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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) F2
管理番号 1055263 
判定請求番号 判定2001-60105
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2002-04-26 
種別 判定 
判定請求日 2001-09-19 
確定日 2002-02-28 
意匠に係る物品 紙ホルダ 
事件の表示 上記当事者間の登録第0994095号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「紙ホルダ」の意匠は、登録第994095号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第一 請求の趣旨及び理由
請求人は、「結論同旨の判定を求める。」と申し立て、大要以下のとおり主張し、甲第1号証乃至甲第10号証を提出している。
1.請求の理由
本件判定請求人は、本件判定請求に係る登録第994095号意匠(意匠に係る物品「紙ホルダ」)の意匠権者であり、その登録意匠及び登録事項の内容は、その意匠公報及び意匠登録原簿に記載のとおりである(甲第1号証及び甲第2号証)。
本件判定被請求人が現在製造しているイ号意匠の紙ホルダ(以下「イ号意匠」といい、その意匠を特定するために、甲第3号証として、イ号図面を提出する)は、本件登録意匠に係る意匠権を侵害するものであるので、本件判定請求人は、その実施者であるエクソンモービルマーケティング有限会社、野崎印刷紙業株式会社、及び、本件判定被請求人である株式会社草セルの各3者に対して、平成13年6月29日付でその旨の通告書を送付した(甲第4号乃至甲第6号証)。
これに対して、上記3者を代表する本件判定被請求人である株式会社草セルから平成13年7月27日付で、上記通告書に対する回答書を受領し、同回答書において、本件判定被請求人は、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない」旨主張するので(甲第7号証)、特許庁による判定を求める次第である。
2.本件登録意匠の手続の経緯
登録第994095号意匠は、甲第1号証及び甲第2号証として提出した意匠公報及び意匠登録原簿記載の通りである。なお、本件登録意匠は、審査中に2回の拒絶理由を受け、これに対し意見書及び出願変更届を提出することによって当該拒絶理由を解消するに至っているので、これらの書類を甲第8号証及び甲第9号証として提出する。
3.本件登録意匠
本件登録意匠は、その意匠に係る物品を「紙ホルダ」とし、その意匠の形態は、甲第1号証として提出した登録994095号の意匠公報に記載の通りである。
即ち、本件登録意匠の形態の要旨は、その意匠に係る物品は「紙ホルダ」である。その正面からの形態は、表側挟持板が横長矩形に現れ、その中央部上部の背面側から吊下げ部が形成されている。その側面からの形態は、一対の表側挟特板と裏側挟持板が略逆U字状に一体的に形成されされており、かつ、裏側挟持板はその下部が内側に折り返されている。さらに、その側面からの形態において、裏側挟持板の上端部には断面円形状の部分が一体的に形成されており、その約半分は外側に略半円状に膨出するように形成されている。その背面からの形態において、裏側挟持板の上端部にはその横長矩形の長手方向に沿って上記膨出部が形成されている。
4.イ号意匠
イ号意匠は、甲第3号証として提出するイ号図面に表された通りである。
イ号意匠の形態の要旨は、その意匠に係る物品名はイ号意匠自体に明示されていないが、甲第7号証で提出する平成13年7月27日付の本件被判定請求人の回答書では、イ号意匠の物品名を「紙ホルダ」と称している。その正面からの形態は、表側挟持板が横長矩形に現れ、その中央部上部の背面側から吊下げ部が形成されている。その側面からの形態は、一対の表側挟特板と裏側挟持板が略逆U字状に一体的に形成されされており、かつ、裏側挟持板はその下部が内側に折り返されている。さらに、その側面からの形態において、裏側挟持板の上端部には外側に略半円状に膨出するように形成された部分が一体的に形成されている。但し、その内側は、断面円形状に形成した部分の一部を僅かに切り欠いたように形成されている。その背面からの形態において、裏側挟持板の上端部にはその横長矩形の長手方向に沿って上記膨出部が形成されている。
5.本件登録意匠とイ号意匠との比較
(1)両意匠の共通点
意匠に係る物品は、いずれも「紙ホルダ」であるので一致している。
基本的かつ具体的な構成態様は、表側挟持板が横長矩形に現れ、その中央部上部の背面側から吊下げ部が形成され、裏側挟持板の上端部にはその横長矩形の長手方向に沿って膨出部が形成されている。また、その側面からの形態は、一対の表側挟特板と裏側挟持板が略逆U字状に一体的に形成されており、かつ、裏側挟持板はその下部が内側に折り返されている。さらに、裏側挟持板の上端部には外側に略半円状に膨出するように形成されている。
(2)両意匠の差異点
