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審決分類 |
審判 無効 2項容易に創作 無効とする F3 審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする F3 |
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管理番号 | 1070652 |
審判番号 | 無効2002-35047 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-02-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-02-13 |
確定日 | 2002-12-26 |
意匠に係る物品 | せいろう用中敷き |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1077019号「せいろう用中敷き」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1077019号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.請求人の申立及び理由 請求人は、登録第1077019号意匠(以下、本件登録意匠という)を無効とする、との審決を求めると申し立て、その理由として大要以下のとおり主張し、その主張事実を立証するため甲第1号証ないし甲第12号証及び参考資料を提出した。 (1)無効理由 (a)新規性について 本件登録意匠は、出願前に販売されていた「穴あきセパレート紙」の意匠(甲第3号証の1ないし8)、及び頒布された刊行物に記載された意匠(甲第5号証)に類似しているものであるから意匠法第3条第1項第3号に該当する。 (b)創作容易性について 本件登録意匠は、出願前に日本国内において公然知られた形状、及び模様(甲第3号証ないし甲第11号証)に基づいて容易に創作をすることができた意匠であるから、意匠法第3条第2項の規定に該当する。 上記により意匠法第48条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。 2.被請求人の答弁 被請求人は、本件意匠登録無効の請求は成り立たない、との審決を求める、と申し立て、その理由として大要以下のとおり主張し、その主張事実を立証するため乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 (1)新規性(類似性)に対して (a)甲第3号証の1ないし8の意匠との対比と類否判断 本件登録意匠の形態は、真円形状になる用紙本体に多数個の真円形状の透孔を形成しているのに対して、甲第3号証の1ないし8の証明書に添付された物品の形態は、真円形状になる用紙本体に多数個の周囲に花びら状の模様のある透孔を形成している。 両意匠は、用紙本体を真円形状とした点で共通しているが、透孔の形状が、きれいな真円形状であるのたいし、引用意匠の各孔周囲に花びらが咲いたような模様のある汚い透孔である点で相違する。 また、甲第3号証の1ないし8に係る証明書は、たのまれ証明であり、各証明を客観的に裏付ける確実な証拠は何もないから信憑性がない。また、各証明書に添付されている現物のコピーが不鮮明なものもあるため参考資料として提出された現物との同一性を確認することができない。 従って、このような証拠では、本件意匠が、その出願前に我が国において公然知られた意匠と類似するとの主張を裏付けるものとはなり得ないから請求人の主張は失当である。 (b)甲第5号証との対比と類否判断 甲第5号証の意匠は、いわゆる目皿といわれる構造をした金属製品であり、比較的大型の蒸篭の胴体に落として使用するものであるのに対して、本件意匠は、蒸篭の底面部に直接敷いて使用する使い捨ての物品であるから、物品の用途及び機能が似て非なるものである。 従って、当業者としては、たとえ甲第5号証に係る古い意匠が公知であったとしても、そのようなものを見て、本件意匠のようなものを創作することは到底考えられない。 両意匠を対比してみても、両意匠全体から受ける美感ないし印象は、それぞれ全く違うものであるし、需要者及び取引者が混同を起こすようなおそれもない。 以上の理由により、請求人提出の証拠に係る意匠は、いずれも本件意匠と類似するものとは認められないものである。従って本件意匠に対し、意匠法第3条第1項第3号に該当するものとの請求人の主張は理由が無く、失当である。 (2)創作容易性に対して (a)甲第3号証の1ないし8について これらの証拠は、請求人会社の取引先によるたのまれ証明書であるから信憑性がないものであり、証明対象の意匠が公然知られたことについては客観的に証明されていない。