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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) K3
管理番号 1072012 
判定請求番号 判定2002-60061
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-03-28 
種別 判定 
判定請求日 2002-06-17 
確定日 2003-01-31 
意匠に係る物品 振動ローラ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1005648号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠として示す「振動ローラ」の意匠は、登録第1005648号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、「イ号意匠図面の代用写真並びにその説明書に示す意匠は、意匠登録第1005648号及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証乃至第5号証を提出している。
1.本件登録意匠の説明
本件登録意匠(本意匠)と本件登録意匠の登録類似意匠は、意匠に係る物品を「振動ローラ」とし、その形態の要旨を次の通りとしている。
1-1.本件登録意匠
(1)基本的構成態様
(a)前部機体と後部機体とが旋回部を介して旋回自在に連結されており、前部機体と後部機体は、それぞれ前輪(転圧用鉄輪)と4列の後輪(タイヤ)を備えている。
(b)前部機体の前方において、上方から垂設されている左右のサイドプレートにより前輪が支持されている。
(c)前部機体の後部に、下縁部との間に間隔を有して、左右に大きな換気口が設けられている。
(d)後部機体の前部に、操縦ハンドルが設けられている。
(e)後部機体の後上部に散水用水タンクが設けられ、その幅方向の凹部に運転席が一体的に設けられている。
(f)前部機体の上面部における前方周縁部には面取りが施されている。
(2)具体的構成態様
(p)換気口は、直角部を有する台形形状に形成され、上部に長辺、下部に短辺が位置し、かつ、前上部に突出部が位置するように配置されている。そして、この換気口には、水平方向に複数本のスリットが形成されている。
(q)前記各サイドプレートは、前部機体に締着されている矩形形状の前部機体締着部(上部)と、前輪を側面から支持している幅広である変形八角形状の前輪締着部(下部)とから形成されており、前部機体締着部が左右の上部においてボルト締め(各4箇所)されている。そして、サイドプレートの中央部には、貫通部が形成されている。
(r)前記散水用水タンクは、側面視で、台形を基調とした変形七角形形状に形成されている。
(s)前記後部機体の前下部から散水用水タンクの前面部には、緩やかな傾斜部が形成されている。
(t)各構成要素の寸法比は、全長(L)を1.0とした場合には、それぞれ甲第3号証における参考図3-2に示す通りである。
1-2.本件登録意匠の登録類似意匠(意匠登録第1005648号の類似第2号意匠)
登録類似意匠は、本件登録意匠と基本的構成態様は同一であり、主として、前部機体、前輪における左右のサイドプレート及び左右の換気口についての細部の形態が異なっている。特に、前部機体に関し、その上部は傾斜面が強調されている三角形を基調とした略六角形状に形成されており、また、換気口の周囲のサイドパネルが一体となっている。さらに、換気口には、複数の小孔が設けられている。
2.イ号意匠の説明
イ号意匠は、意匠に係る物品を「振動ローラ」とし、その形態の要旨を次の通りとしている(甲第1号証)。
(1)基本的構成態様
(a)前部機体と後部機体とが旋回部を介して旋回自在に連結されており、前部機体と後部機体は、それぞれ前輪(転圧用鉄輪)と4列の後輪(タイヤ)を備えている。
(b)前部機体の前方において、上方から垂設されている左右のサイドプレートにより前輪が支持されている,
(c)前部機体の後部に、下縁部との間に間隔を有して、左右に大きな換気口が設けられている。
(d)後部機体の前部に、操縦ハンドルが設けられている。
(e)後部機体の後上部に散水用水タンクが設けられ、その幅方向の凹部に運転席がー体的に設けられている。
(f)前部機体の上面部における前方周縁部には面取りが施されている。
(2)具体的構成態様
(u’)前部機体の上部は、傾斜面が強調されている三角形を基調とした略六角形状に形成され、換気口の周囲のサイドパネルがー体となっている。
(p’)前記換気口は、台形形状に近似する、2つの直角部を有する略六角形形状に形成されており、上部に長辺が位置し、前上部に突出部が位置するように配置されている。そして、この換気口には、斜め方向に複数本のスリットが形成されている。
