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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) E0
管理番号 1061435 
判定請求番号 判定2002-60002
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2002-08-30 
種別 判定 
判定請求日 2002-01-08 
確定日 2002-05-27 
意匠に係る物品 犬小屋 
事件の表示 上記当事者間の登録第1073262号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「犬小屋」の意匠は、登録第1073262号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求は、「イ号意匠は、登録1073262号に類似する意匠の範囲に属する。」との判定を求めるものである。

第2 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年6月24日の意匠登録出願(意願平11-16301号)に係り、平成12年3月17日に設定の登録がなされた登録第1073262号であり、その願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品が「犬小屋」であって、その形態が、同添付図面に示される通りである(別紙第1参照)。

第3 イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付したイ号図面及びイ号説明書に記載した意匠である(別紙第2参照)。

第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、イ号意匠が、本件登録意匠に類似する意匠の範囲に属する理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第6号証を提出している。
本件登録意匠の要部として、先行周辺意匠を例示し、それら意匠から、全体的に家型をしていて、4面の壁面は表面に円柱を半分に割った形状の材料が並べてられて水平方向に取付けられている犬小屋、すなわちいわゆるログ調の犬小屋の意匠はあったものの、本件登録意匠の基本的構成態様のうち、a)略直方体状の小屋と切妻屋根により構成され、b)四隅には円柱状の支柱が地面から屋根まで垂直に設けられていて、c)屋根は板表面に瓦状の凹凸を設け、側面より見て横長長方形状の模様を多数表し、d)4面の壁面は表面に外方に弧状に膨出する断面半円柱状の樺材が床に対して平行かつ上下方向に同一間隔に複数表され、e)前記半円柱状の部材の端部は支柱に沿っており、f)4面の壁面のうち五角形の形状をした面のひとつに犬が出入りする出入口が設けられていて、g)床は支柱下端よりやや上にあり、床と地面の間には隙間があるといった全ての点をそなえた先行意匠は見当たらない上、特に、b)およびe)の特徴により本件登録意匠は従来のログ調犬小屋の意匠とは異なる印象を看者に与える。したがって、基本的構成態様が本件登録意匠の要部となる。特に、b)およびe)の特徴の有無は類否判断において大きな影響を持つ。
また、犬小屋は多くの量販店において甲第6号証に示すように陳列されており、さらに犬小屋の使用者たる犬の飼い主は犬の出入口のある正面を観察するのが通常であることから、正面から観察される構成態様は類否判断において大きなウエイトを持つと考えられる。
そこで、本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、
イ)本件登録意匠とイ号意匠はその基本的構成態様において一致するが、基本的構成態様が本件登録意匠の要部となるので、両意匠の類否に大きな影響を与える。また、両意匠は具体的構成態様において多くの点で一致するが、特に正面からの観察で把握されるi)五角柱状の陸棟により左右平部が合わせられている点、j)正面には小屋の横幅の略1/2の割合の横幅を有する略縦長長方形の出入口が表されており、出入口の上側の両角は斜めに切り欠いた形状に表されている点、k)出入口の左右の辺には支柱とほぼ同じ大きさの円柱が垂直に設けられているこれらの共通点は形態上の特徴を最も大きく表したところで、両意匠の形態上の基調を成すものであるから、大きなウエイトをもって判断される。
ロ)これに対して両意匠の差異点は次に述べる通り、いずれも微弱なものであり、類否判断に影響を及ぼすのもではない。すなわちh)陸棟の傾斜の有無は、側面からの観察で把握されるものであり、正面からは観察されなく、またその傾斜角も6.5度程度しかないのであり、両者は屋根全体からみると、切妻屋根で平部は側面より見て横長長方形状模様を複数表しており、意匠全体としてみた場合類否についての影響は共通点に比べて軽微である。また、仮に陸棟の傾斜に独創性が存在するにしても、陸棟を水平にするごとき簡略化は.模倣にたける常套手段であり、かかる簡略化のみによって創作としての同一性が害されるわけではなく、また犬小屋のようにシリーズ化やマイナーチェンジが盛んに行われる物品においては需要者をして出所の混同を防止できるものでもない。l)出入口の上のひさしの有無は正面から観察されるものではあるが、ひさしは意匠としてさほど特徴がなく、その有無は類否判断にほとんど影響しない。このことは、出入口の扉のある犬小屋と扉のない犬小屋、或いは出入口の前に柵のある犬小屋とない犬小屋の意匠が類似意匠として登録されていることからも明らかである。n)背面の窓の有無も正面からは観察されず大きさがさほど大きいものではなく、両者の背面に共通する壁面に埋没するにすぎないので類否判断として微弱なものにすぎない。
ハ)以上の考察より、両意匠の差異は微弱なものであって、両意匠の共通点を凌駕しているものとはいえず、両意匠の類否判断においてその結論を左右するものではない。
2.被請求人の答弁
一方、被請求人は、イ号意匠が本件登録意匠に類似しない理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出している。
