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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L2
管理番号 1076636 
審判番号 無効2001-35494
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-11-06 
確定日 2003-04-21 
意匠に係る物品 花壇用ブロック 
事件の表示 上記当事者間の登録第1126040号「花壇用ブロック」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1126040号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
1.請求の理由の要旨
意匠登録第1126040号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、その出願前公知の意匠(登録意匠第665590号の類似4号の意匠、以下「甲号意匠」という)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであり、また、本件登録意匠の出願前に広く知られた甲号意匠の形状に基づいて容易に創作されたものであり、意匠法第3条2項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第48条第1項の規定により意匠登録を無効とされるべきである。
2.意匠法第3条第1項第3号の規定に違反する理由
本件登録意匠と甲号意匠の共通点及び差異点を総合し、全体として両意匠を対比すると、本件登録意匠のものは、花だん用ブロックの意匠として、円柱状の固体を連接するようにして並べた形として、その一端部を円柱そのままの凸部形状とし、反対側の端部を、前記のような凸部形状に嵌合出来る凹曲面として形成してなる点については、甲号意匠のものと軌を一にするところである。ただ、(イ)その周側面において多数の細かい縦筋状の凹凸を交互に全面に配してなる点や、(ロ)円柱と円柱との連接部において、そのV字形の溝底を緩和する面を形成した点において甲号意匠とは、差異がみられるところである。しかしながら、前記(イ)の点は甲第4号証〜甲第8号証にみられるように、この種のブロックにおける常套的な手法に過ぎない。又、(ロ)の点は、円柱体の継ぎ目の溝底を誇張してみれば溝底に広がりがあるように見受けられないこともないかも知れないが、花だん用ブロックの常として、全体の寸法はそれ程大きくないものであるから、実際には縦の凹凸が溝底に1、2本増加したとしても、全体的には看者にとって全くインパクトを与えないものである。従って、本件登録意匠と甲号意匠との差異点は何ら格別のことではなく、本件登録意匠は円柱を密に接続して一直線上に並べてなる甲号意匠の意匠的印象を覆すことの出来ない部分的な差異にしか過ぎないものである。従って、本件登録意匠は甲号意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものである。
3.意匠法第3条第2項の規定に違反する理由
甲号意匠等に顕著にみられる基本的な態様や、円柱の連接部分に中間部を配すること、細かい縦筋状の凹凸をブロック表面に表すことはいずれも周知のことであり、本件登録意匠はこれらを単に組合わせて物品の形態として表わした程度のものにすぎないため、当業者が容易に創作できるものと認められる。
第2.被請求人の答弁及び答弁の理由
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1.無効理由第1(意匠法第3条第1項第3号の規定違反)について
この種物品の属する分野においては、本件登録意匠の出願前から、全体の基本構成につき、複数の縦長円柱状体を横に並列状に連結した態様に一体成形した態様のものが見受けられ、また連接して使用するために、側面部に継ぎ合わせ面を形成した態様のもの、またその側面部の一方を弧状凹部に他方を円弧状の曲面に形成した態様のものが見られるから、本件登録意匠は、全体の基本構成につき格別新規な態様を表したものというものではない。このことから、両意匠に共通しているとした基本的な構成態様のみでは類否判断の要素としてはそれほど高く評価することができず、基本的な構成態様における共通点が両意匠の類否判断に影響を及ぼす度合いは相対的に低いものと言える。これに対して、両意匠の具体的な態様における正面部及び背面部の各円柱状部分の境界部の態様の差異点(イ)及び正面部及び背面部と両側面部の周側面の態様の差異点(ハ)については両意匠の要部判断に影響を及ぼす要素であり、そうして、差異点(イ)及び(ハ)に係る正面部及び背面部と側面部の周側面の態様についての差異が他の差異点とも相俟って、甲号意匠と本件登録意匠との共通点を大きく凌駕して、看者に別異の意匠を構成したとの印象を与え得るものであるから、差異点(イ)及び(ハ)は両意匠の類否判断を左右する要部における差異と言うべきである。したがって、本件登録意匠と甲号意匠とは、意匠に係る物品が一致しているが、両意匠の形態については、前記のように共通点があっても、類否判断を左右する要部において大きな差異があるから、本件登録意匠は甲号意匠には類似せず、したがって、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反するものでない。
2.無効理由第2(意匠法第3条第2項の規定違反)について
