のような共通点及び差異点があると認められる。
まず、両意匠の共通点として、
(A)全体を、上面が開口している有底の円筒体に形成して花立て部とし、その底部下方中央に細い略円筒体を垂設して突き立て部としている点、
(B)花立て部の径と高さの比率を、略同一に形成している点
(C)突き立て部の径を、花立て部の径の略1/3の径とし、突き立て部の縦の長さを花立て部のそれよりやや短めに形成している点、
(D)花立て部の開口縁部を玉縁状に形成している点
が認められる。
一方、両意匠の差異点として、
(a)花立て部の底部及びその中央下方に垂設の突き立て部について、本件登録意匠は、円筒体下方に円筒体とは別体の底部を僅かではあるが上げ底状に嵌合し、その底部中央を細い円筒状のものを下方に向けて漸次径をすぼめ、先端を略半球面状に形成し、該部を花立て部として兼ねるものとしているのに対して、イ号意匠は、側部から平坦な底部にかけて一体成形し、その底部下方に細い円筒体(下方は開口)を単に接合して突き立て部としている点、
(b)花立て部周面下方角部について、本件登録意匠は、外側に僅かに突出する鍔状の縁部を形成しているのに対して、イ号意匠は、側部から底部にかけての角部を角丸に形成してなめらかに連続している点、
(c)花立て部周面について、本件登録意匠は、その上方に2本の細い凹状溝を形成しているのに対して、イ号意匠は、それら凹状溝を形成していない点
(d)花立て部内に配設している花用支持具(仕切枠)について、本件登録意匠は、角筒状のものを配設しているのに対して、イ号意匠は、板状体を井桁状にしたものを配設している点、
が認められる。
(2)本件登録意匠とイ号意匠の類否について
そこで、以上の共通点及び差異点を総合して、本件登録意匠とイ号意匠との類否を意匠全体として検討する。
形態について、共通点である(A)全体を、上面が開口している有底の円筒体に形成して花立て部とし、その底部下方中央に細い略円筒体を垂設して突き立て部としている構成態様は、本件登録意匠の出願前に既に見られる(意匠登録673489号、同696257号参照)ことから、両意匠のもののみの特徴とすることはできず、この共通点が類否判断に大きく影響すると言うことはできない。
(B)花立て部の径と高さの比率を、略同一に形成している点、(C)突き立て部の径を、花立て部の径の略1/3の径とし、突き立て部の縦の長さを花立て部のそれよりやや短めに形成している点及び(D)花立て部の開口縁部を玉縁状に形成している点については、(B)(C)は、この種意匠においては通常の変更の範囲内に止まるもので特徴と言えるまでに至っていないものであり、また、(D)は、例示を挙げるまでもなく本件登録意匠の出願前に既に一般的に見られるところであることから、これら共通点の類否判断に与える影響は未だ微弱なものと言わざるを得ない。
また、それら共通点の態様を総合して相俟った意匠的効果を考慮しても、いまだ特徴と言えるほどの評価をすることができず、類否判断に影響を与えるまでに至っていなものと認められる。
一方、差異点について、(a)花立て部の底部及びその中央下方に垂設の突き立て部については、両意匠の花立て部底部の構成態様の差異はもとより、突き立て部を、本件登録意匠が細い円筒状のものを下方に向けて漸次径をすぼめ先端を球面状に形成して顕著な特徴としているのに対して、イ号意匠が下方を開口とする単なる円筒体に形成している点の差異は、両者の別異感を充分に表出するものである。
さらに、花立て部周面全体についても、(b)花立て部下方角部の差異及び(c)凹状溝自体極めてありふれた態様で特徴はないものの凹状溝の有無の差異を総合的に看た場合、それらが相俟って、本件登録意匠が周面に上下端を含めて多数本の横線が表れる凹凸のある角張った印象を感得させているのに対して、イ号意匠が上端を除く周面が滑らかな平滑垂直面と下方角丸からなるシンプル丸面状の印象を感得させている点の差異は、両者の別異感を充分に表出するものである。
そして、これら差異点は、意匠全体としても主要な部分の差異であるので、類否判断に影響を与えるものと認められる。
そうとすると、これら差異点は、意匠全体として、上記共通点の態様を凌駕し、看者に別異感を抱かせるに十分な両意匠の態様を表出していることから、両意匠は、類似すると言うことはできない。
なお、その他の差異点について、(d)両意匠における花用支持具(仕切枠)は、そもそも墓前花立筒本体の付属的かつ互換性のものであり、さらに、花立て部内部の目立たない部位に配設されることを考慮すると、そのいずれもが類否判断に影響を与えるまでに至らないものと認められる。
4.むすび
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するとすることができない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-03-08 
出願番号 意願平3-16850 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (C7)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤 正明生亀 照恵 
特許庁審判長 山田 啓治
特許庁審判官 秋間 哲子
伊藤 晴子
登録日 1994-05-13 
登録番号 意匠登録第904734号(D904734) 

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