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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする K3
管理番号 1076647 
審判番号 無効2000-35512
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-21 
確定日 2001-07-30 
意匠に係る物品 穀類搬送機用中間排出管 
事件の表示 上記当事者間の登録第1070529号「穀類搬送機用中間排出管」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1070529号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第一請求人の申し立て及び理由
請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由として請求書の「(三)本件登録意匠を無効とすべきである理由」の項の記載のとおり主張し、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証を提出したものである。
1.本件意匠登録を無効とすべきである理由
本件登録意匠と引用意匠とは両者の図面を対比してみると明らかなとおり、相違点はアーチ状の帯状体の有無のみである。
本件登録意匠と引用意匠の母体形状は同一といえるほど酷似している。即ち、両者は上記対比図において明らかなように、本件登録意匠には本体の上側にアーチ状の帯状体が3本設けられているが、引用意匠にはアーチ状の帯状体は設けられていない。
また、ボルトナットの数が本件登録意匠は1つであるのに対して、引用意匠は3つであるが、この点は基本構成上問題にならない相違である。してみると、本件登録意匠と引用意匠の相違はアーチ状の帯状体を設けたか否かである。
このアーチ状の帯状体を付加するという創作は、自明で、創作性において著しく乏しいといえる。仮に本件登録意匠が引用意匠に対して創作性を有し且つ引用意匠と非類似であるとすると、母体形状が同一であっても、一部分に母体形状を変更させないで、わずかに造形を付加したものはすべて創作性を有し、且つ非類似となって登録されることを意味することになる。このことは、意匠法で認められている類似範囲を没却させることに帰し、意匠の保護が達成されないことはいうまでもない。引用意匠は極めて特殊な物品に係る意匠であり、且つ引用意匠に係る形態の物品は、引用意匠の出願前にはなく、よって、引用意匠の類似範囲は狭くない点に留意する必要がある。
2.本件登録意匠と引用意匠が類似であることの詳細な説明
(1)本件登録意匠の構成
本件登録意匠は、「穀類搬送機用中間排出管」に係るものであり、その形態は、本件意匠公報に示されたとおりである。
(a)パイプの下側半分が除去された上体の下側左右両端にはパイプの上半分が除去された短尺の下体がそれぞれ接合されている。
(b)上体の前後下縁及び下体の前後上縁には夫々突出片が上体長さ方向及び下体長さ方向に延設され、両者は重合されている。
(c)前記突出片の重合部分左右端部寄りには夫々3つの孔が設けられており、夫々中央の孔にボルトナットが設けられている。
(d)上体及び下体の左右端部寄りには環状の膨出部が設けられている。
(2)本件登録意匠と引用意匠との対比考察
引用意匠は、「穀類搬送機用中間排出管」であり、本件登録意匠と同種の物品である。両者は子細に観察すれば、
(イ)本件登録意匠の上体には、引用意匠にはないアーチ状の帯状体が3つ設けられている点、
(ロ)本件登録意匠と引用意匠とはボルトナットの数が異なる点、において相違がある。
しかし、これらの相違は、意匠全体の中の限られた部分に関する子細な造形の相違に過ぎず、意匠上の美感に影響を及ぼすことない微差と評価できる。
即ち、基本的構成が同一の本体に、アーチ状の帯状体を設けた点は、デザイン処理上の簡易自明な変更であり、意匠の創作的な価値は極めて低いと評価される。
そして、引用意匠は極めて特殊な物品に係る意匠であり、且つ引用意匠に係る形態の物品は、引用意匠の出願前にはなく、よって、引用意匠はその基本的構成自体に創作の要旨があるといえ、従って、上記相違は微差に過ぎず、本件登録意匠と引用意匠とは類似する。
