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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする G2
管理番号 1061430 
審判番号 無効2000-35606
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-10-31 
確定日 2002-05-09 
意匠に係る物品 貨物トラックの荷台扉開閉用ハンドルの掛金 
事件の表示 上記当事者間の登録第0957117号「貨物トラックの荷台扉開閉用ハンドルの掛金」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第0957117号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第一 請求の趣旨及びその理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として審判請求書の請求理由の項の記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証乃至3号証を提出した。
意匠登録第957117号の意匠(以下、本件登録意匠と云う)は、平成3年12月28日の意匠登録出願に係るが、その意匠登録出願前の平成3年2月25日に国内において頒布された刊行物である特許庁発行の公開特許公報「平成3年特許出願公開第43576号(発明の名称を「扉開閉用ハンドルの掛金装置」とする)に記載の第1図乃至第12図及び、これに関連する記載によって表された「扉開閉用ハンドルの掛金」の意匠(甲第1号証の意匠、以下、甲号意匠という)に類似し、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、意匠法第48条第1項第1号に該当し、無効にすべきである。
第二 被請求人の答弁及びその理由
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のとおり主張し、乙第1号証乃至第3号証を提出した。
A、(a)本件登録意匠は、本体ベースの上端部の左右両肩部が外側に張り出していることによって、本体ベースの正面視における全体形状は、掛け金レバーの先端フック部が臨在する上辺が下辺に比較して明らかに長く、各角にやや丸みを持たせてあり、尻すぼみとなった下向きに凸の六角形状である。
(b)甲号意匠は、本体ベースの上端部は左右両肩部分が斜めに切除されていることによって、上に向かうほど横幅寸法が減少していく先細り形に形成されており、そのため、本体ベースの正面視における全体形状は、掛け金レバーの先端フック部が臨在する上辺に比較して下辺が明らかに長く、各角にやや丸みをもたせてあり、上向きに凸の六角形状である。
B、本件登録意匠では、高台部の割溝にはめ込まれた掛け金レバーが鼻梁部分を表し、掛け金レバーを左右両側から挟む高台部のU字状部分が鼻腔部分と口元部分を表し、本体ベースの幅狭の主体部分が左右両頬部分と下顎部分を表し、本体ベースの上端部の張り出した左右の肩部が角部分を表すものと見ることによって、バイソン(野牛)の顔を抽象化したようなビジュアルなデザイン的イメージが生じるものである。
これに対して、甲号証意匠では本体ベースの上端部は、本件登録意匠とは全く反対に先細り状に形成されており、角部分に当たる部分がないため、バイソンの顔を抽象化したイメージは全く感得されないものである。両意匠は、美的印象において顕著な差異があり、類似しないものである。
上記AとBの2点において相違するため、本件登録意匠と甲号証意匠とは互いに非類似のものであり、本件意匠登録を無効にするべき理由は存在しない。
第三 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成3年12月28日に意匠登録出願し、平成8年4月8日に意匠登録第957117号として意匠権の設定の登録がされたものであり、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「貨物トラックの荷台扉開閉用ハンドルの掛金」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとしたものである。
2 甲号意匠
甲号意匠は、本件登録意匠の出願前の平成3年2月25日に国内において頒布された刊行物である特許庁発行の公開特許公報「平成3年特許出願公開第43576号(発明の名称を「扉開閉用ハンドルの掛金装置」とする)に記載の第1図乃至第12図及び、これに関連する記載によって表された「扉開閉用ハンドルの掛金」の意匠であって、その形態を、別紙第2に示すとおりとしたものである。