(q’)前記各サイドプレートは、前部機体に締着されている六角形形状の前部機体締着部(上部)と、前輪を側面から支持している、各隅角部が曲面を有する略矩形形状の前輪締着部(下部)とから形成されており、前部機体締着部が左右の上部においてボルト締め(各3箇所)されている(左側面視)。また、右側面視では、前輪締着部は、各隅角部が曲面を有している幅広な略台形形状に形成されている。そして、このサイドプレートの中央部には、貫通部が形成されている。
(r’)前記散水用水タンクは、側面視で変形八角形形状をなしており、下面に段部が形成されている。また、前記散水用水タンクの後面部における両角部には面取りが施されている。
(s’)前記後部機体の前下部から散水用水タンクの前面部には、垂直部が形成されている。また、後部機体の操縦ハンドルの下部は、パネル材で覆われている。
(t’)各構成要素の寸法比は、全長(L’)を1.0とした場合には、それぞれ甲第1号証における参考図1-2に示す通りである。
3.本件登録意匠とイ号意匠との対比
両意匠の共通点及び相違点は以下の通りである。
3-1.両意匠の共通点
(1)両意匠は、意匠に係る物品が「振動ローラ」で一致している。
(2)両意匠は、前記基本的構成態様である(a)〜(f)をともに備えている点で共通している。特に、本件登録意匠とイ号意匠とは、寸法が略同一である基本的な構成要素の配置を共通にしており、共通のプロポーションを有している。
3-2.両意匠の差異点
両意匠は、前記具体的構成態様である(p)〜(t)と、(p’)〜(u’)を備えており、特に「前部機体」、「換気口」、「サイドプレート」、「散水用水タンク及びその周辺形態」について相違している。
4.本件登録意匠とイ号意匠との類否
前記で指摘した、本件登録意匠とイ号意匠の各相違点についての検討を行う。
(1)前部機体について
イ号意匠では、「前部機体の上部が、傾斜面が強調されている三角形を基調とした略六角形状に形成されており、換気口の周囲のサイドパネルがー体となっている点」で、そのような態様となっていない本件登録意匠とは異なっている。
しかし、この相違点は、本件登録意匠と登録類似意匠にも見られる差異であることから、類否判断に大きな影響を及ぼすほどの主要な差異とは認められない。
(2)換気口について
本件登録意匠とイ号意匠では、「直角部を有する台形形状に形成されており、水平方向にスリットが形成されている点」と、「台形形状に近似する略五角形形状に形成されており、斜め方向にスリットが形成されている点」とが異なっている。
しかし、本件登録意匠とイ号意匠の換気口は、ともに、「前上部に突出部が位置するように配置されており」、両意匠を全体として観察した場合には共通する美感を与えるため、類否判断に大きな影響を及ぼすほどの主要な差異とは認められない。
また、換気口の細部形態の相違は、本件登録意匠と登録類似意匠にも見られ、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものであり、前部機体におけるサイドパネルの略同位置に同一程度の面積を持つ換気口が設けられていることの方が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
なお、イ号意匠は、左右の側面部において、換気口の高さ位置が異なっているが、特に右側面部における換気口の位置が本件登録意匠における換気口の位置と合致している。
(3)サイドプレートについて
本件登録意匠とイ号意匠では、「矩形形状の前部機体締着部と、幅広である八角形状の前輪締着部とから形成されている点」と「六角形形状の前部機体締着部と、各隅角部が曲面を有している略矩形形状(及びかつ幅広である略台形形状)の前輪締着部とから形成されている点」とが異なっている。
しかし、サイドプレートの細部形態の相違は、本件登録意匠と登録類似意匠にも見られるものであり、両意匠ともに前部機体の中央部における貫通部を含めて、基本的構成態様が共通していることから、当該相違点は、類否判断に大きな影響を及ぼすほどの主要な差異とは認められない。
(4)散水用水タンク及びその周辺形態について
本件登録意匠とイ号意匠では、第1に、「散水用タンクが、側面視で、台形を基調とした変形七角形形状をなしている点」と、「散水用タンクが、側面視で、変形八角形形状をなし、下面に段部が形成されている点」、第2に、「側面視で、後部機体の前方下部から、散水用水タンクの前面部には緩やかな傾斜部が形成されている点」と、「側面視で、後部機体の前方下部から散水用水タンクの前面部には垂直部が形成されている点」、第3に「後部機体の操縦ハンドルの下部に関し、パネル材で覆われているか否かの点」が異なっている。
