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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D2
管理番号 1045263 
判定請求番号 判定2001-60040
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-10-26 
種別 判定 
判定請求日 2001-03-30 
確定日 2001-08-06 
意匠に係る物品 日用品収納キャビネット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1001137号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠である「日用品収納キャビネット」の意匠は、登録第1001137号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠は、登録第1001137号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
なお、請求人は、イ号意匠図面(別紙5)記載の意匠(イ号意匠)は本件登録意匠の意匠権に抵触するので、甲第1号証に示すように、その旨を被請求人に通知した旨主張しており、それによれば、イ号意匠を、甲第1号証及び甲第5号証において指摘し、特定しているとおり、被請求人が製造・販売している「商品名 クローゼット ワイド540(三段)」の意匠とした上で、判定請求当初は、当該意匠を、判定請求書に添付の別紙5に、イ号意匠として示す意匠としていたが、その後、被請求人の答弁を受け、判定請求弁駁書において、当該意匠を、被請求人が提出した乙第1号証及び乙第2号証に示す意匠とすることに異存はない旨申し立てた。
本件登録意匠の基本的構成は、上下方向3段のフレーム状棚板と四隅の支柱と天板よりなる枠体を有し、棚板、支柱及び天板で形成される各空間内に、正面から見て横長の抽斗を挿入したものであり、本件登録意匠の要部は、この物品がもっぱら正面側から観察されるものであることに鑑みれば、その正面形態にあると思料され、すなわち、その要部は、1)正面から見て横長の抽斗を有するものであって、2)抽斗前面は、抽斗収納時には正面視において左右の支柱が隠れるように、横幅一杯に形成し、3)抽斗前面板は、同前面板の中央部と左右端部に平面部を形成し、中央平面部と端部平面部の間2カ所に凹部平面部を設け、前記各平面部と凹部平面部とは、段差平面部により連接される凹凸面とし、4)抽斗引手部は、抽斗前面板の上辺部において手前に水平に折り曲げ、さらにその水平部の先端を下方に垂直に折り曲げ、上辺部全体に及ぶ縁状のものとして形成し、前面板の凹部2カ所で手を掛ける構成とした、点にあり、本件登録意匠とイ号意匠は、基本的構成、要部、及び、5)天板は、正面側がやや幅広となる額縁状の枠部内に、4本の帯状凹凸模様をあらわしている点、で一致し、縷々述べるまでもなく、両意匠の共通点は両意匠の美感を支配する構成と言うことができるものである。これに対して、両意匠には、1)抽斗前面板において、左右各平面部(端部平面部)と2カ所の凹部平面部とは、本件登録意匠では、ほぼ直角に折れ曲がる段差平面部により連接されているのに対して、イ号意匠では、上方部が内側に傾斜したやや幅広矩形の傾斜平面部により連接されている点、2)天板において、4本の帯状凹凸模様を、本件登録意匠では、左右方向にあらわしているのに対して、イ号意匠では、短辺方向(前後方向)にあらわしている点及び額縁状正面側枠部の横長矩形凹部の有無の点、で差異があるが、1)の差異点については、イ号意匠の抽斗正面部左右の内向傾斜面部は、いわゆる「面取り」の域を出ないものであり、到底本件登録意匠との類似性を左右し得ない、すなわち、抽斗を正面から観察すれば、両意匠の主な差異点は、左右の凸平面部の内側寄り部位が内向き傾斜面とされているか否かの点ぐらいであり、その差異は、段差状が傾斜面状とされたことにより凹凸のメリハリが失われ、全体が多少あやふやな形態となったに止まるものであり「全体の実質的構成に影響を与えない範囲での細部形態の変更」に過ぎず、2)の差異点については、帯状凹凸模様の方向を、左右方向とするか前後方向とするかのありふれた差異に過ぎず、横長矩形の凹部の有無も小手先の改変であり、両意匠の差異点は、いずれも細部のものに止まるか、類否判断に影響を与えない差異であり、これらの差異点を総合して考察しても、両意匠に共通する全体の基本的構成や抽斗面の構成及び引手の具体的構成の一致から来る独特の美感の明瞭な共通性を打ち破るとは言えず、両意匠は、造形デザインの創作の本質において一致した、類似する意匠である。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
