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審決分類 審判 無効  意10条1号類似意匠 無効とする L5
管理番号 1067712 
審判番号 無効2000-35650
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-12-01 
確定日 2002-11-14 
意匠に係る物品 戸車用レ―ル材 
事件の表示 上記当事者間の登録第0930663号の類似第3号意匠「戸車用レ―ル材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第0930663号の類似第3号意匠の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯及び本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7年2月6日に出願(意願平7-2847号)され、平成8年3月12日に意匠登録第930663号類似3号として登録され、平成8年6月5日に意匠公報が発行されたものであって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「戸車用レール材」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。
2.請求人の主張
これに対し、請求人は、「意匠登録第930663号の類似3の登録を無効とするとの審決を求める。」と申し立て、その理由として、意匠登録第930663号類似3号(以下、本件登録意匠という)の登録は、本意匠である自己の登録意匠第930663号にのみ類似する意匠とは認めがたく、(旧)意匠法第10条第1項に反して登録されたものであるから無効とされるべきものである旨主張し、証拠方法として、甲第1〜2号証を提出している。請求人の主張の要旨及び証拠方法は次のとおりである。
[請求人の主張の要旨]
本件登録意匠は、甲第1号証の1及び2のコラム4Aのガイドレール(別紙2参照)や、甲第2号証のNO.613のガイドレール(別紙2参照)とは以下の点で共通するものであり、類似の意匠である。
(1)ウイング状の鍔を有している点。
(2)中央に溝を有している点。
(3)外側に鋸歯状突起を有している点。
(4)レール全体の高さと幅の寸法比が非常に似通っている点。
[証拠方法]
(1)甲第1号証の1


