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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D4
管理番号 1045264 
判定請求番号 判定2001-60042
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-10-26 
種別 判定 
判定請求日 2001-04-02 
確定日 2001-08-06 
意匠に係る物品 空調装置室外機カバー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1055351号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠図面として示す「室外機カバー」の意匠は、登録第1055351号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠(判定請求書に添付の別紙三に、イ号意匠図面として示す意匠)は、登録第1055351号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第一号証ないし甲第一一号証を提出した。
特許庁の既登録事例(甲第四号証に添付の資料第4号ないし第5号)の状況及び本件登録意匠の構成からすると、本件登録意匠において看者の注意を惹く要部は、一義的には「空調装置の室外機を覆うように、室外機の正面及び左右側面に、枠付の斜め格子パネルを配置し、上面には、枠囲いの中に簀の子状板材をはめ込んだ植木鉢置き台を設け、背面部はほぼ開放している点。」にあるといえ、さらに「上部の植木鉢台に山形加飾部のある枠材が備えられている点。」も、加飾として人目を惹く要部のひとつと考えられ、本件登録意匠は、この構成において、従来にない新規な構成と評価されて意匠登録を受けたものと判断され、イ号意匠は、該構成において全く一致しているのであるから、これにより共通の美感を惹起させるものであり、本件登録意匠に類似するものである。
もっとも、両意匠間には、1)植木鉢置き台を本体上辺よりやや浮かせて取り付けているか浮かせていないかの点、2)山形加飾部のある枠桟の位置を後方としたか前方としたかの点、3)山形加飾部は「ひと山」であるか「三ッ山型」であるかの点、で差異点があるが、両意匠は明らかに造形デザインとしての創作の実質において差異のないものであり、差異点は小手先の変更の範疇に止まるものであって、両意匠における類似の印象を左右し得るものではなく、いまだ細部の差異に過ぎない。すなわち、植木鉢置き台が浮いていない構成のもの(甲第一○号証)が本件登録意匠に類似する意匠として拒絶査定を受けたのであるから、イ号意匠の該構成における差異は、本件登録意匠との類似性を左右する差異とはならない。次に、購入後に自宅で組み立てて使用するような製品においては、山形加飾部を前面に配置して組み立てることは造作もないことであるから、加飾部が前か後かというような単なる「配置」上の差異は、両意匠の類否を判断する上では重視し得ないところであり、その配置上の前後を問わず「上部の植木鉢台に山形加飾部のある枠材が備えられている点。」こそが重視されるべきである。山形加飾部がひと山か三ッ山かの差異点については、イ号意匠においても中央部の山状がひときわ目を惹くことに照らせば細部の差異であろう。
以上のとおりであり、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。
なお、被請求人は、「本件登録意匠の要部は、本体部分ではなく本体より上部の植木鉢置き台の構成のみに存すると認定するのが至当である。」とするが誤りであり、「正面及び左右側面の三方を同形の斜め格子」に構成した点は、本件登録意匠に独自の新規な構成であり、本件登録意匠の要部として正当に評価されなければならない。まして、両意匠は、単に、「正面及び左右側面の三方を斜め格子」としている点が共通しているだけではなく各面をそれぞれ枠囲いして、言い換えれば「額縁パネル状」としている点でも一致しているのである。
また、被請求人は、植木鉢置き台部の差異が類否を左右すると主張するが誤りである。イ号意匠の「植木鉢置き台が浮いていない。」とする構成は、単に「全体の美感に影響を与えない部分」を「簡略化方向に手直しする」ことによって「実質的に同一の美感」を、「安易に」実施せしめたに過ぎないものと言うべきであり、この差異点は重視しがたいものである。「山型加飾部のある枠桟の配置上の差異について」も、両意匠は、植木鉢置き台について「長辺方向の枠桟の一方に山型加飾部が設けられた枠体に囲繞された簀の子状」としている点で一致しており、この構成は新規な構成であること、及びその余の全体の構成の強い共通性に鑑みれば、その差異はいまだ細部のものである。「山型加飾部がひと山か三ッ山かの差異について」は、被請求人はイ号意匠のものは「連続的に流れるウェイブのような動きのある印象」を看者に与えると主張するが、その評価は「過大」であり、その差異は微弱である。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