しかし、本件登録意匠とイ号意匠とは、ともに、幅方向の凹部に、運転席が一体的に設けられている点が共通していることから、両意匠を全体として観察した場合には類似の美感が生じている。
また、イ号意匠では、前記散水用水タンクの後面部には本件登録意匠が有する傾斜面は形成されていないが、面取りが施されていることから、斜め前方視では、本件登録意匠と同様の傾斜面が視認されるため、類似の美感が生じている。
さらに、「後部機体の前方下部から散水用水タンクの前面部」及び「後部機体の操縦ハンドルの下部」は、振動ロ一ラの中央部に位置しており、ステップ等の存在により、その形態が格別強調されるものではなく、前記第2及び第3の相違点は、類否判断に大きな影響を及ぼすほどの主要な差異とは認められない。
(5)各構成要素の寸法比について
前記具体的構成態様(t)、(t’)で示した各構成要素の寸法比は、略同一程度であり、意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすほどの差異とは認められない。
5.まとめ
以上のように、本件登録意匠は、前記基本的構成態様で示した構成要素を有機的に組み合わせることで、非常にスマートですっきりした印象を生じさせている。
一方、本件登録意匠とイ号意匠とは、前部機体部と後部機体部の長さ比等を略同一としており、加えて、基本的な構成要素の配置を共通にしていることから、全体観察をした場合において共通の美感を奏している。そのため、前記各相違点を総合的に考慮したとしても、両意匠が奏する強い共通感を凌駕するものではない。
従って、本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても類否判断を決定づける支配的要素において共通するものであるから両者は類似する意匠である。
6.証拠方法
(1)甲第1号証:イ号意匠図面の代用写真並びに説明図
(2)甲第2号証:搭乗型振動ローラBW131ACW-2販売用パンフレット写し(販売の事実を示すもの)ボーマクジャパン株式会社
(3)甲第3号証:本件登録意匠説明図
(4)甲第4号証:本件登録意匠とイ号意匠の対照図
(5)甲第5号証:平成14年2月1日付けの通告書写し
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、「結論同旨の判定を求める。」と答弁し、その理由として、要旨以下のとおり反論し、乙第1号証乃至第6号証を提出している。
1.本件登録意匠と公知意匠との比較
本件登録意匠の出願日以前において、振動ローラの公知意匠が多数存在するが、乙第2号証として提出した公知意匠(型式「KV4AII」のアーテイキュレート式振動ローラの意匠)は、乙第6号証に示すように本件登録意匠の出願以前の公知意匠であることは明白である。
そして、この型式「KV4AII」の振動ローラには、本件登録意匠の基本的構成態様のうち、(a)〜(e)の基本的構成態様が備えられている。更に、乙第4号証において各構成要素の寸法比を示したが、これの各構成要素の寸法比と本件登録意匠の各構成要素の寸法比とは略同一であり、両者のプロポーションが酷似する。
本件登録意匠の基本的構成態様の(f)は、全体構成から見れば、基本的構成態様と言うよりも細部の構成態様であるが、ボンネットの前端部を前下がりの傾斜面(面取り)に構成することも周知の構成態様であり、本件登録意匠とイ号意匠との間においてのみ共通する特徴の有る構成態様ではない。
後部機体の後上部に散水用水タンクを設け、その幅方向の凹部に運転席を配置することは、周知の構成態様である。
前輪懸架用のサイドプレートの形状としては、公知意匠一覧表に示すように多種類の形状が存在し、各サイドプレートには貫通孔が形成されている。そのため、サイドプレートの形態がよほど特異で無い限り、サイドプレートの形態が類否判断を左右することはない。
型式「KV4AII」の振動ローラに装備される散水用水タンクにおいては、左右のサイドタンク部の上面がリアタンク部の上面よりも低く構成されているのに対して、本件登録意匠では、両サイドタンク部の後半部の上面がリアタンク部の上面と同一高さに構成されているものの、各リアタンク部の後面が、上方ほど前方に位置する傾斜面に形成されているため、本件登録意匠の散水用水タンクの側面視における形態は、型式「KV4AII」の振動ローラの散水用水タンクに似ている。
前部機体の両側壁板に形成される換気口の輪郭形状としては、前後両側縁が共に前傾姿勢となる平行四辺形状等が既に存在し、本件登録意匠と同じ輪郭形状に形成された換気口を備えたものが登録されている。それ故に、換気口の輪郭形状はよほど特異な形状で無い限り、換気口の輪郭形状が類否判断を左右することはない。
