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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) H2
管理番号 1043429 
判定請求番号 判定2001-60039
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2001-03-29 
確定日 2001-07-26 
意匠に係る物品 ゲ―ム機用操作器 
事件の表示 上記当事者間の登録第0952253号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面代用写真及びその説明書に示す「ゲ―ム機用操作器」の意匠は、登録第0952253号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申し立て及び請求の理由
1.請求人は、イ号図面代用写真(甲第2号証)に示す「ゲーム機用操作器」の意匠は、登録第952253号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証乃至甲第24号証を提出した。
2.本件登録意匠
登録第952253号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、意匠に係る物品を「ゲーム機用操作器」とし、その形態の要旨を、次の通りとする(甲第1号証参照)。
A.基本的構成態様
(ア)ハウジングの全体形状が、横長の本体部分と、本体部分の両端から下方に延びる左右一対のアーム部分とからなる逆U字形をなし、(イ)本体部分の正面には、中間部分の両端に円形部が形成され、(ウ)アーム部分は、基端から先端に向かって徐々に細くなり、先端部は半円状をなし、(エ)アーム部分は、基端から先端まで背面側に向かって傾斜して延びており、アーム部分の基端部の背面に凹部が形成され、(オ)本体部分の正面に操作ボタンが設けられている。
B.具体的構成態様
(ア’)本体部分の上面の左右両端部のそれぞれに、上方に突出し、正面視したとき台形である突出部が形成され、(イ’)アーム部分の背面の凹部の形状が、側面視したとき、なだらかな湾曲面で形成され、(ウ’)平面視したとき、本体部分の上面の2つの突出部のそれぞれに、略同じ大きさの2つの四角い操作ボタンが前後に配置されており、各操作ボタンに三角形の記号が付され、(エ’)本体部分の右側円形部の中央に、円形の操作ボタンが4つ設けられ、これら4つの操作ボタンが十字状に配置されており、また、各操作ボタンには、最も上方に位置する操作ボタンから、反時計方向に四角形から順に模様が付され、(オ’)本体部分の左側円形部の中央に、五角形の操作ボタンが4つ設けられ、これら4つの操作ボタンが、全体として十字形をなすように配置され、(カ’)本体部分の中間部分が横方向にまっすぐに延びており、また、中間部分の下方中央部に、四角形および三角形の2つの小さな操作ボタンが横方向に一列に配置され、(キ)ハウジングは不透明である。
3.イ号意匠
イ号意匠(甲第2号証)のゲーム機用操作器は、その形態の要旨を、次のとおりとする。
A.基本的構成態様
(ア)ハウジングの全体形状が、横長の本体部分と、本体部分の両端から下方に延びる左右一対のアーム部分とからなる逆U字形をなし、(イ)本体部分の正面には、中間部分の両端に円形部が形成され、(ウ)アーム部分は、基端から先端に向かって徐々に細くなり、先端部は半円状をなし、(エ)アーム部分は、基端から先端まで背面側に向かって傾斜して延びており、アーム部分の基端部の背面に凹部が形成され、(オ)本体部分の正面に操作ボタンが設けられている。
B.具体的構成態様
(ア’)本体部分の上面の左右両端部のそれぞれに、上方に突出し、正面視したとき台形である突出部が形成され、(イ’)アーム部分の背面の凹部の形状が、側面視したとき、なだらかな湾曲面で形成され、(ウ’)平面視したとき、本体部分の上面の2つの突出部のそれぞれに、2つの四角い操作ボタンが前後に配置されており、また、各操作ボタンに数字が付され、(エ’)右側円形部の中央に、円形の操作ボタンが4つ設けられ、これら4つの操作ボタンが十字状に配置され、また、各操作ボタンには、最も下方に位置する操作ボタンから、反時計方向に、数字が付され、(オ’)左側円形部に、円形の操作ボタンが1つ設けられ、(カ’)本体部分の中間部分の中央に背面側に突出した台形部が形成され、また、台形部の正面左側部分には、3本の平行な細溝が形成され、また、中間部分の下方中央部に、四角形並びに三角形の3つの操作ボタンおよび円形の切り替えスイッチが配置され、(キ’)本体部分とアーム部分とが交わる内側角部のそれぞれに、きのこ形の操作ボタンが、本体部分の正面より正面側に突出して設けられ、また、操作ボタンの周りのハウジングの円筒状部分に、5本の細溝が形成されている。
