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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L5 |
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管理番号 | 1041678 |
審判番号 | 審判1994-19738 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2001-08-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1994-11-17 |
確定日 | 1997-05-12 |
意匠に係る物品 | よろい戸用羽根材 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第 770577号類似第 3号意匠「よろい戸用羽根材」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第 770577号の類似第 3号鮎の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1. 請求人の申立及び理由 請求人代理人は、結論同旨の審決を求め、その理由として、要旨下記のように主張し、その立証として、甲第1号証乃至甲第6号証、甲第7号証の1及び甲第7号証の2を提出した。 (1)手続きの経緯 本件意匠登録第770577号類似第3号意匠(以下、「本件登録意匠」いう。)は、平成3年10月21日に出願し、意匠に係る物品を「ドア用板材」とする意匠として、平成5年6月14日に設定の登録がなされたものである。 (2)登録無効の理由に関して 本件登録意匠は、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証の1に示すとおり、本件登録意匠の出願日に先行する他人の公知意匠と類似する意匠であり、意匠法第10条第1項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。 ▲1▼本件登録意匠の説明 本件登録意匠は、意匠に係る物品を「ドア用板材」とし、グリル状外観の折戸やドアを構成するために用いられるものである。その形態は、全体形状を、4枚刃の縦引き鋸刃型とし、各刃は、短い水平辺と長い傾斜辺とが鋭角(約75度)に交叉するL宇型をなして、4段の積層状態に連立し、各刃の刃先(L字型の交叉部)及び水平辺と傾斜辺の端部は、それぞれ同一の仮想垂直平面上に揃っている。最上段刃は、傾斜辺の上端部から上向きに、垂立するリブ状の差し込み突起を備え、傾斜辺の上端部から、下向き直角に折れ曲がる鉤状の接地座を有している。2枚の中段刃の水平辺の横端部には、何れも上向き直角に折れ曲がる鉤状の接地座を有している。最下段刃の水平辺の横端部には、横向き「ユ」の字型の下向きに開口する突起受け入れ溝と上向きに垂立する接地座を設けている。 ▲2▼甲号意匠について 本件登録意匠の出願日前、昭和56年10月に協成化学工業株式会社から発行された商品総合カタログ「ダイアロン」(甲第1号証)の第63ページには、コード番号「V6-20」、同じく第73ページには、コード番号「W6-39」、更に第74ページには、コード番号「W6-53」の各断面形状を備えた、本件登録意匠と類似するプラスチック異形押出成型品が記載され、特に、コード番号「V6-20」の意匠(以下、「甲号意匠」という。)と本件登録意匠を対比すると、その形態は、本件登録意匠と酷似するものである。 2.被請求人の答弁 被請求人代理人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、要旨下記のように主張し、その立証として、乙第4号証乃至乙第8号証を提出した。(乙第1号証乃至乙第3号証との表記は、それぞれ参考資料の誤記である。) (1)請求人の主張について 請求人代理人主張の「手続の経緯」は認めるが、「登録無効の理由」は、否認する。 (2)請求人の証拠について 甲第1号証乃至甲第4号証の成立は認める。 (3)被請求人の主張 ▲1▼ 本意匠の登録出願後で類似意匠登録出願前に当該類似意匠に類似する第三の公知意匠について 請求人代理人は、本件登録意匠は、その登録出願前に頒布された刊行物(甲第1号証)に記載の他人の公知意匠(甲号意匠)に類似しているから、意匠法第10条第1項の規定に違反する旨主張する。 しかしながら、本意匠が意匠登録されていれば、その本意匠の登録出願後で類似意匠登録出願前に当該類似意匠に類似する第三の公知意匠や先願意匠が介在しても、その第三の意匠が本意匠に類似している限り、当該類似意匠の登録を妨げる原因にはならないという解釈が判例にある。 甲第1号証の頒布日については、請求人代理人は、昭和56年10月と主張する。