ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) F4 |
---|---|
管理番号 | 1058427 |
判定請求番号 | 判定2001-60124 |
総通号数 | 30 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2002-06-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2001-10-29 |
確定日 | 2002-04-22 |
意匠に係る物品 | 包装用袋 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0983301号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「包装用袋」の意匠は、登録第0983301号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
第1、請求の趣旨及び理由 請求人は、「結論同旨の判定を求める。」と申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張した。 本件登録意匠とイ号意匠は、基本的構成態様及び具体的構成態様はほぼ一致しており、 (一)上下の封止部分には金色の細帯が形成されている外に、イ号意匠においては、その下方の封止部分に黒色の細帯が形成されているのに対して、本件登録意匠においてはそのような構成がない差異、 (二)金色で縁取りされた豚をモチーフとする絵が、イ号意匠においては、透明部分に配置されているのに対して、本件登録意匠においては、黒色部分に配置されているという差異、 (三)イ号意匠の正面においては、日本語以外の欧文字が多数使用されているのに対して、本件登録意匠の正面においては、日本語以外の欧文字は「P」が使用されているのみであるという差異、があるが、 (一)の点は、スーパーマーケットの陳列棚に置かれた状態を考えると、通常は商品のアピールを考慮して商品の包装の正面を需要者に向けて立てて並べることとなる。だとすると、本件登録意匠及びイ号意匠のいずれも、その形態が袋状のものであって、平面で構成された底面を持つものではないので、必然的に底の部分は潰れることになり、その結果として、通常の取引状態において、イ号意匠の下方の封止部分に形成された黒色の細帯を需要者が認識することは極めて困難である。よって、これらの差異点が意匠の類否判断に与える影響は微弱であると考えるのが相当である。 (二)の点は、豚のモチーフの絵の配置の相違もこの点を峻別するための効果を発揮することになることも明らかである。 (三)の点は、手にとる程度まで近寄らない限り、これらの文字を認識することは日本語でないことも相俟って需要者には極めて困難である。 第2、被請求人の答弁の趣旨及び理由 被請求人は、「イ号図面代用見本に示す意匠は、登録第983301号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨次のとおり主張した。 請求人は、「縦長矩形の上方約二分の一に黒色を地色として金色を配色した」ことは、本件登録意匠の要部であるというが、そのような配色に意匠法上の新規性を見いだすことはできず、これは本件登録意匠の要部ではない。 豚の絵は、ビン或いは缶のラベルによくみられるものであり、また食品の商標では豚肉を使っていることを表示するために豚の絵を配することはよくみられることであり、商標では識別力がないと判断されるほどである。 したがって、意匠の要部としての豚の絵は、どのように豚を抽出した絵であって、包装用袋のどの位置に配した豚の絵か、までが吟味されなければならない。 本件登録意匠の豚の絵は豚を抽象的にあらわし、豚の絵は縁取り線がある。そしてこの豚の絵は透明部分の左下に配している。これに対してイ号意匠の豚の絵は、具体的にかつ立体感のある豚を抽出したものであって、その豚の絵は包装用袋の透明部分の中央の上方よりに配したものである。 かくして、本件登録意匠の要部とイ号意匠の要部は相違しており、本件登録意匠とイ号意匠は類似しない。 第3、当審の判断 1、本件登録意匠について 本件登録意匠は、平成7年7月6日に意匠登録出願(意匠法第4条第2項の適用)をし、平成9年4月11日に意匠権の設定の登録がされたものであり、意匠に係る物品が「包装用袋」、意匠に係る形態が、願書及び願書に添付された図面代用写真に示されたとおりのものである(別紙第1参照)。 なお、本件登録意匠の図面代用写真は、色彩は付されていないものであるから、請求人及び被請求人が本件登録意匠に関して付されていない色彩について主張している点は、失当である。 2、イ号意匠について イ号意匠は、意匠に係る物品が「包装用袋」、意匠に係る形態が、図面代用見本によって示されるとおりのものである(別紙第2参照)。 3、本件登録意匠とイ号意匠の対比 本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共に「包装用袋」であって、同一の物品と認められ、その形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。 