4.本件登録意匠とイ号意匠との比較
A.両意匠の共通点
a.両意匠は、意匠に係る物品が「ゲーム機用操作器」で一致している。
b.また、両意匠は、下記の点で基本的構成態様が共通している。
(ア)ハウジングの全体形状が、横長の本体部分と、本体部分の両端から下方に延びる左右一対のアーム部分とからなる逆U字形をなしている点。
(イ)本体部分の正面には、中間部分の両端に円形部が形成されている点。
(ウ)アーム部分は、基端から先端に向かって徐々に細くなり、先端部は半円状をなしている点。
(エ)アーム部分は、基端から先端まで背面側に向かって傾斜して延びており、アーム部分の基端部の背面に凹部が形成されている点。
(オ)本体部分の正面に操作ボタンが配置されている点。
また、両意匠は、下記の点で具体的構成態様が共通している。
(ア’)本体部分の上面の左右両端部のそれぞれに、上方に突出し、正面視したとき台形である突出部が形成されている点。
(イ’)アーム部分の背面の凹部の形状が、側面視したとき、なだらかな湾曲面で形成されている点。
(ウ’)平面視したとき、本体部分の上面の2つの突出部のそれぞれに、2つの四角い操作ボタンが前後に配置されている点。
(エ’)本体部分の右側円形部の中央に、円形の操作ボタンが4つ設けられ、これら4つの操作ボタンが十字状に配置されている点。
B.両意匠の差異点
具体的構成態様においては、以下の点で差異が認められる。
a.具体的構成態様(ウ’)に関し、本件登録意匠においては、操作ボタンに三角形の記号が付されているのに対して、イ号意匠においては、各操作ボタンに数字が付されている点。
b.具体的構成態様(エ’)に関し、本件登録意匠においては、右側円形部の中央に設けられた4つの円形の操作ボタンに、最も上方に位置する操作ボタンから、反時計方向に、四角形から順に記号が付されているのに対して、イ号意匠においては、操作ボタンに文字が付されている点。
c.具体的構成態様(オ’)において、本件登録意匠においては、左側円形部の中央に、五角形の操作ボタンが4つ設けられ、これら4つの操作ボタンが、全体として十字形をなすように配置されているのに対して、イ号意匠においては、左側円形部に、円形の操作ボタンが1つ設けられている点。
d.具体的構成態様(カ’)において、本件登録意匠においては、中間部分が全体的に横方向にまっすぐ延びているのに対して、イ号意匠においては、本体部分の中間部分の中央に、台形部が形成されている点。また、本件登録意匠においては、本体部分の中間部分の下方中央部に、四角形および三角形の2つの小さな操作ボタンが横方向に一列に配置されているのに対して、イ号意匠においては、中間部分に四角形並びに三角形の3つの操作ボタンおよび円形の切替スイッチが配置されている点。
e.具体的構成態様(キ’)に関し、イ号意匠においては、本体部分とアーム部分とが交わる内側角部のそれぞれに、きのこ形の操作ボタンが設けられているのに対して、本件登録意匠においては、そのような操作ボタンは設けられていない点。また、イ号意匠においては、操作ボタンの周りのハウジングの円筒状部分に5本の平行な細溝が形成されているのに対して、本件登録意匠においては、そのようになっていない点。
5.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属することの説明
A.本件登録意匠に関する先行周辺意匠
本件登録意匠の出願前には、添付の甲第17号証乃至第20号証の公知意匠が存在する。
B.類似意匠の参酌
本件登録意匠と類似意匠との構成を比較すると、上記基本的構成態様(ア)乃至(オ)は共通している。一方、上記貝体的構成態様(ア’)乃至(カ’)においては差異が認められる。
C.本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、
(i)両意匠は、基本的構成態様、すなわち、
(ア)ハウジングの全体形状が、横長の本体部分と、本体部分の両端から下方に延びる左右一対のアーム部分とからなる逆U字形をなしており、(イ)本体部分の正面には、中間部分の両端に円形部が形成されており、(ウ)アーム部分は、基端から先端に向かって徐々に細くなり、先端部は半円状をなしており、(エ)アーム部分は、基端から先端まで背面側に向かって傾斜して延びており、アーム部分の基端部の背面に凹部が形成されており、(オ)本体部分の正面に操作ボタンが設けられている点で共通している。また、両意匠は、具体的構成態様、すなわち、(ア’)本体部分の上面の左右両端部のそれぞれに、上方に突出し、正面視したとき台形である突出部が形成されており、(イ’)アーム部分の背面の凹部の形状が、側面視したとき、なだらかな湾曲面で形成されており、(ウ’)本体部分の上面の2つの突出部のそれぞれの上面に、2つの四角い操作ボタンが前後に配置されており、各操作ボタンに記号が付されており、(エ’)本体部分の右側円形部の中央に、円形の操作ボタンが4つ設けられ、これら4つの操作ボタンが十字状に配置されており、また、各操作ボタンには記号が付されている点で共通している。
