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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L5
管理番号 1066153 
審判番号 無効2000-35085
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-02-08 
確定日 2002-10-24 
意匠に係る物品 スクリーン用取り付け器具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1056415号「スクリーン用取り付け器具」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1056415号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第一 請求人の申し立て及び理由
請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由として請求書の「(3)本件登録を無効とすべきである理由」の項の記載のとおり主張し、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証を提出したものである。
その主張の大要は、以下の通りである。
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、当該意匠公報の記載より、意匠に係る物品が「スクリーン用取り付け器具」である。意匠に係る物品は、物品の説明の欄でも特定される様に、「本物品は、上面に溝を有する桟木を備えたスクリーンを窓へ固定するための物品であり、窓の上枠等に固定される固定部材と、この固定部材に上下摺動可能に係合された摺動部材と、この摺動部材を固定部材へ留める螺子部材とから成る物品である。ここに、固定部材は、固定部材を示す正面図に示すように、中心部において下へ延びる円筒を有し、固定部材を示す右側面図に示すように、上板の左右両端から下へ突き出す凸部を有している。また、摺動部材は、C-C線切断部断面図に示すように、固定部材に対して摺動する略倒コの字断面部を有している。また、螺子部材は摺動部材に貫通されつつ、固定部材の円筒に螺入されることにより、摺動部材を固定部材へ留める部材である。本物品の使用に際しては、「スクリーンを取り付ける状態を説明するための参考側面図」に示すように、木ネジを固定部材の背面側楕円孔に貫通させつつ窓の上枠に螺入すること等によって、所定個数の本物品を窓の上枠等に固定した後、二点鎖線で示すスクリーンの桟木の溝を固定部材の凸部に係合させ、螺子部材を下から締結具によって円筒へ螺入して摺動部材を上へ摺動させ、その摺動部材を桟木の下面へ押し当てることにより、使用状態を示す参考正面図に示すように、その桟木を窓の上枠等へ固定しておく物品である。
また、本件登録意匠に係る形態は、図面で特定される通りである。すなわち、本件登録意匠を概ね特定すると、この取り付け器具の平面は、固定部材の上面で構成されおり、縦3.3対横3の四角形の平面である。この上面にはその中央位置に縦方向に並んで2つの孔が開いている。この取り付け器具の正面は、横3の上面に対して縦2.2の側面が両側に位置する固定部材で構成されている。またこの取り付け器具の正面には、中央に上面から下へ延びる円筒があり、この円筒の両側に縦長の楕円孔がそれぞれ1つ看取できる。また、この取り付け器具の正面には、上記固定部材の円筒に螺入する螺子部材が円筒の下に位置し、しかも水平方向に延びる摺動部材の底板を挟んだ状態で螺着された構造となっている。
一方、この取り付け器具の側面には、固定部材の上板の端から下へ突き出す凸部があり、また上板の長さ3.2に対して1.3の幅の側面板が配置されている。そして、側面板の下方位置より上記上板とほぼ平行に延びる摺動部材の底板が側面板から飛び出る状態で配置されている。底板は上板3.2に対して1の割合で側面板から飛び出ている。この取り付け器具の底面は、略コ字状の枠内にはまり込んだ底板とこの底板より長い上板が二重に看取され、また底板の表面には螺子部材の溝面が現れた状態となっている。また、底板の端縁の中央には楕円の切り欠きが見え、さらにその切り欠きを通して上板の円孔が見える。この取り付け器具の背面は、前記正面で看取された楕円孔が2つ看取される。
2.証拠の説明
(1)甲第1号証