なるほど、甲第1号証の「ごあいさつ」の欄に、昭和56年当時の協成化学工業株式会社取締役社長の挨拶文が掲載されており、その挨拶文の作成日が「昭和56年10月」と記載されているが、この日付と甲第1号証の実際の頒布日とは何の関係もない。実際に頒布されたのは昭和57年1月に入ってからであり(乙第4号証)、甲第1号証は、本意匠の登録出願の出願日である昭和56年12月30日以降に頒布された公知文献である。 したがって、本意匠の意匠権の及ぶ範囲に属し、実施が許されないはずの甲号意匠に、本件登録意匠の登録を阻止する効力を認めることは、意匠権者の保護の強化を目的とする類似意匠制度の趣旨に反することから、甲号意匠の存在は、本件類似意匠登録の何らの妨げとはならず、請求人の主張は失当である。 ▲2▼ 類似意匠登録出願前に当該類似意匠に類似する自己の公知意匠について 甲号意匠は、昭和57年1月から、当該商品総合カタログ(甲第1号証)の発行者である協成化学工業株式会社を通じて販売開始する予定であった被請求人自身の製品であり、他人の意匠ではなく(乙第5号証)、甲号意匠が本件登録意匠に類似していることは、何ら意匠法第10条第1項の要件を欠如させる原因とはならず、この点に関する請求人の主張は失当である。 3.当審の判断 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は、本意匠を意匠登録第770577号とした平成3年10月21日の類似意匠登録出願で、平成5年6月14日に、前記本意匠の意匠登録第770577号の類似第3号の意匠として、類似意匠の意匠権の設定の登録がされたもので、当該意匠登録原簿及びその出願書類全体の記載によれば、意匠に係る物品を「ドア用板材」とし、その形態を別紙第1に示すとおりとしたものである。 (2)甲号意匠 甲号意匠は、真正に成立したと認める協成化学工業株式会社発行の商品総合カタログ「ダイアロン」(甲第1号証)第63ページ所載のコード番号「V6-20」の「特殊異形材」と称する意匠であって、同カタログの記載によれば、その形態を別紙第2に示すとおりとしたものである。 (3)甲号意匠が公知となった日 甲号意匠が掲載されている協成化学工業株式会社発行の商品カタログ「ダイアロン」(甲第1号証)が公知となった日については、請求人代理人及び被請求人代理人の間でその主張に相違があるが、真正に成立したと認める乙第4号証によれば、遅くとも昭和57年1月には、同カタログが頒布されて公知となったことが認められ、これに反する証拠はない。 (4)本件登録意匠と甲号意匠の類否判断 両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても、全体を、薄肉板体で一体に形成した押出材とし、その端面形状(本件登録意匠では右側面図、甲号意匠では反転して90度回転)を、傾斜部と水平部とからなる略「L」の字状部を上下に複数段積み重ねて鋸刃状の態様とした基本的構成態様が共通する。そして、それぞれの略「L」の字状部の屈曲部を一直線上に形成するとともに、傾斜部の頂部と水平部の端部もほぼ一直線上に形成している点、最上段の略「L」の字状部の頂部及び最下段を除く中段の各略「L」の字状部水平部の端部には、それぞれ上向きの垂直片を設けた点、最下段の略「L」の字状部水平部の端部には、略倒「コ」の宇状の溝部を設けた点の具体的態様においても共通している。 一方、略「L」の字状部の段数を、本件登録意匠は、4段としたのに対して、甲号意匠は、3段としている点、そして、仔細にみると、最上段の略「L」の宇状部の頂部には、本件登録意匠は、鉤状の下向きの突出片を設けたのに対して、甲号意匠は、水平な突出片を設けている点、最下段の略「L」の字状部水平部の端部に設けられた溝部の上端には、本件登録意匠は、上向きの垂直片を設けたのに対し、甲号意匠は、垂直片を設けていない点の具体的態様に相違がある。 そこで、これらの共通点と相違点を総合して、両意匠を全体として考察すると、前記共通するとした基本的構成態様及び具体的態様は、両意匠の形態上の特徴を最もよく表すと共に、形態全体の基調を形成するところであり、両意匠の類否を支配する要部をなすところである。 これに対して、相違点についてみると、略「L」の字状部の数の相違については、両意匠に共通する、全体を、薄肉板体で一体に形成した押出材とし、その端面形状を、傾斜部と水平部とからなる略「L」の字状部を複数段積み重ねて鋸刃状の態様とし、それぞれの略「L」の字状部の屈曲部を、一直線上に形成するとともに、傾斜部の頂部と水平部の端部もほぼ一直線上に形成し、最上段の略「L」の字状部頂部に上向きの垂直片を設け、最下段の略「L」の字状部水平部の端部に、略倒「コ」の字状の溝部を設けた態様に包含される微細な相違にすぎない。そして、その他の相違についても、いずれも看者が、その部位を取り出して注視した時に、初めて認識される程度の細部の相違にすぎず、前記共通するとした基本的構成態様及び具体的態様の中に包摂される微細な相違にすぎない。 