従ってこれらの証拠に基づいて容易創作性を論ずることはできない。 (b)甲第4号証ないし甲第11号証について これらの証拠は、いずれも特許局又は特許庁発行の公報であるが、これらの公報自体は刊行物として公知のものかもしれないが、だからといって、その中で図面によって特定されるべき一意匠は、決して公然と知られたものとはいえない。 以上の理由により、請求人提出の全証拠は、本件意匠の出願前に国内に頒布された刊行物に掲載されているものであるから、不特定多数人に「知りうる状態」にあったかもしれないが、「公然と知られた状態」にあったものとは断定できないものである。 従って、本件意匠に対し意匠法第3条第2項に該当するものとする請求人の主張には理由が無く、失当である。 (3)結論 以上の理由から、請求人の主張及び証拠は、本件登録意匠を無効とするだけの事由となるものではないから、請求のとおり審決を求める。 3.請求人の弁駁 請求人は、被請求人の平成14年4月15日付答弁書に対して、大要以下のとおり主張した。 (1)新規性(類似性)に対して (a)甲第3号証の1ないし8の意匠との対比と類否判断として 被請求人の主張する差異は、成形工具(方法)によって生じた差異である上に、凝視して初めて認識できる微細なものであるから、同一1創作の極部分的な変化であって、全体としての構成態様から受ける印象に差異を及ぼすものではなく、微差という他ない。また、請求人の提出した甲第3号証の1ないし8に係る証明書について、被請求人はその信憑性について縷々述べらるところであるが、各証明書は偶々請求人と取引のある各社が、自社で扱った商品についてその事実を述べているものであって私文書の形式的証拠力を始め、文書の内容も明確であって、この点における被請求人の主張は失当である。 従って本件登録意匠と出願前公知の甲第3号意匠は、類似する意匠である。 (2)「創作容易性」に対して (a)甲第3号証の1ないし8について 被請求人は、甲第3号証の1ないし8の証拠は、たのまれ証明書であるから信憑性が無く、これらの証拠にに基づいて創作容易性を論ずる資格はないと主張するが、各証明書は、偶々請求人と取引のある各会社が、自社で扱った商品について、その事実を述べているものであってこの点における被請求人の主張は失当である。 (b)甲第4号証ないし甲第11号証について 被請求人は、これらの証拠は、いずれも特許庁公報であるが、(判決を引用した上で)これらは公然知られたものに該当しない旨主張するが、近年の判例によれば、特許庁公報の周知性を否定することはできない、と判示され、甲第4号証ないし甲第11号証は発行後数十年を経過しているものであって、公然知られた状態にあったものと断定できるものであり、被請求人の主張は失当である。 以上のことから、本件登録意匠は、甲第3号証ないし甲第11号証に示された意匠の形状、及び模様に基づいて、シート状体を円形状とし、その内側全面に円形状の透孔を、中央の1個を中心にして略等間隔の仮想同心円様(透孔模様)に穿ってなるものであるから、この種意匠の属する分野における通常の知識を有するものが、日本国内において公然知られた形状、及び模様に基づいて容易に創作をすることができた意匠というほかない。 4.被請求人の第2答弁 被請求人が提出した答弁書の新規性(類似性)に対しての項の甲第3号証の1ないし8に係る証拠に対して、反論すべき理由を補充する。として大要「甲第3号証の1ないし8は、いずれも、正確な日付、種類、数量、また仕入れや販売のルートについて全く証明していない。このような事実関係が明らかでない証拠では全く信憑性はないから、これらを引用しての新規性に関する請求人の主張は、失当である。」と主張している。 5.当審の判断 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は、平成11年3月31日の意匠登録出願に係り、平成12年4月21日に設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付された図面代用見本によれば、意匠に係る物品を「せいろう用中敷き」とし、その形態は、同図面代用見本に現されたとおりのものである。(別紙第1参照) すなわち、本件登録意匠は、 基本的構成態様として、全体を、円形状の薄いシート体とし、シート体の内側に円形状の小さな透孔二十個余りを規則散点状に形成したものである点が認められる。 具体的な構成態様として、(a)透孔は、同形同大で、シート体中央の1個を軸とし、内側から外周に向かって7個、8個、10個を同心円形状に配したものである点が認められる。 (2)甲第3号証の意匠 当審は、無効理由として示された甲第3号証の1ないし8の意匠(各証明書に添付された見本によれば、外形は略同形同大であるが、透孔の配置において若干の差異が認められる)の内、特に甲第3号証の1(以下、甲号意匠と称す)に基づく意匠法第3条第1項第3号の無効理由について審理する。 甲号意匠は、1997年から2001年1月にかけてサランラップ販売株式会社が業務用として大阪市天王寺区空堀町13番5号所在 株式会社尚美堂に販売した穴あきセパレート紙であって、その形態は、実施証明書(写し)に添付されたとおりのものである。(別紙第2参照) すなわち、甲号意匠は、 基本的構成態様として、全体を、円形状の薄いシート体とし、シート体の内側に円形状の小さな透孔二十個余りを規則散点状に形成したものである点が認められる。 具体的な構成態様として、(a)透孔は、略同形同大で、5列の略水平な仮想横線と斜め格子状に交差する仮想縦線との交点部分に配したものである点、 (b)透孔は、不規則にひび割れ模様を有している点が認められる。 (3)両意匠の対比 本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共にせいろう用の中敷きの点で一致し、形態については、以下に示す共通点及び差異点が認められる。 まず共通点として、両意匠は、基本的構成態様である、全体を、円形状の薄いシート体とし、シート体の内側に円形状の小さな透孔二十個余りを規則散点状に形成したものである点が共通する。 また、具体的な構成態様として、(a)透孔を同形同大としている点が共通する。 上記の共通する、全体を、円形状の薄いシート体とし、シート体の内側に円形状の小さな透孔二十個余りを規則散点状に形成した態様は、両意匠の形態上の基調をなすもので、両意匠の使用状態の共通点と相まって、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきである。 これに対して差異点は、 (A)透孔の配列につき、本件登録意匠が、シート体中央の1個を軸とし、内側から外周に向かって7個、8個、10個を同心円形状に配したものであるのに対して、甲号意匠は、5列の略水平な仮想横線と斜め格子状に交差する仮想縦線との交点部分に配したものである点、 (B)透孔の形状につき、甲号意匠は、不規則にひび割れ模様を有しているのに対して、本件登録意匠は、ひび割れ模様を有していない点、 が認められる。 上記差異点の内、 (A)の点は、この種物品において、透孔を、同心円状に配するもの、格子状に配するもののいずれも、普通に見受けられるもので、両意匠の透孔の配列そのものに格別の意匠の創作があったものとは認められず、結局、両意匠の共通する基本的構成態様の中の部分的差異に止まり、両意匠の類否判断に与える影響場微弱に過ぎない。 (B)の点は、成形工具の切れ味の差異によって生じたもので、特に背景に暗調子の台紙等をおいて仔細に観察すれば認識できる微細な差異であって、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。 なお、被請求人は、甲第3号証の1ないし8の証明書は、「たのまれ」証明であり信憑性がない旨主張しているが、確かに当該証明書には、個々の具体的な取引を証明する日付、種類(型番)、数量等が明記されてはいないものの、各取引先が示すこれらの証明書には、具体的に取り引きしたとされる見本が添付されており、証拠として取り上げるのに足るものと認められる。また、「たのまれ」証明であることを裏付ける証拠が無く、逆に多数の第三者の、同様の証明書が提出されていることから、これらが証拠としての信憑性を有するものと判断できるものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであって、その他の無効理由について審理するまでもなく、その登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2002-06-06 |
結審通知日 | 2002-06-11 |
審決日 | 2002-06-24 |
出願番号 | 意願平11-7976 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(F3)
D 1 11・ 121- Z (F3) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
吉田 親司 |
特許庁審判官 |
西本 幸男 木村 恭子 |
登録日 | 2000-04-21 |
登録番号 | 意匠登録第1077019号(D1077019) |
代理人 | 横山 浩治 |
代理人 | 水野 尚 |
代理人 | 牛木 理一 |