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審決分類 |
審判 無効 2項容易に創作 無効としない L3 |
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管理番号 | 1072000 |
審判番号 | 無効2002-35046 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-03-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-02-12 |
確定日 | 2003-01-17 |
意匠に係る物品 | 道路用防獣さく |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1117986号「道路用防獣さく」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.請求人の申立及び理由 請求人は、「意匠登録第1117986号(以下、本件登録意匠という)を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申立、その理由として要旨以下のように述べた。 (1) 無効とすべき理由 (a) 甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に基づく創作容易 本登録意匠は甲第1号証の図1又は図2或いは甲第2号証の図3の意匠に基づいて2本組の横線材の数を単に増減し、更に甲第4号証或いは甲第5号証に示すようにフェンスの下側が横線材が密になるように横線材の数を単に増加したものに過ぎない。 (b) 甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に基づく創作容易 本登録意匠は甲第1号証の図1の意匠に、甲第3号証の中段の2本組横線材を組み合わせ、更に甲第4号証或いは甲第5号証に示すようにフェンスの下側が横線材が密になるように横線材の数を単に増加したものに過ぎない。 (2) 結論 以上のように、本登録意匠は甲第1号証乃至甲第5号証に記載の公知意匠に基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、意匠法第48条の規定により無効にされるべきものです。 甲第1号証 実用新案登録第3041701号公報 甲第2号証 特開2000-274118号公報 甲第3号証 意匠登録第910504号公報 甲第4号証 意匠登録第1018889号公報 甲第5号証 意匠登録第779907号の類似3号 2.被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として大要以下 に示すとおり主張した。 本件登録意匠は、甲第1号証ないし甲第5号証の意匠に基づいて容易に創作することができたものではなく、従って意匠法第3条第2項の規定に違反しておらず、本件審判請求は理由がない。 3.当審の判断 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は、平成12年12月26日の意匠登録出願に係り、平成13年6月22日設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「道路用防獣さく」とし、その形態は、願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照) すなわち、形状は、(ア)全体が、縦線材と横線材を竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は43本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、8本を、縦線材の上下端に突出した余地部を残して水平に配列したもので、(イ)横線材は、上方から1本目と2本目、3本目と4本目及び6本目と7本目をそれぞれ2本一組とし、隣り合う縦線材の左右の間隔の略7倍の長さの段間を開けて三段配し、5本目の横線材は、二段目と三段目の横線材の略中央に、8本目の横線材は、三段目と下端部間の略3分の1下端寄りに設けたものであり、(ウ)縦線材の上下端余地部は、隣り合う縦線材の左右の間隔に対して、上端を略0.6倍の長さとし、下端を略同じ長さとしたものである点が認められる。(別紙第1参照) (2)甲号意匠 (a)甲第1号証 図1は、(ア)全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は41本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、幅狭間隔の2本一組のものを一段とし、隣り合う縦線材の左右の間隔の略17倍の長さ分段間を開けて水平に二段配したもので、(イ)隣り合う縦線材の左右の間隔と一組の横線材の上下の間隔を略同長とし、隣り合う縦線材と一組の横線材で形成する格子目を略正方形状に表している点、(ウ)縦線材の上端部及び横線材の左右端部は、隣り合う縦線材の左右の間隔の略2分の1の長さ分突出し、縦線材の下端部は同間隔の略3倍の長さ分突出した態様のものである点が認められる。(別紙第2参照) 図2は、支柱部材に防獣フェンスを取着金具により取着した防獣フェンス構造体が表されており、その中の防獣フェンスは、(ア)全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は多数本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、幅狭間隔の2本一組のものを一段とし、隣り合う縦線材の左右の間隔のそれぞれ10倍の長さ分段間を開けて水平に五段配したもので、(イ)隣り合う縦線材の左右の間隔と一組の横線材の間隔を略同長とし、隣り合う縦線材と一組の横線材で形成する格子目を方形状に表している点、(ウ)縦線材の上端部及び横線材の左右端部は、それぞれ縦線材の間隔の略2分の1の長さ分突出し、縦線材の下端部は同間隔の略5倍の長さ分突出した態様のものである点が認められる。(別紙第2参照) 更に、実用新案登録請求の範囲の請求項2には、「・・上部連結部材と下部連結部材との間に、水平方向に設けてある所用数の中間連結部材とを備えており、・・・」との記載があり、言い換えれば、最上段と最下段の横線材の中間に2本一組の横線材を複数段配することが記載されている。 (b)甲第2号証 図3は、(ア)全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は37本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、幅狭間隔の2本一組を一段として隣り合う縦線材の左右の間隔の略6倍の長さ分段間を開けて水平に四段配したもので、(イ)縦線材の間隔と一組の横線材の間隔を略同幅とし、縦線材と一組の横線材で形成する格子目を方形状に表している点、(ウ)縦線材の上端部及び横線材の左右端部は、それぞれ隣り合う縦線材の左右の間隔の略2分の1の長さ分突出し、縦線材の下端部は同間隔の略2倍の長さ分突出した態様のものである点が認められる。