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審決分類 審判 無効  創作 無効とする M3
管理番号 1056939 
審判番号 無効2001-35235
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-06-01 
確定日 2002-03-15 
意匠に係る物品 ナット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1087231号「ナット」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1087231号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1、請求人の申立て及びその理由
請求人は、「登録第1087231号意匠(以下、本件登録意匠という)の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を述べ、証拠方法として、甲第1号証乃至第3号証を提出した。

第2、答弁の趣旨及び理由
被請求人は、「本件審判事件は成り立たない。審判は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を述べ、証拠方法として、乙第1号証乃至第11号証を提出した。
第3、当審の判断
1、本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年2月12日の意匠登録出願に係り、平成12年8月4日に設定の登録がなされた意匠登録第1087231号であり、その願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品が「ナット」、その形態が別紙第1に示されたとおりのものである。
すなわち、その形態は、中央に略円孔を有する略短六角筒状で、その底部に円形板状のフランジ部を設けた基本的な構成態様からなり、各部の具体的な構成態様につき、上面の円孔周囲をドーナッツ板状の極浅い凹陥面状とし、フランジ部は、水平平滑面状で、その前後2個所に小さいビス用の穿孔が穿たれているもので、中央の円孔の内周縁には3つの切り欠き部を有する雌ねじ部が表れている態様のものである。
2、無効理由通知
(1)当審は、当事者が申し立てない理由について審理したので、その審理の結果を当事者に、意匠法第52条で準用する特許法第153条第2項により、平成13年11月6日付けで通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会をあたえた。
通知した無効理由は以下のとおりである。
「本件登録意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当します。
通常ナットは、使用時にボルトの先端にはめて回転することによって締め付け位置まで進め、その後強く締め付けるものであるが、本件登録意匠の出願前において、その回転による締め付け位置までの前進作業等締め付けのための効率及び強度を上げるなどの機能上の目的で、ナットの内部をテーパー状の空間とし、その内部空間に、先ず数個に算分したねじ駒、円形のワッシャ、スプリング等を内蔵する構造とした態様のナットの形状も周知となっていたところである(参照、特開昭53-11273、特公昭55-50203、実開昭56-149119、実開昭63-193112、実開平4-90707、実開平5-42735、実開平5-62718、特開6-81830、特開平8-200342、特開平8-205354、特開平9-273529など)。
また、本件登録意匠の出願前、ナットの形状として、略短六角筒状で、その底部側に円形板状のフランジ部を設けた座金付きナットの形状も例を挙げるまでもなく周知(参照、金属産業新聞社発行「1998年版 特殊ファスナー便覧・付仕入ガイド 」1998年7月20日発行の前24、前42、前97、125、312、巻末2、巻末3頁など)であり、また座金部に取り付け孔を穿つことも一般的に行われていたところである(参照、上記、前42、前97頁など)。
そうであるから、本件登録意匠は、出願前に周知の座金付きナットの内部をテーパー状の空間とし、その内部空間に、先ず3個に算分したねじ駒、次に円形のワッシャ、そしてスプリング、その上にワッシャを順次内蔵する周知の内部構造とし、座金部に2個の透孔を穿ったまでの創作に過ぎないものである。」
(2)無効理由通知に対する被請求人の意見
被請求人は、意見書において、要旨以下のように述べた。
1)本件登録意匠は、木造住宅の桁と桁との接続を補強する場合に使用される羽子板ボルト等に、押し込みによって所定位置に位置させて締め付けた後、ビス等で桁に固定して用いることができるナットの意匠である。
2)本件登録意匠を、イ)周知の座金付きナット、ロ)周知の内部構造、ハ)座金部に透孔を穿つ事実、の3つの構成要素からなると解し、これら事実から創作が容易であると判断しているが、行き過ぎた判断である。
すなわち、意匠の創作が容易であると言えるのは、2つの意匠がそのまま結合されたような場合を言うのであって、本件登録意匠のように3つの構成要素を1つに、しかも、まとまりのある意匠にするという創作は、当業者にとってありふれた手法ではなく、創作が容易と言えないものである。
3)従来のナットの分野では、「羽子板ボルト等に用いるナットをビス等で桁に固定する」という考えのものは存在していないので、前記イ)、ロ)、ハ)の3つの構成要素がそれぞれ周知(あるいは公知)であるとしても、これら3つの構成要素を組み合わせるという発想が生じ得たと結論づけることはできない。
以上、本件登録意匠は、創作性が認められるべきものである。
(3)被請求人の意見について
被請求人は、「イ)周知の座金付きナット、ロ)周知の内部構造、ハ)座金部に透孔を穿つ事実、の3つの構成要素からなると解し、これら事実から創作が容易である」と判断しているが、行き過ぎた判断である。」旨の主張するが、
a,そもそも、本件登録意匠の内部構造は、A-A断面図、及びB-B断面図、C-C断面図においては明確に表されているものの、基本6図面の正面図においては、内部構造の上端の円形ワッシャが、略六角筒状の上面中央の円孔周囲の極浅い凹陥面としてその上面が現れ、内蔵されている3つの駒の内周面側が背面図の円孔の内周縁側に3つの切り欠き部を有する雌ねじ部として狭い幅で現れるに過ぎず、機能的な効果はあるとしても、意匠的には、本件登録意匠のその外観は、前記のように、周知の座金付きナットの態様(参照、金属産業新聞社発行「1998年版 特殊ファスナー便覧・付仕入ガイド 」1998年7月20日発行の前24、前42、前97、125、312、巻末2、巻末3頁など)であって、
b,本件登録意匠の断面図3図によってその詳細が明らかになるところの内部構造自体も、ナットの内部をテーパー状の空間とし、その内部空間に、先ず数個に算分したねじ駒、円形のワッシャ、スプリング等を内蔵する構造とした態様であるが、この内部構造を有するナットは本件登録意匠の出願前周知(参照、特開昭53-11273、特公昭55-50203、実開昭56-149119、実開昭63-193112、実開平4-90707、実開平5-42735、実開平5-62718、特開6-81830、特開平8-200342、特開平8-205354、特開平9-273529など)の態様であって、本件登録意匠は、周知の内部構造を周知の手法で内蔵しているに過ぎないものでそこに格別の創作は認められない。また、
c,被請求人は、本件登録意匠は、「木造住宅の桁と桁との接続を補強する場合に使用される羽子板ボルト等に、押し込みによって所定位置に位置させて締め付けた後、ビス等で桁に固定して用いることができるナットの意匠」であって、従来の羽子板ボルト等に用いるナットに、ビス等で桁に固定する」というものは存在しない旨主張するが、羽子板ボルトに対応するナットに限った場合には、フランジ部に固定のためのビスを通すために穿孔を穿つものが存在しなかったとしても、広く建築分野、製造業等で用いられるナットにおいては、従来よりナット自体を固定するためにそのフランジ部にビス等を通すための穿孔を穿つことは極一般的であって、かつ、固定のためにビス通しの穿孔を設ける手法自体が、あらゆる物品において極一般的な手法でもあって、本件登録意匠の穿孔の態様も極一般的な大きさの穿孔を極一般的な前後2個の配置で設けたもので格別の創作は認められないものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、無効理由通知で通知した理由のとおり、本件登録意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当し、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-01-15 
結審通知日 2002-01-18 
審決日 2002-01-29 
出願番号 意願平11-3249 
審決分類 D 1 11・ 12- Z (M3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 鍋田 和宣
伊勢 孝俊
登録日 2000-08-04 
登録番号 意匠登録第1087231号(D1087231) 
代理人 三浦 光康 
代理人 土橋 秀夫 
代理人 江藤 剛 

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