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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) H4 |
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管理番号 | 1041682 |
判定請求番号 | 判定2000-60118 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2001-08-31 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2000-08-25 |
確定日 | 2001-06-04 |
意匠に係る物品 | 光磁気ディスクカートリッジ |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1048472号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号物件及びその説明書に示す「光磁気ディスクカートリッジ」の意匠は、登録第1048472号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及び理由 請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠として、甲第1号証、検甲第1号証、検甲第2号証を提出した。 すなわち、本件判定請求に係る意匠登録第1048472号「光磁気ディスクカートリッジ」の意匠(甲第1号証、以下「本件登録意匠」という)の意匠権者は請求人であり、イ号物件(検甲第1号証)は、請求人自身の製造になる、被請求人向けのOEM製品である「光磁気ディスクカートリッジ」であって、被請求人の販売になる製品である。 そこで、本件登録意匠とイ号意匠との類否を考察すると、(1)正面シェル表面において、周辺斜線模様の各線の幅広間隙部分に、シボ加工を行っているか否かの点で、異にするものであるが、シボは、基材表面の質に関するものであり、手指による指紋防止や、技術的な欠陥の出易い部分を、隠蔽するためなどの目的で、技術的に適宜用いられる手法であり、シボを施すとやや半透明となるが、シースルーの意匠概念上、内部が視認できる事に変りはないものであり、(2)正面シェルのシャッター板摺動部の横線模様を施した部分に、全体シボ加工を行っているか否かの点で、異にするものであるが、斜線部に施したシボは、斜線に沿ったものであり、斜線模様自体の視感に変化はなく、横線部のシボも、横線模様の範囲に施され、横線模様自体の視感に変化はないものであり、(3)正面シェル中心部の内面に、小円形状のシボ加工を行っているか否かの点で、異にするものであるが、中心部の小円形状のシボは、内部に視認されるディスクのハブ周辺の各円形の線、又は、正面シェル内面に構成されており、外部から視認される略3/4円形の壁の円形線に沿って施されているため、特別な模様として配置したものではなく、シボの存在による視感の差は極少である。検甲第2号証から明らかなように、正面シェル内面には、技術的要因によるシボ加工があるため、外面側の小円形シボは無くても、内面のシボが透視されるのであるから、外面側のシボは有っても無くても視感上ほぼ同じであり、(4)正面シェル中央部の外面に、小円形状のシボ加工を行っているか否かの点で、異にするものであるが、イ号意匠では、シボを施す事によっても、全体の透明性が失われているものでは無く、何ら、本件登録意匠の要部を、変更したものには当たらないものであり、(5)背面シェルの表面のほぼ全域に、シボ加工を行っているか否かの点で、異にするものであるが、シボ加工を一部に施した点以外の全体構造や模様は、本件登録意匠と同じであり、その差の意匠全体に及ぼす影響は、微弱なものである。 したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 第2.被請求人の答弁及び理由 被請求人は、請求人の申し立て及び理由に対して、何も答弁していない。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成7年10月13日に意匠登録出願され、その後平成11年6月4日に、意匠権の設定の登録が成された、意匠に係る物品を「光磁気ディスクカートリッジ」とする、意匠登録第1048472号の願書の記載及び願書に添付された図面の記載のとおりの意匠である(本件判定に添付の別紙第1参照)。 2.イ号意匠 イ号意匠は、判定請求書に記載された、意匠に係る物品を「光磁気ディスクカートリッジ」とするイ号意匠の説明、並びに、判定請求書に添付された、イ号物件(検甲第1号証)により表されたとおりの意匠である(本件判定に添付の別紙第2参照)。 3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討 両意匠は、ディスクを内蔵するカートリッジであって、意匠に係る物品が共通し、形態については、以下に示す共通点及び差異点がある。 すなわち、両意匠は、2枚の薄い板状体の間に、極薄い円盤状のディスクを挟んで、正面視略正方形状の扁平箱体に形成し、その前面と後面に、極薄い縦長矩形板状のシャッターを設けて、カートリッジとした全体の基本的構成態様が共通し、各部の具体的構成態様についても、(1)カートリッジのディスクとシャッター以外の略全体を、略透明とし、(2)シャッターは、前面側を後面側より稍短くした側面視倒略コの字状に形成して、側方に滑動自在なものとし、(3)カートリッジ前面の大きな略円形状に区画した外側略全面に、右上がりの斜縞模様を等間隔に表し、(4)カートリッジのシャッターが滑動自在な部分は、前面側を稍横長矩形状に、後面側を稍縦長矩形状とする極浅い凹面に形成して、それぞれ前面滑動部と後面滑動部とし、(5)前面滑動部の大きな略円形状に区画した外側の略三角形状部分に、横線模様を等間隔に表し、(6)カートリッジ前面略中央から下面を通った後面下部まで、周囲に余地を残して、前面側を稍横長矩形状に、後面側を横長矩形状とする極浅い凹面とした点が共通する。 