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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする F2 |
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管理番号 | 1076630 |
審判番号 | 無効2002-35251 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-06-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-06-17 |
確定日 | 2003-04-14 |
意匠に係る物品 | 紙ホルダ |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第994095号「紙ホルダ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第994095号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及びその理由 請求人は、結論同旨の審決を求める、と申し立て、その理由として、概略以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第24号証、及び検甲第1号証(いずれも枝番を含む)を提出した。 登録第994095号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、その出願前に、請求人と被請求人とにより、同一、或いは少なくとも類似の意匠といえる紙ホルダの製造販売行為がなされており、その出願前に公然知られた意匠、或いは少なくとも、公然知られた意匠に類似する意匠といえるものであるから、意匠法第3条第1項第1号、或いは少なくとも、同法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同法第48条第1項第1号の規定によりその登録は無効とすべきである。 第2.被請求人の答弁 当審では、請求書の副本を被請求人に送達し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、その期間を経過しても被請求人から応答がなく、答弁書の提出がなされなかったものである。 第3.当審の判断 (1)本件登録意匠は、平成7年(1995年)6月1日に出願があり、平成9年6月20日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「紙ホルダ」とし、その形態は、別紙第一に示すとおりとしたものである。 すなわちその形態は、表側挟持板と裏側挟持板とが、側面視逆略U字の一体状に連結された、横長帯板状のもので、表側挟持板は、下寄りが僅かな凹湾曲状を呈して下端が僅かに前方に向き、上端が後方に小幅、折曲された態様のもので、裏側挟持板は、上端に、表側挟持板とを連結する中空玉縁部が設けられて、下端が内方上向きに折返された側面視略J字状を呈するもので、裏側挟持板上端の中空玉縁部の中央に2カ所の切込孔が設けられ、これに略U字板状の吊環が軸止されたものである。 (2)請求人は、本件登録意匠について、その出願前に、本件請求人と本件被請求人とにより、同一、或いは少なくとも類似の意匠といえる紙ホルダが「R20型」と称して製造され、販売されていたとして、甲第2号証ないし甲第24号証、及び検甲第1号証(いずれも枝番を含む)を提出している。 そこでこれら各号証を検証するに、まず、甲第11号証ないし甲第23号証によれば、本件登録意匠の出願前である、平成3年から平成6年の間に、「R20型」と称するホルダーが、ツマミ1ヶをセットとして、本件請求人である株式会社草セルと、本件被請求人である白金化成株式会社とにより、石本紙工、宮下加工(株)、五洋建設(株)等の多数の納入先に、納品された事実が認められる。 そして甲第6号証によれば、1987年(昭和62年)3月7日付けで、白金化成株式会社により、型式を「W-20K」とする紙ホルダーの製作図面(図面部分は別紙第二のとおり)が作成されていたことが認められ、甲第7号証ないし甲第10号証によれば、この「W-20K」とする紙ホルダーに対応する金型が、1989年(平成1年)にプラゲンにより製作され、「R20型」として、請求人である株式会社草セルに納品されていたことが認められる。更に、検甲第1号証の、背見出しを「’95〜’96 カレンダー用 ポスター用 背見出し用 ・卓上カレンダーケース・見本帖」とする、白金化成株式会社が1995年(平成7年)〜1996年(平成8年)用として作成したと認められるホルダーの見本帖によれば、見開き左頁に、「R20型」として、吊環が軸止された紙ホルダーの製品見本が認められ、この製品見本の紙ホルダーの本体部分が、甲第6号証の、型式を「W-20K」とする紙ホルダーと構成をほぼ同じくするものであることが認められる。 以上を総合すれば、甲第11号証ないし甲第23号証により、白金化成株式会社及び株式会社草セルが、平成3年から平成6年の間に販売したと認められる「R20型」と称するツマミ付のホルダーの意匠は、白金化成株式会社において、「W-20K」として製作された、甲第6号証の製作図面(図面部分は別紙第二のとおり)に基づく紙ホルダーであって、これに吊環が1ヶ取り付けられるものであったと認められる(以下これを「甲号意匠」とする)。 (3)本件登録意匠と甲号意匠との類否判断 本件登録意匠と甲号意匠を対比するに、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、表側挟持板と裏側挟持板とが、側面視逆略U字の一体状に連結された、横長帯板状と認められるもので、表側挟持板は、下寄りが僅かな凹湾曲状を呈して下端が僅かに前方に向き、上端が後方に小幅折曲された態様のもので、裏側挟持板は、上端に、表側挟持板とを連結する中空玉縁部が設けられて、下端が内方上向きに折返された側面視略J字状を呈するものであり、これに吊環が1ヶ取り付けられるものである点で共通する。 一方両意匠は(イ)表側挟持板の前面につき、本件登録意匠は上寄りの大きな部分が僅かな突曲面状をなし、下寄りの凹湾曲が極く浅いものであるのに対し、甲号意匠は、上寄りの大きな部分を垂直面状とし、下寄りの凹湾曲が本件登録意匠よりやや深いものである点、(ロ)吊環について、本件登録意匠は、裏側挟持板上端の中空玉縁部の中央に2カ所の切込孔が設けられ、これに略U字板状のものが先端を差し込む態様で軸止してされているのに対し、甲号意匠は、甲第11号証ないし甲第23号証によれば、吊環が1ヶ取り付けられるものであることが認められるものの、その形状、及び取付態様が明らかでない点、に差異が認められる。 