(イ)本件登録意匠の裏側からの形態においては、裏側挟持板の上端部には断面円形状の部分が形成されている。
(ロ)これに対して、イ号意匠の側面における同一個所部分の形態においては、本件登録意匠における「断面円形状の部分」の内側の部分が僅かに切り欠いてあり、断面円形状には、形成されていない。
この点の比較参考資料として、本件登録意匠とイ号意匠の右側面図の比較を行った拡大図を甲第10号証として提出する。
6.周辺意匠
甲第8号証、実開昭60-24579号
甲第7号証、実用新案登録第2592157号公報
実開昭48-93048号
実開昭58-140760号
7.本件登録意匠とイ号意匠の類否
両意匠の基本的構成態様及具体的態様はほぼ一致しており、その差異は、側面形態においてのみ観察される裏側挟持板の上端部形態が、完全な「断面円形状であるか、当該部分の内例部分がわすかに切欠いてあり断面円形状には形成されていないかの点のみである。
本件物品の全体構成又は、その側面の全体構成との関係におけるその形状の占めるバランスを見ると、その占有率は極めて少ない構成部分である。そして、当該部分が、完全な「断面円形状」であるか、当該部分の内側部分がわずかに切欠いてあり断面円形状には形成されていないかの点は、その側面においてのみ表れる形態であり、例えば、背面、平面、底面等からの観察においては、いずれも背面に表れた膨出部としてのみ認識されるものであることから明らかな通り、その他の面からの観察では認識しえない部分である。
更に、その差異点であるイ号意匠の「わずかに切欠いてあり断面円形状には形成されていない部分」は、その切欠部分が例えば半円状ぐらいまで当該切欠部分の存在が一瞥して認識される程には明確に形成されていない。その上、その切欠部分は、直角に切落とすことなく、その先端に向かって先細るように形成されていることから、極くわずかにその両端が結合しているようにも誤認観察され得る程に「断面円形状」に近似している形態である。
よって、この点は意匠の類否判断に与える影響は微弱であると考えるのが相当である。
以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に与える影響は微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、両意匠の類否の判断に与える影響は、その結論を左右するまでには至らないものである。
8.むすび
従って、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
第二 被請求人の答弁
1.被請求人は、「イ号図面に示す意匠は登録第994095号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」と答弁し、大要以下のとおり答弁し、乙第1号証乃至乙第6号証を提出している。
本件登録意匠は横長の表側挟持板及び裏側挟持板を上方部において中空管状体を介して一体に結合すると共に、該表側挟持板と裏側挟持板との間に空間部を形成し、この空開部の上方部には中空管状体の壁が張り出した形となり、裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成し、横方向の略中心部位置において吊り下げ片を中空管状体に回動可能に支持してなる態様のものである。なお、中空管状体の壁は請求人提出に係わる甲第10号証の図面に朱記符号aをもって示す(これを乙第1号証として提出する。)。
2.イ号意匠は横長の表側挟持板及び裏側挟持板を上方部において一体に結合すると共に、該表側挟持板と裏側挟持板との間に空間部を形成し、裏側挟持板の上端部を外側に湾曲させて膨出部を形成し、裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成し、横方向の略中心部位置において吊り下げ片を中空管状体に回動可能に支持してなる態様のものである。
3.本件登録意匠の特徴
紙ホルダ、カレンダー保持具等の表示体を吊り下げて支持する支持具の意匠において、表側挟持板と裏側挟持板とを上方部において一体に結合すると共に両挟持板の間に空間部を形成し、下方部に被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様は、例えば下記文献に照らし本件登録意匠出願前に公知の態様であることが判る。
(1)実関昭48-93048号公報(乙第2号証)
(2)実開昭58-140760号公報(乙第3号証)
(3)実開昭60-24579号公報(乙第4号証)
そうすると、本件登録意匠における特徴は、表側挟持板及び裏側挟持板を上方部において中空管状体を介して一体に結合すると共に、裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様にあると思われる。
しかしながら、「表側挟持板及び裏側挟持持板を上方部において中空管状体を介して一体に結合する態様」(A態様)は乙第4号証に照らし公知の態様であり、また「裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様」(B態様)は、乙第2号証、乙第3号証に照らし同様に公知の態様であることが判る。