甲第1号証は、中華民国台湾のCHANGHUA LUKANG私書箱27のタイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社(TAIWAN BANBOO CURTAIN ENTERPRISE CO.,LTD)が、商品「ロールブラインド PI NO.120197」に関し、1998年2月5日付けで、日本国大阪府の株式会社湯川家具(YUKAWA FURNITURE CO.,LTD)に対して発行したインボイス(インボイス番号TB-0205/98)である。
同インボイスによれば、「JP-YE ORDER NO:TC-1120197 MADE IN TAIWAN R.O.C C/NO.:1-45,1A-3A」とあり、本商品は日本国の株式会社湯川家具の発注番号TC-1120197に基づき輸出されたことが認められる。また、ROBIN V.N123にて荷積みされ、台湾のKAOHSIUNGから1998年2月7日に大阪に向けて輸出されることが分かる。
そして同インボイスの中には、商品明細として「ロールブラインド PI NO.120197」と記載されており、特にその中には「ITEM NO.PF-912-R JUTE ROLL UP BLINDS SIZE:(W)88 X (L)180CM,PET CLEAR BOX,COLOR:LIGHT BLUE」が記載されている。
(2)甲第2号証
また、甲第1号証に係るこの商品がタイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社から日本国の株式会社湯川家具に向けて輸送されたことが、甲第2号証として提出する MERIDLAN EXPRESS 株式会社の「積荷証券(BILL OF LADING)」によっても明らかである。同書類には、「JP-YE ORDER NO:TC-1120197 MADE IN TAIWAN R.O.C C/NO.:1-45,1A-3A」とあり、またコンテナ番号MLCU2930503号として商品「ロールブラインド」が台湾のKAOHSIUNGから1998年2月7日に大阪に向けて輸送されたことが示されている。
(3)甲第3号証
甲第3号証は、株式会社湯川家具が同号証に添付された写真に係る商品と同一の商品又は同一と認められる商品(ブラインドの柄、色等の相違を除く同一商品)を、タイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社に発注し、1998年2月5日付けのインボイス(番号TB-0205/98)によって日国内に輸入され、少なくとも1998年4月30日以前に日本国内において店頭に販売目的で展示し販売した事実があること、同商品に含まれるロールブライントの取り付け器具と同一の商品は、1998年4月30日以前においてすでに日本国内で公知であったこと、及び同商品のロールブライントの中に挿入されていた取り付け器具の商品使用説明書と同一の商品使用説明書は、1998年4月30日以前において、別添の商品と同一又は同一と認められる商品(ブラインドの柄、色等の相違を除く同一商品)の販売とともに、商品の中に挿入された状態で配布されたことを証明する、堺市向陵中町2丁2番14号の株式会社湯川家具に勤務する商品開発部次長の木下昭二氏の証明書である。
(4)甲第4号証
なお、甲第3号証の証明書に添付された写真に撮影されている商品は平成11年3月8日に、大阪府東大阪市西岩田2丁目7番11号の株式会社湯川家具の近鉄ハーツ店で購入されたものである。同商品購入を証明するレシートを甲第4号証として提出する。
(5)甲第5号証
甲第5号証は、台湾国内において、甲第1〜4号証で特定される商品の包装ケースの中に挿まれて配布されてなる商品の使用説明書(取付け手引き書)である。同説明書には既述の通り、本件登録意匠と同一又は類似の意匠が記載されている。
本手引書の場合、同説明書が商品の包装ケースにおいて配布されたのは、甲第1号証〜甲第3号証にも示されているように、平成10年2月5日以前であることは明らかである。従って、本件登録意匠は、甲第5号証の商品説明書に開示されているものである。
(6)甲第6号証
甲第6号証は、本件出願よりも前に、タイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社が、同号証に添付された写真に係る商品と同一の商品又は同一と認められる商品(ブラインドの柄、色等の相違を除く同一商品)を株式会社湯川家具に輸出したこと、同商品に含まれるロールブライントの取り付け器具と同一の商品は、1998年4月30日以前においてすでに台湾国内で公知であったこと、及び同商品のロールブライントの中に挿入されていた取り付け器具の商品使用説明書と同一の商品使用説明書は、1998年4月30日以前において、台湾国内において、別添の商品と同一又は同一と認められる商品(ブラインドの柄、色等の相違を除く同一商品)とともに、商品の中に挿入された状態で配布されたことを証明する、タイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社の代表者Chin-Chang Shi氏の証明書である。
