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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立成立) J7 |
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管理番号 | 1072014 |
判定請求番号 | 判定2002-60056 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2003-03-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2002-05-17 |
確定日 | 2003-01-27 |
意匠に係る物品 | 鼻汁吸引器 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0948352号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「鼻汁吸引器」の意匠は、登録第0948352号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求人の申し立て及び理由 請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、判定請求書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として甲第1ないし17号証の書証を提出した。 その主張の要旨は、以下のとおりである。 すなわち、本件登録意匠(登録第948352号意匠)の創作の要点について述べれば、この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、容体とキャップを結合した容器の形状(及び結合形状に表した模様等)にあることが明らかであり、本件登録意匠については、キャップの上面に2本の煙突の様に突出する接続嘴の形状とキャップ外周の緩やかな波状凹凸の連続模様と、容器の略円筒形状(中空の略円柱形)にあり、これと(先端にマウスピースとノーズピースを接続した)2本の垂直平行の吸引管の配置形状からなる構成態様が相俟って、本件意匠全体の基調を表出している。 本件登録意匠とイ号意匠の共通点、差異点を比較検討すると、両意匠の共通点は、概念的な構成態様(容器から突出している2個所の接続嘴に接続した2本の吸引管の先端に、マウスピースとノーズピースを接続している構成態様。)に係るものに過ぎない。 2本の吸引管の配列に係る構成態様について、本件登録意匠の垂直2条とイ号意匠のL形とは明確な差異がある。 本件登録意匠の垂直2条配列は、この種物品における吸引管配列の基本パターンでもある。 一方イ号意匠は、2個所の接続嘴(内孔)をキャップと容体の別々に分離して設けて高低差を保って配置しており、このL形配列は、従来のこの種物品においては類例を見ない請求人独自の創作であり、両意匠の類否に大きな影響を与えるものである。 両意匠は、具体的な構成態様の内、先端をフランジ状とする管形状のマウスピースと、略球根形(中心は管)をしたノーズピースの形状において、共通するところがある。しかし、これらの共通点は、端末矮小の物品機能に由来する部分的な態様であって、全体意匠の創作から見ると創意に重きを置いた部分でないことが明らかであり、何れも特徴的であるとは言えないので、両意匠の類否に与える影響は微弱に止まるものである。 両意匠を全体的に考察すると、両意匠の共通点は、類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、差異点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏まっても両意匠の類否判断に及ぼす影響は、その結論を左右するまでには至らないものである。 したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので、請求の趣旨どおりの判定を求める。 第2 被請求人の答弁 被請求人は、イ号写真並びにその説明書に示すイ号物件の「鼻汁吸引器」の意匠は、登録第948352号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると答弁し、その理由として、答弁書記載のとおりの反論をし、要旨以下のとおり主張した。 すなわち、本件登録意匠に係る「鼻汁吸引器」は、その使用に当たって、ノーズピースを被介護者の外鼻孔に当接させると共に介護者がマウスピースを口に加えて使用するものであって、これを使用する介護者は、ノーズピースが被介護者の外鼻孔に確実に装着することができるか或いはマウスピースをくわえて確実に吸引できるか否かに大きな注意を払うことは明らかである。 本件登録意匠に係る鼻汁吸引器及びイ号意匠に係る鼻汁吸引器は共に,二本の吸引管のうちの一方の吸引管の先端にノーズピースが一体的に設けられていると共に、ノーズピースは双方とも略球根形の同一形態を呈しており、更に、他方の吸引管の先端にマウスピースが一体的に設けられていると共に、マウスピースは双方とも略円筒状の同一形態を呈している。 判定請求人は、本件登録意匠では、その二本の吸引管が容器のキャップの上面に並んで煙突状に突出しているのに対して、イ号意匠では、その二本の吸引管が容器の上面中央と側面の別個所に、略90°の角度を保って突出していると主張しているが、本件登録意匠及びイ号意匠に係る鼻汁吸引器の二本の吸引管は共に可撓性を有する合成樹脂管から形成されており、その流通過程における包装時には吸引管は包装面積を小さくするために、例えば、渦巻き状に丸められた状態で収納されてディスプレイされ、使用にあたっては、介護者と被介護者との相対的な位置関係によって任意に屈曲、変形させて用いられるものであって、二本の吸引管は、本件登録意匠及びイ号意匠の六面図に表されているような位置関係にて直条に常時形成されているものではない。 従って、二本の吸引管の取付位置が容器のキャップの上面であるか否かの相違が、本件録意匠とイ号意匠との類否関係にあたって、些細なものであるといわざるを得ず、容器に対する二本の吸引管の取付位置の相違が、本件登録意匠とイ号意匠の類否判断に与える影響は極めて微弱であるといわざるを得ない。 