したがって、請求人の主張に基づけば、本件登録意匠と、公知意匠である型式「KV4AII」の振動ローラとは、前部機体部と後部機体部の長さ比等を略同一としており、加えて、基本的な構成要素の配置を共通にしていることから、全体観察をした場合において共通の美感を奏することになる。それ故に、本件登録意匠は、請求人の主張に従えば無効の理由を有することになるが、現在、本件登録意匠の意匠権が有効に存在することを考慮すれば、本件登録意匠の要部は、請求人が主張する基本的構成態様に存在するものではなく、具体的な構成態様に存在することは明らかである。
2.本件登録意匠とイ号意匠の類否判断
前記「1.本件登録意匠と公知意匠との比較」で述べた比較結果及び参考資料1の公知意匠に基づいて総合的に検討すると、本件登録意匠の要部及びイ号意匠の要部は、下記の通りである。
2-1.本件登録意匠の要部
(1)後部機体の特徴は、(a)散水用水タンクの両サイドタンク部の前端面と、後部機体の左右の側壁板のうち、乗降口の後方側に位置する前端面とが、上方ほど後方に位置する一直線状の傾斜面に形成されている点、(b)後部機体の両側壁板が側面視において略ヘの字状に形成されている点、の(a)、(b)の構成態様の組み合わせにある。
(2)前部機体の特徴は、(c)前部機体の両側壁板の後方上方に偏位した部位に、前側縁が前上がりの傾斜姿勢に形成された逆台形状の換気口を形成して、この換気口の傾斜前側縁と前輪懸架用のサイドプレートとの間、及び、換気口の下側縁と側壁板の下側縁との間に亘って位置する側壁板部分が側面視において幅広の逆ヘの字状に形成されている点、(d)前部機体のボンネットが前後方向で2分割されていて、少なくともー方の分割ボンネットを揺動開閉自在に連結するためのヒンジが設けられているとともに、前部分割ボンネットの前端部のうち、それの左右両側部分が外方ほど後方に位置する傾斜姿勢に形成されている点、(e)換気口の上側縁とサイドプレートの上端とが同じ高さ位置で水平方向に沿って一直線状に形成されている点、の(c)〜(e)の構成態様の組み合わせにある。そして、このような本件登録意匠の(a)〜(e)の構成態様は、参考資料3に示すように、本件登録意匠の類似第1号〜類似第3号意匠においても採られている共通の構成態様でもあるから、本件登録意匠の特徴を顕著に表す構成態様であるといえる。
2-2.イ号意匠の要部
(1)後部機体の特徴は、(a’)散水用水タンクの両サイドタンク部と後部機体の側壁板との境界が階段状に形成されている点、(b’)両サイドタンク部とリアタンク部とに亘って、各サイドタンク部の前端上部に形成された把手取付け用凹部と底面位置を揃えた状態で帯状凹部が形成されている点、(c’)後部側の両角部には、乙第1号証の2における9の写真に示すように、二個の逆三角形が結合したような特異形状の隅切り面が形成されている点、の(a’)〜(c’)の構成態様の組み合わせにある。
(2)前部機体の特徴は、(d’)乙第1号証の3における10〜13の写真に示すように、ボンネットが、それの前端を支点として揺動開閉自在な一枚のカバーから構成されているとともに、ボンネットの前端角部と左右両側の角部とに亘って一連の隅切り面が形成され、そのうち、左右の隅切り面が、ボンネット後端で先鋭状に収斂される三角形状に形成されている点、(e’)前部機体の両側壁板には、前側縁が前輪に沿う弧状に湾曲形成され、かつ、水平線に対して約30度の大きな傾斜姿勢の複数のがらり板を備えた換気口が形成されている点、(f’)左右の換気口の形成位置、及び、左右の前輪懸架用サイドプレートの形態が夫々異なり、前部機体の左右両側面が非対称形に構成されている点、(g’)前部機体の後壁板の上半部が、上方ほど前方に位置する傾斜面に形成されている点、の(d’)〜(g’)の構成態様の組み合わせにある。
2-3.本件登録意匠とイ号意匠の類否
本件登録意匠の要部とイ号意匠の要部とを総合的に比較検討すると、イ号意匠には、前記2-1.の(1)の(a)〜(e)で述べた本件登録意匠の特徴構成態様は一切備えていない。
更に、イ号意匠には、本件登録意匠のみならず、公知意匠にも見られない構成、つまり、前記2-2.の(a’)〜(e’)、(g’)で述べた新規な構成が付加されており、しかも、その付加された構成は、看者の最も注意を惹き易い部位での構成態様であって、類否判断を左右する重要な要素になっている。
3.まとめ
以上要するに、両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は顕著なものであり、しかも、全体的な「まとまり」が大きく相違するから、両意匠はその支配態様が異なると言うべきであり、イ号意匠は本件登録意匠の類似範囲に属しない。
4.証拠方法
(1)乙第1号証の1 イ号意匠の全体の写真
乙第1号証の2 イ号意匠の後部機体側の写真
乙第1号証の3 イ号意匠の前部機体側の写真
(2)乙第2号証 川崎重工業株式会社建設機械事業部発行の「アーティキュレート式振動ローラKV4AII(コンバインド型)」のカタログ写し
