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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効としない D2
審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない D2
管理番号 1055245 
審判番号 無効2001-35269
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-06-25 
確定日 2002-02-18 
意匠に係る物品 日用品収納キャビネット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1001137号「日用品収納キャビネット」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、登録第1001137号意匠(以下、「本件登録意匠」と言う。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。
1.意匠登録無効の理由の要点
第1に、本件登録意匠はその出願前に公知の甲第1号証の刊行物記載の意匠(以下、「甲第1号意匠」と言う。)と類似するので、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し、登録要件を具備しないものである。
第2に、本件登録意匠は意匠登録出願前にその意匠に属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたもので、意匠法第3条第2項の登録要件を具備しないものである。
したがって、本件登録意匠は、前記各規定に該当するにも拘わらず、登録されたものであるから、意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
2.本件登録意匠を無効とすべき第1の理由(無効事由1)
本件登録意匠と甲第1号意匠とを対比すると、抽斗正面部の平面部の数及び配置の相違は、類似の範囲に属する部分的な微差に過ぎない。このことは、本件登録意匠と同じ物品に係る意匠の登録例(甲第4号証と甲第5号証の登録第997780号意匠とその類似第3号意匠)で裏付けられる。また、「建築用板材」に関する甲第20号証で示す審決(昭和56年審判第1829号)の観点に従えば、両意匠の凹凸平面部の数の違いは微差であって、類否判断に際し軽視すべきであると思料する。両意匠には、平面部と段差平面部と凹部平面部が繰り返されるという共通の単調とも云えるリズム感、平面部等を縦横の線の配列で構成し斜めの線がないという共通の安定感があり、看る者に両意匠が類似の意匠であるとの印象を惹き起こさせている。また、天板の形状において相違があるが、何れの形状もありふれた形状であって、軽視すべき部分である。車輪の有無の相違も、本件登録意匠の出願前からこの種の物品が車輪を付設したり、しなかったりする場合があることから、軽視すべき部分である。
なお、甲第7号証の、被請求人発行のカタログには、本件登録意匠の実施品と甲第1号意匠とが共に共通の「チェスト」シリーズ製品として並べて位置付けられていることからも、被請求人は両者を類似する商品として、自認しているものと理解される。
以上のとおり、両意匠は、抽斗前面板の形状に相違があるが、それはきわめて軽微な差異にすぎず、両意匠を全体としてみれば、共通の形態に由来する類似の印象が支配的であって、両意匠は類似の範囲内にあると云うべきである。
なお、被請求人が、本件登録意匠を対象とする判定(判定2001-60040号)をもって、「この物品分野における意匠の類否の幅は、極めて狭隘で、ささやかなものである」と判断するのは誤りであり、被請求人はこの観点にたって、ことさらに類似の幅を狭く解釈して、答弁している。そして、判定における本件登録意匠に対する認定は、幾つかの微差を軽視すれば、甲第1号意匠に対してもそのまま当てはまるものであり、この点からも、両意匠は類似関係にあると云うべきである。
3.本件登録意匠を無効とすべき第2の理由(無効事由2)
