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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする M2
管理番号 1053534 
審判番号 無効2000-35687
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-12-20 
確定日 2002-01-07 
意匠に係る物品 管路の流体混合用撹拌棒 
事件の表示 上記当事者間の登録第982278号「管路の流体混合用撹拌棒」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第982278号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠として、甲第1号証乃至同第5号証を提出した。
すなわち、意匠登録第982278号の意匠(意匠に係る物品「管路の流体混合用撹拌棒」、以下、「本件登録意匠」と称する)は、その意匠登録出願前に頒布された刊行物である、「加工技術」第28巻第8号通巻第323号西暦1993年8月号の、16頁(写真-1)及び17頁第1図〜第3図に記載されたOHL装置の力ツタに係る意匠(甲第1号証、以下、「甲号意匠」と称する)に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠登録を受けることができないものであるから、同法第48条第1項第1号に該当し、その登録を無効とすべきである。
そこで、本件登録意匠と甲号意匠とを対比すると、両意匠に係る物品は、流路に流入してくる流体を撹拌等するものであるから、同一物品であり、形態については、次に示す共通点及び差異点がある。
1.共通点について
全体形状が略キノコ状である点、管路内面に固着される基端部は円筒状を有している点、突出部端側から略半球形状部と、該半球形状部と前記基端部間に挟持され、突出端側に向かって拡張する逆載頭錐台部(円錐台形状部)とで構成されている点において共通する。
2.差異点について
基端部高さと比較した突出端部の高さの点で差異があり、半球形状部の直径において僅かに差異がある。
3.共通点及び差異点が類否判断に及ぼす影響について
(1)共通点について
全体形状が略キノコ状である点は、本件登録意匠の全体的な構成態様の特徴をなすものであり、看者に両意匠が同一種類の形状に属するものであるとの美的印象を与え、その影響は大きい。
また、管路内面に固着される基端部は円筒状を有している点、突出端部は、突出端側に位置する略半球形状部と、該半球形状部と前記基端部間に挟持され、突出端側に向かって拡張する円錐台形状部とで構成されている点は、両意匠の各部の具体的な構成態様における共通点として極めて特徴的であり、看者に両態様の共通性を印象付ける影響は大きい。
(2)差異点について
差異点である基端部の高さについては、パイプに進入してくる流体の螺旋流の重質流体の層厚に応じて設定されるべきものであり、撹拌棒が機能上備えなければならない形態といえる。従って基端部の高さは、単なる設計的事項であって、意匠の特徴部となり得ないものである。
また、半球形状部の直径における徴差についても、軽質流体が衝突する半球状頭部に係る設計的事項であり、看者に与える影響は少ない。
(3)共通点と差異点についての判断
特徴のある本件登録意匠の全体的な構成態様と極めて特徴のある各部の具体的な構成態様における両意匠の共通点は、差異点を凌駕するものであり、両意匠の形態は類似する。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、請求人の申し立て及び理由に対して、何も答弁していない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成6年4月26日に意匠登録出願され、その後平成9年4月4日に、意匠権の設定の登録がなされた、意匠に係る物品を「管路の流体混合用撹拌棒」とする、意匠登録第982278号の願書の記載及び願書に添付された図面の記載のとおりの意匠(本件審決に添付の別紙第1参照)である。
2.甲号意匠
甲号意匠は、本件登録意匠の出願前の、平成5年8月10日に、株式会社繊維社より発行された刊行物、「加工技術」第28巻第8号通巻第323号西暦1993年8月号第17頁の第2図に記載された衝突体(請求人は、「カッタ」と称する)、および、これに関連する記載の内容によって表されたとおりの意匠(甲第1号証、本件審決に添付の別紙第2参照、以下、本件登録意匠と同様の向きで認定する)である。
3.本件登録意匠と甲号意匠の対比
両意匠を対比すると、両意匠は、何れも、管体の流路に流入してくる流体を、衝突させて撹拌するために使用されるものであって、意匠に係る物品が共通し、形態については、以下に示す共通点及び差異点がある。
すなわち、両意匠は、略逆円錐台状に表した上部の上面を球冠状とし、その上部の下面中央下方を短円柱状の下部とし、その上部と下部から成る全体の高さと径を略等しくして略キノコ状に表した構成態様が共通する。
一方、(イ)下部の高さに対する上部の高さについて、本件登録意匠は、約2倍の高さとしているのに対し、甲号意匠は、等倍程度の高さとしている点、(ロ)下部の径に対する上部の径について、本件登録意匠は、約2.2倍の径としているのに対し、甲号意匠は、1.7倍程度の径としている点の構成態様に差異がある。
4.本件登録意匠と甲号意匠の検討
両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討する。
先ず、両意匠に共通するとした構成態様は、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、甲号意匠の外には、殆ど見受けられない構成態様であり、甲号意匠独自の特徴と言うべきである。
次に、差異点のうち、(イ)の下部の高さに対する上部の高さについては、本件登録意匠が甲号意匠より高いとしても、その差異は格別顕著に目立つという程の差異とは言い難いものであって、使用の状況に応じて適宜変更される程度の差異にすぎず、形態全体から観れば、前記の両意匠に共通するとした構成態様を翻して、別異の構成態様を表す程の印象を与えるとは言い難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱と言う外ない。(ロ)の下部の径に対する上部の径については、本件登録意匠が甲号意匠より大きいとしても、その差異は極僅かにすぎないものであって、前記の両意匠の共通点に包含される極微弱な差異にすぎないから、類否判断に及ぼす影響は微弱と言う外ない。
そうとすると、両意匠に共通するとした構成態様については、両意匠に限られた特徴を有すると言い得るところであり、形態上の特徴を強く表象すると共に、形態全体の基調を形成するところであって、意匠の類否を左右するに十分な影響を及ぼすと言わざるを得ない。
一方、前記の(イ)及び(ロ)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、両意匠の醸し出す形態全体の雰囲気を、異にする程の著しい特徴を表出するとは認め難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないと言わざるを得ず、前記の共通点の奏する特徴と基調を凌駕して、類否判断を左右するとは言い難い。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、意匠全体として観察すると、類似するものと言う外ない。
第5.むすび
本件登録意匠は、その意匠登録出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当する意匠と認められるから、同法同条同項の規定に違背して登録されたものであり、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論の通り審決する。
別掲
審理終結日 2001-08-28 
結審通知日 2001-09-03 
審決日 2001-11-06 
出願番号 意願平6-12033 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日比野 香 
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 鍋田 和宣
伊勢 孝俊
登録日 1997-04-04 
登録番号 意匠登録第982278号(D982278) 
代理人 宮川 宏一 
代理人 山中 純一 
代理人 長門 侃二 

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