(3)乙第3号証 アーティキュレート式振動ローラKV4AIIの写真
(4)乙第4号証 アーティキュレート式振動ローラKV4AIIの寸法説明図
(5)乙第5号証 イ号意匠と本件登録意匠とKV4AII型の振動ローラとの比較図
(6)乙第6号証 酒井機工株式会社のホームページの写し
(7)参考資料1 振動ローラの公知意匠の一覧表
(8)参考資料2 振動ローラの先願及び後願意匠の一覧表
(9)参考資料3 本件登録意匠及び類似意匠登録の一覧表
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年2月19日に出願(意願平9-4688号)され、平成9年12月19日に設定の登録がなされ、平成10年3月18日に意匠公報が発行された意匠登録第1005648号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「振動ローラ」とし、その形態を願書添付の図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、被請求人が製造・販売している商品名「搭乗型振動ローラBW131ACW-2」の意匠であり、判定請求書によれば、意匠に係る物品が「振動ローラ」と認められ、その形態を判定請求書の甲第1号証に現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠とを対比すると、両者は、意匠に係る物品が一致し、その形態については、以下に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)前方下部に転圧用鉄輪を備えた前部車体部と後方下部に4列のタイヤを備えた後部車体部とを旋回自在に連結した振動ローラであって、前部車体部の左右側面部に転圧用鉄輪支持用のサイドプレート及び換気口を配設し、後部車体部の前方中央部にハンドル、操作レバー及びバックミラー取付用ステーを配した操作用パネル部を立設し、後部車体中央部分に一人用運転座席部を設け、座席部の左右及び後方を囲う散水用水タンク部を配設した全体の基本構成。
(2)後部車体前方左右角部を角面状に面取りし、平面視六角形状に形成している点。
(3)前部車体部の前面左右端部に略矩形状のヘッドライトを設けている点。
(4)転圧用鉄輪及び4列タイヤの上部に付着アスファルト剥ぎ取り用のプレートを付設している点。
[相違点]
(イ)ボンネットの態様について、本件登録意匠においては、正面及び底面が開口している筐体を前部車体後方上部にヒンジにより固定しているのに対し、イ号意匠においては、左右側面上部に三角形状の切り欠き面を設け、前面上部に角面状の面取りを施した、底面が開口している浅底箱体を前部車体上面部全体に冠着している点。
(ロ)前部車体部の側面フレームの態様について、本件登録意匠においては、転圧用鉄輪上部から斜め下方に鈍角に折曲し、排気口下側で再び水平となる帯状のフレームとしているのに対し、イ号意匠においては、矩形状板から転圧用鉄輪部分を円弧状に切り欠いた形状のフレームとしている点。
(ハ)後部車体部の側面部フレームの態様について、本件登録意匠においては、ステップ部から斜め上方に直線状に立ち上がり4列タイヤの上方で水平となる帯状のフレームとし、散水用水タンクとの接合部分を直線状に形成しているのに対し、イ号意匠においては、矩形状板から4列タイヤ部分を円弧状に切り欠いた形状のフレームとし、散水用水タンクとの接合部分に段差を一段形成している点。
(ニ)散水用水タンクの態様について、本件登録意匠においては、運転座席部左右部分上面よりも背もたれ後方部分上面を高くし、後部を傾斜面状に形成しているのに対し、イ号意匠においては、座席部の左右及び後方部分の上面を同じ高さとし、左右側面及び背面上部に凹状溝を1条設け、後方左右角部に三角形状の切り欠き面を形成している点。
(ホ)前部車体背面部の態様について、本件登録意匠においては、背面全体を垂直に形成しているのに対し、イ号意匠においては、前部車体背面部の上半部分を前方に傾斜させて形成している点。
(ヘ)サイドプレートの態様について、本件登録意匠においては、転圧用鉄輪内側に設けられた略八角形状の板体に下端部を内側に折曲した矩形状の板体を接合して形成しているのに対し、イ号意匠においては、上端部を台形状とし、下端部を円弧状とした一枚板の下端部側を転圧用鉄輪内側に折曲して形成している点。
(ト)左右側面部換気口の態様について、本件登録意匠においては、水平方向にスリットが施された倒立直角台形状の換気口を左右対称の位置に配設しているのに対し、イ号意匠においては、4枚のがらり板が斜めに施された略倒立直角台形状の換気口を左側が右側より高い位置に配設している点。
4.類否判断