空調装置室外機カバーにおいて、全体形状を略直方体の箱形とすることは略直方体状の空調装置の室外機を覆うための必然的形態に過ぎず、さらに「空調装置の室外機を覆うように、室外機の正面及び左右側面を格子状として背部を開放した」構成は、本件登録意匠の出願前に公知の構成であるから、この構成に意匠の要部があると認めることはできず、また、斜め格子パネルはありふれた周知の形態であって、格子として斜め格子を採用する点に意匠としての創作性は何ら認められないから、この点についても意匠の要部であると認めることはできず、本件登録意匠の要部についての請求人の認定は妥当ではなく、意匠の要部の認定にあたっては、看者の視点をも考慮した上で看者にとって見え易い部分を要部とすべきであり、需要者が本体の上部にある植木鉢置き台の形態に最も強く注意を惹き付けられることは明らかであり、本件登録意匠の要部は、本体部分ではなく本体より上部の植木鉢置き台の構成にのみ存すると認定するのが至当である。
両意匠には、請求人が認めているとおりの、相違点が存在しており、これらの相違点は、一見して顕著なものであり、いずれも本体より上部の植木鉢置き台の構成に係る部分、即ち本件登録意匠の要部に係る部分であって、看者に全く別異の印象を感得せしめるものであり、全体としても看者に全く別異の印象を与えるものであるから、本件登録意匠とイ号物件とは互いに相紛れることがない非類似の意匠であることは明らかである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成10年5月15日に意匠登録出願をし、平成11年8月20日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1055351号意匠であり、願書及び願書に添付の図面の記載によれば、意匠に係る物品を「空調装置室外機カバー」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付の別紙三に、イ号意匠図面として示されたものであり、当該図面によれば、意匠に係る物品が「室外機カバー」と認められ、その形態を、別紙第2に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、(1)全体が、室外機を覆うように、略横長直方体状の箱体の、背面部をほぼ開放面とし、下面部も開放面として、上面部は植木鉢置き台部とした構成態様のものである点、(2)正面部及び左右両側面部の三方(室外機の正面及び左右側面に対応する部分)は、それぞれ同様の格子面状に形成し、上面部(室外機の上面に対応する部分)に設けた植木鉢置き台部は、簀の子状に形成している点、さらに具体的に見ると、(3)正面部は、やや広い幅の長い平板材から成る枠桟で略横長矩形状の枠体を形成し、枠体内方に、枠桟よりも幅狭の長い平板材から成る格子板複数を、等間隔で斜状に配した表側のものに当接して、その裏側のものを等間隔で表側のものと直交する斜状に配して、斜め格子状に形成し、はめ込んだものとし、左右両側面部の前端に張り付けている点、(4)左右両側面部は、それぞれ、やや広い幅の長い平板材から成る枠桟で正面部とほぼ同じ高さの略縦長矩形状の枠体を形成し、枠体内方に、正面部と同様に、格子板複数で斜め格子状に形成し、はめ込んだものとし、前と後の縦枠桟は、それぞれ下方へ延長して短い脚部としている点、(5)植木鉢置き台部は、やや広い幅の長い平板材から成る枠桟により略横長矩形状の枠囲い状を呈するものとし、枠囲い状の内方に、やや広い幅の長い平板複数を、前後方向に間を空かし等間隔に配して、簀の子状に形成し、はめ込んだものとしている点、(6)植木鉢置き台部において、長辺方向の枠桟の一方は、その上辺中央に緩やかな凸弧状山形を形成したものとしている点、がある。
一方、差異点として、(イ)植木鉢置き台部の枠囲い状の態様につき、本件登録意匠は、正面部と左右両側面部の枠体の上枠桟及び背面部上部に配設の上枠桟と独立して、その上方に、短い支柱を介し、やや浮かせて(間を空けて)、枠桟で枠体を形成しているのに対して、イ号意匠は、正面部及び左右両側面部の枠体の上枠桟と背面部上部に配設の上枠桟により枠囲い状を呈するものとしている点、(ロ)植木鉢置き台部において、凸弧状山形のある枠桟の配設位置につき、本件登録意匠は、独立して設けた枠体の後枠桟として、後に配しているのに対して、イ号意匠は、正面部の枠体の上枠桟として、前に配している点、(ハ)凸弧状山形の態様につき、本件登録意匠は、中央に一山のみ形成したものであるのに対して、イ号意匠は、中央の山形から緩やかな凹弧状の谷を介して左右両端にもそれぞれ中央の山形と同高の凸弧状山形を形成して、三ッ山状としたものである点、がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点のうち、(1)の、略横長直方体状の箱体の背面部と下面部を開放面とした点は、建物の外壁際に背面部を向けて配置した室外機を覆うための態様としておのずと想到し、採用される程度のものであり、また、室外機をカバーするものの上面部を植木鉢置き台部とする点も、室外機上面を覆って使用する植木鉢置き台が従前に見られるところでもあり(甲第四号証に添付の資料第4号参照)、特徴と言えるほどのことではなく、これらの共通点は、全体に係るところであることを考慮してもなお、類否判断に及ぼす影響は小さい。