しかしながら、(イ)の差異については、本件登録意匠の上寄りの突曲面も極く僅かに突出する程度で、下寄りの凹湾曲の度合に若干の差異があることを考慮に入れても、全体としては、表側挟持板について、下寄りに凹湾曲状に浅く窪む部分を設けて下端が僅かに前方に向くものとし、上端が後方に小幅折曲した態様とした共通点の中での微差に止まり、(ロ)の点についても、この種の紙ホルダーにおいて吊環が1ヶ取り付けられる場合は、上辺中央に、上向きに取り付けることが普通で、またこれを逆U字状のものとすることも普通で(例えば、実開昭62-199365号)、その形状に格別の特徴はなく、しかも詳細に観察した場合においても、本件登録意匠と同様、挟持板上端の中空玉縁状の部分の中央に2カ所の切込孔が設けられ、これに略U字板状の吊り環が先端を軸止して差し込まれた態様のものが従前に認められ(実開昭60-24579号、実開平6-9978号)、本件登録意匠独自の特徴を表すところとはいえず、仮に吊環の形状、及び取付態様が明らかでないとしても、その差異は両意匠の類否を決するものとはいえない。 これに対し両意匠の共通点は、両意匠の形態全体に亘るところを構成し、全体の基調を形成するものであり、とりわけ、ホルダー本体(吊環を除く部分)の形態上の共通点は、両意匠の紙ホルダーとしての特徴を端的に示し、両意匠の形態上の特徴をよく表すところである。従って両意匠を全体として観察すれば、共通点が両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすのに対し、差異点は局部的な変更、或いは形態上の特徴に係わるところをなすものではなく、相まった効果を考慮しても、類否判断において、共通点を上回る影響を及ぼすものでなく、両意匠は、全体として類似するというほかない。 (4)なお、上述のとおり、本件登録意匠は、甲号意匠に類似し、従って、その出願前に公然知られた意匠に類似する意匠と認められ、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものであるが、更に以下の事実によっても、その出願前に公然知られた意匠に類似するものと認められる。 すなわち、検甲第1号証は、背見出しを「’95〜’96 カレンダー用 ポスター用 背見出し用 ・卓上カレンダーケース・見本帖」とする、白金化成株式会社が1995年(平成7年)〜1996年(平成8年)用に作成したと認められるホルダーの見本帖であり、その見開き左頁に、「R20型」とする紙ホルダの製品見本(別紙第三参照、なお別紙第三は、請求人が「R20型」紙ホルダー製品見本を図面化したもの)が認められる。 ところでこの見本帖自体には、製作日等を具体的に示す記載はなされていないものであるが、見開き右頁上段に、「R15型PS製」、「R17型PS製」、「R19型抗菌性木目調」等のホルダー見本が、特に「新製品」として示されているのに対し「R20型」を含む見開き左頁のものは「新製品」として示されてはおらず、この「R20型」とするホルダーが、1995年ないし1996年において特に新製品ではなく、すでに販売がなされている従来品であることを示していること、しかも、この種の見本帖は、該当年度の販売に合わせて、一般には該当年度に入る前には製作され(ちなみに、甲第24号証によれば、白金化成株式会社が1989年〜1990年用に作成した見本帖には裏表紙の右下に「S.63.2.」との記載があり、前年である1988年2月、すなわち該当年度のほぼ1年前には製作されていたことが認められる。)、検甲第1号証の見本帖についても、1995年の使用に合わせて、1995年に入る前には製作されていたと考えるのが自然で、しかも、当該見本帖において「R20型」として示されたホルダーのうちの、本体部分にほぼ一致する形状の、ホルダー本体の製作図面が、1987年(昭和62年)に白金化成株式会社において作成され(甲第6号証)、1991年(平成3年)から1994年(平成6年)の間に「R20型」とするホルダーが、白金化成株式会社から多数の納入先に納品した事実が認められること(甲第11号証ないし甲第23号証)、等を合わせ考慮すると、この見本帖に示された、「R20型」とするホルダー、或いはほぼ一致する形状のホルダーが、白金化成株式会社において「R20型」と称して、1995年に入る前、遅くとも、本件登録意匠の出願日である1995年(平成7年)6月1日以前に、販売活動がなされていたものと解することが自然で、検甲第1号証の見本帖に「R20型」として示されたホルダー、或いはこれとほぼ一致する形状のホルダーが、本件登録意匠の出願前に公然知られた状態にあったことが推認できる。 そして本件登録意匠は、この検甲第1号証の見本帖に「R20型」として示された紙ホルダーに対し、一定の長さを備えるものであるが、この種のホルダーは、被吊下物に応じて適宜の長さとするものと認められるから実質的な差異とはいえず、その余の形状がほぼ一致する両意匠は、全体としてほぼ同一の意匠といえ、従って、仮に、検甲第1号証の見本帖自体が、本件登録意匠の出願日である平成7年(1995年)6月1日に未だ販売活動に使用されていなかったと仮定しても、本件登録意匠について、その出願前に、少なくとも類似する意匠が、公然知られるに至っていたと推認できる。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件登録意匠は、その出願前である平成3年から平成6年までの間に、白金化成株式会社、及び株式会社草セルにより、「R20型」として販売され(甲第11号証ないし甲第23号証)、公然知られるに至っていたツマミ付の紙ホルダーに類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであり、しかも、検甲第1号証の見本帖によっても、本件登録意匠の出願前に、本件登録意匠に類似する意匠が公然知られるに至っていたと推認でき、従って、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであって、その登録を無効とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2003-01-27 |
結審通知日 | 2003-01-30 |
審決日 | 2003-03-03 |
出願番号 | 意願平7-15835 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(F2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 京子 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
山崎 裕造 市村 節子 |
登録日 | 1997-06-20 |
登録番号 | 意匠登録第994095号(D994095) |
代理人 | 細井 勇 |