即ち、先ず共通点として、 (1)全体が、上下端をシールした縦長方形状の表裏2面からなる扁平の袋体で、その表面側略下半部を透明とし、略上半部を不透明の暗調子部(黒)としその暗調子部の中央に明調子(白)で横に大きく漢字2個を表し、周囲を広い余地とし、下半部の下端寄りにも不透明で暗調子の細幅帯状部を設けた基本的な構成態様のものである点、各部の具体的な構成態様において、 (2)袋体の縦横比は、略1.3対1であって、上下端のシール部は、透明の細幅帯状部である点、 (3)暗調子部中央の大きな漢字の周囲の余地部は、左右側が暗調子部の横幅の略3分の1の同幅で、上下側が暗調子部の縦幅の略3分の1の同幅である点、 (4)暗調子部中央の大きな漢字2個は、略同大で、横に僅かな間隙を設けて略同太の筆書き様で表されている点、 (5)暗調子部中央の大きな漢字2個の上下に、それぞれ小さい文字からなる文字列を配している点、 (6)暗調子の細幅帯状部の幅は、シール部と略同幅の細幅である点、が認められる。 次いで、差異点について、各部の具体的な態様において、 (イ)暗調子部中央の大きな漢字2個の下に配した文字列につき、本件登録意匠は、大きな漢字より小さい暗調子の文字からなる横1列であるのに対して、イ号意匠は、大きな漢字よりかなり小さい文字からなる横複数列である点、 (ロ)暗調子部中央の大きな漢字2個の上に配した小さい文字列につき、本件登録意匠は、大きな漢字より小さい暗調子の文字からなる横1列であるのに対して、イ号意匠は、大きな漢字より小さい暗調子の文字からなる極緩やかなアーチ状の文字列で下側に暗調子の極細線で豚の姿と、その左右に対称状に唐草様模様を小さく表している点、 (ハ)暗調子部の左右端に、イ号意匠は、極細線2本を平行に表し、その内方に小さい暗調子の文字からなる縦1列を配しているのに対して、本件登録意匠は、何も表していない点、 (ニ)暗調子の細幅帯状部に、イ号意匠は、極細線2本を平行に表し、その内方に小さい暗調子の文字からなる横1列を配しているのに対して、本件登録意匠は、何も表していない点、 (ホ)本件登録意匠は、略下半部の透明部の左下端寄りに不透明の暗調子で豚の姿を小さく表しているのに対して、イ号意匠は、その部位には何も表していない点、が認められる。 そこで、上記の共通点と差異点が両意匠の類否の判断に及ぼす影響について検討する。 先ず、前記共通するとした点は、(1)の基本的な構成態様が、両意匠に係る形態の全体の基調を形成し、且つ、各部の具体的な態様の共通点は、これらが相まって、両意匠の類否の判断に支配的な影響を及ぼすものと言うべきである。 すなわち、袋体の表面の略下半部を透明部とし、略上半部を不透明の暗調子(黒)部とし、その暗調子部の中央に略同大の漢字2個を大きく明調子(白)で筆書き様に表し、また透明部の下端寄りにも不透明で暗調子の細幅帯状部を設けた態様の、全体の大きさに対する各部の大きさが略同大同位置で、透明部と暗調子部とのコントラスト、及び暗調子部(黒)とその中央に表した明調子(白)の大きな漢字とのコントラストを際立たせ強調する印象の共通感が、類否判断に与える影響は非常に大きいものである。 一方、差異点については、 (イ)の点については、両意匠のいずれの文字も小さい文字からなる横列で、暗調子の地に融合しており、暗調子(黒)部とその中央に表した明調子(白)の大きな漢字とのコントラストを際立たせ強調する印象の共通感に埋没する微弱な差異に過ぎない。 (ロ)の点については、本件登録意匠は、暗調子の地に融合する暗調子の小さい文字からなる文字列で、イ号意匠の極緩やかなアーチ状でその下側に小さい模様を設けた文字列も一般的な態様であって、豚の姿及び唐草様模様も格別特徴のある態様でもなく、それらがすべて暗調子の極細線で小さく表され暗調子の地に融合しており、両意匠の暗調子(黒)の地とその中央に表した明調子(白)の大きな漢字とのコントラストを際立たせ強調する印象の共通感に埋没する微弱な差異に過ぎない。 (ハ)及び(ニ)の点については、暗調子の極細線2本を平行に表したその線の間に文字を並べた態様は縁模様として極一般的な態様であって、イ号意匠の文字列も極一般的な縁模様の態様及び配列位置の範囲内のもので格別特徴のある態様ではなく、両意匠の暗調子部を強調する印象の共通感に埋没する微弱な差異に過ぎない。 (ホ)の点については、全体の大きさに比して極小さいもので、また、この種包装用袋においては、各種の具象形状をワンポイント模様として表すことは極一般的になされる手法でもあって、本件登録意匠の態様もその一般的な手法の範囲内の表し方であって、格別特徴のある態様でなく、透明部と暗調子部とのコントラストを際立たせ暗調子部を強調する印象の共通感に埋没する微弱な差異に過ぎない。 そうすると、上記差異点は、これらが相俟って相乗的な効果が付加される点を考慮したとしても、その全体に及ぼす影響は、微弱に過ぎない。 以上のとおりであって、両意匠に係る形態の共通点は、類否の判断に大きな影響を及ぼすものであるのに対し、差異点は、類否の判断を左右する程の効果があるものとは言えないもので、差異点が共通点を凌駕していると言うことはできず、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものと言わざるを得ない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
|
判定日 | 2002-04-15 |
出願番号 | 意願平7-19677 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(F4)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高野 善民 |
特許庁審判長 |
秋間 哲子 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 伊勢 孝俊 |
登録日 | 1997-04-11 |
登録番号 | 意匠登録第983301号(D983301) |
代理人 | 赤澤 日出夫 |
代理人 | 角田 嘉宏 |
代理人 | 橋場 満枝 |
代理人 | 石戸 久子 |
代理人 | 山口 栄一 |