(7)甲第7号証及び甲第8号証
甲第7号証は「経済部中央標準局専利處函」(写し)である。また、出願の際の中華民国(台湾)の経済部中央標準局への納付書の写しを甲第8号証として提出する。
3.本件登録意匠と甲各号証の対比
(1)甲第1号証〜甲第4号証
甲第1号証及び甲第2号証によれば、1998年2月5日付けのインボイスで、1998年2月7日にタイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社が日本国大阪府の株式会社湯川家具に対して「ITEM NO.PF-912-R JUTE ROLL UP BLINDS SIZE:(W)88 X (L)180CM,PET CLEAR BOX,COLOR:LIGHT BLUE」の「ロールブラインド PI NO.120197」を輸出したことが明らかとなっている。
そして、甲第3号証によれば、株式会社湯川家具が、同号証に添付された写真に係る商品と同一の商品又は同一と認められる商品(ブラインドの柄、色等の相違を除く同一商品)を、タイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社に発注し、1998年2月5日付けのインボイス(番号TB-0205/98)によって日本国内に輸入され、少なくとも1998年4月30日以前日本国内において店頭に販売目的で展示し販売した事実があることが明らかとなっている。
そして、甲第3号証によれば、同商品には写真で特定されるロールブラインドの取り付け器具が含まれており、それは1998年4月30日以前においてすでに日本国内で公知であったことが証明されている。さらに、同商品のロールブラインドの中に挿入されていた取り付け器具の商品使用説明書と同一の商品使用説明書は、1998年4月30日以前において、添付の商品と同一又は同一と認められる商品(ブラインドの柄、色等の相違を除く同一商品)の販売とともに、商品の中に挿入された状態で配布されていたことも証明されている。
ここで、甲第3号証の添付写真で特定される取り付け器具は、本件登録意匠に係る物品に相当している。これらの事実から、本件登録意匠と同一又は類似の意匠は、甲第1号証〜甲第4号証に開示されていることは明らかである。
(2)甲第3号証の商品「ロールブラインド PI NO.120197」は、同証明書に添付された写真をみればわかる通り、「JUTE SCREEN」(天然麻)」であり、上記の通り、プラスチック製のクリアーボックス内に内装されている。そして、同クリアーボックス内にはロールブラインドの上方に紙製の箱と英文による使用説明書が入っている。紙製の箱の中にはこのロールブラインドの付属部品として金属製の「取り付け器具」が入っており、また使用説明書にはこの「取りつけ器具」の使用方法が記載されている。
この取り付け器具に関し、甲第5号証の使用説明書に(取付け手引書)よれば、左下に本取り付け器具の斜視図(「図1」とする。)が描かれ、中央上側には同取りつけ器具の窓枠上部への取り付け法を示す図(「図2」とする。)が描かれている。さらに、同使用説明書の中央下側には、窓枠上部に取り付けて桟木を挟持した状態を示す取り付け器具の図(「図3」とする。)が描かれ、右上側には取り付け器具の分解状態(楕円の線で囲まれた「1」)を示す図(「図4」とする。)と、取りつけ器具の窓枠内部の上面部への取り付け方法(楕円の線で囲まれた「2」)を示す図(「図5」とする。)が描かれている。また、同使用説明書の右中央側には、窓枠内部の上面部に本取り付け器具が取り付けられた状態の図(「図6」とする。)が描かれ、同使用説明書の右下側には、窓枠内部の上面部に取り付けて桟木を挟持した状態を示す取り付け器具の断面図(「図7」とする。)が描かれている。
従って、図1には、窓等を覆う遮蔽用品を窓枠等に取り付けるための遮蔽用品取り付け器具が記載されており、この取付け具は、窓枠に固定される固定部材と、該固定部材に対して移動可能な摺動部材と、該摺動部材を該固定部材へ留める締結具(雄螺子)とから構成されている。その締結具(雄螺子)は図1では明らかにされていないが、図2には示されており、また図4にも示されている。また、図3及び図7によれば、遮蔽用品の上辺方向に延びる桟木を該固定部材と該摺動部材との間に保持して該摺動部材を該固定部材に対して接近させることにより、該桟木が挟持されて該桟木が略水平方向に支持されている。なお、該摺動部材を該固定部材に対して接近させる点については、図1、図2及び図4に示す様に、固定部材は側面を有し、該摺動部材を前記側板に対して摺動させる係合構造となっており、該摺動部材を該固定部材に対して上下方向に摺動させて接近させる構成である。