被請求人は、本件登録意匠の要部として、本件登録意匠の本質的部分は、陸棟が大きく傾斜している点と、尾根正面が背面よりも著しく幅広になっている点をあげている。その他の点は、請求人自身認めているとおり、基本的構成態様全て、公知の意匠とする。請求人は、a)からg)まで全てをそなえた先行意匠は見当たらないというが、ログハウスそのものが既に公知の意匠であり、そのイメージを模して犬小屋とすることは、当業者において容易に創作可能であり、なんら創作性は無いのである。また、特にb)及びe)を特に強調されているが、乙第1号証の102頁、左上のウッディ・ラブ・タカべ社製犬小屋は、四隅に円柱状の支柱が地面から屋根まで垂直に設けられているし、半円柱状の棒材の端部が支柱に沿って並んでいる。本件意匠を何ら特徴づけるものではない。なお、請求人は、量販店の陳列形態を例示して、正面から観察される構成態様を、類否判定において大きなウェイトを持つと主張しているが、どのように陳列されているかなど販売店それぞれの事情であって、そのようなことで意匠の本質的部分が左右されるものではない。
3)本件登録意匠とイ号意匠との類似の考察についてイ)請求人は、基本的構成態様を本件登録意匠の要部であるというが、基本的構成態様はログハウス調犬小屋に共通ともいうべき形状で、公知の意匠に過ぎず、本質的部分ではない。本件意匠に先行する乙第1号証の102頁、左上のウッディ・ラブ・タカべ社製犬小屋は、請求人のいう基本的構成態様を全て満たしている。また、具体的構成態様の j )は同頁右上のテラオ社製、同頁下右から2つ目グローブ社製があり、k)は同頁下右ウッディ・ラブ・タカべ社製がある。そしてl)は乙第2号証79頁右上被請求人製犬舎が、本件意匠登録の前から使用しているものである。以上のとおり、請求人のいう具体的構成態様のh)及びl)〜n)以外は、全て当然有する形状、公知の意匠、及び当業者として容易に創作できる意匠を組み合わせたものに過ぎず、本件意匠の本質的部分ではなく、これが類似していても本件意匠の範囲に属するとはいえない。
本件意匠の本質的部分は、陸棟が後方へ大きく傾斜している点、屋根正面が背面よりも著しく幅広になっている点及びひさしである。特に陸棟の傾斜や屋根正面側の幅広の意匠は、他に例を見ない。また、甲第1号証のとおり、請求人の全ての製品に共通のひさしが付けられており、請求人の製品の特徴をなしているものである。請求人は、「ひさしは意匠としてさほど特徴がなく」というが、これはさほど特徴がないというならば、意匠登録するのはおかしい。
これら本件意匠の本質的部分が相違している以上、その他犬小屋として当然有する形状、公知の意匠、及び当業者として容易に創作できる意匠の組み合わせ部分が共通していたとしても、イ号が本件意匠の範囲に属するとは到底言えない。
請求人は、この最大の特徴を「正面から見て把握されない」というが、それは本件意匠の特徴から来る必然的結果であって、本件意匠の本質的部分を拡張する理由にはならない。また請求人は、「陸棟を水平にするごとき簡略化は模倣における常套手段」というが、陸棟が水平なのは当然であり、作為的な簡略化ではないことは明らかであって、あまりに強引な論法である。
請求人は、両意匠の類似する点をことさらに本質的部分のように強調し、両意匠の差異を微弱なもののように矮小化しているが、イ号を本件意匠の範囲に取り込まんがための強引な解釈であり、とりえない。本件意匠の本質的部分に全く共通点がない以上その他の部分が類似していても、ログハウス調犬小屋として、当然有する形状に過ぎず、また公知の意匠である。イ号が本件意匠の範囲に属するとすれば、ログハウス調犬小屋の大半がこれに属することになり、あまりに拡張した解釈である。
第5 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年6月24日の意匠登録出願(意願平11-16301号)に係り、平成12年3月17日に設定の登録がなされた登録第1073262号であり、その願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品が「犬小屋」であって、その形態が、同添付図面に示される通りである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付したイ号図面及びイ号説明書に記載した意匠であり、意匠に係る物品を「犬小屋」とし、その形態はイ号図面に表れたとおりである(別紙第2参照)。
3.両意匠の対比
そこで、本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が一致し、その形態について、以下の共通点及び差異点が認められる。
<共通点>
両意匠は、基本的構成態様を略直方体状の小屋の上に切妻屋根を有した犬小屋とし、その壁面全面に略扁平かまぼこ状の板材を積み上げてなる、外観をいわゆるログハウス調の犬小屋とした点が共通する。また、その具体的構成態様において、
(1)屋根形状について、その勾配を略90度で組み合わした切妻型とし、その左右両屋根の全面に、横長長方形状をスレート瓦葺きの半板つみ状模様に表した点、
(2)母屋形状について、平面視の縦横比を略3:2とし、四隅に丸柱材を配して、平壁と妻壁の全面に断面を略扁平かまぼこ形状とする板材を積み上げて形成している点、
(3)出入り口の形状について、正面出入り口の両側に柱材を配した点、入り口上部両側を斜め45度に切り欠いて形成した点、が共通する。
なお、請求人の添付した、甲第1号証及び甲第2号証からみると、破風を吹き抜けとし、中央に縦材を通した点も共通する旨視認できるが、本件登録意匠及びイ号意匠の記載された図面のみからでは、この点について両意匠とも明確に判断できないため、破風の吹き抜け形態を両意匠の共通点とすることはできない。
一方、差異点について
<差異点>
(イ)屋根形状について、イ号意匠が側面視横長長方形状であるのに対し、本件登録意匠は、正面側に約6.5度せりあがって形成されている点、
(ロ)出入り口部の上部に、本件登録意匠は、庇を有しているのに対して、イ号意匠は、庇を有しない点、
(ハ)出入り口部側のけらば形状について、イ号意匠は、母屋の奥行きの約4分の1正面側につきだし、けらばが垂直に形成されているのに対して、本件登録意匠は、約7分の1正面側につきだし、けらばが斜めに形成されている点、に差異がある。