上記によれば、本体登録意匠の各構成要素はいずれも公知の態様にすぎず、従って本件登録意匠は単に公知の態様を組み合わせたにすぎないことが明らかである。
ところで、紙ホルダ等の表示体支持具における公知の態様は上記以外に次の点においても見られるものである。
即ち、「裏側挟持板の上端部を外側に湾曲させて膨出部を形成する態様」(C態様)は乙第5号証に徴し公知の態様であり、また「表側挟持板及び裏側挟持板のそれぞれの下方先端部を内側に折り曲げて挟持縁を形成する態様」(D態様)は乙第4号証及び乙第5号証に徴し公知の態様であることが判る。
そうすると、本件登録意匠は、上記に述べたA、B、C、Dの4つの公知の態様のうち、(1)乙第4号証に照らし公知の態様であること明らかな「表側挟持板及び裏側挟持板を上方部において中空管状体を介して一体に結合する態様」(A態様)と、(2)乙第2号証、乙第3号証に照らし公知の態様であること明らかな「裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様」(B態様)とを選択し、これら2つの公知の態様を、同様に公知の態様である「表側挟持抜と裏側挟持板とを上方部において一体に結合すると共に両挟持板の間に空間部を設け、下方部に被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様」(これは公知の基本構成態様といえる)と組み合わせて意匠を構成したものと考えられる。(3)上記の点に徴せば、本件登録意匠は、上記A態様とB態様とを選択して組み合わせた点に特徴があるものと解するほかはなく、この点は本件登録意匠の出願における審査過程において乙第4号証(A態様とD態様との組み合わせが開示されている)、が拒絶引例として引用され(請求人提出に係わる甲第8号証)、これに対し、出願人が意見書(甲第8号証)の中でB態様とD態様とを対比してその相違点を主張していることを参酌してみても明らかである。
してみれは、本件登録意匠は公知の態様であるA、B、C、Dのうち、A態様とB態様とを選択して組み合わせることによって意匠構成上の特徴があると認定されたものと解されるから、本件登録意匠は「A態様とB態様の組み合わせとは異なる他の公知態様の組み合わせからなる意匠」とは別異の意匠であるといわなければならない。
4.本件登録意匠とイ号意匠との対比
上記の如く、本件登録意匠は公知の態様であるA、B、C、Dのうち、A態様とB態様とを選択して組み合わせた点に意匠構成上の特徴があり、「A態様とB態様の組み合わせとは異なる他の公知態様の組み合わせからなる意匠」とは別異の意匠であるといえる。
このことから、本件登録意匠は「B態様とC態様との組み合わせからなる意匠」とは別異の意匠であるというべきである。
従って本件登録意匠は、「裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様」(B態様)と、「裏側挟持板の上端部を外側に湾曲させて膨出部を形成する態様」(C態様)との組み合わせからなる意匠とは別異の意匠といえる。イ号意匠は上記B態様とC態様との組み合わせからなる意匠であるから、結局、イ号意匠は本件登録意匠とは別異の意匠であること明らかである。
5.意匠構成上から見た相違点
(1)紙ホルダ等の表示体支持具は、全体的に見れは単調な短形形状体であるから、その側面形状に意匠上の特徴が現れるものである。その側面形状において本件登録意匠の最も特徴が表れている点は、表側挟持体と裏側挟持体との上方結合部に介在して設けた中空管状体である。
この中空管状体は全体の構成比とは関係なく目立つ部分であり、看者の最も注意を惹く部分といえる。中空管状体は円を描く丸い線模様即ち、球面状の線模様を表しているから、非球面状の線模様とは別個の線模様して認識される。
従って、球面状の線模様である中空管状体は、非球面状の線模様である表側挟持板及び裏側挟持板とは別個の線模様を構成するものとして明確に認識され、それがため中空管状体は全体の面積に占める割合が小さいにもかかわらず目立つ部分となっている。球面状の線模様と非球面状の線模様とから構成される比較的単純な意匠構成においては通常このようなことがいえる。
(2)これに対し、イ号意匠において、裏側挟持板の上端部に湾曲形成された膨出部は裏側挟持板の延長部に当たり(即ち膨出部は裏側挟持板の1構成要素である)、直線状の線模様に連続した曲線状の線模様として表れている。つまり、イ号意匠において裏側挟持板は、直線状の線模様と、これに連続する曲線状の、即ち非球面状の線模様(膨出部)とから構成されるのである。
従って、膨出部は表側挟持板及び裏側挟持板とは連続した線模様として認識されるものであって、両挟持板とは別個の線模様であると認識されることはない。
このように、本件登録意匠における中空管状体とイ号意匠における膨出部とは看者に与える印象を異にし、両意匠を全体的に観察したとき看者に別異感を与えるものである。
(3)本件登録意匠においては、表側挟持板と裏側挟持板との間に形成される空間部の上方部に、中空管状体の壁a、即ち曲面状の壁が張り出している態様となっている。