また、図3及び図7に示す様に、この遮蔽用品取り付け器具は、摺動部材が該桟木に圧接され、該桟木が挟持されて該桟木が略水平方向に支持されている。また、図2及び図4に示す様に、この遮蔽用品取り付け器具は、螺子部材の締結操作を行うことにより該摺動部材が該固定部材に対して接近する構成である。またさらに、締結具は図4に示される様に、螺子形状に形成されおり捻回させられることにより締結されて該摺動部材を該固定部材へ留める締結具である。
さらにまた、図3及び図7に示す様に、上辺の桟木はその上面に桟木の長手方向へ延びる係合溝を有している。また、図1、図3、図4及び図7に示す様に、該固定部材及び該摺動部材は1又は2以上の凸部を備えており、この凸部は上記桟木の係合溝に係合する構造となっている。
ところで、この遮蔽用品取り付け器具の固定部材は、図1に示す様に、窓枠等に接合固定されて略鉛直方向に固定されることとなる固定板と、該固定板に対して略直角方向であり該固定板が窓枠等に固定された際に略水平方向となる上板及び該固定板並びに上板に対して略直角方向であり該固定板が窓枠等に固定された際に略鉛直方向となる2枚の側板から構成されている。摺動部材は該側板に対して近設される2枚の近設板と該近設板に対して略直角方向であり該窓枠等に固定された際に略水平方向となる支持板とからなっている。なお、近設板と、その両端に略直角方向に固定された支持板とは一体形成されている。螺子部材は、図示の通り、締結操作により該摺動部材を該側板に対して摺動させることが可能であるとともに摺動部材を固定部材へ摺動可能に留める締結具であり、また摺動部材を前記側板に対して摺動させることにより桟木を挟持する構造である。
また、この遮蔽用品取り付け器具の固定部材には、図1及び図4に示す様に、固定部材に一体成形されていて上板の中央付近から略直角方向に延びる雌螺子を有しており、この雌螺子に対して、雄螺子形状を成しており下から該支持板に貫通されるとともに上記雌螺子に螺入される締結具を捻回させて、該摺動部材を前記側板に対して摺動させる構造となっている。
なお、この遮蔽用品取り付け器具には、上板の少なくとも水平方向両端に該上板と略直角方向であり該固定板が窓枠等に固定された際に該上板から垂下することなる2個の凸部を備えている。
このようなことから、或いは上記の説明以外については甲第5号証で特定される構造から、本件登録意匠と同一又は類似の意匠は甲第5号証に開示されている。
(3)甲第6号証
甲第6号証はタイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社の代表者Chin-Chang Shi氏の証明書である。同号証は甲第3号証に対応させた証明となっている。
従って、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に対して、甲第6号証はそれらを補強する証拠となり得るとともに、また甲第6号証は台湾国内においても、取り付け器具の商品使用説明書は、1998年4月30日以前において、別添の商品と同一又は同一と認められる商品(ブラインドの柄、色等の相違を除く同一商品)の販売とともに、商品の中に挿入された状態で配布されていたことから、甲第6号証は本件登録意匠と同一の他は類似の意匠を開示している。
(4)甲第7号証及び甲第8号証
本件登録意匠に係る創作者は、公報の記載によれば「小寺康之」となっているが、甲第7証及び甲第8号証は、本意匠は元来、中華民国(台湾に居住する「王錫淋」が創作したことを証明している。そして、この出願は、「王錫彬」がすでに中華民国(台湾)の経済部に台湾実用新案出願第87200503号として出願し登録になっている。なお、その客体を特定するための公報はあらためて提出する。
なお、本件の真の創作者である「王錫彬」と、本件権利者の大湖産業株式会社とは直接又は間接的な取引関係にあり、大湖産業株式会社は本件の真の創作者である「王錫淋」の創作の提示に基づいて日本国で本件意匠を出願したものと思われる。これらの補強証拠はあらためて提出する。
4.むすび
以上の様に、本件登録意匠は、甲第1号証〜甲第6号証で特定される公知又は刊行物公知の意匠と同一又は類似の意匠であり新規性がなく、法第3条第1項1号、2号又は3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。また、本件登録意匠は、甲第7号証及び甲第8号証に示された各事実により、法第48条第1項第3号の規定により意匠登録をうけることができないものであり、無効とすべきである。
