• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 無効  1項1号公知(類似も含む) 無効とする E0
管理番号 1062994 
審判番号 無効2000-35175
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-04-06 
確定日 2002-07-24 
意匠に係る物品 ペット用位牌 
事件の表示 上記当事者間の登録第1052105号「ペット用位牌」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1052105号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、登録第1052105号意匠(以下、「本件登録意匠」)は、その意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠、すなわち、平成8年春ごろより群馬県高崎市のサンユウ塩崎恒博氏が製作販売していた「ペット用位牌」の意匠(以下、「甲号意匠」という。)と同一であるから、意匠法第3条第1項第1号に該当し、同法同条柱書の規定により意匠登録を受けることができないものである旨主張した。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、「審判請求人の請求は成り立たないとの審決を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のとおり主張した。
1.サンユウ塩崎恒博氏は添付写真のペット用位牌を本件の出願前に製造していないものである。
本件登録意匠に係るペット用位牌と対比している1枚目の写真から見て、サンユウ塩崎恒博氏製作とされるペット用位牌は本件意匠登録の登録意匠と型・板の厚さ・大きさ(高さ)等全部同じに形成されており、同一のものと認められる。このように全く同一の外観を有するペット用位牌は、サンユウ塩崎恒博氏の模倣以外全く考えられないものである。
2.検甲第1号証の1に添付された取引書類としての「有限会社サンユウ」から「赤城メモリアルパーク」宛の請求書(平成8年11月28日付)には品名として「動物お位牌」と記載され、この「動物お位牌」は多数存在し、どのようなものであるのか特定することができないものである。
3.前記「有限会社サンユウ」の請求書に記載の住所地「高崎市京目町790-5」には現在及び過去にも「有限会社サンユウ」が存在していた形跡はない。
4.「有限会社サンユウ」の請求書には、「3.口座番号0306706」「4.口座名義サンユウ・塩崎恒博(しおざきつねひろ)」との記載があるも、振込先銀行名の記載がなく、また電話番号の表示もなく、全く現実性に欠けるものであり、信憑性がないものである。
5.本件無効審判請求書に添付の証明書に記載の「赤城メモリアルパーク」の代表取締役岩嵜廣志氏のサインの横に押印されている印章は丸の中に「岩崎(「崎」の字は異体字である。)と表示され、岩嵜廣志氏の名刺には「岩崎」と表示され、岩嵜氏本人が所有する印章であるか否か確認できないものであり、本人の印章であると推定することはできないものである。
このように本件審判請求書に添付の証明書の信憑性は著しく低いものである。
以上のように、本件意匠登録に係る登録意匠はその出願前、公知ではなく、意匠法第3条第1項第1号に該当するものではなく、無効理由は全く存在しないものである。
第3.審尋及び審尋に対する回答
当審は、請求人が被請求人の答弁に対する弁駁書を提出しなかったため、検甲第1号証の1の証明書の内容について、証明者である株式会社上毛霊園代表取締役岩嵜廣志からの甲号意匠に係る商品の販売経緯等を明確にする回答を提出するよう、請求人に対して書面による審尋を行い、証明者の岩嵜廣志は、要旨以下のとおり回答した。
1.平成8年夏頃、(有)サンユウの訪問があり、商品見本を預かり、展示し、注文を受け、販売をした。
2.(有)サンユウの動物お位牌は、商品名「ペット用御位牌」で、1種類のみです。
3.写真は、当方にて(有)サンユウより預かっていた商品見本を(株)ペット霊具(請求人)に貸与し、(株)ペット霊具にて撮影したものです。
第4.審尋回答書に対する意見書
被請求人は、請求人の審尋回答書に対して、意見書を提出し、要旨以下のとおり主張した。
1.(有)サンユウは法人として存在していないものである。
2.「(有)サンユウの動物お位牌は商標名ペット用御位牌で、1種類のみです。」とあるが、1種類だけというのは非常に少ない数であり、通常数種類となるものである。
3.本件の審尋に対する回答書は全く回答になっていないものと思料致します。
第5.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成8年12月16日の意匠登録出願に係り、平成11年7月16日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「ペット用位牌」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、その基本的構成態様について、扁平直方体の基台部の上面やや後方寄りに基台部より横幅が狭い横長直方体の連結部を介して、その上部に基台部より一回り小さな扁平直方体の台部を設けて、正面視「エ」の字状の台座部とし、その台部の上面にやや幅狭の略縦長長方形状の札板を立設し、その札板の裏側全面に、文字を彫るための薄板を貼り合わせた態様のものであり、札板裏側の薄板を除いて全体は透明体である。そして、具体的な態様については、台座部について、基台部及び台部の上面周縁部を面取り状に形成し、札板について、その高さは、台座部の高さの約1.7 倍とし、上面は正面視緩やかな凸弧状に形成し、正面側周縁部を面取り状に形成した態様のものである。
2.甲号意匠
甲号意匠は、検甲第1号証の1の写真版に現されたサンユウ塩崎恒博氏製作の「ペット用位牌」に係る意匠であって、その形態は、写真版に現されたとおりのものである(別紙第2参照)。
すなわち、その基本的構成態様について、扁平直方体の基台部の上面やや後方寄りに基台部より横幅が狭い横長直方体の連結部を介して、その上部に基台部より一回り小さな扁平直方体の台部を設けて、正面視「エ」の字状の台座部とし、その台部の上面にやや幅狭の略縦長長方形状の札板を立設し、その札板の裏側全面に、文字を彫るための薄板を貼り合わせた態様のものであり、札板裏側の薄板を除いて全体は透明体である。そして、具体的な態様については、台座部について、基台部及び台部の上面周縁部を面取り状に形成し、札板について、その高さは、台座部の高さの約1.7 倍とし、上面は正面視緩やかな凸弧状に形成し、正面側周縁部を面取り状に形成した態様のものである。