一方、各部の具体的構成態様のうち、(イ)カートリッジ前面の斜縞模様の幅広間隙部分について、イ号意匠は、シボを施しているのに対し、本件登録意匠は、シボを施していない点、(ロ)前面滑動部の略三角形状部分について、イ号意匠は、シボを施しているのに対し、本件登録意匠は、シボを施していない点、(ハ)カートリッジ前面の中央部分について、イ号意匠は、小さな円形状にシボを施しているのに対し、本件登録意匠は、それらを設けていない点、(ニ)カートリッジ後面について、イ号意匠は、略全面にシボを施しているのに対し、本件登録意匠は、シボを施していない点に差異がある。 そこで、両意匠の共通点及び差異点について、両意匠を全体として検討する。 先ず、共通するとした、全体の基本的構成態様については、従来より、例を挙げるまでもなく、既に一般化している構成態様であるから、本件登録意匠独自の特徴とは言い難い。さらに、各部の具体的構成態様のうち、(1)のカートリッジのディスクとシャッター以外の略全体を、略透明とした点については、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、例えば、意匠登録第894528号の類似1号の意匠、株式会社アスキーより1995年3月1日に発行された刊行物、「月刊アスキー」の資料請求No.149と記載された広告頁に、写真版で表された「シースルーカラーMO」の意匠及びそれに関連する記載に見受けられるように、既に一般化しており、本件登録意匠独自の特徴とは言い難い。(2)のシャッターは、前面側を後面側より短くした側面視倒略コの字状に形成して、側方に滑動自在なものとした点、及び、(4)のカートリッジのシャッターが滑動自在な部分は、前面側を稍横長矩形状に、後面側を稍縦長矩形状とする極浅い凹面に形成して、それぞれ前面滑動部と後面滑動部とした点については、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、例えば、意匠登録第863733号の意匠、意匠登録第873214号の類似3号の意匠、意匠登録第873659号の意匠に見受けられるように、本件登録意匠独自の特徴とは言い難い。(3)のカートリッジ前面の大きな略円形状に区画した外側略全面に、右上がりの斜縞模様を等間隔に表した点については、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、例えば、意匠登録第894528号の意匠、意匠登録第914252号の意匠にも見受けられるように、本件登録意匠独自の特徴とは言い難い。(6)のカートリッジ前面略中央から下面を通った後面下部まで、周囲に余地を残して、前面側を稍横長矩形状に、後面側を横長矩形状とする極浅い凹面とした点については、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、例えば、意匠登録第635039号の意匠、意匠登録第863733号の意匠に見受けられるように、本件登録意匠独自の特徴とは言い難い。しかしながら、(5)の前面滑動部の略三角形状部分に、横線模様を等間隔に表した点については、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、両意匠の外には、殆ど見受けられない態様であり、本件登録意匠独自の特徴と言うべきである。 次に、差異点とした、(イ)のカートリッジ前面の斜縞模様の幅広間隙部分、(ロ)の前面滑動部の略三角形状部分、(ハ)カートリッジの前面の中央部分、(ニ)のカートリッジ後面の略全面のそれぞれに、イ号意匠が、シボを施している点は、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、例えば、意匠登録第914252号の意匠、住友スリーエム株式会社より1995年3月22日に発行された刊行物、「オーディオ/ビデオ新製品ニュース」カタログに、写真版で表された「MDカートリッジMD-60」の意匠及びそれに関連する記載にも、見受けられるように、使用の目的に応じて適宜用いられる、ありふれた表面加工の手法にすぎず、また、イ号意匠が、(ハ)のカートリッジ前面の中央部分を小さな円形状にシボを施している点は、極普通の円形状で意匠の創作の観点からもそれ程評価できず、機能的にはともかく、何れも形態全体から観れば、前記の両意匠に共通する構成態様の共通感を凌駕して、別異の印象を与えるとは言い難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱と言う外ない。 そうして、両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討すると、両意匠に共通するとした、全体の基本的構成態様、並びに、各部の具体的構成態様のうちの(1)乃至(4)、及び、(6)の共通点とは、何れも本件登録意匠独自の特徴とは言い難いが、本件登録意匠のみの特徴である(5)の前面滑動部の略三角形状部分に、横線模様を等間隔に表した点と相俟って、形態全体の基調を形成するところであり、意匠の類否を左右するに十分な影響を及ぼすと言わざるを得ない。 一方、前記の(イ)乃至(ニ)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、両意匠の醸し出す形態全体の雰囲気を、異にする程の著しい特徴を表出するとは認め難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないと言わざるを得ず、前記の共通点の奏する特徴と基調を凌駕して、類否判断を左右するとは言い難い。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、意匠全体として観察すると、類似すると言う外ない。 第4.むすび イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2001-05-23 |
出願番号 | 意願平7-30740 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(H4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤木 和雄 |
特許庁審判長 |
秋間 哲子 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 伊勢 孝俊 |
登録日 | 1999-06-04 |
登録番号 | 意匠登録第1048472号(D1048472) |