第二 被請求人の答弁及びその理由
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として、大要以下のとおり反論している。
1.背景
登録意匠に係る物品「スクリーン用取り付け器具」は、それ以前に存在した取り付け器具が種々不具合な点があったことから、被請求人である大湖産業株式会社の小寺康之氏が改良し、台湾在住の沈昌翰氏に作らせたものである。沈昌翰氏がスクリーン用取り付け器具を製造するのに当たり、台湾在住の王錫淋氏に金型の製造を依頼した。
一方、小寺康之氏は、過去において、新商品を開発してもすぐに模倣されてしまうことから特許などの工業所有権を取得することとし、台湾においては権利の取得を円滑に進めるために、沈昌翰氏の名前で出願することとし、日本においては大湖産業株式会社の名義で意匠及び実用新案で出願した。他方、王錫彬氏は沈昌翰氏に無断で台湾で独自に出願するとともに、沈昌翰氏から依頼を受けた金型と同じ金型を第三者に売り渡してしまった。
2.甲第各号証について
(1)甲第1号証
甲第1号証が示すインボイスの内容及び日付が真正であると仮定しても、このインボイスに記載された「ロールブラインド PI NO.120197」が如何なる意匠の商品であるものかは記載がなく、不明である。甲第1号証は、何ら証拠とはなり得ない。
(2)甲第2号証
甲第2号証が示す積荷証券の内容及び日付が真正であると仮定しても、この積荷証券に記載された「ロールブラインド」が如何なる意匠の商品であるものかは記載がなく、不明である。甲第2号証は、何ら証拠とはなり得ない。
(3)甲第3号証及び甲第4号証
甲第3号証は株式会社湯川家具の木下昭二氏の証明書であるが、甲第1号証及び甲第2号証が示す「ロールブラインド」の意匠と、証明書に添付する写真に表された取り付け器具の意匠とが、同一又は類似であるという証拠は何もない。そればかりか、1998年4月30日以前に販売した事実がある、あるいは公知であったなどとする証拠もない。どのような根拠で、登録意匠と同一又は類似の意匠の物品であったとするのか、不明である。また、どのような根拠で、登録意匠と同一又は類似の意匠の物品を販売したというのか、不明である。木下昭二氏の証人尋問を求める。
(4)甲第5号証
甲第5号証は使用説明書であるが、何をもって「配布されたのは、平成10年2月5日以前であることは明らかである。」と言えるのか、明らかではない。甲第5号証は、何ら証拠とはなり得ない。
(5)甲第6号証
甲第6号証は、タイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社の代表者Chin-Chang Shi氏の証明書であるが、信憑性に乏しく、また、何をもって1998年4月30日以前と言えるのか、何一つ証明していない。Chin-Chang Shi氏の証人尋問を求める。
(6)甲第7号証及び甲第8号証
台湾在住の王錫彬氏の出願に関するものであるが、この出願は背景で述べたように、冒認出願であり、証拠とはならない。
3.現在、意匠権者大湖産業株式会社は、請求人株式会社パロマワークスを、意匠権を侵害する者として告訴する準備をしており、過去において、数回、警告書を送付してきた。この度の審判請求書に証拠として添付している甲第1号証から甲第6号証までの株式会社湯川家具やタイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社に対しては、警告書を送付していないが、請求人株式会社パロマワークスと同様に、両社は利害関係人である。利害関係人の証明は証拠能力がないこと明らかであり、採用されるべきではない。
4.事実関係を明らかにするため、必要であれば、真の発明者である大湖産業式会社の小寺康之氏と、台湾在住の沈昌翰氏の両氏を証人として審判廷に出頭する用意がある。
5.結 論
審判請求書に記載された理由、また証拠として添付された甲第各号証は、いずれも証拠能力がなく、何一つ登録意匠を無効にする理由を明らかにしたものでもない。
第三 当審の判断
1.口頭審理
当審は、平成13年3月28日、大阪府大阪市天王寺区伶人町2-7所在の関西特許情報センター内近畿通産局特許室特許庁審判廷において、両当事者(請求人代表者杉村隆、請求人代理人弁理士宮崎伊章、請求人代理人石本恭二、被請求人代理人弁理士楠本高義、被請求人代理人小寺敏夫)出頭のもと、口頭審理を行なった。
請求人は、「1.請求の趣旨及び理由は、平成12年2月8日付け審判請求書の記載のとおり陳述、2.本日付け手続補正書において、甲第10号証(甲第3号証を補充)、甲第11号証(甲第7号証及び甲第8号証を補充)を提出し、合わせて参考資料1乃至参考資料5を記載のとおり陳述」した。