本件登録意匠の、上下方向3段のフレーム状棚板と四隅の支柱よりなる枠体を有し、棚板、支柱及び天板で形成される各空間内に、正面から見て横長の抽斗を挿入したものとした基本的態様、及び、抽斗前面板によって左右の支柱が隠れるような具体的態様は、甲第1号証、甲第6号証、甲第8号証ないし甲第11号証で示す物品の意匠のように、本件登録意匠の出願前から、日用品キャビネットとして一般に販売され、家庭でも使用されていて、広く知られた形状である。
天板の形状や車輪の有無は、本件登録意匠の出願前から知られたありふれた形状であり、様々な物品に用いれれている形状を、そのまま本件登録意匠にあらわした程度にすぎないものであって、本件登録意匠の創作性に寄与していることはない。
本件登録意匠の創作性は主として抽斗前面板の形態に求められると考えられるが、本件登録意匠の抽斗前面板は次に説明するように、ありふれた形状、模様であり、当業者が容易に創作し得たものである。
つまり、本件登録意匠の抽斗前面板は、1個所の中央平面部と2個所の凹部平面部と両側の端部平面部とを有し、これらの間を段差平面部によって連接して凹凸面としたものである。本件登録意匠のようなプラスチック製品の場合に、抽斗前面板の強度を補強し、剛性度を高めるために、リブを形成したり、本件登録意匠の抽斗前面板のような凹凸形状を施すことは常套手段である。このような補強のために、正方形、長方形を並べた抽斗前面板は、甲第1号証、甲第9号証、甲第13号証ないし甲第15号証に見られ、更にはプラスチック製収納容器である甲第16号証、甲第17号証の前面部にも使われているような、ありふれた形状である。また、特許庁が公表している甲第12号証の(実例で見る意匠審査基準の解説。宮滝恒雄著)においても、「平面的形状」の事例として、「正方形状、長方形状」等を挙げると共に、「ありふれた模様」として、「模様は凹凸、・・・・の表現方法が極めて普通で容易に創作できる場合も含む。」としている。このように、本件登録意匠の「ありふれた形状、模様」に相当する幾何学的な基本形態の「正方形、長方形」と認められる「中央平面部」、「端部平面部」を、「段差平面部」により連接して「凹凸面」とする形態、換言すれば単純な連結形は、周知の形状などに基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠に該当し、創作性の程度が低いことは明らかである。
更に、本件登録意匠のような抽斗前面板の抽斗引手部は、甲第14号証、甲第15号証、甲第18号証、甲第19号証にも見られ、ありふれた形状である。
従って、本件登録意匠は甲第1号証、甲第6号証、甲第8号証ないし甲第11号証で示す物品のような広く知られた基本的態様等に、ありふれた形状、模様から構成された抽斗前面板を組み合わせたにすぎず、当業者が容易に創作ができたと云うべきである。
なお、被請求人が非難する「細かく要素分解」したものである旨の答弁は失当である。すなわち、意匠はその全体として把握し問題とされるべきであって、単純に要素分解をすべきでないことは論を待たないところであるが、その様な要素を当該物品が具有する特異な事情、関与する業界の慣習などからもたらされる構成として表現することが、該業界において携わる多くの者にとり容易に想到し得て、表されるものと認められる客観的な事実がある限り、それを容易な創作と言って差し支えないのである。「繊維テープ溶断ロール」に関する甲第21号証の審決、甲第22号証の判決(平成3年(行ケ)第191号)の事例から見ても、本件審判請求に当たり請求人が立証した各甲号証の多くが知られていたからには、本件登録意匠が創作容易であるとする論拠が正当な主張であると認められるものと確信する。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、要旨以下のとおり主張した。
1.本件登録意匠出願前公知意匠との類否について
本件登録意匠に関する判定事件における本件登録意匠とイ号意匠との類否判断をみると、この物品分野における意匠の類否の幅は、意匠の要部がほぼ同一の凹凸構成を採っている場合であっても、なお段差部の傾斜の有無などにより左右されてしまう程度のものであり、言い換えれば極めて狭隘で、ささやかなものと言うほかはないものである。この判定事件におけるイ号意匠は、その抽斗前面板の造形構成上、本件審判事件において請求人が提出した全証拠に照らしても、これ以上に本件登録意匠に近似する意匠は見当たらない。すなわち、甲第1号意匠は、抽斗前面板の構成において、基本的に別異の構成のものである。なお、商品のシリーズ化の如何は、意匠外の要素によっても左右されるものであり、意匠法上の類否判断とは同視し得ない。従って、本件登録意匠が本件登録意匠出願前の公知意匠と類似するとの請求人の主張には理由がない。
