ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 無効 1項1号公知(類似も含む) 無効としない B7 審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない B7 |
---|---|
管理番号 | 1045260 |
審判番号 | 審判1999-35135 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2001-10-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-03-26 |
確定日 | 2001-08-20 |
意匠に係る物品 | まつげカ―ル器 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0952185号「まつげカ―ル器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申立て及び理由 請求人は、「登録第952185号意匠(以下、本件登録意匠という)の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として概ね次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第5号証の書証を提出した。 1. 本件登録意匠は、出願前に頒布された以下の各刊行物(甲第1号証、甲第3号証乃至甲第5号証)に記載されたプラスチック製まつ毛カール器の意匠と同一であるから、意匠法第3条第1項第2号の規定に該当する(無効事由1)。 (1)日本医療衛生新聞第2262号第4面(以下、甲第1号証と称す)。 甲第1号証の国立国会図書館における受入日は平成4年5月10日であるから、出願前頒布されたものである。 (2)平成4年4月27日の日付の東京小売粧報第7面(以下、甲第3号証と称す)。 平成4年4月27日の日付が付与されていることから、この日付で頒布されたものであると推測することは自然である。ちなみに、その他の記事に、K社が現本社事務所について、「移転、5月11日より営業を開始す」との記載があり、これは5月11日より前にこの刊行物を頒布することを想定した記事であり、甲第3号証が本件登録意匠の出願前に既に頒布されていたことを示している。 (3)北海道商報復刊第1750号(平成4年5月8日付)第8面(以下、甲第4号証と称す)。 平成4年5月8日の日付が示されており、出願前に既に頒布されていたことを示すものである。 (4)1992年5月15日付けの中日本商業新聞第14面(以下、甲第5号証と称す)。 1992年5月15日の日付が示されており、出願前に既に頒布されていた。 2.甲第1号証、甲第3号証乃至甲第5号証の各刊行物には、その発行前に本件登録意匠と同一の意匠が発売されていた旨の記載があることから、本件登録意匠は出願前公然知られた意匠であって、意匠法第3条第1項第1号に該当する(無効事由2)。 (1)甲第1号証の記事には「・・・各方面で好評を得ている」と記載されており、この記事が掲載された時点で既に発売されていることが明記されている。 (2)甲第3号証の記事には「・・・・おしゃれなデザイン、カラーが発売以来大きな人気となっている」との記載があり、これは甲第3号証が刊行された以前に既に公用されていたことを示すものである。 (3)甲第4号証の記事には「ユニークなデザイン・・・・新しい発想が受けて発売以来公表を博している。」との記載があり、この記事が掲載された時点で既に発売されていることが明記されている。 (4)甲第5号証の記事に、「装粧品・刃物メーカーの・・・・・はこのほど、プラスチック製まつ毛カール器の新製品を発売した」との記載があり、この記事が掲載された時点で既に、(製品が)発売されていることが明記されている。 3. 本件登録意匠は、意匠法第4条第1項の規定に該当するものではない。 (1)甲第1号証には、「本体・ABS樹脂、・・・・ゴム・シリコンゴム」などの細部にわたる材質や「実用新案出願中、意匠登録出願中」などの第三者が知り得ない情報が記載されている。 したがって、発売元の「グリーンベル」からの情報提供を受けずに、甲第1号証の記事を作成することは不可能であり、「グリーンベル」の意に反してこのような刊行物が頒布されたとは考えられない。また、本件登録意匠の意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」と甲第1号証に掲載のプラスチック製まつ毛カール器「EC-5」及び[EC-6」の発売元である「グリーンベル」と同一であることから、甲第1号証の意匠登録出願時において意匠登録を受ける権利を有する者であった意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」の意に反してなされたものではないことが明白である。 (2)甲第3号証には、「本体・ABS樹脂、・・・・ゴム・シリコンゴム」などの各部の材質を含む詳細な情報が記載されている。製品の発売元の「グリーンベル」からの情報提供を受けずに、このような詳細な情報を知ることは困難であり、「(株)グリーンベル」が関知することなしにこのような甲第3号証の記事を作成され、頒布されることは考えがたい。 