上記基本的構成態様は、両意匠の形態の骨格的要素となり、意匠全体の基調を決定づけ、また、具体的構成態様(ア’)乃至(エ’)も、基本的構成態様と相俟って、両意匠を特徴づけ、これらが類否判断に与える影響は大きい。
一方、両意匠の上記具体的構成態様(ウ’)に関する差異点、すなわち、本件登録意匠の操作ボタンに付された三角形の記号、および、イ号意匠の操作ボタンに付された数字は、ごく一般的な記号または情報伝達のための文字であるから意匠を構成せず、類否判断において影響を与えない。
また、具体的構成態様(エ’)における、操作ボタンに付された記号および文字の差異に関しては、ごく一般的な記号または情報伝達のためのものであるので、意匠を構成するとはいえず、類否判断において影響を与えない。
更に、具体的構成態様(オ’)における差異は、左側円形部の操作ボタンの差異であるが、本件登録意匠のように、略五角形状の操作ボタンを十字状に寄せて配列したものは、本件登録意匠の出願前に公知であったリモコンの操作ボタン(例えば、甲第17号証、1992年10月31日(株)ソディック発行のカタログ「ワイヤ放電加工機AAseries MARK20、3頁所載のリモコンの操作ボタン参照)に見られるので、本件登録意匠の形態上の特徴ではない。一方、イ号意匠における円形の操作ボタンは、本件登録意匠の出願前に公知であった操作ボタン(例えば、甲第18号証、1989年8月31月Geyer‐McAllister Publications,Inc.発行の「Playthings」8号87巻57頁所載のおもちゃ用リモートコントローラーの操作ボタン、および、甲第19号証1993年9月16日(株)ワールドフォトプレス発行の「モノマガジン」18号12巻85頁所載のゲーム器用リモコンの操作ボタン参照)に、また、類似意匠9に見られるように、その差異は操作部の形状のわずかな変更の範囲にとどまるものであり、類否判断における影響は小さい。また、操作ボタンの周りのハウジングの円筒状部分に平行な細溝が形成されている点は、わずかな変更の範囲にとどまるものであり、類否判断における影響は小さい。
更に、具体的構成態様(カ’)に関し、本件登録意匠においては、中間部分が全体的に平坦であるのに対して、イ号意匠においては、中間部分に台形部が形成されているが、台形部は、意匠の骨格をなす上記基本的構成態様に対して全体に占める割合が小さく、この差異が類否判断に与える影響は微弱であるといえる。また、本件登録意匠とイ号意匠との間の本体部分の中間部分の操作ボタンの差異は、操作部の形状および数のわずかな変更の範囲にとどまるものであり、類否判断における影響は小さい。
更に、具体的構成態様(ク’)における差異、すなわち、イ号意匠においては、きのこ形の操作ボタンが設けられているのに対して、本件登録意匠にはそのような操作ボタンがない点は、公知意匠(例えば、甲第17号証乃至第19号証)を参照してわかるように、きのこ形操作ボタンがない態様はごく-般的である。一方、本件登録意匠の出願前に公知のコントローラー(例えば、甲第20号証、The H.K.Electronics Association発行1993年11月22日特許庁受入の「HONGKONG ELECTRONICS News OCTOBER/NOVEMBER 1993」A-1頁所載のゲーム器用リモートコントローラー参照)に、また、類似意匠11乃至14に見られるように、その差異は、操作部の形状のわずかな変更にとどまるものであり、頬否判断における影響は小さい。
(ii)以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に観察すると、両意匠は、特に、意匠全体の基調を決定づける基本的構成態様が共通しているのに対して、両意匠の上記差異点は部分的な差異にとどまり、共通する部分以上に看者に印象づける大きな特徴をなしているものと認めることはできず、差異点が共通点を凌駕しているということはできない。そのため、意匠全体から感得される美観も、本件意匠とイ号意匠とで共通しているということができる。
6.むすび
以上に述べた通り、イ号意匠は、本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。
第2.被請求人の対応