一方、被請求人は、「1.答弁の趣旨及び理由は、平成12年5月8日付け審判事件答弁書に記載のとおり陳述」した。
審判長は、「口頭審理を終了し、以後書面審理とする。なお、意見があれば30日(4月27日)以内に書面を提出すること」、両当事者に告げた。
2.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成10年5月1日の意匠登録出願に係り、平成11年9月3日に設定の登録がされた登録第1056415号意匠であり、その登録原簿及びその願書及び願書添付図面によれば、意匠に係る物品が「スクリーン用取り付け器具」であり、その形態が、同願書添付図面に示されるとおりのものである。(別紙第一参照)
3.甲号意匠
甲第3号証における「別添の写真で特定される商品(ロールブラインド及びその「取り付け器具」)」の意匠(以下「甲号意匠」という。別紙第二参照)は、株式会社湯川家具(堺市向陵中町2丁目2番14号所在)商品開発部次長である木下昭二氏が、「本件登録意匠の出願前において日本国内で公知であったこと」を、平成12年11月28日に公証人白川清吉(大阪法務局所属)が認証した「宣誓供述書」(甲第10号証、平成12年登簿第272号)によって立証したものである。
また、その事実、すなわち、「別添の写真で特定される商品(ロールブラインド及びその「取り付け器具」)」の意匠が「本件登録意匠の出願前において日本国内で公知であったこと」は、以下の(1)乃至(3)の事実(補強証拠)によっても間接的に証明されるているものである。
(1)甲第1号証によれば、1998年2月5日付けのインボイス(TB-0205/98)で、1998年2月7日にタイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社(TAIWAN BANBOO CURTAINN ENTERPRAISE CO.,LTD)が大阪府堺市向陵中町2丁目2番14号所在の株式会社湯川家具に対して「ITEM NO.PF-912-R JUTE ROLL UP BLINDS SIZE:(W)88 X (L)180CM,PET CLEAR BOX,COLOR:LIGHT BLUE」の「ロールブラインド PI NO.120197」を輸出したことが明らかである。
(2)甲第3号証及びそれを補充する甲第10号証によれば、株式会社湯川家具が、甲第3号証に添付された写真に係る商品を取付け指示書(INSTALATION INSTRUCTION)と共に、タイワンバンブーカーテンエンタープライズ株式会社から、1998年2月5日付けのインボイス(TB-0205/98)によって、日本国内に輸入したことが明らかである。
(3)甲第7号証及びそれを補充する甲第11号証によれば、取付け指示書(INSTALATION INSTRUCTION)に記載された「スクリーン用取り付け器具」と略同一の意匠が、中華民國専利公報に公告編號第386414号(2000年4月1日公告、1998年1月8日出願)の添付図面の第一圖ないし第五圖に開示されている。
してみると、甲号意匠に添付された写真の「スクリーン用取り付け器具」の意匠は、日本への輸出日前である1998年1月8日に台湾専利局に出願(申請)がなされていることから、その当時、台湾においてその創作が既になされていたことが推量できる。
4.本件登録意匠と甲号意匠の対比
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
[共通点]
基本的構成態様において、全体が、板状体を側面視倒「L」の字状に屈曲させて、平面視略矩形状、背面視略横長矩形状の固定部材とし、その背面側の下端に、両側に摺動片を起立させた正面視倒「コ」の字状の摺動部材を下から差込み、固定部材から垂下する小円筒状に、摺動部材を螺子により螺合させるものであり、螺合状態につき、側面視略「コ」の字状を呈するものであって、その空間部にスクリーンの桟木を挟んで、摺動部材を締め付けることによって固定するものである点、
また、その具体的態様において、
(1)固定部材について、上面板部を、平面視やや縦長の略矩形状とし、その両側を僅かに下方に屈曲させ、その屈曲部の前方寄りに略扁平凸状片部を形成し、また、背面板部の両側を、前方に屈曲させて側面全幅の略2/5幅の摺動部を形成し、そこを摺動部材との摺動面とし、また、背面板の中央に横方向に2つの小楕円孔を穿ち、さらに、上面板部の下面中央の背面寄りから、内部に螺子を切った小円筒状を垂下している点、
(2)摺動部材について、下面板を、底面視やや横長の略矩形状とし、その背面側略1/2幅を、上方に正面視略「コ」の字状に屈曲させて、固定部材との摺動面とし、また、下面板の背面寄りに螺子の挿通孔を穿っている点、が共通している。
[差異点]