請求人は判定請求書に添付の甲第1号証、甲第5号証において、イ号意匠について、被請求人が製造、販売する製品「クローゼットワイド540(3段)」(以下、イ号物件という。)を指摘し特定している。しかし、請求人作成に係る別紙5のイ号意匠図面は、要部において事実をありのままに正しく表現していないものであり、現実のイ号物件とは一致しないものである。そこで、被請求人は、イ号物件を写真撮影した図面代用写真を乙第1号証とし、抽斗部を設計データに基づいて作成したCAD図面を乙第2号証として提出し、イ号意匠については、請求人作成のイ号意匠図面に依拠することなく、乙第1、第2号証に従って、答弁する。
両意匠の類否の判断に当たっては、正面部分のみならず平面部分も要部として判断すべきである。抽斗前面板において、本件登録意匠は、正面から見て5つの平面部があり、「ありふれた形状、模様」に相当する「正方形、長方形」と認められる「中央平面部」、「端部平面部」を、「段差平面部」により連接して「凹凸面」とする形態は、公知例、周知形状、慣用技術等を参酌すれば、普通に見受けられるありふれたものに過ぎないものと評価でき、本件登録意匠の類似の範囲は、特に抽斗前面板においては極めて狭いものであり、これに対して、イ号意匠は、正面から見て7個の平面部があり、本件登録意匠に見られない傾斜平面部が、鉛直線に対し傾斜した線分を有し、しかも後方に徐々に後退していることから、本件登録意匠とは全く相違する印象を与え、看者をして充分に両意匠を識別できる。そして、この傾斜平面部の存在により、イ号意匠は看者に家庭用品にふさわしい和やかさ、穏やかさを覚える感触を与え、看者の注意を惹き付けるものである。また平面形態においては、イ号意匠の前部に横方向に1本の溝部を有する形態から、看者の注意を惹き付けるものであり、抽斗前面板の正面形態の相違と相俟って、看者の両意匠に対する識別を容易にしている。このように、両意匠の類否を支配する要部において、両意匠を区別するに足る差異が十分にあることから、両者の間に部分的な共通点があっても、これを全体として観察した場合に、両意匠の美感が共通しているとは云えず、両意匠には類似関係がないと云うべきである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7年6月2日に意匠登録出願をし、平成9年10月9日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1001137号意匠であり、願書及び願書に添付の図面の記載によれば、意匠に係る物品を「日用品収納キャビネット」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、被請求人が製造・販売している「商品名 クローゼット ワイド540(三段)」の意匠である。なお、イ号意匠は、イ号意匠の対象とすることについて当事者間に争いのない、判定事件答弁書に添付の乙第1号証及び乙第2号証に示された意匠を対象とする。イ号意匠は、乙第1号証及び乙第2号証に、写真版及び図面により示されたものであり、当該写真版及び当該図面によれば、意匠に係る物品が「日用品収納キャビネット」と認められ、その形態を、別紙第2及び別紙第3に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、(1)全体が、四隅に支柱(縦枠)を配し、上端に天板を配し、中間部数段と下端に、それぞれの外縁に横桟を配してフレーム状とした棚を設け、上下方向に数段とした略直方体状の箱枠体を形成して、棚上方に形成された各空間内に、抽斗を挿脱自在に挿入し、抽斗の前面、側面及び後面が箱枠体の外側から見えるように形成した基本的な構成態様のものである点、また、その具体的な態様において、(2)天板及び各棚の前端は、前支柱よりも前方にやや突出して設けている点、(3)全体の構成比率につき、奥行を横幅及び高さよりも短くし、抽斗の配置構成につき、正面視横長の同形同大の抽斗を上下方向に3段配している点、(4)抽斗前面の左右端辺を、側面側にやや回り込ませ、抽斗側面から左方あるいは右方にやや突出状として、抽斗前面を、箱枠体の横幅一杯に形成している点、(5)抽斗前面板は、中央のやや広い幅(抽斗前面の横幅の略1/4幅)の平面(以下、「中央平面部」と言う。)を、その両隣のやや広い幅の平面(以下、「凹平面部」と言う。)に対して突出した面とし、中央平面部よりも幅が狭い左右端部の平面(以下、「端部平面部」と言う。)も、その内隣の面に対して突出した面としている点、(6)抽斗引き手部は、抽斗前面板の上端辺から前方に略逆L字状に屈曲して成る、抽斗前面上端の全体に亘って正面視横帯状を呈する、鍔縁状のものとしている点、(7)天板は、上面に周縁に沿って四角形状を呈する溝部を形成し、溝部内の平面部を、数本(3本)の溝を等間隔に設けて区分けしている点、がある。