これに対し、イ号意匠においては中空管状体に相当する態様を備えてないから、上記空間部の上方部に曲面状の壁が張り出している態様はなく、このような観点からも本件登録意匠とイ号意匠とは別異の意匠として認識されるものである。
以上説明したように、本件登録意匠とイ号意匠とは意匠の構成において明確な相違があり、且つ本件登録意匠は上記したA態様とB態様との組み合わせに限定された意匠として把握すべきものであるから、これらの点を勘案するとイ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないこと明らかである。
6.イ号意匠と乙第5号証との関係
(1)イ号意匠は乙第5号証の実用新案に示された形態の意匠を基本とするものである。同号証の実用新案は登録第2592157号として登録されているが、本件被請求人は該実用新案登録に係わる実用新案権に専用実施権を有している。この点を証するため、平成13年10月24日付け専用実施権設定登録申請書及び該申請に係わる実用新案登録済通知書(平成13年11月8日登録)を乙第6号証として提出する。
イ号意匠においては、ホルダ下方部の挟持部の構成は乙第5号証実用新案のように「表側挟持板及び裏側挟持板のそれぞれの下方先端部を内側に折り曲げて挟持縁を形成する態様」(D態様)のものではなく、「裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様」(B態様)のものとしている。
しかしながら、このB態様は上記したように公知の形態であり(乙第2号証、乙第3号証)、イ号意匠は乙第5号証実用新案の形態の内、ホルダ下方部の挟持部を公知のB態様の形態に置換したものである。乙第5号証に示された形態(意匠)は上記の通り本件登録意匠の出願前に公知の意匠となっていたものであり、かかる公知意匠(乙第5号証)の構成要秦の一部を公知の形態(B態様)に置換したのがイ号意匠であるから、このような事情を考慮しても、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないというべきである。
6.結び
以上のとおり、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
第三 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、その願書及び願書添付図面、意匠登録原簿及び意匠公報の記載によれば、平成7年6月1日の意匠登録出願(意願平7-15835号)に係り、平成9年6月20日に設定の登録がなされた登録第994095号意匠であって、意匠に係る物品が「紙ホルダ」であり、その形態が、同添付図面に示されるとおりである(別紙第一参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、甲第3号証に表されたとおりであって、意匠に係る物品が「紙ホルダ」であり、その形態が、甲第3号証に示されるとおりである(別紙第二参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
[共通点]
基本的構成態様について、
全体が、側面視(断面視)略逆「U」の字状の細長い扁平棒状体であり、その正面側を表側挟持板とし、背面側を裏側挟持板としたものであって、裏側挟持板の上端部に、全幅に亘り中空管状部を形成し、その中空管状部の中央を切截して、正面視略逆「U」の字状の吊り環を設けている点、
また、その具体的態様において、
(1)表側挟持板について、表側挟持板の正面視中央部を全幅に亘り前方に膨出させ、その下方を全幅に亘り凹湾曲状に形成し、側面視につき、極緩やかなS字曲線状に形成している点、
(2)裏側挟持板について、全体を平板状とし、その下端部を、側面視略「し」の字状に内側に折り曲げて折曲部を形成し、表側挟持板の凹湾曲状部との間を幅狭となる態様に形成し、被支持体挿入部としたものであり、また、裏側挟持板の上端部に、側面視略円形状の中空管状部を、その略半分が外側(後方)に略半円状に突出する態様に形成している点、
(3)吊り環について、正面視略逆「U」の字状の板状のものとし、その両下端部に取付け片を各々設けて中空管状部に挿入し、回動自在に軸支している点、
[差異点]
(イ)中空管状部について、本件登録意匠は、側面視略円形状に形成し、扁平棒状体の内側上方に円弧状の膨出部を形成しているのに対し、イ号意匠は、側面視略円形状の内側部が切截されており、扁平棒状体の内側上方において、中空管状部と両挟持板に挟まれた空間が繋がっており、また、イ号意匠は、中空管状部の外側への突出の程度が本件登録意匠に比べて大きい点、
(ロ)扁平棒状体について、本件登録意匠は、イ号意匠に比べて、正面視における縦幅が小さく、全体としてやや細幅のものである点、
(ハ)表側挟持板と裏側挟持板の厚みについて、本件登録意匠は、表側挟持板と裏側挟持板の厚みがほぼ等しいものであるのに対し、イ号意匠は、表側挟持板が裏側挟持板よりやや薄いものである点、に差異がある。
4.類否判断
そこで、上記の共通点と差異点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響について検討する。