3.結論
以上のように、本件登録意匠は創作性に乏しく、よって、引用意匠の創作の範囲に属し、両者は類似するもので、本件登録意匠が無効理由を有することは明らかといえる。
第二 被請求人の答弁及びその理由
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として、「(4)請求人の主張に対する反論」の項に記載のとおりの反論をし、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
その反論の大要は、以下のとおりである。
1.請求人の主張に対する反論
請求人は、本件登録意匠が、甲第1号証の意匠公報所載の登録第746814号意匠(以下「引用意匠」という。)に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当すると主張している。
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年7月31日に意匠登録出願され、その後、平成12年2月18日に設定の登録がされたものであり、意匠に係る物品を「穀類搬送機用中間排出管」とし、その形態を願書及び添付図面(乙第1号証)に示すとおりのものである。
その形態は、
(a)丸パイプの下側半分が切除された上体の下側左右両端にはパイプの上半分が切除された短尺の下体がそれぞれ接合され、この上体の上側の中央位置及び左右位置にそれぞれ台形帯板状の補強帯板が離間状態に合計三個跨がった状態で設けられている。
(b)上体の前後下縁及び下体の前後上縁には夫々突出片が上体長さ方向及び下体長さ方向に延設され、両者は重合されている。
(c)前記突出片の重合部分左右端部寄りには夫々三つの孔が設けられており、夫々中央の孔にボルトナットが設けられている。
(d)上体及び下体の左右端部寄りに環状の膨出部が設けら、上体及び下体の内面に下体の幅と略同じ幅の滑接材が貼着されている。
(2)引用意匠
引用意匠は、昭和58年9月7日に意匠登録出願され、その後、昭和63年7月13日に設定の登録され、意匠に係る物品を「穀類搬送機用中間排出管」とし、その形態を甲第1号証の意匠公報に示すとおりである。
その形態は、
(イ)パイプの下側半分が切除された上体の下側左右両端にはパイプの上半分が切除された短尺の下体がそれぞれ接合されている。
(ロ)上体の前後下縁及び下体の前後上縁には夫々突出片が上体長さ方向及び下体長さ方向に延設され、両者は重合されている。
(ハ)前記突出片の重合部分左右端部寄りには夫々三つの孔が設けられており、夫々の孔にボルトナットが設けられている。
(ニ)上体及び下体の左右端部寄りに環状の膨出部が設けられている。
(3)両意匠の対比
そこで、両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両意匠は一致し、形態については、以下に示す共通点及び差異点が認められる。
すなわち、パイプの下側半分が切除された上体の下側左右両端にはパイプの上半分が切除された短尺の下体がそれぞれ接合され、上体の前後下縁及び下体の前後上縁には夫々突出片が上体長さ方向及び下体長さ方向に延設され、両者は重合され、前記突出片の重合部分左右端部寄りには夫々三つの孔が設けられており、この孔にボルトナットが設けられ、上体及び下体の左右端部寄りに環状の膨出部が設けられている点は共通している。
他方、両意匠の間には、(イ)上体の形態において、本件登録意匠は、丸パイプの下側半分が切除された上体の上側の中央位置及び左右位置にそれぞれ台形帯板状の補強帯板が離間状態に合計三個跨がった状態で設けられているのに対し、上記引用意匠は、上体の上面は鞍形の弧状面となっている点、さらに、(ロ)上体及び下体において、本件登録意匠は、上体及び下体の左右端部寄りに環状の膨出部が設けられて、その上体及び下体の内面に下体の幅と略同じ幅の滑接材が貼着されているのに対し、上記引用意匠は、上体及び下体の内面に環状の膨出部の凹状部が設けられている点の二点の形態の差異が認められる。
(4)類否判断