本件登録意匠の意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」と、甲第3号証に掲載のプラスチック製まつ毛カール器「EC-五」及び[EC-六」の発売元である「グリーンベル」と同一であることから、甲第3号証が、本件登録意匠の意匠登録出願時において意匠登録を受ける権利を有する者であった意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」の意に反してなされたものではないことが明白である。 (3)甲第4号証には、「本体・ABS樹脂、・・・・ゴム・シリコンゴム」などの詳細な情報が記載されており、この製品の発売元の「グリーンベル」からの情報提供を受けずに、この記事を作成することは困難と考えられる。 本件登録意匠の意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」と、甲第4号証に掲載のプラスチック製まつ毛カール器「EC-5」及び[EC-6」の発売元である「グリーンベル」と同一であることから、甲第4号証が、本件登録意匠の意匠登録出願時において意匠登録を受ける権利を有する者であった意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」の意に反してなされたものではないことが明白である。 (4)甲第5号証には、「ゴムはシリコンゴムを採用」「材質本体はABS樹脂、・・・・バネはステンレス」などの詳細な情報が記載されており、この製品の発売元の「グリーンベル」からの情報提供を受けずに、この記事を作成することは困難と考えられる。 本件登録意匠の意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」と、甲第5号証に掲載のプラスチック製まつ毛カール器の発売元である「グリーンベル」と同一であることから、甲第5号証が、本件登録意匠の出願前に頒布されるたことが、本件登録意匠の意匠登録出願時において意匠登録を受ける権利を有する者であった意匠登録出願人「株式会社グリーンベル」の意に反してなされたものではないことが明白である。 4.本件登録意匠は、意匠法第4条第3項に規定される書面の提出がされておらず、同法同条第2項の新規性の喪失の例外規定の適用はない。 第2.被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として概ね次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 1.無効事由1について 本件登録意匠は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証と同一のものである事実は認めるが、本件無効審判を請求されるまではその事実を知らなかった。 すなわち、被請求人株式会社グリーンベルの代表取締役石田潔は、事情説明書の記載のように、本件登録意匠に係る意匠を意匠登録出願するまでは秘密にしておくことを命じたにも拘らず、当時の担当社員の原稔が、甲各号証の刊行物に公表してしまった。当時の担当社員の原稔は、甲各号証の広告記事の原稿を作成し、甲各号証の発行元の各新聞社等に渡し、その結果、これらの新聞社等によって広告記事及び写真が掲載されるに至ったもので、本件登録意匠に係る意匠の広告写真は、意に反して刊行物に記載されたと言え、刊行物に記載された後、6月以内に意匠登録出願をしていることが明らかであるので、本件登録意匠は、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して意匠法第3条第1項第2号の規定に該当するに至ったものであり、意匠法第4号第1項の規定の適用が認められるべきである。各号証の記事文中に「意匠登録出願中、実用新案出願中」との記載があることでも明らかなように、意匠登録出願の手続きが完了してから公表することを前提に作成した記事である。 2.無効事由2について 審判請求人は、甲各号証に記載の記事内容から、本件登録意匠が、その出願前に公然知られた意匠であると主張するが、甲各号証に記載された記事内容は、各記事の内容が酷似していることからしても明らかなように、被請求人株式会社グリーンベルの当時の従業員原稔が各新聞社等に渡した広告記事の原稿に沿うものであって、実際には発売していないが、発売したことを前提にしていった宣伝広告のための「歌い文句」である。 従って、甲各号証の記事が掲載された時点で本件登録意匠が既に発売されたものとする審判請求人の主張は、憶測に過ぎず事実に相反するものであり、その意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠ではない。 第3.当審の判断 無効事由1について 本件登録意匠は、甲第1号証、甲第3号証乃至5号証の各刊行物に記載されたプラスチック製まつ毛カール器「EC-5」及び[EC-6」の意匠と同一であって、各刊行物の頒布日は、甲第1号証は、平成4年5月10日、 甲第3号証は、平成4年4月27日、甲第4号証は、平成4年5月8日、甲第5号証は、平成4年5月15日であるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号に該当するに至った意匠である(以上については、当事者間でも争いのないところである)。 