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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) C3
管理番号 1056960 
判定請求番号 判定2001-60098
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2002-05-31 
種別 判定 
判定請求日 2001-09-03 
確定日 2002-03-14 
意匠に係る物品 ごみ箱用底板 
事件の表示 上記登録第1045428号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「傘立ての底板」の意匠は、登録第1045428号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下「イ号意匠」という)は意匠登録第1045428号意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を大要以下のとおり主張し、証拠方法としてイ号図面、甲第1号証ないし甲第3号証、及び検甲第1号証ないし検甲第3号証を提出した。
本件登録意匠は、意匠に係る物品が「ごみ箱用底板」であるのに対してイ号意匠は「傘立ての底板」であるが、両者は実質的に物品が同一であり、また、形状においては、「円板状の底面板の周縁に沿って短円筒状の外筒を突設し、この外筒の稍内側に外筒より背高の短円筒状の内筒を同心円状に突設した基本的構成態様」は、「両意匠の特徴を最も良く表す要部を成し、両意匠に強い共通感をもたらし」、また「底面を、その外周部を凸縁状に残して一段上方に凹ませ、この凹んだ底面の中央に小径の円環状リブを突設するすると共に、この円環状リブの外周から底面の外周凸縁に向かって、4本の直線状リブ90°間隔で放射状に突設した形状に表し」た「底面の具体的形状の共通点は底面全体の印象を決定付け」、また、「内筒外周面略下半分部に複数本の細い縦リブを突設した」「具体的形状の共通点が相俟って、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼして」いる。これに対して、両意匠は、外筒の形状につき、その高さ、内筒に対する構成比率の差異、外周面を略垂直面状にしているか円錐面状としたかの差異、内筒外周面の縦リブにつき、数と高さと位置における差異が存在し、更に、底面の外周凸縁における小径円形孔の有無における差異が存在するものの、何れも「部分的及び軽微な差異」に止まるものであり、これらの差異点を総合したとしても、イ号意匠に独特な意匠的効果を生じさせるものではなく、両意匠の全体としての類否判断に及ぼす影響は軽微な程度に止まるものである。したがって、両意匠は、「意匠全体として共通点が差異点を凌駕しているものである」から、意匠全体としてイ号意匠は本件登録意匠に類似する。
第2.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成8年10月22日に意匠登録出願をし、平成11年5月7日に意匠権の設定の登録がなされた、登録第1045428号の意匠であり、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「ごみ箱用底板」とし、形態については、願書に添付した図面代用写真に現されたとおり(参考:別紙第1)である。
すなわち、その形態は、基本的構成態様につき、(1)円板状の底板外周に沿って上方に向け外縁を立設し、この内側に僅かな間隙の溝を介し、外縁より背高の短筒状内壁を同心円状に立設したものであって、具体的構成態様につき、(2)外縁は全高の半分よりもやや低め、略3分の1程度の高さのものであって、外周面を垂直面とし、(3)短筒状内壁の外周に外縁高さ位置のやや上方から下方に縦凸条を計13本等間隔に設け、(4)底面は、外周側に僅かの高さの等幅凸縁を設け、中央近傍に円環状凸条を設け、その外周から底面を扇形に四等分割する直線状凸条を設けている。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書添付のイ号図面により示されたものであり、意匠に係る物品については、その書類の記載によれば「傘立ての底板」であり、形態については、同図面により示されたとおり(参考:別紙第2)である。
すなわち、その形態は、基本的構成態様につき、(1)円板状の底板外周に沿って上方に向け外縁を立設し、この内側に僅かな間隙の溝を介し、外縁より背高の短筒状内壁を同心円状に立設したものであって、具体的構成態様につき、(2)外縁は全高の半分よりやや高め、略6割程度の高さのものであって、外周面を下方へ漸次僅かに広げた円錐台周面状の傾斜面とし、(3)短筒状内壁の外周に外縁高さ位置から下方に縦凸条を計8本等間隔に設け、(4)底面は、外周側に僅かの高さの等幅凸縁を設け、中央近傍に円環状凸条を設け、その外周から底面を扇形に四等分割する直線状凸条を設けており、外周側等幅凸縁には微小円孔を等間隔に計8個設けている。
3.両意匠の対比検討
両意匠を対比するに、意匠に係る物品について、本件登録意匠は「ごみ箱用底板」であるのに対し、イ号意匠は、「傘立ての底板」であるが、本件登録意匠は傘立ての底部品としても使用できるとするものであって、両意匠は円筒状容器様のものの底板として使用の態様を同じくするものであるから、意匠に係る物品は共通する。また、形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
すなわち、共通点として、(1)円板状の底板外周に沿って上方に向け外縁を立設し、この内側に僅かな間隙の溝を介し、外縁より背高の短筒状内壁を同心円状に立設した点、(2)短筒状内壁の外周に複数の縦凸条を等間隔に設けた点、(3)底面は、外周側に僅かの高さの等幅凸縁を設け、中央に円環状凸条を設け、その外周から底面を扇形に四等分割する直線状凸条を設けた点、がある。