3.本件登録意匠と甲号意匠の類否について
本件登録意匠と甲号意匠とを比較すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、類否判断上採り上げるほどの差異がなく、実質的に同一であると認められる。
4.甲号意匠の公知性について
請求人は、平成8年春ごろより、甲号意匠に係る「ペット用位牌」を群馬県高崎市のサンユウ塩崎恒博氏が製作販売していた事実を証明するため、証明書(検甲第1号証の1)を提出した。その証明書は、証明者が当事者以外の者であるところの株式会社上毛霊園赤城メモリアルパーク代表取締役岩嵜廣志であって、証明している事実は、次のとおりである。すなわち、「私は、植草一郎氏が平成8年12月16日に出願した(平成08年意匠登録願第037869号)意匠登録第1052105号のペット用位牌とほぼ同じ製品(甲号意匠)を、意匠登録出願日以前から、顧客から注文を受けて、群馬県高崎市京目町790-5のサンユウ 塩崎恒博氏に発注して販売していましたので、当時の取引書類及び同製品の写真を添付して証明致します。」
上記事実を立証するために添付した取引書類は、有限会社サンユウから赤城メモリアルパーク宛の平成8年11月28日付けの請求書であり、また、写真は、植草一郎氏製作のペット用位牌とサンユウ塩崎恒博氏製作のペット用位牌を写したものである。
これに対して、被請求人は、以下のとおり主張するので検討する。
(1)被請求人は、証明書に添付された請求書(平成8年11月28日付)には品名として「動物お位牌」と記載されているが、この「動物お位牌」は多数存在し、どのようなものであるのか特定することができないものであり、また、1種類だけというのは非常に少ない数であり、通常数種類となるものである旨主張する。
しかしながら、被請求人が、証拠として提出した乙第4号証ないし第10号証の製品は、本件登録意匠の出願前に販売されたとしても、いずれも被請求人が販売している製品のみであり、また、被請求人が同時に数種類のものを販売していたからといって、他者も動物お位牌を販売する際に数種類のものを同時に販売しなければならない特別な状況にあるとは考え難い。したがって、1種類のみを販売していたとしても格別不自然ではなく、その事実を覆す証拠は存在しない。そうすると、請求書記載の動物お位牌は、1種類のものと特定しても何ら差し支えないものである。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
(2)被請求人は、乙第11号証ないし乙第13号証を提出して有限会社サンユウの法人登記が存在しないと主張するが、たとえ有限会社サンユウの法人登記が存在していなかったとしても、そのことをもって、直ちに証明書の信憑性がなく、本件登録意匠の出願前に甲号意匠に係る商品が販売され公知となっていなかったとすることはできない。
(3)被請求人は、請求書に「3.口座番号0306706」「4.口座名義サンユウ・塩崎恒博(しおざきつねひろ)」との記載があるも、振込先銀行名の記載がなく、また電話番号の表示もなく、全く現実性に欠けるものであり、信憑性がないものであると主張する。
しかしながら、証明書添付の請求書は写しであって、請求書は、一般的にの横長矩形状の帳票が多いこと、また、その請求書には、「3.口座番号」の上に小文字で「コクヨ ウ-1134」とあることから、その請求書は、コクヨ株式会社の製品で、「コクヨ ウ-1134」の表記は、通常請求書の下端部に印刷されているものである。そうすると、請求書は、極く一般的な横長矩形状の帳票であると推認できるものである。そして、その下欄の「3.口座番号0306706」「4.口座名義サンユウ・塩崎恒博(しおざきつねひろ)」との記載は、その項番も「3.」から始まっていることから、請求書自体に記載されたものと考え難く、請求書を複写する際に、請求書の後ろに綴られた、例えば「振込先等を記載した書類」の一部が同時に複写されたものであって、振込先銀行名等の記載は、請求書の後ろに記載されているものと解するのが相当である。
したがって、振込先銀行名、電話番号の記載がないことをもって、請求書の信憑性がないとの主張は採用できない。
(4)証明書において、証明者の岩嵜廣志の「嵜」の字が、押印と名刺とそれぞれ異なる表記であるから、証明書の信憑性は著しく低いものであると主張する。
しかしながら、上記の署名の「嵜」は、戸籍上の漢字であると推認することができるものであり、印章及び名刺の「崎(「崎」の字は異体字である。)」及び「崎」が、戸籍上の漢字の異体字及び常用漢字であって、必ずしもそれらを戸籍上の漢字とすべて一致させなければならない格別な理由があるとは考え難いものであるから、このことのみをもって証明書の信憑性がないものとすることはできない。
(5)以上のとおり、被請求人のいずれの主張及び証拠もってしても、甲号意匠に係る商品が、平成8年春ごろより群馬県高崎市のサンユウ塩崎恒博氏によって製作販売され公然と知られるに至っていなかったとする証拠を認めることができない。
5.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内において公然知られた甲号意匠と同一の意匠であるから、意匠法第3条第1項第1号に該当し、同条同項柱書の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、その登録を無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-05-28 
結審通知日 2002-05-31 
審決日 2002-06-12 
出願番号 意願平8-37869 
審決分類 D 1 11・ 111- Z (E0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 奥家 勝治 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 藤 正明
秋間 哲子
登録日 1999-07-16 
登録番号 意匠登録第1052105号(D1052105) 
代理人 秋山 修 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