また、判定請求人は、本件登録意匠の容器の形状は略円筒形を基本形としているのに対して、イ号意匠の容器の形状は略リンゴ形を基本としていると主張しているが、共に円筒形状である点において共通するものであり、しかも、本件登録意匠とイ号意匠の容器の形態は共に斬新な形態ではなくありふれた形状にすぎないので、両意匠の類否判断に与える影響は極めて微弱であるといわざるを得ないものである。 本件登録意匠とイ号意匠との類否判断にあたって、その機能上、重要な役割を果たすノーズピース及びマウスピースの形態の酷似が与える影響が極めて大きいのに対して、その他の両者の相違はノーズピース及びマウスピースの酷似に比して微差であるといわざるを得ず、本件登録意匠とイ号意匠とは類似するといわざるを得ないものである。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成6年2月21日に意匠登録出願し、平成7年12月22日に意匠権の設定の登録がなされた登録第948352号意匠であり、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「鼻汁吸引器」とし、その形態は、同図面に記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。 2.イ号意匠 本件判定請求に係るイ号意匠は、判定請求書に添付された甲第1ないし3号証により示されたとおりのもので、意匠に係る物品を「鼻汁吸引器」とし、その形態は、イ号写真および説明書の記載のとおりとしたものである(別紙第2参照)。 3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討 本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態については、主として以下に示す共通点及び差異点がある。 [共通点] (1)全体が、蓋体と容体とからなる鼻汁溜用の容器と、これに接続するノーズピース付吸引管とマウスピース付吸引管とからなること。 (2)容器について、円筒形を基本とする筒体状容器であって、蓋体と容体が上下にわかれて、境界部でネジ締め嵌合していること。 (3)ノーズピースは略玉葱形状で吸引管の端部を覆うものであり、マウスピースは覆輪状に吸引管の端部を覆うものであること。 (4)吸引管について、いずれも可撓性のある管であること。 [差異点] (イ)容器の具体的な形態について、本件登録意匠は、容器全体が略円筒形状であって、蓋体は略伏椀形で、その下端縁周部を残して、周面に上下方向の緩い波状凹凸を表しているのに対して、イ号意匠は、容器全体が略リンゴ形状であり、その蓋体の下端縁周部に倒U形の凸模様を連続して表していること。 (ロ)吸引管と容器の接続態様について、本件登録意匠は、二本の吸引管が蓋体の上面から上方へ並んで接続しているのに対して、イ号意匠は、一方のマウスピース付吸引管が蓋体の上面中央から上方へ突起して接続し、他方のノーズピース付吸引管が容体の側面から水平方向に突起して接続していること。 そこで、上記の共通点と差異点に関し、イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かの判断に及ぼす影響について以下に検討する。 まず、共通点(1)は、鼻汁吸引器を構成する態様であるが、本件登録意匠の出願前において、既に同様の構成態様のものが普通に知られており、本件登録意匠の特徴点ということはできないから、その影響は微弱というべきである。共通点(2)は、容器としては基本的な形態であって、多分野において利用され、ごく普通に見られるものであって、鼻汁吸引器の容器としたことに格別の創意は認められないから、特徴的なものといえず、その影響は微弱である。共通点(3)については、覆輪状に吸引管の端部を覆うマウスピースは極普通に見られる態様のものであるが、略玉葱形状で吸引管の端部を覆うノーズピースには特徴的でないとする証拠はないから、これは両意匠に共通する特徴点ともいえるのではあるが、これが端部の部分的な態様に過ぎないことを考慮すると格別に注目されるものでもないから、いずれも、その影響は微弱である。共通点(4)は、この種吸引管においては、普通に見られる吸引管の態様であって特徴がなく、その影響は微弱である。 そうすると、上記共通点は、それらを総合した効果を考慮しても、その影響は微弱といえるものである。 これに対し、差異点(イ)については、その容器が、意匠全体の中で中核を占める大きな部分であって、かつ、両意匠における容器の全体形状には、略円筒形状であるか、略リンゴ形状であるかの顕著な差異があり、また、上記したように、その蓋部分の凹凸模様の態様に差異があり、その容体部分の形状も差異があることにより、容器の全体形状として、それぞれが異なる特徴を現しており、その影響は大きいものであり、差異点(ロ)については、吸引管と容器との接続態様の差異であるが、二本の吸引管が蓋体の上面から上方へ向かって並んで接続されているか、あるいは一本が蓋体に上面中央から上方へ向けて接続され、もう一本が容体の側面から水平方向へ向けて接続されているかの差異は、接続部位及び接続角度が異なることにより、接続態様の基本構成を別異のものとし、看者の目を惹くところとなり、その影響は大きいものである。そして、上記差異点が相俟って、それぞれに特徴のある容器の形態を決定づけており、その影響は大きいものである。 以上のとおり、差異点の影響が共通点の影響を凌駕する両意匠は、到底類似するものとはいえない。 4.むすび 従って、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものとはいえない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2003-01-14 |
出願番号 | 意願平6-4243 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZA
(J7)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
藤 正明 |
特許庁審判官 |
伊勢 孝俊 伊藤 栄子 |
登録日 | 1995-12-22 |
登録番号 | 意匠登録第948352号(D948352) |
代理人 | 三宅 始 |
代理人 | 山本 拓也 |