まず、請求人が証拠として提出した甲各号証はいずれも意匠公報であって、かかる公報のみをもって、ただちに意匠法第3条第2項における「周知」の形態、すなわち、「日本国内において広く知られた」形態であるとは言えない。しかも、甲号意匠物品は商品名「ガーデンエース」として全国的に販売されていると単に主張するのみであって、何らその事実は証明されていない。
したがって、かかる証拠をもって、本件登録意匠が「当業者が容易に創作をすることができるものである」との主張自体失当である。
仮にかかる形態が周知であるとしても、以下に述べる理由によって本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当しないことは明らかである。
すなわち、請求人が本件登録意匠の要部の一つである「縦筋」について、周知の技法である根拠として掲げた、甲第4号証ないし第6号証のいずれにも、「弧状凹部を除く周側面全体に縦筋状に多数の角張った細い凹凸条を外周1/2当たり16個の割合で形成した」本件登録意匠の形態は全く記載されていない。さらにこのような縦筋の形態が、本件登録意匠の他の特徴である、「正面部及び背面部の各円柱状部分の境界部に形成されたやや平らな細幅の凹状部」とも相俟って意匠としてのまとまりが形成され、これが本件登録意匠の特徴を形作っているものと言える。
第3.請求人の弁駁
1.意匠法第3条第1項第3号の規定違反
(1)相違点(ハ)について
甲第15号証-2に掲載されている「ネオガーデン」というブロックには、まさに被請求人が差異点として主張する「縦筋状に多数の凹凸条を外周1/2当たり16個の割合で形成した態様」のものと同視し得る形態が看取される。即ち本件登録意匠における相違点(ハ)は、基本的構成態様がほぼ同じである甲号意匠に細かい縦溝を付加しただけであり、両意匠の美感を異ならせる要素とは到底言えない。
(2)相違点(イ)について
本件登録意匠にやや平らな細幅の凹状部を形成している点は、ブロック表面に凹凸条を形成しているために、溝部に隣接して形成される凸条がお互いにじゃまにならないようにするための必然的な結果であり、意匠としては格別のことではない。
(3)以上の点を総合的に勘案すれば、被請求人も認めるように両意匠の基本的構成態様はほぼ同じであり、具体的態様における相違点(イ)〜(ハ)は意匠全体からみれば微差にすぎず、両意匠の類否判断を左右する要部にまで至っていない。
2.意匠法第3条第2項の規定違反
本件登録意匠は、周知である甲号意匠に、同じく周知である細かい縦筋状の凹凸をブロック表面に表わす手法に加えて、さしたる困難性もなく弧状凹部の差渡幅を小さくし、円柱の連接部分に中間部を配する手法を単に組合わせて物品の形態として表わした程度のものにすぎない。
第4.当審の無効理由通知
審判長は、請求人及び被請求人に対して、次のとおり、無効理由を通知した。
「本件の意匠登録は、合議の結果、以下の理由によって無効とすべきものと認められます。これについて意見がありましたら、この通知の発送の日から40日以内に意見書の正本1通及びその副本2通を提出して下さい。
理 由
本件登録意匠は、その出願前に国内において頒布されたカタログ「YONEZAWA BLOCK」(株式会社よねざわ工業発行)、第23頁中段所載の「ネオガーデン」と称する花壇用ブロックの意匠に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当するから、その意匠登録は、同法第同条の規定に違反してされたものであり、その意匠登録を無効とすべきである。
なお、上記カタログの写しが、平成14年3月11日付け請求人提出の弁駁書において甲第15号証として添付されているので参照されたい。そして、当該カタログは、その裏表紙の右下にH.10.4.20の記載があるから、本件登録意匠の出願前に頒布されたものと解するのが相当である。」
第5.無効理由の通知に対する被請求人の主張とその後の対応
1.被請求人は、上記無効理由の通知に対して、意見書を提出し、要旨以下のとおり主張した。
無効理由の通知に示されたカタログが写しであるため、カタログ所載の写真は、本件登録意匠の周側面の凹凸条に対応する部分が不鮮明で、本件登録意匠と比較するのが困難である。また、カタログの頒布日が、「H.10.4.20」の前後に発行という文字の記載がないので、この記号の記載があるだけで、これが直ちに頒布日を示すものであるとの認定には承服しかねる。
2.その後、被請求人は、特許庁において、面接で無効理由通知に示されたカタログ原本を確認したが、その後何ら主張がない。
第6.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成10年7月2日の意匠登録出願に係り、平成13年9月21日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「花壇用ブロック」とし、その形態は、願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。
2.無効の理由として引用した意匠
当審において無効の理由として引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本件登録意匠の出願前に国内において頒布されたカタログ「YONEZAWA BLOCK」(株式会社よねざわ工業発行)、第23頁中段所載の「ネオガーデン」と称する花壇用ブロックの意匠であって、同頁の記載によれば、その形態は、図面及び写真により現されたとおりのものである(別紙第2参照)。
なお、当該カタログは、その裏表紙の右下にH.10.4.20の記載があるから、本件登録意匠の出願前に頒布されたものと解するのが相当である。
3.本件登録意匠と引用意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠ともに、花壇の周縁を形成する際に使用されるブロックであるから、一致している。
