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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L5 |
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管理番号 | 1073442 |
審判番号 | 無効2002-35134 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-04-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-04-08 |
確定日 | 2003-02-10 |
意匠に係る物品 | 戸車用車輪 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1130939号「戸車用車輪」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本件意匠 本件登録意匠(以下、本件意匠という)は、平成12年11月22日に出願(意願2000-33309号)され、平成13年11月16日に設定の登録がなされ、平成14年1月15日に意匠公報が発行された意匠登録第1130939号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「戸車用車輪」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。 2.請求人の主張 これに対し、請求人は、「登録第1130939号意匠の登録を無効とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、本件意匠は、甲第2号証(意匠登録第1066150号公報、別紙2参照)に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当するものである旨主張し、証拠方法として、甲第1〜6号証を提出している。 請求人の主張は概ね次のとおりである。 (1)本件意匠は、意匠に係る物品の説明にあるように、「車輪の中央部分に扁平な転動部と、転動部の両側方に角部をアールにした二段の小径転動部とを形成した点」に特徴があるものであって、この点が本件意匠の基本的構成態様であり、甲第2号証と同じであることが、甲第3号証の比較図(別紙3参照)から明らかである。 (2)本件意匠は、前記基本的構成に加えて小径の転動部の厚みの略半分の厚さの円盤部が小径転動部の両側面に形成され、この円盤部の構成と前記基本的構成の組み合わせが本件意匠の具体的構成態様となっているが、甲第2号証意匠も、車輪の中央部分に扁平な転動部と、転動部の両側方に角部をアールにした二段の小径転動部とを形成し、小径転動部の両側面に円盤部を形成しており、具体的構成態様が本件意匠と一致する。 (3)本件意匠と甲第2号証意匠は、基本的構成態様と具体的構成態様が同じであって、本件意匠は甲第2号証意匠に類似するものと言わざるを得ない。 (4)本件意匠と甲第2号証意匠には、小径転動部のアールの形状において若干の相違点があり、円盤部の厚み及び直径においても若干の相違点があるが、これらの相違点は、全体形状に埋没してしまう程度の微差に過ぎない。 (5)甲第4号証意匠(登録第976682号意匠、別紙4参照)は、車輪の中央部分に扁平な転動部があり、その両側に二段の小径転動部がある点では甲第2号証意匠と共通するものであるが、甲第4号証意匠にあっては小径の転動部の角部を直線状の傾斜面としているのに対し、甲第2号証意匠においては、小径転動部の角部をアールとしており、この角部がアールとなっている小径の転動部が甲第2号証意匠の特徴的な構成要件となっているもので、角部がアールとなっている小径転動部がある本件意匠は、アールの形状に若干の相違点があっても、甲第2号証意匠の類似範囲に含まれるものである。 [証拠方法] (1)甲第1号証 意匠登録第1130939号公報 (2)甲第2号証 意匠登録第1066150号公報 (3)甲第3号証 本件意匠と甲第2号証意匠の比較図 (4)甲第4号証 意匠登録第976682号公報 (5)甲第5号証 参考図 (6)甲第6号証 意匠登録第1130877号公報 3.被請求人の主張 非請求人は、平成14年6月18日付で答弁書を提出し、本件意匠は、甲第2号証意匠に類似するものでない旨主張し、証拠方法として、乙第1〜2号証を提出している。 被請求人の主張は、概ね次のとおりである。 (1)本件意匠の特徴は、「車輪の中央部分に扁平な転動部と、転動部の両側方に角部をアールにした二段の小径転動部とを形成した点」にあるが、甲第2号証意匠の小径転動部は、なだらかなアール処理された一段のもので、二段に形成されていない。この点を請求人は誤認している。 (2)請求人の言う本件意匠の円盤部は、二段の小径転動部の外側の段部に相応するものであって、甲第2号証意匠の円盤部とは、その構成も形状も全く異なっている。 (3)乙第1号証から明らかなように、両意匠は、側面図に表された円輪模様の配設、構成が全く異なっているのみならず、中央部に設けられた透孔の意匠全体に占める割合が、本件意匠においては、約55%、甲第2号証意匠においては約20%と全く相違しており、全体観察した場合、両意匠は、看る者に全く異なった印象を与えるものである。 (4)両意匠の公報の記載に基づいて作製した乙第2号証の斜視対比図をみれば、両意匠における全体的な外観形状の差異は一見して明白である。 [証拠方法] (1)乙第1号証 側面視対比図 (2)乙第2号証 斜視対比図 4.当審の判断 4.1 請求人の主張について (1)請求人は、2.(1)に示すように、甲第2号証の「意匠に係る物品の説明」の記載をそのまま援用し、本件意匠における車輪の意匠の基本的構成態様を「車輪の中央部分に扁平な転動部と、転動部の両側方に角部をアールにした二段の小径転動部とを形成した点」であるとした上で、基本的構成態様が甲第2号証意匠と同じであるとしているが、甲第2号証意匠の「角部をアールにした小径転動部」は、「二段」ではなく「一段」であって、本件意匠と同じでないことは明らかである。 (2)また、請求人は、2.(2)に示すように、本件意匠には前記基本的構成態様に加えて、小径転動部の厚みの略半分の厚さの円盤部が小径転動部の両側面に形成されているとし、該円盤部と前記基本的構成態様の組み合わせが本件意匠の具体的構成態様であるとした上で、本件意匠の具体的構成態様が甲第2号証意匠と一致する旨主張しているが、甲第3号証の比較図によれば、請求人の認定する具体的構成態様は、前記基本的構成態様の構成要素として認定したところの、「角部をアールにした二段の小径転動部」のうちの外側の段部について、別の観点から「円盤部」として再度認定したに過ぎないものであることから、請求人の認定した本件意匠の具体的構成態様と基本的構成態様は、実質的に同一の事柄であり、その基本的構成態様が甲第2号証意匠と同じでないことは前記のとおりである。 (3)したがって、本件意匠と甲第2号証意匠について、基本的構成態様が同じで具体的構態様が一致するとした2.(3)に示す請求人の認定は失当であり、その認定に基づいてなされた両意匠が類似する旨の主張は採用できない。 (4)なお、請求人は、平成14年9月12日付の弁駁書の末尾(4頁9行〜14行)において、「仮に、」と前置きした上で、本件意匠は、甲第2号証意匠を基に、円盤部の厚みを増し、軸受け部材の記載を省略して構成されたものに過ぎないので、意匠法第3条第2項の規定に違背して意匠登録を受けたものである旨主張するが、仮に、本件意匠を意匠法第3条第2項の観点から検討したとしても、本件意匠の角部をアールにした小径転動部は二段であって、甲第2号証意匠とは異なるものであることは前記のとおりであり、本件意匠の出願前に角部をアールにした二段の小径転動部を持つ戸車が公然知られていた証拠はなく、また、この種の物品分野において、小径転動部の角部を二段に形成することが容易であることを示す証拠もない。 したがって、この点についての請求人の主張は採用できない。 4.2 被請求人の主張について、 被請求人の提出した乙第2号証の斜視対比図(別紙5参照)に記載された斜視図は、本件意匠と甲第2号証意匠の角部の丸みの違いを補助線や陰影を付加することによって故意に際立たせており、両者の他の図面に記載された形態との整合性を欠くものと認められるので、当該部位の形態の違いを示す証拠として採用することはできない。 4.3 本件意匠と甲第2号証意匠の類否 そこで、本件意匠と甲第2号証意匠の類否について検討すると、意匠に係る物品については両者一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。なお、甲第2号証意匠については、本件意匠の出願前に公然知られていたものであるため、ベアリングを除いた部分を対象にして検討するものとする。 【共通点】 (1)略タイヤ状に形成された車輪の外周部中央に角部を角張らせた扁平転動部を突出させ、その両側に角部を丸めた小径転動部を形成し、さらにその外側に一段小径の円盤部を形成し、車輪の内周部中央に環状のベアリング装着溝を形成した全体の基本構成。 (2)車輪幅を外径の略1/3弱程度とし、中央の扁平転動部の幅を車輪幅の略1/3程度としている点。 【相違点】 (1)小径転動部の幅について、本件意匠においては、小径転動部の幅を扁平転動部の幅の略3/4程度としているのに対し、甲第2号証意匠においては、該部の幅を扁平転動部と同程度としている点。 (2)円盤部の態様について、本件意匠においては、該部の幅を小径転動部の幅の略1/2程度として、角部を丸めることにより、該部を二段目の転動部としているのに対し、甲第2号証意匠においては、該部の幅を小径転動部の幅の略1/10程度として、角部を直角に角張らせている点。 上記共通点及び相違点について、検討すると、共通点(1)に示す全体の基本構成に共通点(2)に示す扁平転動部の占める寸法比率が加わった態様は、両意匠の骨格を成す態様ではあるが、円盤部の具体的形態を捨象した多分に抽象的な共通性であって、相違点(2)の円盤部の具体的な形態における差異を圧倒するほどの視覚効果をもたらすものであるとは認められない。 一方、相違点(1)の小径転動部の幅における差異については、形態の共通性を維持した範囲内での僅かな数量的改変の域を出ないものと認められる。 しかしながら、相違点(2)の円盤部の態様における差異については、甲第1号証公報の意匠に係る物品の説明に記載されているように、本件意匠の円盤部が「角部をアールにした二段の小径転動部」のうちの外側のものであることから、転動部としての機能も併せ持つものであるのに対し、甲第2号証意匠の円盤部は、車輪全体に対する幅及び位置関係を考慮すれば、転動部として機能することを目的としたものではないと思量される。 してみると、相違点(2)の円盤部の態様における差異は、単なる数量的改変に止まらず、意匠の設計思想にまで及ぶ質的なものであり、本件意匠の小径転動部から円盤部にかけての態様、すなわち、「角部をアールにした二段の小径転動部」の態様は、意匠の構成要素全体に占める比重も大であって、前記共通点に基づく類似性を凌いで、本件意匠を全体的に特徴付けているものと認められる。 すなわち、本件意匠は、全体的に見れば、甲第2号証意匠に類似するものではないと認められる。 5.むすび 以上のとおりであって、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件意匠の登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2002-12-02 |
結審通知日 | 2002-12-05 |
審決日 | 2002-12-26 |
出願番号 | 意願2000-33309(D2000-33309) |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Y
(L5)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石坂 陽子、早川 治子 |
特許庁審判長 |
藤木 和雄 |
特許庁審判官 |
岩井 芳紀 江塚 尚弘 |
登録日 | 2001-11-16 |
登録番号 | 意匠登録第1130939号(D1130939) |
代理人 | 杉本 勝徳 |
代理人 | 大西 浩 |