(2)の、格子面状に形成した点は、正面部及び左右両側面部の三方を同様の格子面状に形成して背面部は開放して成る室外機カバーの従来態様に照らし特徴がなく(乙第1号証、乙第2号証等参照)、また、植木鉢置き台部を簀の子状に形成している点も、植木鉢置き台の意匠の分野において、植木鉢載置面を簀の子状に形成することは極普通であることを考慮すると、特徴と言えるほどのことではなく、これらの共通点は、類否判断上さほど大きく評価することができない。(3)及び(4)の点については、両意匠と同様に、やや広い幅の長い平板材から成る枠桟で枠体を構成し、枠体内方に、格子板複数で斜め格子状に形成し、はめ込んだものとした、格子面状のものが、従来から、植木鉢置き台と一体に組み合わせて用いられたり、植木鉢置き台が使用される場所で植物を絡ませたり植木鉢を吊したりするためのものとして用いられていることを考慮すると、植木鉢置き台部を有する両意匠において、正面部及び左右両側面部の三方を、それぞれ同様の格子面状に形成するに際して、その格子面状の具体的な態様として枠体内を斜め格子状としたものを採用した点は、形態上の特徴としてさほど大きく評価することができず、これらの共通点が類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとは言えない。(5)の、枠囲い状の内方を簀の子状に形成した点は、植木鉢置き台の意匠の分野において、植木鉢載置面の周囲を枠囲いすることは、従来より普通に見られる態様であることを考慮すると、特徴と言えるほどのものではなく、類否判断に及ぼす影響は小さい。(6)の点は、(ロ)及び(ハ)の差異点がある中での共通点であることを考慮すると、共通点として働く効果は弱く、類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとは言えない。そして、意匠全体として、これら共通点が相俟った効果を考慮してもなお、その類否判断に及ぼす影響は、さほど大きいものとは言えず、共通点のみをもって直ちに両意匠の類否を決することはできない。
一方、差異点につき、(イ)の点については、植木鉢置き台部の枠囲い状の態様を具体的にあらわすところであるが、本件登録意匠の、正面部及び左右両側面部の上方にやや浮かせて独立した枠体を形成した点は、イ号意匠の、正面部、左右両側面部及び背面部の上枠桟で枠囲い状を呈するものとした点と大きく構成が異なり、両意匠を前方あるいは斜め前方から俯瞰した際に顕著に観察される形態上の主要な部分に係るところでもあり、両意匠は別異の構成態様のものとの強い印象を看者に与えるところと言うほかなく、(ロ)の点については、凸弧状山形のある枠桟の配設位置は、植木鉢の前方に位置するか後方に位置するかで、両意匠の使用時における視覚上の効果が大きく異なるものと言え、そして、凸弧状山形のある枠桟の配置を前としたか後としたかの差異に止まらず、独立した枠体のものか否かの差異に係るものでもあり、イ号意匠が、正面部の枠体の上枠桟を凸弧状山形のあるものとしている点は、(ハ)の、凸弧状山形の態様の具体的な差異点とも相俟って、両意匠別異の印象をさらに深めさせるものと言え、結局、(イ)、(ロ)及び(ハ)の差異点は、相俟って両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものと言わざるを得ない。
従って、両意匠の形態についての共通点は、前記のとおり、両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとは言えないのに対して、差異点は、両意匠の類否判断に決定的とも言える大きな影響を及ぼすものであり、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとは言えない。
第4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-07-25 
出願番号 意願平10-13913 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 橘 崇生
市村 節子
登録日 1999-08-20 
登録番号 意匠登録第1055351号(D1055351) 
代理人 福迫 眞一 
代理人 朝倉 悟 
代理人 清原 義博 

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