2.本件登録意匠の創作容易性如何について
意匠というものは、細かく要素分解してゆけば、いずれは、全てが周知形状である曲面や平面に分解されてしまうものであるから、そのような安易な要素分解による創作容易性判断はみだりに行い得ない。また、本件登録意匠の創作容易性判断に際しては周知性が要件とされる。従って、ここで創作容易性が認められる場合とは、全体形状がそのまま周知の場合か、そうでない場合においても、付加・置換部位の付加・置換行為が広く行われており、付加・置換部位の態様がそのまま周知である場合に限られると思料する。
ところが、請求人は、本件登録意匠について、「甲第1号証、甲第6号証、甲第8号証ないし甲第11号証で示す物品のように広く知られた基本態様等に、ありふれた形状、模様から構成された抽斗前面板を組み合わせたに過ぎず、当業者が容易に創作ができたと云うべきである。」と主張し、本件登録意匠の全体形状をそのまま周知としないばかりか、抽斗前面板についてもそのまま周知とはせず、「ありふれた形状、模様」から「構成された」と主張する。すなわち、本件登録意匠を、全体と抽斗前面板に分解し、さらに抽斗前面板につき「正方形」、「長方形」、「連続性」等の各要素に分解して周知と主張するのである。このような主張は、到底、創作容易性判断の根拠とはなり得ない。すなわち、本件登録意匠の抽斗前面板の態様は、凹部、凸部のそれぞれの数、大きさ、高さ、幅、それらの全体的な組み合わせバランス(配置)に独自の創作がなされたものであり、その態様は周知ではない。そして、そのような独自の創作に係る抽斗前面板を備えた本件登録意匠の全体の形状も周知ではない。
従って、本件登録意匠が本件登録意匠出願前に広く知られた形状等に基づいて容易に創作できたとする請求人の主張には理由がない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書及び願書に添付の図面の記載によれば、平成7年6月2日に意匠登録出願をし、平成9年10月9日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1001137号意匠であり、意匠に係る物品を「日用品収納キャビネット」とし、その形態を、願書及び願書に添付の図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。
2.甲第1号意匠
甲第1号意匠は、甲第1号証に示す意匠であって、アイリスオーヤマ株式会社が1994年に発行したカタログ「IRIS CATALOG′94」第22頁の中段に所載の「ワイドチェスト603D」と表示の写真版により現された「日用品収納キャビネット」の意匠であり、その形態を、当該写真版に現されたとおりとするものである(別紙第2参照)。
3.無効事由1について
請求人は、本件登録意匠は甲第1号意匠と類似するので、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当し、登録要件を具備しない旨主張するので、この点につき審案する。
本件登録意匠と甲第1号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、(1)全体が、四隅に支柱(縦枠)を配し、上端に天板を配し、中間部数段と下端に、それぞれの外縁に横桟を配してフレーム状とした棚を設け、上下方向に数段(3段)とした略直方体状の箱枠体を形成して、棚上方に形成された各空間内に、抽斗を挿脱自在に挿入し、抽斗の前面、側面及び後面が箱枠体の外側から見えるように形成した基本的な構成態様のものである点、また、その具体的な態様において、(2)天板及び各棚の前端は、前支柱よりも前方にやや突出して設けている点、(3)全体の構成比率につき、奥行を横幅及び高さよりも短くし、抽斗の配置構成につき、正面視横長の同形同大の抽斗を上下方向に3段配している点、(4)抽斗前面の左右端辺を、側面側にやや回り込ませ、抽斗側面から左方あるいは右方にやや突出状として、抽斗前面を、箱枠体の横幅一杯に形成している点、(5)抽斗前面板は、全体を平面視で緩やかな凸弧状のものとした上で、面の一部を凹陥させて、正面視四角形状の凹平面とし、その余の面を、凹平面に対して突出した正面視四角形状の凸平面として、各凸平面は相互に略面一致状を呈し、凹平面と凸平面が左右方向に交互に配列状の凹凸面状のものとし、左右端部の平面(以下、「端部凸平面部」と言う。)を、その内隣の面(以下、「左右凹平面部」と言う。)よりも幅が狭い凸平面としている点、(6)抽斗引き手部は、抽斗前面板の上端辺から前方に突出して略逆L字状に屈曲して成る、抽斗前面上端の全体に亘って正面視横帯状を呈する、鍔縁状のものとしている点、(7)天板は、上面周縁が四角形状の額縁枠状を呈するものとしている点、がある。