その各刊行物への記載は、株式会社グリーンベルの代表取締役石田潔が、本件登録意匠の意匠登録出願が完了するまで秘密にしておくことを命じたにもかかわらず、株式会社グリーンベルの従業員原稔によって意匠登録出願前に記載されるに至ったものであることが、被請求人の主張及び乙第1号証及び第2号証により明らかである。 そうであるから、株式会社グリーンベルの意に反して、各刊行物に記載された意匠、すなわち、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して意匠法第3条第1項第2号に該当するに至った意匠と認められる。 そして、本件登録意匠は、株式会社グリーンベルが、甲第1号証、甲第3号証乃至第5号証の各刊行物の頒布された日から6月以内である平成4年5月22日に意匠登録出願したものであるから、意匠法第4条第1項の規定の適用が受けられるものであって、意匠法第3条第1項第2号に該当するに至らなかったものとみなすものである。 なお、請求人は被請求人の意に反して刊行物に記載されるに至ったものではない旨主張し、その理由として、(ア)原稔は、情報を新聞社等に提供した時点において、株式会社の構成員であり、また、被請求人が提示している「詫び状」によれば、平成11年6月30日において、企画管理課社員として株式会社グリーンベルに所属していることになっているから、本件登録意匠の意匠登録出願前に甲各号証の刊行物に公表する際並びに本件登録意匠の意匠登録出願する際に、原稔が意匠登録出願人である株式会社グリーンベルの構成員であることが明白であり、構成員である原稔は、本件登録意匠の意匠登録出願が予定されていることを承知しており、また意匠登録出願を完了するまでは公表を待たなければならないことも知っていたものであり、(イ)被請求人は1996年5月20日付けで、韓国実用新案登録第95787号に対する無効審判事件を提起しており、少なくとも、この時点で、前記甲第各号証に本件登録意匠と同一の意匠が掲載されていたことを承知しており、本件無効審判が請求されるまでこのような事実を知らなかったというのは、虚偽の申告であることが明白であり、(ウ)甲各号証の記事は、それぞれ微妙に異なった表現となっており、当時の担当社員原稔一人が作成した1つの原稿からできたものとするのは考えにくいことなどを挙げている。 しかし、(ア)の点については、原稔は株式会社グリーンベルの従業員であって、株式会社グリーンベルの代表権を有する社員ではなく、株式会社グリーンベルの意思形成に関与していない者で、株式会社グリーンベルとは別人格である。 そして、株式会社グリーンベルの代表権を有する代表取締役石田潔は、本件登録意匠を意匠登録出願するまでは秘密にしておくように命じたにも拘らず、すなわち、意に反して甲各号証の刊行物に記載されたもので、例え株式会社グリーンベルに従業員に対する監督に過失があったとしても、そのことを以て直ちに「意に反して記載されたものではない」とすることはできないものである。 (イ)の点については、本件登録意匠が意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して意匠法第3条第1項第2号に該当するに至った事実をたとえ意匠登録を受ける権利を有する者である被請求人株式会社グリーンベルが出願前に知り得たとしても、そのことを以て意匠法第4条第1項の新規性の喪失の例外適用が受けられなくなるものでもなく、すなわち、意匠法第4条第1項の適用にあたって、その事実を出願前に知り得たか否か、まして、無効審判請求される前に知り得たか否かを斟酌する必要はないものである。 (ウ)の点については、たとえ、当時の従業員である原稔が作成した1つの原稿からできたものでないとしても、被請求人の意に反して従業員原稔によって、各新聞記事に本件登録意匠が記載されるに至った事実をなんら否定する根拠足り得ない。 結局、請求人の主張は、いずれも当を得ないものであり、且つ、本件登録意匠が意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して意匠登録出願前に、各刊行物に記載されるに至った事実を否定する証拠は他には存在しない。 無効事由2について. 甲第1号証、甲第3号証乃至甲第5号証の各刊行物の記事文中に本件登録意匠が「発売中である」旨の記載があるが、この点につき被請求人が「歌い文句」であって、実際には発売していなかったとする主張を否定する証拠は存在しない。 よって、これら刊行物の記事内容をもって意匠法第3条第1項第1号に該当するとすることはできない。 以上、請求人の主張する本件登録意匠を無効とすべき理由は、いずれも理由のないものであるから、その理由を以て本件登録意匠を意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-12 |
結審通知日 | 2001-03-23 |
審決日 | 2001-04-04 |
出願番号 | 意願平4-14910 |
審決分類 |
D
1
11・
111-
Y
(B7)
D 1 11・ 113- Y (B7) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高野 善民 |
特許庁審判長 |
山田 啓治 |
特許庁審判官 |
西本 幸男 秋間 哲子 |
登録日 | 1996-02-13 |
登録番号 | 意匠登録第952185号(D952185) |
代理人 | 小野 由己男 |
代理人 | 宮川 良夫 |
代理人 | 辻本 一義 |