4.類否判断
そこで、上記共通点及び差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響について検討すると、まず、共通点について摘記した各点は、本件登録意匠の出願前から普通に行われているところであり(例えば、(1)については本件登録意匠の出願前、平成8年12月25日に株式会社佐倉出版社から発行された「サクラムック97」第102頁(乙第一号証、以下「引用意匠1」という。)上段右側に記載された犬小屋(ウッディ・ラブ・タカベ社製、1250型)の意匠、平成5年4月に株式会社サンケイ新聞データシステムマーケティング局から発行された「’93ペット用品ガイド・ドッグ編」第79頁左上に記載の犬小屋(新型ログハウス組立式)の意匠(乙第二号証、以下「引用意匠2」という。)及び1994年6月10日に特許庁が発行した意匠公報記載の意匠登録第749778の類似第1号並びに1996年6月26日発行の意匠公報に記載された同第2号の意匠等、(2)については、本件登録意匠の出願前1986年7月3日特許庁発行の意匠公報記載意匠登録第681999号の意匠(以下「引用意匠3」という。)、母屋の四隅に柱材を配する点については、引用意匠1上段左側に記載された犬小屋(ウッディ・ラブ・タカベ社製1000型)の意匠、及び壁面材を、断面を略扁平かまぼこ形状の板材を積み上げて形成した点については、引用意匠1の上段から第2段目の右側に記載された犬小屋(テラオ社製、L32型の意匠)、同引用意匠1第3段目左側に記載された犬小屋(テラオ社製DXI型)の意匠、同引用意匠1最下段左側に記載された犬小屋(テラオ社製NK53型)の意匠等、(3)については、正面出入り口の両側に柱材を配した点については、本件意匠登録の出願前、1990年1月16日に特許庁で発行された意匠公報記載意匠登録第779307号の意匠等、入り口上部を斜め45度に切り欠いて形成した点については、1988年7月5日発行ののアメリカ意匠公報:オフィシャルガゼット1号1092巻第546頁記載(独立行政法人工業所有権総合情報館受入1988年9月13日)の登録第296,596号ペットハウスの意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH01014475号)及び引用意匠2等)、格別の特異性は認められず、その類否判断に及ぼす影響は微弱なものといわざるを得ない。
一方、上記差異点については、(イ)の点について、この種物品分野において、屋根形状を、側面視につき正面側に仰角略6.5度の勾配を設け、平面視につき正面側に稍広がりを持たせて形成した点は、この種物品分野において、本件登録意匠の出願前には例を見ない新規な態様であり、その類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。また、(ロ)の点については、本件登録意匠の出願前1988年11月1日発行(独立行政法人工業所有権総合情報館受入1989年5月16日)の東洋エクステリア(株)発行の内国カタログ「TOTAL EXTERIOR’88-’89」第457頁記載の犬小屋の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC01038433号)にも見られるところであり、格別の特異性は認められず、その類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。(ハ)のけらばを正面側に多く突き出す点については、引用意匠3にも見られるとおり、本件意匠登録の出願前から普通に行われているところであり、格別の特異性は認められず、その類否判断に及ぼす影響は微弱なものといわざるを得ない。また、けらばを斜めに形成する点については、この種物品分野において、本件登録意匠の前には類を見ない態様であって、その類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
してみると、差異点(ロ)については、その意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであるが、差異点(イ)及び差異点(ハ)については、本件登録意匠が、意匠全体としてイ号意匠にない意匠的効果を発揮しているところであり、差異点(ロ)と相俟って、その類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきである。
一方、上記共通点のうち、具体的態様として摘記した(1)から(3)の各点については、いずれも意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであり、それらが相俟って全体の意匠的効果に影響を及ぼすことを考慮しても、その類否判断に及ぼす影響は微弱なものといわざるを得ない。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品は一致しているものの、その形態について、両意匠の差異点は、その類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められるのに対し、共通点は、その類否判断に及ぼす影響が微弱なものであるから、結局、差異点が共通点を凌駕する両意匠は、類似するものということができない。

第6 むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-05-15 
出願番号 意願平11-16301 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (E0)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 伊藤 晴子
木村 恭子
登録日 2000-03-17 
登録番号 意匠登録第1073262号(D1073262) 
代理人 向井 秀史 
代理人 河野 隆一 
代理人 松島 理 

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