1980年版表紙およびコラム4の写し
(2)甲第1号証の二


1980年版表紙およびコラム4の写真
(3)甲第2号証
「TROLA technic」写し(抜粋)
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、平成13年2月5日付で答弁書を提出し、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と申し立て、本件登録意匠は、甲第1〜2号証意匠に類似しない旨主張し、証拠方法として乙第1〜3号証を提出している。被請求人の主張の要旨及び証拠方法は次のとおりである。
[被請求人の主張の要旨]
本件登録意匠と甲各号証の共通点として請求人が挙げた4点については否認しない。
本件登録意匠の基本的構成態様は、登録意匠第930663号(以下、本意匠という、別紙3参照)と同じく、底壁を有するレール本体中央に上方に開放溝が形成され、同溝を挟んで内方に向かって下がるように傾斜した左右対称の戸車転動面が形成され、レール本体の上端の左右にウイング状の鍔が形成され、左右の側壁の外側に鋸歯状の凸条が複数形成された形状をしていることであるが、甲各号証の意匠には本件登録意匠の必須不可欠の要件たる「中央の溝の上の左右対称の内向きに下がるように傾斜した戸車転動面」はなく、必須不可欠の要件を欠く甲各号証を以て本件登録意匠を無効にすることはできない。
[証拠方法]
(1)乙第1号証 参考図
(2)乙第2号証 比較図
(3)乙第3号証 使用状態比較図
4.当審の通知した無効理由
当審は、本件登録意匠について、請求人及び被請求人に対し、平成13年6月13日付けで次のとおり無効の理由を通知した。
本件登録意匠は、本意匠とする登録第930663号意匠に類似せず、しかも、その出願日前に出願された下記の意匠に類似するものであるから、(旧)意匠法第9条第1項及び同法第10条第1項の規定に違反して登録されたものである。
(記)意願平6-16270号の意匠
5.当審の判断
5.1 本件登録意匠について
本件登録意匠の構成要素を摘記すれば、請求人が甲各号証との共通点として挙げた(1)〜(4)の態様の他に、被請求人が挙げた「中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点」(これを(5)とする)、「レール裏面中央に浅い溝状部を形成している点」(これを(6)とする)、及び「溝の底面中央に細い条溝を形成している点」(これを(7)とする)を挙げることができる。
これらの構成要素のうち、請求人が挙げた共通点(1)〜(4)については、両者間に争いがなく、甲各号証からも明らかなように、それがこの種の物品におけるありふれた態様であると認められる。
つぎに、被請求人が本件登録意匠の必須不可欠の要件として挙げた(5)「中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点」については、以下に示すように、本件登録意匠の出願日である平成7年2月6日以前に出願された他の意匠、或いは刊行物所載の他の意匠にも認められるものであって、本件登録意匠を特徴付ける態様とは成し得ないものである。
・意願平6-16270号意匠(平成9年6月19日拒絶確定、別紙4参照)
・実用新案登録第3001761号、図5(別紙5参照)
つぎに、(6)「レール裏面中央に浅い溝状部を形成している点」については、該溝状部の態様がこの種物品の裏面等に所謂「肉盗み」として施される常套的手法を用いて形成される典型的なものであるため、やはり本件登録意匠を特徴付ける態様とは成し得ないものである。
また、(7)「溝の底面中央に細い条溝を形成している点」については、該条溝がありふれた罫書き溝の域を出ないものであるため、意匠の構成要素として特筆すべきものはない。
してみると、本件登録意匠は、これを全体的に特徴付ける新規な構成要素を具備していないものであると見なさざるを得ない。
5.2 本件登録意匠と意願平6-16270号意匠の類否
つぎに、本件登録意匠と前項で例示した意願平6-16270号意匠(別紙4参照)を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、本件登録意匠の前記構成要素のうち、(1)、(2)、(4)及び(5)の構成要素が共通し、さらに、各部の寸法比率については、(4)のレール全体の高さと幅の寸法比に加えて、「レール全幅に対する溝幅の寸法比を約10:3程度とし、溝の幅と深さが同程度の断面視略矩形状としている点」までも共通し、戸車転動面については、(5)の中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点に加えて、「戸車転動面の傾斜角度」までも共通するものである。
これらの共通点のうち、(1)のウイング状の鍔を有している点、(2)の中央に溝を有している点及び(5)の中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点、及びこれらの各態様が協調して表出する態様は、両意匠の構成要素の大部分を占めるものであって、全体的に見れば、意匠の骨格を成すものであり、これに(4)のレール全体の高さと幅の寸法比を端緒とする各部間の寸法比率における共通性が加味されることによって意匠の基調が形成され、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。
一方、両意匠には、(3)の「外側に鋸歯状突起を有している」か否か、(6)の「レール裏面中央に浅い溝状部を形成している」か否か、及び(7)「溝の底面中央に細い条溝を形成している」か否かの相違点が認められる。
しかしながら、これらの相違点に係る本件登録意匠の態様については、前項で述べたとおりであり、いずれも本件登録意匠を特徴付ける態様とは成し得ず、各共通点からもたらされる類似性を凌ぐものではない。
すなわち、本件登録意匠は、意願平6-16270号意匠に類似するものと認められる。
5.3 本件登録意匠と本意匠の類否
つぎに、本件登録意匠と本意匠を対比すると、両者は意匠に係る物品が一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)全体的な構成態様について、溝形鋼状レールの開口部両縁にウイング状の鍔を形成し、溝の上縁部に傾斜する戸車転動面を形成し、外側壁面に断面視鋸歯状の抜け止めを形成している点。
(2)鍔の基本形を平板状とし、外側上縁部に面取りを施している点。
(3)レールの全幅を全高の2倍程度としている点。
[相違点]
(1)溝の態様について、本件登録意匠においては、戸車転動面を緩斜面とし、底部両隅を細幅の傾斜面とし、溝全体の断面形状を深さと幅が同程度の略矩形状としているのに対し、本意匠においては、戸車転動面をやや急斜面とし、底部両隅の側壁に断面視円弧状の窪みを形成し、溝全体の断面形状を深さが幅の2倍強ある断面視略Y字形状としている点。
(2)外側壁面の態様について、本件登録意匠においては、壁面全体に鋸歯状の抜け止めを均一に配置しているのに対し、本意匠においては、壁面の上方約1/3程度を平坦面としてその中央に楔状の切り込みを設け、下方約2/3程度の部分に鋸歯状の抜け止めを配置している点。
(3)レール裏面の態様について、本件登録意匠においては、裏面中央に浅い溝状部を形成しているのに対し、本意匠においては、裏面全体を平坦面としている点。
(4)側壁の肉厚と溝幅の寸法比率について、本件登録意匠においては、側壁を含む全体の肉厚を溝幅の1/2弱の薄手のものとしているのに対し、本意匠においては、側壁の肉厚を溝幅と略同程度で、他の部分の略3倍程度ある厚手のものとしている点。
上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す態様は、意匠全体の骨格を成すものではあるが、多分に抽象的な共通性であり、これに共通点(2)及び(3)に示す態様を加味したとしても、戸車転動面を除けば、その態様はこの種の物品においてありふれたものであると認められる。
また、戸車転動面についても、相違点(1)に示すように、その傾斜角に明らかな差異が認められることを考慮すれば、これらの共通点からもたらされる類似性は、各相違点に示す両意匠の差異を圧倒するほどのものとは認められない。
これに対し、相違点(1)に示す本意匠の「戸車転動面をやや急斜面とし、底部両隅の側壁に断面視円弧状の窪みを形成し、溝全体の断面形状を深さが幅の2倍強ある断面視略Y字形状としている」態様は、その出願前に例を見ないものであり、これに相違点(4)に示す「側壁の肉厚を溝幅と略同程度で、他の部分の略3倍程度ある厚手のものとしている」態様が加わることによって、本意匠には、本件登録意匠とは明らかに異なる特有の基調が形成されているものと認められる。
さらに、相違点(2)に示す外側壁面の態様、及び相違点(3)に示すレール裏面の態様における差異は、両意匠の基調の違いを一層際立たせる効果をもたらしており、この基調の違いは、各共通点からもたらされる類似性を凌駕するものであると認められる。
すなわち、本件登録意匠は、本意匠とする登録第930663号意匠に類似しないものと認められる。
6.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、本意匠とする自己の登録意匠に類似せず、しかも本件登録意匠の出願日に先行する他の出願に係る意匠に類似するものであるから、(旧)意匠法第9条第1項及び同法第10条第1項の規定に違反して登録を受けたものであり、同法第48条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-03-19 
結審通知日 2002-03-25 
審決日 2002-04-11 
出願番号 意願平7-2847 
審決分類 D 1 11・ 3- Z (L5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 岩井 芳紀
温品 博康
登録日 1996-03-12 
登録番号 意匠登録第930663号の類似意匠登録第3号(D930663/3) 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 亀井 弘勝 
代理人 川崎 実夫 

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