3 本件登録意匠と甲号意匠との比較検討
両意匠は、共に、貨物トラックの荷台の観音開き式扉の外表面の下部中央寄りに固定され使用に供されるもので、ロックパイプに一側を回動可能に軸支した扉開閉用ハンドルの中間部を、掛金レバーのフックの内側にくわえ込んだ形で係合することにより、前記ハンドルを扉閉鎖位置に保持する機能を果たす物品であって、意匠に係る物品が、その機能及び使用目的が同一の物品であって、その形態については、主として以下の共通点及び差異点が存在する。
即ち、先ず共通点について、(1)全体が、トラックの外表面に固定される略縦長矩形状の基台部の前面下方側略4分の3を、略倒縦長四角錐台形状に前方に向かって膨出させ、その上方中央を略縦長方形状に切り欠き、その切り欠き部の左右各上端側に凹部を設けて左右1対のハンドル挿入凹部を形成し、切り欠き部にやや長い略縦長方形板状の掛け金レバーを上下回動自在に枢着し、その前面下方には鍵部を設け、その内部にはスプリング機構を内蔵する本体部とし、基台部の上方略4分の1の面は薄板状のハンドル導入部とした基本的構成のもので、各部の具体的な態様において、
(2)略倒縦長四角錐台形状の膨出部は、その頂面を前面に、その底面を後面に、前方に向かって窄まる位置方向に配し、その前面(頂面)は縦幅が横幅の略2倍、その奥行きを、前面の横幅よりやや短いものとし、その外周面は、上面側を正面視水平面状、その余の面(左右側面及び下面)をやや急な斜面状とし、後端側を極細の略垂直面状に面取りしている点、
(3)本体部の上方中央の略縦長方形状の切り欠き部は、その縦幅及び横幅を、本体部前面の縦幅及び横幅に対して各々略2分の1とし、その深さを本体部の奥行きと略同大とする点、
(4)本体部のハンドル挿入凹部は、側方視本体部上端後面側を方形状に切り欠いた態様である点、
(5)掛け金レバーは、その前面の縦幅はその横幅の略4倍の大きさで、その前面は左右方向に極緩やかな弧面状で、その上端面の後方側は後方に向かって下がる斜面状とし、上方後方側に側方視略矩形状の凹部を設けハンドル噛み部を形成し、上下略中央位置で本体部切り欠き面内周に枢着され、その前面は、本体部前面と略面一致状に滑らかに連続し、その上端は本体部上端より上方に、その全長の略5分の1が突出し、枢軸を支点として回動するもので、ハンドル噛み部と本体部のハンドル挿入凹部は、側方視方形状の貫通孔状に現れる点、
(6)基台部の背面側は、側方視垂直線状に現れる点、
(7)ハンドル導入部は、内方側より外周縁に向かって徐々に薄板状となる極緩やかな斜面状である点、
(8)鍵部は、本体部前面下方に、外周輪郭を小円形として取り付けられている点、が認められる。
一方、差異点として、各部の具体的な態様において、
(イ)本体部及び掛け金レバーの前面の側方視の態様につき、本件登録意匠は、垂直線状であるのに対して、甲号意匠は、上下端から中央部にかけて僅かに前方に膨出する弧状である点、
(ロ)本体部の下面につき、本件登録意匠は、正面視その下辺側稜線が水平線状で、その斜面状の外周面が左右の斜面状の外周面と同幅同傾斜面であるのに対して、甲号意匠は、正面視その下辺側稜線が緩やかな曲線状で、その斜面状の外周面は左右の斜面状の外周面より幅狭急傾斜面である点、
(ハ)本体部の前面下方につき、甲号意匠は、上方の面に比して僅かに低い段落ち面状であるのに対して、本件登録意匠は、段落ち面状ではない点、
(ニ)本体部の中央の切り欠き部に対する掛け金レバーの装着態様につき、本件登録意匠は、その切り欠き部の下方部分が稍幅広となって掛金レバーと僅かな隙間を生じさせているのに対して、甲号意匠は、全長同幅で幅広部分が設けられていない点、
(ホ)掛け金レバーにつき、本件登録意匠は、正面視上下同幅であるのに対して、甲号意匠は、正面視上方部分が先細状である点、
(へ)鍵部の位置について、本件登録意匠は、本体部前面下方の余地部の左右中央に設けられているのに対して、甲号意匠は、右寄り部位に設けられている点、
(ト)ハンドル導入部の前面形状につき、本件登録意匠は、本体部の横幅より幅広の角丸横長方形状で、縦に直線状の3本の筋模様が表れているのに対して、甲号意匠は、上方に向かって本体部の横幅より斜状に狭まる略台形状で、筋模様を有さない点、
(チ)取り付けのためのボス孔につき、本件登録意匠は、基台部の本体部上端左右際に各1個、鍵部の下方に1個設けられているのに対して、甲号意匠は、基台部の本体部上端左右際に各1個、鍵部の下方左右端に各1個設けられている点、が認められる。
そこで、上記の差異点と共通点について検討する。