一方、差異点として、(イ)抽斗前面板につき、凹平面と凸平面をそれぞれ正面視四角形状とした上で、本件登録意匠は、中央のやや広い幅(抽斗前面の横幅の略1/4幅)の凸平面(以下、「中央凸平面部」と言う。)1個と、それと同程度の幅とした、その両隣の左右凹平面部2個と、それよりも幅が狭い端部凸平面部2個の、計5個の平面部を組み合わせているのに対して、甲第1号意匠は、中央のやや広い幅(抽斗前面の横幅の略1/3幅)の凹平面(以下、「中央凹平面部」と言う。)1個と、その両隣の、端部凸平面部と同程度の幅とした凸平面(以下、「中央隣凸平面部」と言う。)2個と、その外隣の、中央凹平面部よりもやや幅が狭い左右凹平面部2個と、それよりも幅が狭い端部凸平面部2個の、計7個の平面部を組み合わせている点、(ロ)天板につき、本件登録意匠は、額縁枠状を上面周縁に沿って四角形状を呈する溝部を形成して成るものとし、溝部内の平面部を数本(3本)の横溝を等間隔に設けて区分けしているのに対して、甲第1号意匠は、四角形状の額縁枠状内を平坦な凹陥面としている点、(ハ)箱枠体下面四隅の車輪の有無(甲第1号意匠に有り。)の点、がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点のうち、(1)ないし(4)、(6)及び(7)の点は、いずれも従来から見られる態様であって、特徴と言えるほどのものではなく、類否判断に及ぼす影響は小さい。(5)の点は、抽斗前面板の具体的な態様に係るものであるが、抽斗前面板全体に係る(イ)の凹平面と凸平面の数、構成比率(幅等)、それらの全体的な組み合わせバランス(配置)についての具体的な差異がある中での共通点であり、この種意匠の分野において、抽斗前面板を凹凸状に形成すること自体、また、それら凹平面と凸平面を正面視四角形状とすること自体は、共に従来から行われており、抽斗前面板をそれぞれ正面視四角形状とした凹平面と凸平面が左右方向に交互に配列状の凹凸面状とした共通する態様は、特徴とは成り得ず、そして、端部凸平面部を左右凹平面部よりも幅が狭い凸平面とした共通する態様も、抽斗前面板において部分的に看取されるに過ぎないものであり、以上の点を勘案すると、抽斗前面板の共通する態様は、両意匠の類否を決するほどの共通感を惹起する特徴とは成り得ないと言うべきであり、その共通点として働く効果は弱く、類否判断に及ぼす影響は、さほど大きいものとは言えない。そして、意匠全体として、これら共通点が相俟ったとしても、その類否判断に及ぼす影響は、さほど大きいものとは言えず、共通点のみをもって直ちに両意匠の類否を決することはできない。
一方、差異点につき、(イ)の点は、抽斗前面板の全体に係る態様を具体的にあらわすところであり、顕著に観察される形態上の主要な部分に係るところであって、前記のとおり、共通する態様に格別の特徴の認められない両意匠にあっては、抽斗前面板の、それぞれ正面視四角形状とした凹平面と凸平面の数、構成比率(幅等)、それらの全体的な組み合わせバランス(配置)についての具体的な態様が両意匠の特徴を成すところとせざるを得ず、本件登録意匠においては、中央凸平面部1個と左右凹平面部2個を同程度の幅で、やや広い幅とし、それらよりも幅が狭い端部凸平面部2個との計5個の正面視四角形状の平面部の全体的な組み合わせバランスに係る抽斗前面板の態様が、本件登録意匠の特徴を成しており、一方、甲第1号意匠においては、中央凹平面部1個をやや広い幅とし、左右凹平面部2個を中央凹平面部よりやや狭い幅とし、中央隣凸平面部2個と端部凸平面部2個を左右凹平面部より狭い幅として、計7個の正面視四角形状の平面部の全体的な組み合わせバランスに係る抽斗前面板の態様が、甲第1号意匠の特徴を成しており、これらの両意匠の特徴は、大きく異なるものと言え、両意匠を別異のものと印象付けるに十分なものであって、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものと言うほかない。