一方、両意匠は、具体的態様において、
(イ)固定部材の上面板部について、本件登録意匠は、その中央に縦方向に2つの小円孔を現しているのに対し、甲号意匠は、上面板の背面側の中央に小円を現し、その左右に小楕円孔を穿っている点、
(ロ)摺動部材について、本件登録意匠は、底面視、前面側の辺部中央を半円弧状に切截しているのに対し、甲号意匠は、そのような切截部がない点、に差異がある。
4.類否判断
そこで、上記共通点と差異点が、両意匠の類否の判断に及ぼす影響について検討する。
両意匠に共通する基本的構成態様の点、すなわち、全体が、板状体を側面視倒「L」の字状に屈曲させて、平面視略矩形状、背面視略横長矩形状の固定部材とし、その背面側の下端に、両側に摺動片を起立させた正面視倒「コ」の字状の摺動部材を下から差込み、固定部材から垂下する小円筒状に、摺動部材を螺子により螺合させるものであり、螺合状態につき、側面視略「コ」の字状を呈するものであって、その空間部にスクリーンの桟木を挟んで、摺動部材を締め付けることによって固定するものである点は、両意匠の骨格を形成し、両意匠の大部分を占めるところであり、類否判断の支配的要素というべきである。また、具体的態様の共通点、(1)の固定部材について、上面板部を、平面視やや縦長の略矩形状とし、その両側を僅かに下方に屈曲させ、その屈曲部の前方寄りに略扁平凸状片部を形成し、また、背面板部の両側を、前方に屈曲させて側面全幅の略2/5幅の摺動部を形成し、そこを摺動部材との摺動面とし、また、背面板の中央に横方向に2つの小楕円孔を穿ち、さらに、上面板部の下面中央の背面寄りから、内部に螺子を切った小円筒状を垂下している点、及び、(2)の摺動部材について、下面板を、底面視やや横長の略矩形状とし、その背面側略1/2幅を、上方に正面視略「コ」の字状に屈曲させて、固定部材との摺動面とし、また、下面板の背面寄りに螺子の挿通孔を穿っている点は、基本的構成態様の共通点と相俟って、両意匠の類似感を表出しており、その類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきである。
一方、差異点(イ)の固定部材の上面板部について、本件登録意匠は、その中央に縦方向に2つの小円孔を現しているのに対し、甲号意匠は、上面板の背面側の中央に小円を現し、その左右に小楕円孔を穿っている点の差異であるが、その孔の位置により天井又は壁体への取り付け態様が異なるとしても、意匠全体としては、部分的差異に止まるものであり、孔の位置が取り付ける対象により適宜
選択されるものであることを考慮すると、意匠の類否判断の要素として高く評価することができず、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。また、(ロ)の摺動部材について、本件登録意匠が、底面視、前面側の辺部中央を半円弧状に切截しているの点の差異であるが、さほど大きくないありふれた半円弧状であり、また、それは底面視において認識できるものであってさほど目立たず、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
そうして、上記の差異点が相俟って、相乗効果を生じることを考慮しても、本件登録意匠は、意匠全体として、甲号意匠にない格別の特異性が認められず、前記の差異点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品が共通しており、その形態について共通点が差異点を凌駕する両意匠は、結局のところ類似するというほかない。
第五 むすび
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠登録を受けることができない意匠であるにも拘わらず意匠登録を受けたものであるるから、その他の無効理由を検討するまでもなく、意匠法第48条第1項第1号の規定により、その登録は、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2001-06-08 
結審通知日 2001-06-22 
審決日 2001-07-09 
出願番号 意願平10-12573 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (L5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 岩井 芳紀
伊藤 栄子
登録日 1999-09-03 
登録番号 意匠登録第1056415号(D1056415) 
代理人 楠本 高義 
代理人 宮崎 伊章 

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