先ず、差異点については、(イ)の点は、側方から観察すると、確かに感得される差異であるが、両意匠はともに面一致に連続して左右方向に極緩やかな弧状の膨出面状を呈することから、正面及び斜め方向から観察すると強い差異感をもたらすものでなく、共通点(2)乃至(5)に比して、その差異感が薄められるところの膨出面における上下方向の僅かな膨出態様の有無に過ぎないもので、微弱な差異に過ぎず、
(ロ)の点は、この部分のみを注視して観察すると確かに認識される差異であるが、共に左右隅を丸角状とし、その間の狭い部分における差異でもあって、この差異によって本件登録意匠に独特の特徴を与えるほどのものではなく、全体の共通点(2)に比して、部分的な、微弱な差異に過ぎず、
(ハ)の点は、狭い部分における僅かな段差の有無に過ぎず、この差異によって本件登録意匠に独特の特徴をもたらしているとまでいえるものでなく、共通点(2)乃至(5)及び(8)の中に埋没する、微弱な差異に過ぎず、
(ニ)の点は、極微細な部分の態様における、微弱な差異に過ぎず、
(ホ)の点は、掛け金レバーの上方部分のみを注視して比較すると、確かに差異点といえるものであるが、掛け金レバー全体としてみれば大差といえるものではなく、さらに形態全体としてみれば極狭い部分における、微弱な差異に過ぎず、
(ヘ)の点は、僅かの位置の違いに過ぎず、概ね同部位に配置されている同大同形のもので、微弱な差異に過ぎず、
(ト)の点は、本件登録意匠の3本の縦筋模様もその凹凸はないもので、ともにハンドルを誘導し滑らかに下方のハンドル噛み部及びハンドル引掛部に挿入されるための導入部として本体部の上方に延設状に設けられ、その外周端に向かって漸次薄く形成されている斜面状の板状部で、トラックの荷台の外表面に取り付けられる使用状態時においては、そのトラックの外表面に滑らかに連続して略一体化するもので、ハンドルを誘導し滑らかに下方のハンドルかみ合わせ部に挿入させる導入部として当然に形成される滑り板状の態様で、その略下半部分は、挿入されるハンドルの奥に隠れてしまうものでもあって、全体の共通点(1)乃至(8)に比して、微弱な差異に過ぎず、
(チ)の点は、極小さな部分の態様の差異に過ぎず、また造形的にみて従たる付随的なものであり、微弱な差異に過ぎない。
以上のとおり、各差異点は、いずれも微弱な差異に過ぎず、両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。そして、これら差異点を総合したとしても、いまだ両意匠の類否判断を左右するほどのものとなり得ない。
これに対して、前記共通点については、(1)の点は、全体の基本的な構成態様であって、形態全体の骨格及び基調を決定付けており、本件登録意匠に先行する同種物品の意匠には類似の機構及び形態を有するものが見られない特徴的な態様であって、その類否判断に及ぼす影響は、極めて大きいもので、その具体的な構成態様の(2)乃至(8)の点も、両意匠において主要部の具体的な態様の共通点であって、その類否判断に与える影響は、大きいものであって、これらの共通点が相俟って生じる意匠的効果は、両意匠の形態の大部分を占め、両意匠の形態上の基調を決定づけ看者の注意を強く惹くところで両意匠の類否の判断を左右する支配的な要素と認められる。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においても、共通点が両意匠の類否判断を左右する要素を構成し、差異点を凌駕しているものであるから、意匠全体として類似するものと云うほかない。
従って、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し、同条の規定に違反して意匠登録されたものであり、同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、意匠法第52条において準用する特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2001-06-20 
結審通知日 2001-06-27 
審決日 2001-07-13 
出願番号 意願平3-39511 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤木 和雄斉藤 孝恵 
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 鍋田 和宣
伊勢 孝俊
登録日 1996-04-08 
登録番号 意匠登録第957117号(D957117) 
代理人 増田 守 
代理人 杉本 丈夫 

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