一方、差異点として、(イ)抽斗前面板につき、本件登録意匠は、正面から見て、中央平面部、両隣の凹平面部及び左右の端部平面部の、計5個の平面部が有り、抽斗前面板全体を平面視で緩やかな凸弧状のものとした上で、中央平面部両隣の面(凹平面部)を凹陥させて、その余の、中央平面部と端部平面部とは、略面一致状のものとし、各平面部は、正面視略四角形状のものとしているのに対して、イ号意匠は、正面から見て、中央平面部、両隣の凹平面部、左右の端部平面部、及び、その他に、各端部平面部と各凹平面部をつなぐ、斜めに後退したやや広い幅の平面部(以下、「傾斜平面部」と言う。)の、計7個の平面部が有り、端部平面部の最大横幅は、本件登録意匠の該部横幅よりも狭い、僅かな幅とし、その端部平面部を除き、中央平面部、両隣の凹平面部及びその隣の傾斜平面部を、全体で平面視略偏平台形状を呈するように凹陥させたものとし、中央平面部は、凹平面部から極僅かに突出したに止まる、正面視四角形状のものとし、各傾斜平面部の左右端辺(端部平面部及び凹平面部との境界部分)は、正面視で中央方向に傾斜する斜線状を呈するものとしている点があり、その他に、(ロ)抽斗引き手部につき、本件登録意匠は、抽斗上端の全体に亘って抽斗前面板よりも前方に突出しているのに対して、イ号意匠は、端部平面部前面とは僅かな段差をもって当接し、その余は抽斗前面板よりも前方に突出している点、(ハ)天板につき、溝部内の平面部に設けた溝を、本件登録意匠は、横方向のものとしているのに対して、イ号意匠は、縦方向のものとしている点、また、天板上面前端辺沿いの溝の有無(イ号意匠に有り。)の点、(ニ)箱枠体下面四隅の車輪の有無(イ号意匠に有り。)の点がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点のうち、(1)ないし(4)、(6)及び(7)の点は、いずれも、従来から見られる態様であって、特徴と言えるほどのものではなく、類否判断に及ぼす影響は小さい。(5)の点は、抽斗前面板の具体的な態様に係るものであるが、隣り合う面同士の相対的な関係で看取される部分的なものに過ぎず、抽斗前面板全体に係る、(イ)の具体的な差異点がある中での共通点であり、また、この種意匠の分野において、抽斗前面板を凹凸状に形成すること自体は、従来から行われており、さらに、抽斗前面板の、抽斗引き手部の手を掛ける部位の後方に位置する面を凹陥させることも、従来から行われており、これらの点を考慮すると、両意匠の類否を決するまでの特徴とは到底成り得ないと言うべきであり、類否判断に及ぼす影響は、さほど大きいものとは言えない。そして、意匠全体として、これら共通点が相俟ったとしても、その類否判断に及ぼす影響は、さほど大きいものとは言えない。
一方、差異点につき、(イ)の点は、抽斗前面板の全体に係る態様を具体的にあらわすところであり、顕著に観察される形態上の主要な部分に係るところであって、前記のとおり、共通する態様に格別の特徴の認められない両意匠にあっては、抽斗前面板の具体的な態様が両意匠の特徴を成すところとせざるを得ず、本件登録意匠は、抽斗前面板の中央平面部両隣の面(凹部平面部)を凹陥させて、その余の、中央平面部と端部平面部とは、略面一致状のものとした点と各平面部は、正面視略四角形状のものとしている点とが相俟って特徴を成しており、一方、イ号意匠は、僅かな幅とした端部平面部を除き、中央平面部、両隣の凹平面部及びその隣の傾斜平面部を、全体で平面視略偏平台形状を呈するように凹陥させたものとした点と各傾斜平面部の左右端辺を、正面視で中央方向に傾斜する斜線状を呈するものとしている点とが相俟って特徴を成しており、これらの、両意匠の特徴は、大きく異なるものと言え、両意匠を別異のものと看者に印象付けるに十分なものであって、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものと言うほかない。
従って、両意匠の形態についての共通点は、前記のとおり、両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとは言えないのに対して、差異点については、とりわけ、(イ)の点は、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものであり、他にも、(ロ)ないし(ニ)の点の差異が認められるところでもあって、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとは言えない。
第4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-07-24 
出願番号 意願平7-15716 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D2)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 太田 茂雄 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 市村 節子
橘 崇生
登録日 1997-10-09 
登録番号 意匠登録第1001137号(D1001137) 
代理人 福迫 眞一 
代理人 朝倉 悟 
代理人 日比谷 征彦 
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