両意匠に共通する基本的構成態様、即ち、全体が、側面視(断面視)略逆「U」の字状の細長い扁平棒状体であり、その正面側を表側挟持板とし、背面側を裏側挟持板としたものであって、裏側挟持板の上端部に、全幅に亘り中空管状部を形成し、その中空管状部の中央を切截して、正面視略逆「U」の字状の吊り環を設けている点は、形態の大部分を占める主要部を構成し、意匠全体の基調を成すところであつて、両意匠の類否判断の支配的要素というべきである。また、具体的態様の共通点、特に、(1)の表側挟持板について、表側挟持板の正面視中央部を全幅に亘り前方に膨出させ、その下方を全幅に亘り凹湾曲状に形成し、側面視につき、極緩やかなS字曲線状に形成している点、また、(2)裏側挟持板について、全体を平板状とし、その下端部を、側面視略「し」の字状に内側に折り曲げて折曲部を形成し、表側挟持板の凹湾曲状部との間を幅狭となる態様に形成し、被支持体挿入部としたものであり、また、裏側挟持板の上端部に、側面視略円形状の中空管状部を、その略半分が外側に略半円状に突出する態様に形成している点は、基本的構成態様の共通点と相俟って、両意匠の類似感を表出しており、その類否判断に及ぼす影響は、大きいといわざるを得ない。
一方、差異点(イ)について、イ号意匠は、側面視略円形状の内側部が切截されており、扁平棒状体の内側上方において、中空管状部と両挟持板に挟まれた空間が繋がっている点の差異であるが、意匠の外観上においては、側面視して初めて認識されるものであり、意匠の類否判断の要素としてさほど評価できず、また、イ号意匠は、中空管状部の外側への突出の程度が本件登録意匠に比べて大きいが、その程度の差異は僅かなものであり、具体的態様の共通点(2)、特に、裏側挟持板の上端部に、側面視略円形状の中空管状部を、その略半分が外側に略半円状に突出する態様の点に包摂される程度のものであって、いずれも、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。次に、差異点(ロ)の扁平棒状体のプロポーションの差異は、いわゆる長尺物の長さの差異であって、この種の物品が被支持体の横幅によって、適宜選択されることを考慮すると、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものというほかない。また、(ハ)の表側挟持板と裏側挟持板の厚みの差異も極僅かであり、正面からは認識できないものであることを考慮すると、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
ところで、被請求人は、本件登録意匠の特徴は、「表側挟持板及び裏側挟持持板を上方部において中空管状体を介して一体に結合する態様(A態様)」と「裏側挟持板の下端部を内側に折り曲げて折り曲げ部を形成し、表側挟持板の下端部を外方に向けて僅かに湾曲させると共に裏側挟持板の折り曲げ部に接近させて配置して被支持体挿入用の隙間を形成してなる態様(B態様)」とを組み合わせた点にあり、一方、イ号意匠は、前記A態様と「裏側挟持板の上端部を外側に湾曲させて膨出部を形成する態様」(C態様)」の組合せであるから別異の意匠であると主張するが、被請求人が主張するC態様は、そこが、裏側挟持板を膨出させたものであるか否かはさておき、意匠の外観としては、「側面視略円形状の中空管状部の略半分が外側に略半円状に突出する態様」と把握されるものであって、むしろ、両意匠の共通点として捉えるべきであり、被請求人の主張を採用できない。
してみると、上記の差異点が相俟って、相乗効果を生じることを考慮しても、イ号意匠は、意匠全体として、本件登録意匠にない格別の特異性が認められず、前記の差異点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
以上のとおりであって、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が共通しており、その形態について、共通点は類否判断に及ぼす影響が大きく、差異点は類否判断に及ぼす影響が微弱なものであるから、共通点が差異点を凌駕し、結局のところ両意匠は類似するというべきである。
第四 むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲

判定日 2002-02-18 
出願番号 意願平7-15835 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (F2)
最終処分 成立 
前審関与審査官 遠藤 京子 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 西本 幸男
伊藤 晴子
登録日 1997-06-20 
登録番号 意匠登録第994095号(D994095) 
代理人 山口 栄一 
代理人 赤澤 日出夫 
代理人 橋場 満枝 
代理人 細井 勇 
代理人 石戸 久子 
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