一方、差異点として、(イ)外縁につき、本件登録意匠は全高の半分よりもやや低め、略3分の1程度の高さのものであって、外周面を垂直面としているに対して、イ号意匠は全高の半分よりやや高め、略6割程度の高さのものであって、外周面を下方へ漸次僅かに広げた円錐台周面状の傾斜面とした点、(ロ)短筒状内壁の外周の縦凸条につき、本件登録意匠は外縁高さ位置のやや上方から下方に計13本等間隔に設けたことにより、正面視あるいは俯瞰した際において縦凸条が外縁の上方側に表れているのが視認されるのに対して、イ号意匠については、外縁高さ位置から下方に計8本等間隔に設けたことにより、縦凸条は正面視においては視認できず、俯瞰した際においても僅かな間隙を介してその上端部のみが視認できるに止まるものである点、(ハ)底面の外周側等幅凸縁において、イ号意匠は、微小円孔を等間隔に計8個設けているのに対して、本件登録意匠にはそれが存在しない点、がある。
そこで審案するに、前記共通するとした、(1)の点は、両意匠の形態の全体にかかわり、その骨格を構成するところであるが、この点については、円筒状の容器様のものの底板の分野において、例えば特許庁発行の実開昭49-109904号公報、実開昭63-91417号公報、実開昭63-156942号公報等に同様の態様のものが記載されており、複数の従来例が存在することから、本件登録意匠の特徴と言うことはできない。そうしてみると、本件登録意匠の特徴は、(1)の共通した基本的構成態様に、その他の具体的構成態様がまとまって形成された形態全体の基調にあると言わざるを得ないものである。また、(2)の点については、複数の縦凸条が存在すること自体は共通するとしても、その視覚効果を考慮すると、共通点として働くさしたる効果はなく、縦凸条がどのように視認されるかについての(ロ)の差異点に吸収されるものと言え、(3)の底面側の共通点は、広い範囲の部位を占めるものであるが、使用状態における底面側に関するものであり、また、外周側に設けられた僅かの段差の等幅凸縁はありふれたもので、中央に設けられた円環状凸縁及び四等分割する直線状凸条についても格別の工夫がなされたとは言い難いものであり、類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。したがって、これらの共通点が相俟った効果を考慮してもなお、共通点のみをもって、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすと断定することができないものである。
次に、差異点について検討するに、(イ)の全高に対する外縁の高さの比、及び外周面の傾斜の有無における差異につき、全高に対する外縁の高さの比を内壁の正面視において視認される範囲の高さに対するの外縁の高さの比率に置き換えると、本件登録意匠については略2対1、イ号意匠については略2対3と長・短の関係が逆転し、イ号意匠の外縁の高さは、内壁の正面視において視認される範囲の高さよりも長いものであり、さらに、イ号意匠は、外周面を下方へ漸次広げた円錐台周面状の傾斜面としたことにより、外縁の高さよりも幅広の傾斜面上下幅となるため、俯瞰状態、すなわち扁平な両意匠において意匠の全体的特徴が最も把握し易い斜め上方から視認した場合、内壁外周面に対する外縁の幅広感が正面視の場合に比し更に増す効果を生じており、この点で本件登録意匠との差異は更に強化されていると言え、しかも、イ号意匠の円錐台周面状とした外縁の傾斜は僅かではあるものの、俯瞰した場合、傾斜面が下方に向け外側に広がっているのが顕著に観察されるものであり、そうすると、イ号意匠は、外縁の具体的な高さ(あるいは長さ)比率と外縁の外周面を下方に漸次広げた傾斜面とした態様が相俟ってその外縁に本件登録意匠の外縁が有しない、あるいは有するとしても微弱な、量感と視覚的安定感を生じさせていると言え、差異点(イ)における本件登録意匠に関する構成態様、及びイ号意匠に関する構成態様それぞれは、(1)の基本的構成態様と相互に関連し合い、本件登録意匠とイ号意匠それぞれに別異の視覚的まとまりを形成するに十分なものであり、この差異は類否判断上大きな影響を及ぼすものと言わざるを得ないものである。また、(ロ)の縦凸条の数及び位置の差異点につき、本件登録意匠において、イ号意匠よりも数が多い縦凸条が正面視あるいは俯瞰した際において外縁の上方側に表れているのが視認される点は、イ号意匠と比較して大きく(長く)見える内壁外周面の注視されやすい部位に規則的に配列された構成に係るところであり、個々の縦凸条は形状的には小さいものの、視覚的に微弱とは言い難く、類否判断上無視し得ないものである。そして、これら(イ)及び(ロ)の差異点の相俟った効果は顕著であり、(1)ないし(3)の共通点の相俟った効果を考慮したとしても、その中に埋没するとは言い難いものであり、その差異は、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。なお、(ハ)の差異点については、底面側における極めて微小な構成の有無に関する差異にすぎないから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は殆どない。
したがって、両意匠の差異点が共通点を凌駕することは明らかであって、意匠全体として、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものとは言えない。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-03-01 
出願番号 意願平8-31540 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (C3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 圭子 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 1999-05-07 
登録番号 意匠登録第1045428号(D1045428) 

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