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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする M2 |
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管理番号 | 1053535 |
審判番号 | 無効2000-35686 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2002-03-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-12-20 |
確定日 | 2002-01-07 |
意匠に係る物品 | 流体導入管 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第980589号「流体導入管」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第980589号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠として、甲第1号証乃至同第4号証を提出した。 すなわち、意匠登録第980589号の意匠(意匠に係る物品「流体導入管」、以下、「本件登録意匠」と称する)は、その意匠登録出願前に頒布された、昭和59年実用新案出願公告第16106号に記載された意匠(考案の名称「自給式混合装置」、甲第1号証、以下、「甲号意匠」と称する)に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠登録を受けることができないものであるから、同法第48条第1項第1号に該当し、その登録を無効とすべきである。 そこで、本件登録意匠と甲号意匠とを対比すると、両意匠に係る物品は、送流系内の流体と送流系外の流体を撹拌等するものであるから同一物品であり、形態については、次に示す共通点及び差異点がある。 1.共通点について 本体が管状であり、本体管路の外部から吸引管が設けられている点、吸引管が本体管路の外面に対して垂直に引き入れられて、滑らかな円弧を描いて直角に曲げられ、管路軸心に沿って流れ方向に延びている点、本体管路の内部にベインが介装されている点、三角形の仕切板が設けられている点において、主要構成要素が共通する。 また、吸引管は、ベイン中心部を貫通している点、吸引管の吹き出し端面は、ベインに接する位置に位置し、流体の下流側に向いた構成となっている点、ベインは、一対の半楕円形円盤を弦側側縁で交差させている点、ベインの交差角は略90度である点、三角形の仕切板は、吸引管の上下にそれぞれ位置して本体管路の横断面をほぼ二分するように設けられている点において、具体的構成要素も共通する。 2.差異点について 吸引管の径、吸引管が本体管路に引き入れられている位置、本件登録意匠の本体管路の両端部は、軸心に垂直な端面を形成しているのに対し、甲号意匠のそれは破断面で表されている点、本件登録意匠の吸引管の両端部は、軸心に垂直な端面を形成しているのに対して、甲号意匠の吹き出し端部のみが軸心に垂直な端面を形成しており、流入端部は破断面で表されている点の他、本体管路から外方に突出する吸引管長さ、吸引管が本体管路に引き入れられている位置については、甲号意匠においては必ずしも明確でない点において差異がある。 3.共通点及び差異点が類否判断に及ぼす影響について (1)共通点について 両意匠の主要構成要素における共通点は、形態的特徴を与える上で極めて重要であり、看者に両意匠の形態の共通性を印象付ける影響は極めて大きい。 また、吸引管が、ベイン中心部を貫通している点、吸引管の吹き出し端面が、ベインに接する位置に位置し、流体の下流側に向いた構成となっている点、ベインが、一対の半楕円形円盤を弦側側縁で交差させている点、ベインの交差角は略90度である点、三角形の仕切板は、吸引管の上下にそれぞれ位置して本体管路の横断面をほぼ二分するように設けられている点は、具体的な構成要素の特徴をなすものであり、これらも看者をして形態の差異を認識させる上でその影響は極めて大きい。 (2)差異点について 吸引管の径の差は、送流管との関係で、送流系外の流体の吸引量を決定する設計事項であり、吸引管が本体管路に引き入れられている位置の差異点は、ベインの上流側に本体管体と接続する管との関係で単なる設計事項であり、これらの相違点は物品が有する機能に基づくものであるから、形態類否判断に影響するとしても意匠類否判断には影響されないものである。すなわち、意匠の要部とはなり得ないものである。 本件登録意匠の本体管路の両端部が、軸心に垂直な端面を形成しているのに対し、甲号意匠のそれは破断面で表されている点、本件登録意匠の吸引管の両端部が、軸心に垂直な端面を形成しているのに対して、甲号意匠の吹き出し端部のみが軸心に垂直な端面を形成しており、流入端部は破断面で表されている点の他、本体管路から外方に突出する吸引管長さ、吸引管が本体管路に引き入れられている位置については、甲号意匠において必ずしも明確でない点において差異があるが、これらの点についても、接続される管と管との位置関係によって決定される設計事項であり、この相違点は物品が有する機能に基づくものであるから、形態類否判断に影響するとしても意匠類否判断には影響されないものである。すなわち、意匠の要部とはなり得ないものである。 (3)共通点と差異点についての判断 特徴的である主要構成要素、及び具体的な構成要素における吸引管とベインの共通点は、差異点を凌駕するものであり、両意匠の形態は類似する。 第2.被請求人の答弁及び理由 被請求人は、請求人の申し立て及び理由に対して、何も答弁していない。