上記の共通点及び差異点について検討すると、まず、共通点(1)に示す全体の基本構成は、意匠全体の基本的な骨格を成すものであるが、この種物品分野においては、例を挙げるまでもなく多数の従来例が存在することから、これらの共通性は本件登録意匠及びイ号意匠のみがもつ特徴と言うことはできず、それに基づく類似性は、各相違点に係る具体的な形態の差異を圧倒するほど強いものではない。
また、共通点(2)に示す態様については、旋回半径を小さくする目的で後部車体部に普通に施される程度のものであって、当該物品分野においては特段特徴のあるものではないため、両意匠の類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。
また、共通点(3)及び(4)に示す態様については、各部の具体的な構成態様にかかるものであり、かつ、一人乗りの振動ローラにおいては当然装備され得る部品にすぎないため、該部位の配設位置が共通しているとしても両意匠の共通点として働く効果は弱く、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
したがって、これらの共通点が相俟った効果を考慮しても、共通点のみをもって両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすと断定をすることはできないものである。
次に、差異点について検討すると、まず差異点(イ)のボンネットの態様における差異については、本件登録意匠の態様は、その登録類似意匠も含め前部車体後方部分のみに開口部を設けているものであって、前部車体部の上面全体が開口部となるイ号意匠の態様とは明らかに異なるものであり、該部位の形態についても大きく異なるものであるから、上記のように共通する態様に格別の特徴が認められない両意匠にあっては、両意匠を別異のものと看者に印象づけるに十分なものであり、これらの差異は、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものといえる。
また、差異点(ロ)及び(ハ)の前部車体部及び後部車体部の側面部フレームの態様における差異については、前部車体部及び後部車体部を併せて観察した場合、本件登録意匠の態様は、側面視略横長V字状のフレームとして観察されるのに対し、イ号意匠の態様は、略矩形状の側面フレームにボンネット部、操作用パネル部、運転座席部及び散水用水タンク部が載設されたものであるかのように看取されるため、両意匠の印象は大きく異なるものであり、これらの差異は両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと言うよりほかない。
また、差異点(ニ)の散水用水タンクの態様における差異については、特に後方から観察した場合、イ号意匠の該部位に施された凹状溝及び三角形状の切り欠き面の態様は視覚的に目立つものであり、本件登録意匠の格別の変化のない単なる傾斜面が施された該部位の態様とは別異の視覚的まとまりを形成しているものであるから、その差異は微弱なものとは言い難く、両意匠の類否判断上無視し得ないものである。
また、差異点(ホ)の前部車体背面部の態様、差異点(へ)のサイドプレートの態様及び(ト)の左右側面部換気口の態様については、この種物品分野においては、いずれも既にみられる形態であって、注目されるほどの差異ではないが、全体的に見た場合には、これらは両意匠の基調の違いを際立たせる視覚的効果をもたらせているものと認められる。
したがって、上記の差異点(イ)乃至(ト)を総合して判断すると、両意匠の差異点が共通点を凌駕することは明らかであって、意匠全体として、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものとすることはできない。
第4.むすび
以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものと認められる。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-01-21 
出願番号 意願平9-4688 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (K3)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 森 則雄 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 江塚 尚弘
岩井 芳紀
登録日 1997-12-19 
登録番号 意匠登録第1005648号(D1005648) 
代理人 北村 修一郎 
代理人 磯野 道造 
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