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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効とする M3
管理番号 1075079 
審判番号 無効2002-35458
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-23 
確定日 2003-04-07 
意匠に係る物品 ナット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1087847号「ナット」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1087847号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1、請求人の申立て及びその理由
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由として、本件登録意匠は、出願前に公然知られた形状(甲第3号証乃至第15号証)に基づいて容易に創作できたものであり、意匠法第3条第2項に該当する、と主張した。

第2、答弁の趣旨及び理由
被請求人は、「審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」と答弁し、その理由として概ね次のように述べた。
請求人が主張する甲第3号証から甲第15号証までの事実に基づく意匠の創作性の判断は、創作容易の範疇を越えている。特に請求人が主張する事実では、本件登録意匠で構成されたフランジ部に形成された略コ字状の切欠部が特定されていないのである(甲第15号証は、単に略L字状の切欠部である)。」
第3、当審の判断
1、本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年2月12日の意匠登録出願に係り、平成12年8月4日に設定の登録がなされた意匠登録第1087847号( 本意匠第1087231号は平成14年4月17日登録抹消)であり、その願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品が「ナット」、その形態が別紙第1に示されたとおりのものである。
すなわち、その形態は、中央に略円孔を有する略短六角筒状で、その底部に円形板状のフランジ部を設けた基本的な構成態様からなり、各部の具体的な構成態様につき、上面の円孔周囲をドーナッツ板状の極浅い凹陥面状とし、フランジ部は、水平平滑面状で、その前後2個所に小さいビス用の小円孔が穿たれ、外周縁に略コ字状の切り欠きが一つ設けられているもので、中央の円孔の内周縁には3つの切り欠き部を有する雌ねじ部が表れている態様のものである。
2、無効事由について
(1)通常ナットは、使用時にボルトの先端にはめて回転することによって締め付け位置まで進め、その後強く締め付けるものであるが、本件登録意匠の出願前において、その回転による締め付け位置までの前進作業等締め付けのための効率及び強度を上げるなどの機能上の目的で、ナットの内部をテーパー状の空間とし、その内部空間に、先ず数個に算分したねじ駒、円形のワッシャ、スプリング等を内蔵する構造とした態様のナットの形状も周知となっていたところである(参照、特開昭53-11273『甲第4号証』、特公昭55-50203『甲第5号証』、実開昭56-149119『甲第11号証』、実開昭63-193112『甲第12号証』、実開平4-90707『甲第14号証』、実開平5-42735、実開平5-62718、特開6-81830『甲第7号証』、特開平8-200342『甲第8号証』、特開平8-205354『甲第9号証』、特開平9-273529『甲第10号証』など)。
(2)また、本件登録意匠の出願前、ナットの形状として、略短六角筒状で、その底部側に円形板状のフランジ部を設けた座金付きナットの形状も例を挙げるまでもなく周知(参照、甲第3号証 金属産業新聞社発行「1998年版 特殊ファスナー便覧・付仕入ガイド 」1998年7月20日発行の前24、前42、前97、125、312、巻末2、巻末3頁など)である。
(3)座金付きナットのフランジ部に切り欠きを設けることも周知(参照、甲第15号証 実用新案登録第350874号公報)である。そして、本願意匠の切り欠きの略コ字状の切欠の形状も一般的である。
(4)また、座金部、フランジ部等に取り付け孔を穿つことも一般的に行われているところである(参照、甲第3号証、金属産業新聞社発行「1998年版 特殊ファスナー便覧・付仕入ガイド 」1998年7月20日発行の前42、前97頁)。
(5) そうであるから、本件登録意匠は、出願前に周知の座金付きナットの内部をテーパー状の空間とし、その内部空間に、先ず3個に算分したねじ駒、次に円形のワッシャ、そしてスプリング、その上にワッシャを順次内蔵する周知の内部構造とし、座金部に1つの切り欠きと2個の円孔を穿ったまでの創作に過ぎないものである。
(6)すなわち、
a,本件登録意匠の内部構造は、A-A断面図、B-B断面図、及びC-C断面図においては明確に表されているものの、基本6図面の正面図においては、内部構造の上端の円形ワッシャが、略六角筒状の上面中央の円孔周囲の極浅い凹陥面としてその上面が現れ、内蔵されている3つのねじ駒の内周面側が背面図の円孔の内周縁側に3つの切り欠き部を有する雌ねじ部として狭い幅で現れるに過ぎず、機能的な効果はあるとしても、意匠的には、本件登録意匠のその外観は、前記のように、周知の座金付きナットの態様(参照、金属産業新聞社発行「1998年版 特殊ファスナー便覧・付仕入ガイド 」1998年7月20日発行の前24、前42、前97、125、312、巻末2、巻末3頁など)であって、
b,本件登録意匠の断面図3図によってその詳細が明らかになるところの内部構造自体も、ナットの内部をテーパー状の空間とし、その内部空間に、先ず数個に算分したねじ駒、円形のワッシャ、スプリング等を内蔵する構造とした態様であるが、この内部構造を有するナットは本件登録意匠の出願前周知(参照、特開昭53-11273、特公昭55-50203、実開昭56-149119、実開昭63-193112、実開平4-90707、実開平5-42735、実開平5-62718、特開6-81830、特開平8-200342、特開平8-205354、特開平9-273529など)の態様であって、本件登録意匠は、周知の内部構造を周知の手法で内蔵しているに過ぎないものでそこに格別の創作は認められない。
c,また、広く建築分野、製造業等で用いられるナットにおいては、座金付きナットにおいて、戻り留めのために切り欠きを設けることは、周知の手法(実用新案登録第350874号公報)であり、本件登録意匠の切り欠きも極一般的な略コ字状の切り欠きであって、格別の創作は認められないものである。
d,さらに、同じく広く建築分野、製造業等で用いられるナットにおいては、従来よりナット自体を固定するためにその座金部にビス等を通すための孔を穿つことは極一般的であって、かつ、固定のためにビス通しの穿孔を設ける手法自体が、あらゆる物品において極一般的な手法でもあって、本件登録意匠の穿孔の態様も極一般的な大きさの穿孔を極一般的な前後2個の配置で設けたもので格別の創作は認められないものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件登録意匠は、出願前公然知られた形状、すなわち、甲第3号証乃至甲第15号証の事実に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当し、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2003-02-03 
結審通知日 2003-02-06 
審決日 2003-02-24 
出願番号 意願平11-3250 
審決分類 D 1 11・ 121- Z (M3)
最終処分 成立  
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 西本 幸男
鍋田 和宣
登録日 2000-08-04 
登録番号 意匠登録第1087847号(D1087847) 
代理人 江藤 剛 
代理人 三浦 光康 
代理人 土橋 秀夫 

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