判定請求書の副本を被請求人に送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても何らの応答がなかったものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠公報、意匠登録原簿、願書及び願書に添付した図面によれば、平成6年4月11日の出願に係り、平成8年2月13日に登録第952253号として意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「ゲーム機用操作器」とし、形態を別紙第1に示すとおりとしたものである。
すなわち、基本的な構成態様について、略横長箱体状の本体部の左右に平面視略円形状の操作部を形成し、左右の操作部の前側をそれぞれ前方に大きく突出させて、平面視略U字状のアーム部を左右対称状に形成し、アーム部から操作部にかけて略スリップオン・シューズ状とした態様のものである。そして、各部の具体的な態様について、左右のアーム部は、左右の先端部が外側にやや開いた前方下がりのものであり、先端部を半円弧状の曲面とし、上面から側面にかけて滑らかな傾斜状の曲面とし、下面中央部をやや丸く膨出させた態様のものであり、左右の操作部は、上面に円形状の基盤部を設け、その中央に十字形状の凹部をそれぞれ設け、左側の操作部の凹部には、略五角形状の4個の操作ボタンを中央に十字状に寄せて配列し、凹部の四隅には三角形状の記号を表したものであり、右側の操作部の凹部には、四隅に円形状の4個の操作ボタンを配置し、それぞれの操作ボタンの上面に記号を表したものであり、操作部の下面は、側面視略弧状の凹状面としたものであり、操作部の後部は、左右とも略矩形状の突出部を形成し、その後面側に矩形状の4個の操作ボタンを上下にわずかに突出させて設けたものであり、本体部は、上面前方寄りに四角形状と三角形状の小さな操作ボタンを左右に形成した態様のものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出したイ号図面代用写真(甲第2号証)によれば、意匠に係る物品を「ゲーム機用操作器」とし、その形態を別紙第2に示すとおりとしたものである。
すなわち、基本的な構成態様について、略横長箱体状の本体部の左右に平面視略円形状の操作部を形成し、左右の操作部の前側をそれぞれ前方に大きく突出させて、平面視略U字状のアーム部を左右対称状に形成し、アーム部から操作部にかけて略スリップオン・シューズ状とした態様のものである。そして、各部の具体的な態様について、左右のアーム部は、左右の先端部が外側にやや開いた前方下がりのものであり、先端部を半円弧状の曲面とし、上面から側面にかけて滑らかな傾斜状の曲面とし、下面中央部をやや丸く膨出させた態様のものであり、左右の操作部は、上面に円形状の基盤部を設け、左側の操作部は、凹状にわずかに湾曲した円盤の中央に十字状の凸部を形成し、右側の操作部は、円形状の4個の操作ボタンを十字状に配列し、それぞれの操作ボタンの上面に数字を表したものであり、操作部の下面は、側面視略弧状の凹状面としたものであり、操作部の後部は、左右とも略矩形状の突出部を形成し、その後面側に矩形状の4個の操作ボタンを上下にわずかに突出させて設けたものであり、本体部は、後面側に台形状に突出した台形部を形成し、上面に四角形、三角形、楕円形等の小さな操作ボタンを設け、本体部前面の左右のアーム部寄りの部位に平面視円形状の操作部を形成し、その上面に略きのこ状の操作ボタンをそれぞれ突出させて設け、更に詳細に見ると、平面視円形状の操作部の上面周縁から周側面にかけて細溝が形成されているものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠は共にゲーム機用操作器に係るものであるから意匠に係る物品が一致する。
(2)次に、両意匠の形態については、以下の共通点及び差異点が認められる。
両意匠は、基本的な構成態様について、略横長箱体状の本体部の左右に平面視略円形状の操作部を形成し、左右の操作部の前側をそれぞれ前方に大きく突出させて、平面視略U字状のアーム部を左右対称状に形成し、アーム部から操作部にかけて略スリップオン・シューズ状の態様とした点が共通しており、その各部の具体的な態様においても、(A)左右のアーム部につき、左右の先端部が外側にやや開いた前方下がりのものであり、先端部を半円弧状の曲面とし、上面から側面にかけて滑らかな傾斜状の曲面とし、下面中央部をやや丸く膨出させた点、(B)左右の操作部につき、上面に円形状の基盤部を設け、下面を、側面視略弧状の凹状面とした点、(C)右側の操作部につき、円形状の4個の操作ボタンを十字状に配列し、それぞれの操作ボタンの上面に記号を表した点、(D)操作部の後部に左右とも略矩形状の突出部を形成し、その後面側に矩形状の4個の操作ボタンを上下にわずかに突出させて設けた点が共通していると認められる。