してみると、前記の相違点は、いずれも微細あるいは細部の相違であって、類否を左右する要素としては微弱なものであり、これらを総合しても、前記共通するとした形態上の特徴を凌駕して、本件登録意匠を特徴づけるものとすることができない。 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても、その特徴を最もよく表すと共に基調を形成する要部が共通するものであり、本件登録意匠は、全体として、甲号意匠に類似するというほかない。 (5)被請求人の主張について 被請求人代理人は、▲1▼本意匠が意匠登録されていれば、その本意匠の登録出願後で類似意匠登録出願前に当該類似意匠に類似する第三の公知意匠や先願意匠が介在しても、その第三の意匠が本意匠に類似している限り、当該類似意匠の登録を妨げる原因にはならない。▲2▼甲号意匠は、被請求人自身の意匠であり、甲号意匠が本件登録意匠に類似していることは、何ら意匠法第10条第1項の要件を欠如させる原因とはならない旨、主張する。 そこで、類似意匠登録出願が、類似意匠として意匠登録を受けることができる点について審案するに、類似意匠の意匠登録出願に係る意匠が、その出願の日より先に頒布された刊行物に記載された意匠(以下、「先行公知意匠」という。)と類似する場合には、先行公知意匠が本意匠に類似するか否か、また、その先行公知意匠が本意匠の意匠権者自身の意匠(同一の意匠を除く)かどうかに関わらず、当該類似意匠の意匠登録出願は、先行公知意匠の存在を原因として、当然に意匠法第10条第1項に規定する「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」には該当しないこととなるものである。 なぜならば、類似意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠に類似する当該類似意匠は、刊行物記載の意匠が自己の創作した意匠かどうかに関わらず、意匠法第3条第1項の規定によって意匠登録を受けることができず、その例外としては、意匠法第4条(意匠の新規性の喪失の例外)の規定に基づく類似意匠登録出願の手続きを行ったときだけであることから、「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」とは、自己の登録意匠に類似する意匠であって、その出願の日に先行する公知意匠(自己の公知意匠か否かに関わらない。ただし、自己の登録意匠と同一と認められる自己の公知意匠は、除く。)には、類似しない意匠と解すべきだからである。そして、意匠法が類似意匠の意匠登録出願の時期等について、本意匠の意匠権者を優遇する特別の規定を設けているものでもない。 また、類似意匠登録の意匠が、意匠登録を受けられない前記の原因があることをもって、当該意匠について意匠登録を無効とするとしても、本意匠の意匠権の範囲については、そのことをもって影響するものではないから、本意匠の意匠権保護強化を目的とする類似意匠登録制度の趣旨を損なうものではない。付言すれば、この場合に、本意匠の意匠権者は、類似意匠の意匠登録が存在しないことになるが、それは、当該類似意匠登録出願の出願日が、類似する先行公知意匠の公知時期に遅れたためであって、前記のとおり、意匠法が類似意匠の意匠登録出願の時期等について、本意匠の意匠権者を優遇する特別の規定を設けていない以上、やむを得ないものであり、被請求人代理人の主張は、採用することができない。 (6)結び 以上のとおりであるから、本件登録意匠は、その余の証拠及び主張について、取り上げて審理するまでもなく、その意匠に係る出願前に、日本国内において頒布された刊行物に記載された甲号意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当する意匠であって、同法第10条第1項に規定する「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」に該当せず、同法同条同項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定によって、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
【図面】 |
審理終結日 | 1997-01-27 |
結審通知日 | 1997-02-18 |
審決日 | 1997-02-19 |
出願番号 | 意願平3-31927 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(L5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 西本 幸男 |
特許庁審判長 |
吉山 保祐 |
特許庁審判官 |
川崎 芳孝 伊勢 孝俊 |
登録日 | 1993-06-14 |
登録番号 | 意匠登録第770577号の類似意匠登録第3号(D770577/3) |
代理人 | 山下 賢二 |
代理人 | 戸川 公二 |