なお、(ロ)の点は、(7)の共通する態様がある中での差異であり、本件登録意匠の天板の態様は、具体的な態様はともかく、その概要については従前に見られる程度のものであり、甲第1号意匠のものも従前に見られ、いずれも特徴と言えるほどのものではなく、その類否判断に及ぼす影響は微弱である。また、(ハ)の点も、この種意匠の分野において、車輪の付設は適宜選択される程度のことであり、その類否判断に及ぼす影響は微弱である。
従って、両意匠の形態についての共通点は、前記のとおり、両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとは言えないのに対して、差異点については、とりわけ、(イ)の点は、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものであり、他にも、類否判断に及ぼす影響は微弱ではあるが、(ロ)及び(ハ)の点の差異が認められるところでもあって、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、本件登録意匠は、甲第1号意匠に類似するものとは言えない。
4.無効事由2について
請求人は、本件登録意匠は、甲第1号証、甲第6号証、甲第8号証ないし甲第11号証で示す物品のような広く知られた基本的態様等に、ありふれた形状、模様から構成された抽斗前面板を組み合わせたにすぎず、当業者が容易に創作できたものである旨主張するので、この点につき審案する。
本件登録意匠の形態につき、前記の(1)の、全体が、四隅に支柱(縦枠)を配し、上端に天板を配し、中間部数段と下端に、それぞれの外縁に横桟を配してフレーム状とした棚を設け、上下方向に数段(3段)とした略直方体状の箱枠体を形成して、棚上方に形成された各空間内に、抽斗を挿脱自在に挿入し、抽斗の前面、側面及び後面が箱枠体の外側から見えるように形成した基本的な構成態様は、甲第8号証で示す「家庭用品新聞」(平成3年2月11日発行)第22頁所載の「3691」と表示の意匠(別紙第3)、甲第9号証で示すカタログ(KIKUYA CO.,LTD.発行、「’94 BEST SELLECTION SPRING & SUMMER ’94.2〜’94.8」)第9頁所載の「M-30G」と表示の意匠(別紙第4)等において見られ、(2)の、天板及び各棚の前端は、前支柱よりも前方にやや突出して設けた態様、及び、(4)の、抽斗前面の左右端辺を、側面側にやや回り込ませ、抽斗側面から左方あるいは右方にやや突出状として、抽斗前面を、箱枠体の横幅一杯に形成した態様は、別紙第4で示す意匠、甲第6号証で示すカタログ(KIKUYA CO.,LTD.発行、「’91 BEST SELLECTION SPRING & SUMMER」)第3頁所載の「♯8000」と表示の意匠(別紙第5)、甲第8号証で示す新聞第22頁所載の「3694」と表示の意匠(別紙第6)等において見られ、(3)の、全体の構成比率につき、奥行を横幅及び高さよりも短くし、抽斗の配置構成につき、正面視横長の同形同大の抽斗を上下方向に3段配した態様についても、抽斗の段数は異なるものの、別紙第5で示す意匠、別紙第6で示す意匠等において見られ、(6)の、抽斗引き手部は、抽斗前面板の上端辺から前方に突出して略逆L字状に屈曲して成る、抽斗前面上端の全体に亘って正面視横帯状を呈する、鍔縁状のものとした態様も、甲第18号証で示すパンフレット(TENMA PLASTICS CO.,LTD.昭和54年10月20日発行)表頁右下所載の意匠(別紙第7)、甲第19号で示すカタログ(株式会社ヨシカワ、1933年1月発行「YOSHIKAWA」)中頁所載の「7512」と表示の意匠(別紙第8)等において見られ、以上によれば、(1)ないし(4)及び(6)の態様は、それぞれ本件登録意匠の出願前においてありふれたものであって、広く知られた態様と言うことができる。そうすると、本件登録意匠は、その形態において、本件登録意匠の出願前に広く知られたものを包含し、当業者が容易に創作をすることができたとする態様を有するものとは言える。