一方、両意匠の形態には、具体的態様のうち、主として、(a)左側の操作部の態様について、本件登録意匠は、中央に十字形状の凹部を設け、略五角形状の4個の操作ボタンを中央に十字状に寄せて配列し、凹部の四隅には三角形状の記号を表しているのに対し、イ号意匠は、凹状にわずかに湾曲した円盤の中央に十字状の凸部を形成している点、(b)右側の操作部の態様について、本件登録意匠は、中央に十字形状の凹部を設け、四隅に操作ボタンを配置しているのに対し、イ号意匠は、4個の操作ボタンを配列している点、(c)本体部の態様について、本件登録意匠は、平面視略長方形状で、上面前方寄りに四角形状と三角形状の操作ボタンを左右に形成しているのに対し、イ号意匠は、後面側に台形状に突出した台形部を形成し、上面に四角形、三角形、楕円形等の小さな操作ボタンを設けている点、(d)本体部の前面の態様について、イ号意匠は、本体部前面の左右のアーム部寄りの部位に平面視円形状の操作部を形成し、その上面に略きのこ状の操作ボタンをそれぞれ突出させて設け、平面視円形状の操作部の上面周縁から周側面にかけて細溝が形成されているのに対し、本件登録意匠にはこのような態様がない点に差異が認められる。
(3)そこで、両意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について総合的に検討する。
先ず、両意匠において共通しているとした基本的な構成態様、すなわち、略横長箱体状の本体部の左右に平面視略円形状の操作部を形成し、左右の操作部の前側をそれぞれ前方に大きく突出させて、平面視略U字状のアーム部を左右対称状に形成し、アーム部から操作部にかけて略スリップオン・シューズ状とした態様は、両意匠の形態についての骨格的要素となるものであって、しかもこの種の物品分野においては、全体の基本構成が近似した態様のものが他に見られず、両意匠の形態上の特徴を表すものと認められるから、両意匠の類否判断を左右するほどの大きな要素ということができる。次に、両意匠において共通しているとした具体的な態様のうち、(A)左右のアーム部につき、左右の先端部が外側にやや開いた前方下がりのものであり、先端部を半円弧状の曲面とし、上面から側面にかけて滑らかな傾斜状の曲面とし、下面中央部をやや丸く膨出させた点は、この種物品の分野においては、他に見受けられない態様のものであり、上記共通する基本的な構成態様と相俟って両意匠の形態上の特徴を表すものと認められるから、両意匠の類否判断を左右するほどの要素ということができる。また、(B)左右の操作部につき、上面に円形状の基盤部を設けた点、下面を、側面視略弧状の凹状面とした点も、他に同様の態様が見受けられず、両意匠のみの特徴と認められるから、看者の注意を惹き、両意匠の類否判断に影響を及ぼすものと認められる。(C)右側の操作部につき、円形状の4個の操作ボタンを十字状に配置し、それぞれの操作ボタンの上面に記号を表した点は、他に同様の態様が見受けられず、両意匠のみの特徴と認められるから、看者の注意を惹き、両意匠の類否判断に影響を及ぼすものと認められる。(D)操作部の後部に左右とも略矩形状の突出部を形成し、その後面側に矩形状の4個の操作ボタンを上下にわずかに突出させて設けた点は、操作部の後部における共通点であるものの、操作部全体の立体的なまとまりを形成する構成要素であって、形態上の特徴を表す要素の一つと認められるから、当該部位における態様の共通点は、両意匠の類否判断において考慮すべき要素と認められる。
これに対して、差異点の(a)については、左側の操作部の態様の差異であるが、本件登録意匠のように略五角形状の操作ボタンを十字状に寄せて配列した態様と近似の態様のものは、本件登録意匠の出願前に見受けられるから(例えば、1992年10月31日(株)ソディック発行のカタログ「ワイヤ放電加工機AAseriesMARK20」3頁所載のリモコンの操作ボタン参照)、本件登録意匠の形態上の特徴を表す要素としては微弱であり、また、イ号意匠の態様も一般的に見られる態様であるから(例えば、1989年8月31日Geyer-McAllister Publications,Inc.発行の「Playthings」8号87巻57頁所載のおもちゃ用リモートコントローラーの操作ボタン、1993年9月16日(株)ワールドフォトプレス発行の「モノマガジン」18号12巻85頁所載のゲーム器用リモコンの操作ボタン参照)、格別特徴あるものとは認められず、その差異は操作部の形状のわずかな変更の範囲にとどまるものであって、その差異は軽微なものであり類否判断を左右するほどのものとは認められない。