(2)次に、両意匠の形態については、以下の共通点及び差異点が認められる。
すなわち、両意匠の形態は、基本的構成態様において、全体は、複数の縦長略円柱状体を横に並列状に連結した態様に一体成形し、横長の正面部及び背面部を円弧状の波形面に形成し、一方の側面部を弧状凸部とし、他方の側面部に縦方向の弧状凹部を形成した点が共通し、各部の具体的な態様においても、全体の横の長さを高さの約2倍とし、各円柱状体の径を高さの約2分の1前後の太さのものとし、側面部の弧状凹部を除いた周側面全体に、細い縦筋状の溝を多数密に形成し、上面を平坦面とした点が共通していると認められる。
一方、両意匠には、具体的な態様において、主として、以下の点に差異が認められる。
すなわち、(ア)並列状に形成した円柱状体の個数について、本件登録意匠は、6個としているのに対して、引用意匠は、5個としている点、(イ)正面部及び背面部の各円柱状体の境の態様について、本件登録意匠は、平面視小さな凹弧状に形成しているのに対して、引用意匠は、平面視略V字状に形成している点、(ウ)側面部の弧状凹部の大きさについて、本件登録意匠の方が、引用意匠よりやや小さい点が認められる。
(3)両意匠を全体として観察し、これらの共通点及び差異点の類否判断に及ぼす影響について、総合的に検討する。
まず、両意匠において共通しているとした基本的構成態様は、両意匠の形態についての骨格的な態様であって、形態全体を支配する要素に係るものであるから両意匠の類否判断に影響を与えるものと認められ、また、共通しているとした各部の具体的な構成態様、とりわけ、側面部の弧状凹部を除いた周側面全体に、細い縦筋状の溝を多数密に形成した態様は、両意匠の形態を特徴づける要素に係るものであり、そうして、これらの共通しているとした態様は、相俟って形態上のまとまりを形成し、看者に共通する印象を与えるところであるから、両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。
これに対し、差異点は、形態全体として観察した場合、次のとおり、いずれも微弱なものであって、類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
すなわち、(ア)並列状に形成した円柱状体の個数の差異について、この差異は、本件登録意匠の方が引用意匠より1個多いが、この種物品において、柱状体を複数個並列状に連結した態様のものが普通に見受けられるところ、両意匠ともに普通にみられる個数であり、その範囲内での1個の差であるから、格別看者の注意を引くものとはいえず、この差異は微弱なものというほかない。(イ)正面部及び背面部の各円柱状体の境の態様の差異について、当該部位が正面部及び背面部のやや奥まった狭いところに位置し、また、各円柱状体の周側面に細い縦筋状の溝を形成しているため、意匠全体として見た場合、この差異は、ともに横長の正面部及び背面部を円弧状の波形面に形成し、側面部の弧状凹部を除いた周側面全体に、細い縦筋状の溝を多数密に形成した共通する態様に希釈化されてしまい、さほど目立たないものとなるから、限られた部分における微弱な差異といわざるを得ない。(ウ)側面部の弧状凹部の大きさの差異について、この種物品は、通常、複数個連接して使用されるが、その連接の態様として、一方の側面部を弧状凸部とし、他方の側面部に縦方向の弧状凹部を形成して、それらが密接するように形成することは、従来から見受けられる一般的な態様であり、また、その弧状凹部の大きさ及び形状は、弧状凸部の形状、大きさに合わせて適宜選択されるものであることを勘案すると、本件登録意匠の弧状凹部の大きさは、一般的な大きさの範囲内のものであるから、格別評価することができないものであり、この差異は、共に適宜選択される範囲内での微弱な差異にすぎないものというほかない。
そうして、これらの差異点を総合し相俟った効果を考慮しても、前記した共通点を凌駕して類否判断を左右するほどのものとは認められない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、前述のとおりの差異があっても、類否判断を左右する要素において共通しているから、全体として類似するものというほかない。
4.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似するものであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、その意匠登録は、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第48条第1項の規定により、その意匠登録を無効にすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-02-19 
結審通知日 2003-02-24 
審決日 2003-03-10 
出願番号 意願平10-19245 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (L2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮田 莊平 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 藤 正明
伊藤 栄子
登録日 2001-09-21 
登録番号 意匠登録第1126040号(D1126040) 
代理人 加々美 紀雄 
代理人 小松 秀岳 
代理人 旭 宏 
代理人 小松 純 
代理人 加藤 久 
代理人 酒井 正己 

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