しかしながら、(5)及び(イ)の、抽斗前面板は、全体を平面視で緩やかな凸弧状のものとした上で、面の一部を凹陥させて、正面視四角形状の凹平面とし、その余の面を、凹平面に対して突出した正面視四角形状の凸平面として、各凸平面は相互に略面一致状を呈し、凹平面と凸平面が左右方向に交互に配列状の凹凸面状のもので、中央のやや広い幅(抽斗前面の横幅の略1/4幅)の凸平面(以下、「中央凸平面部」と言う。)1個と、それと同程度の幅とした、その両隣の左右凹平面部2個と、それよりも幅が狭い端部凸平面部2個の、計5個の平面部を組み合わせた態様については、例えば、甲第13号証で示す意匠登録第896711号公報(平成6年4月18日発行)所載の意匠(別紙第9)の抽斗前面板は、中央を全幅の略1/3幅の凹平面とし、その両隣をそれよりもやや幅の狭い凸平面とした、それぞれ正面視四角形状の3平面を組み合わせたものであり、本件登録意匠のものとは異なり、甲第16号証で示すパンフレット(Rubbermaid社、1991年発行)表頁所載の「2212」と表示の収納容器の意匠(別紙第10)は、本件登録意匠に係る物品「日用品収納キャビネット」とは異なる物品である上に、その凹凸態様は、容器本体の周側面の一端面である前面部において、さらにその一部分である略下半部における面の凹凸態様に過ぎず、本件登録意匠のものとは明らかに異なり、結局、本件登録意匠の上記のとおりの抽斗前面板の具体的な態様は、各甲号証のいずれにも見られない。
そして、この種意匠の分野において、抽斗前面板を凹凸状に形成すること自体、また、それら凹平面と凸平面を正面視四角形状とすること自体は、共に別紙第9で示す意匠にも見られるように従来から行われていることであるとしても、抽斗前面板の態様につき、凹平面と凸平面の態様を具体的に決定し、それらをどのように関連づけ、構成し、それらの組み合わせによりどのように具体化するか、すなわち、それぞれ正面視四角形状とした凹平面と凸平面の数、構成比率(幅等)、それらの全体的な組み合わせバランス(配置)についてどのように具体化するかの選択は多様にあると認められるところ、本件登録意匠は、一連の創意工夫の結果、抽斗前面板につき、中央凸平面部1個と左右凹平面部2個を同程度の幅で、やや広い幅とし、それらよりも幅が狭い端部凸平面部2個との計5個の正面視四角形状の平面部の全体的な組み合わせバランスを達成したものであり、この点につき容易に創作をすることができたとする証拠は認められない。
また、(ロ)の、天板につき、額縁枠状を上面周縁に沿って四角形状を呈する溝部を形成して成るものとし、溝部内の平面部を数本(3本)の横溝を等間隔に設けて区分けしている態様についても、その概要は従前に見られる程度のものであるとしても、その具体的な態様は各甲号証のいずれにも見られず、広く知られた態様と言うことはできない、
さらに、本件登録意匠は、抽斗前面板の態様を上記のとおりのものとし、その他の構成各部の態様と相俟って一定のまとまりを表出するに至ったものであり、この全体としてのまとまりを形成した点についても、容易に創作をすることができたとする証拠が認められない。
してみると、結局、本件登録意匠の形態につき、容易に創作することができたものとは、提出された証拠のみでは認めることができないから、本件登録意匠は、その出願前に日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づき当業者が容易に創作をすることができた意匠であるとすることはできない。
5.結び
以上のとおりであって、無効事由1及び無効事由2について、請求人の主張する理由及びその提出した証拠によっては、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2001-12-13 
結審通知日 2001-12-18 
審決日 2002-01-07 
出願番号 意願平7-15716 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (D2)
D 1 11・ 121- Y (D2)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 太田 茂雄 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 西本 幸男
市村 節子
登録日 1997-10-09 
登録番号 意匠登録第1001137号(D1001137) 
代理人 福迫 眞一 
代理人 日比谷 征彦 
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