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成6年4月26日に意匠登録出願され、その後平成9年2月10日に、意匠権の設定の登録がなされた、意匠に係る物品を「流体導入管」とする、意匠登録第980589号の願書の記載及び願書に添付された図面の記載のとおりの意匠(本件審決に添付の別紙第1参照)である。 2.甲号意匠 甲号意匠は、日本国特許庁の発行(昭和59年5月12日公告)による実用新案公報に所載された、昭和59年実用新案出願公告第16106号の、考案の名称を「自給式混合装置」とする第1図乃至同第4図に記載された管体、および、これに関連する記載の内容によって表されたとおりの意匠(甲第1号証、本件審決に添付の別紙第2参照、以下、本件登録意匠と同様の向きで認定する)である。 3.本件登録意匠と甲号意匠の対比 両意匠を対比すると、両意匠は、何れも、主たる流体が流れる管体の流路に、他の流体を導入して混合させるために使用されるものであって、意匠に係る物品が共通し、形態については、以下に示す共通点及び差異点がある。 すなわち、両意匠は、円管体の一端直近の外周面外側から、円管体の内側中心の略中央まで、細円管体を略逆L字状に表した吸引管を設け、その吸引管の内側先端部に、略直角状に交差する一対の略半楕円形状円盤から成るベインを、円管体の内側略一杯に設け、そのベインを設けた吸引管の内側先端部の上下に、略三角形状の仕切板を、円管体の内側略一杯の垂直な対向状に設けた構成態様が共通する。 一方、(イ)円管体の径に対する長さについて、本件登録意匠は、約4倍の長さとしているのに対し、甲号意匠は、6倍程度の長さとしている点、(ロ)円管体の径に対する吸引管の径について、本件登録意匠は、約3分の1の径としているのに対し、甲号意匠は、2分の1程度の径としている点、(ハ)円管体の径に対する吸引管の外側部分の長さについて、本件登録意匠は、約2分の1の長さとしているのに対し、甲号意匠は、不明である点、(ニ)吸引管の外側の位置について、本件登録意匠は、円管体の長さの約10分の1の一端直近に位置しているのに対し、甲号意匠は、一端直近とまでは言えるが明確な位置は不明である点の構成態様に差異がある。 4.本件登録意匠と甲号意匠の検討 両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討する。 先ず、両意匠に共通するとした構成態様については、本件登録意匠の出願前、この種物品の属する分野において、甲号意匠の外には、殆ど見受けられない態様であり、甲号意匠独自の特徴と言うべきである。 次に、差異点のうち、(イ)の円管体の径に対する長さ、および、(ロ)の円管体の径に対する吸引管の径については、この種物品の属する分野において、管体の径と長さを変更することは、極普通に行われるありふれた手法にすぎないところであって、何れの差異も、使用の状況に応じて適宜変更される程度の差異にすぎず、形態全体から観れば、前記の両意匠に共通するとした構成態様を翻して、別異の構成態様を表す程の印象を与えるとは言い難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱と言う外ない。(ハ)の円管体の径に対する吸引管の外側部分の長さについては、甲号意匠のその長さが不明であるとしても、極普通に行われるありふれた手法にすぎないところであって、形態全体から観れば、前記の両意匠に共通するとした構成態様の共通感を凌駕して、別異の印象を与えるとは言い難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱と言う外ない。(ニ)の吸引管の外側の位置については、甲号意匠の明確な位置が不明であるとしても、何れも円管体の一端直近と言う部分に位置している点に変わりはなく、一端直近と言う限られた部分における差異であって、前記の両意匠の共通点に包含される極微弱な差異にすぎないから、類否判断に及ぼす影響は微弱と言う外ない。 そうとすると、両意匠に共通するとした構成態様については、両意匠に限られた特徴を有すると言い得るところであり、形態上の特徴を強く表象すると共に、形態全体の基調を形成するところであって、意匠の類否を左右するに十分な影響を及ぼすと言わざるを得ない。 一方、前記の(イ)乃至(ニ)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、両意匠の醸し出す形態全体の雰囲気を、異にする程の著しい特徴を表出するとは認め難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないと言わざるを得ず、前記の共通点の奏する特徴と基調を凌駕して、類否判断を左右するとは言い難い。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、意匠全体として観察すると、類似するものと言う外ない。 第5.むすび 本件登録意匠は、その意匠登録出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当する意匠と認められるから、同法同条同項の規定に違背して登録されたものであり、その登録は無効とすべきものである。 よって、結論の通り審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2001-08-28 |
結審通知日 | 2001-09-03 |
審決日 | 2001-11-06 |
出願番号 | 意願平6-12032 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(M2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩井 芳紀 |
特許庁審判長 |
秋間 哲子 |
特許庁審判官 |
伊勢 孝俊 鍋田 和宣 |
登録日 | 1997-02-10 |
登録番号 | 意匠登録第980589号(D980589) |
代理人 | 長門 侃二 |
代理人 | 山中 純一 |
代理人 | 宮川 宏一 |