差異点の(b)については、右側の操作部の態様の差異であるが、共に4個の円形ボタンを十字状に配列したという共通する態様の下での十字形状の凹部の有無の差異であるから、看者の注意を惹くほどのものでなく、その差異は微弱なものであって類否判断を左右するほどのものとは認められない。差異点の(c)については、本体部の態様についての差異であるが、この点のみを切り離して評価する場合においては大きな差異ともいい得るものであるが、コード取り出し部を筐体外側に突出させることは一般的に見られるものであるから格別の態様でなく、また、両意匠の形態上の特徴を表している両意匠に共通する基本的な構成態様及び具体的な構成態様と比較する場合は、上記差異点は、微弱なものと言わざるを得ないものであるから、未だ両意匠の類否判断を左右するほどの要素には至っていないと認められる。差異点の(d)については、本体部前面の左右のアーム部よりの部位に設けられた略きのこ状の操作ボタン及び細溝の有無であるが、本件登録意匠のように略きのこ状の操作ボタンを有しない態様はごく普通の態様であり、一方、イ号意匠のような略きのこ状の操作ボタンを有する態様も、格別特徴ある態様とも認められず(例えば、近似の態様としてThe H.K.Electronics Association発行1993年11月22日特許庁受入の「HONGKONG ELECTRONICS News OCTOBER/NOVEMBER1993」A-1頁所載のゲーム器用リモートコントローラーの操作ボタン、1992年4月30日フィリップスコンシューマエレクトロニクス発行の「SUPERHOMEMEDIA CDI-205CD-IPLAYER」3頁所載のコンパクトディスクプレーヤー用リモートコントローラーの操作ボタン参照)、また、イ号意匠と同様の態様の操作ボタンを有する意匠登録第952253号の類似11号、12号(別紙第3)ないし14号が、本件登録意匠の類似意匠として登録されていることを参酌すれば、その差異は、操作部の形状のわずかな変更の範囲にとどまるものであり、形態全体として観察した場合、その差異は微弱といわざるを得ないから、両意匠の類否判断にそれほどの影響を及ぼさないというべきものである。また、細溝の有無は、表面に付された微細な模様であるから、形態全体を観察した場合は、その差異は微弱なものであって、両意匠の類否判断にさほどの影響を及ぼすものではない。
(4)そうすると、両意匠において共通する基本的な構成態様及び具体的な態様における共通点(A)は、両意匠の類否判断を左右するほどの要素であり、具体的な態様における共通点(B)(C)は、両意匠の類否判断に影響を及ぼす要素であるのに対し、差異点の(a)ないし(d)はいずれも微弱であって、各差異点が相俟って形成する意匠的な効果を考慮しても、いまだ両意匠の全体的な観察の際に与える影響は小さく、類否判断を左右するほどの要素とは認められないから、意匠全体としては、両意匠の共通する基本的な構成態様及び具体的な態様における共通点(A)(B)(C)が、他の共通点とも相俟って、本件登録意匠とイ号意匠との前記の差異点を大きく凌駕して、看者に共通の美感を与えていると言えるところであるから、両意匠の共通する基本的な構成態様及び具体的な態様における共通点(A)(B)(C)は、意匠の類否判断を左右する要部における共通点と言わざるを得ない。
(5)以上のとおりであって、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が一致し、両意匠の形態においても、前記のように差異点があるにもかかわらず、類否判断を左右する要部において共通するから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものである。
4.結び
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するから、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-07-12 
出願番号 意願平6-9793 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 足立 光夫
特許庁審判官 藤木 和雄
伊藤 栄子
登録日 1996-02-13 
登録番号 意匠登録第952253号(D952253) 
代理人 中村 稔 
代理人 小川 信夫 
代理人 大塚 文昭 
代理人 竹内 英人 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 村社 厚夫 
代理人 宍戸 嘉一 
代理人 飯田 圭 
代理人 今城 俊夫 
代理人 井野 砂里 
代理人 箱田 篤 
代理人 西島 孝喜 

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