(別紙第3参照) (c)甲第3号証 (ア)全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は41本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、正面視、上端部に3本一組としたものを、中央部及び下端部に2本一組としたものを縦線材の間隔の略8倍の長さ分開けて水平に三段配したもので、(イ)各組の横線材の上下の間隔は、隣り合う縦線材の左右の間隔よりわずかに幅狭とし、(ウ)背面側の上下端の、正面側上下端に対応する部位に、それぞれ横線材を設けた点が認められる。(別紙第4参照) (d)甲第4号証 (ア)全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は、上端部を、背面側に向かって鈎状に湾曲させたもの18本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材10本を下方寄りがやや密になるように、水平に配し、(イ)横線材の内、上方の2本は、湾曲した部分に配し、さらに、8本目及び9本目を除く6本を、隣り合う縦線材の左右の間隔の2倍弱の間隔で配し、8本目及び9本目の横線材は、7本目と10本目の横線材の間に等間隔に配したものである点が認められる。(別紙第5参照) (e)甲第5号証 (ア)全体が、縦線材と横線材で格子状に形成したものであり、縦線材は、8本をやや幅広の等間隔で垂直に配列し、両端を除く6本の上端に円錐状の忍び返しを設けており、横線材は、8本を下方寄りがやや密になるように水平に配し、(イ)横線材は、上から1本目、2本目、3本目、5本目及び8本目のそれぞれの間隔を隣り合う縦線材の左右の間隔と同長とし、3本目と5本目の略中央に4本目の横線材を配し、5本目と8本目の間に、6本目及び7本目の横線材を略等間隔に配したものである点、(ウ)上下端の横線材は、左右側に支柱に係止するための、環状体を水平に形成している点、(エ)縦線材及び横線材の、上下左右端がわずかに突出したものである点が認められる。(別紙第6参照) (3)本件登録意匠の創作容易性についての判断 (a) 甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に基づく創作容易について まず、請求人が主張するように、2本一組の横線材の配置構成のみに着目すると、本件登録意匠は、2本一組の横線材を三段設けたものであり、この点は、甲第1号証の図1、図2及び甲第2号証の図3及び、甲第1号証の請求項2の記載を勘案すると、2本一組の横線材の段数の単なる増減に過ぎないといえる。 しかしながら、本件登録意匠の、2本一組の横線材を等間隔に配した防獣さくにおいて、各段の間の広い間隔の中央に1本の横線材を加えることは、本件登録意匠の出願前に一般的ではなく、また、2本一組の横線材を等間隔に配した防獣さくにおいて、下端の突出部に1本の横線材を加えることも一般的な態様とは認められない。 すなわち、各甲号証には、さくの下方部の横線材の上下の間隔を密に配置するものが認められるものの、2本一組の横線材を複数段配し、その上下の段間に1本の横線材を配置した態様のものは認められず、他に本件登録意匠の出願前に公然と知られていたとする証拠も見あたらない。 更に、本件登録意匠の全体形状を観察した場合、横線材が形成する上下の間隔が、広くなったり狭くなったりする不規則な、統一感に欠けるものであるのに対して、甲第4号証及び甲第5号証の意匠は、横線材の間隔が、上方から下方に向かって等間隔に配する一定の規則をもって整然と配されており、統一感を看取させるもので、全く別異な意匠を形成しているものであり、この点についても、単に横線材の数を増加したに過ぎないとすることはできない。 そうすると、本件登録意匠は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に基づいて容易に創作できたものとすることはできない。 (b) 甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に基づく創作容易について まず、請求人が主張するように、2本一組の横線材のみに着目すると、本件登録意匠は、2本一組の横線材を三段設けたものであるのに対して、甲第1号証の図1の意匠には、2本一組の横線材の数を二段設けたものが表されており、これに甲第3号証の意匠に表された中央の2本一組の横線材を組み合わせて三段のものを創作することは、この種物品においては、何本の線材で組をなすかの構成及び、どの位置に配するかの態様を創作の要素として判断していることを勘案すると、一の意匠に、他の意匠の特定の部位の部材を 取り出して組み合わせることが、単なる寄せ集めであると解することは困難である。 また、本件登録意匠の下方側の横線材を密に配した点を、甲第4号証及び甲第5号証の意匠と比較すると、上記(3)(a)同様に、本件登録意匠の全体形状を観察した場合、横線材が形成する上下の間隔が、広くなったり狭くなったりする不規則な、統一感に欠けるものであるのに対して、甲第4号証及び甲第5号証の意匠は、横線材の間隔が、上方から下方に向かって等間隔に配する一定の規則をもって整然と配されており、統一感を看取させるもので、全く別異な意匠を形成しているものであり、この点について、単に横線材の数を増加したに過ぎないとすることはできない。 そうすると、本件登録意匠は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に基づいて容易に創作できたものとすることはできない。 (4)むすび 以上のとおりであって、請求人の主張する理由によって、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2002-11-12 |
結審通知日 | 2002-11-15 |
審決日 | 2002-12-06 |
出願番号 | 意願2000-37161(D2000-37161) |
審決分類 |
D
1
11・
121-
Y
(L3)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川越 弘 |
特許庁審判長 |
秋間 哲子 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 西本 幸男 |
登録日 | 2001-06-22 |
登録番号 | 意匠登録第1117986号(D1117986) |
代理人 | 松尾 憲一郎 |
代理人 | 内野 美洋 |
代理人 | 内野 美洋 |
代理人 | 松尾 憲一郎 |
代理人 | 高橋 清 |