そこで、上記の共通点及び差異点を総合し、両意匠を全体として考察すると、上記に共通するとした全体の基本的形態は、穀類も含む粉粒状物の搬送手段としてスクリュウコンベヤの存在は周知であり、そのスクリュウコンベヤの搬送パイプが円筒状であることも周知であり、この円筒筒状の搬送パイプの途中から穀類を取り出すことになると、搬送パイプが円筒状であるが故に、その形態の決定において、接続目的及び機能に照らして、パイプの下側半分を切除し、上体の下側左右両端にはパイプの上半分が切除された短尺の下体をそれぞれ接合し、上体の前後下縁及び下体の前後上縁に夫々突出片が上体長さ方向及び下体長さ方向に延設し、両者を重合し、突出片の重合部分左右端部寄りに連結緊締用の孔を設け、この孔にボルトナットを設け、上体及び下体の左右端部寄りに連結用の環状の膨出部を設けることになり、これら形態は常套的範囲に留まるものであり、目的及び機能から自ずと導き出される程度の形態といわねばならず、引用意匠独自の格別の特徴をなすところとはいえず、両意匠の類否判断に影響を及ほすものではないといわねばならない。因に、引用意匠の出願前において、公知となっている穀類搬送機の意匠の一例として、乙第2号証乃至乙第7号証を提出する。
一方、差異点のうち、(イ)上体の形態において、丸パイプの下側半分が切除された上体の上側の中央位置及び左右位置にそれぞれ台形帯板状の補強帯板が離間状態に合計三個跨がった状態で設けられている本件登録意匠と、上体の上面が鞍形の弧状面となっている上記引用意匠との差異は、台形帯板状の補強帯板の存在、不存在の差異に過ぎないとされなくもないが、この差異点がもたらす形態は、本件登録意匠は、上記三個の台形帯板状の補強帯板の存在により奇抜な印象及び頑丈な構造を有する形態となって需要者に印象的に感得されるが、引用意匠は、上体の上面が鞍形の弧状面となっているので、シンプルですっきりした印象及びスマートな印象が需要者に印象的に強く感得されるといえる。そして、この差異点は、両意匠の形態上の特徴を顕著に表しているところであり、かつ、形態全体の基調を決定づけるところとなり、両意匠の類否判断に重要な影響を与えるところといわねばならない。
また、(ロ)上体及び下体において、上体及び下体の左右端部寄りに環状の膨出部が設けられ、その上体及び下体の内面に下体の幅と略同じ幅の滑接材が貼着されている本件登録意匠に対し、上体及び下体の内面に環状の膨出部の凹状部が設けられている上記引用意匠との差異は、滑接材の存在、不存在の差異に過ぎないとされなくもないが、滑接材は回転して使用される物品であることから、滑接材の存在、不存在は物品の回転機能の円滑化が需要者に強く印象的に感得され、この差異点も、両意匠の形態上の特徴を顕著に表しているところであり、かつ、形態全体の基調を決定づけるところとなり、両意匠の類否判断に重要な影響を与えるところといわねばならない。してみれば、上記共通点及び差異点を全体的に総合して観察してみると、上記(イ)(ロ)の二つの差異点から生ずる印象が支配的要素となり、上記共通点が奏する両意匠の共通する印象は差異点に埋没してしまう程のものであって、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものであり、両意匠は全く別異なものであるとしなければならない。
2.結論
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号及び同法同条第2項に該当せず、登録査定の認定は正当であり、請求人の主張は理由のないものである。
第三 請求人の弁駁の理由
本件登録意匠は引用意匠の基本的形態をそっくり踏襲し、この基本的形態を崩さない範囲で、単に補強帯板を付加するという子細な変更を加えているに過ぎない意匠であり、未だこの補強帯板の付加という改変によっても、引用意匠の基本的形態は維持されており、よって、本件登録意匠と引用意匠の美感は共通しているといえ、両者は類似するのである。
現実に、後発の本件登録意匠に係る実施品と、先発の引用意匠に係る実施品とが市場において競合しており、無効審判請求書において主張したとおり、現在請求人を原告とし、被請求人を被告とする侵害訴訟が新潟地方裁判所3条支部において平成12年(ワ)第35号として係属している。
甲18から明らかなとおり、被請求人の本件登録意匠の実施品は、引用意匠と同一といえる実施品を被請求人が実施していたところ、請求人前代表者から引用意匠に基づく侵害通知書(甲19)を受け、その対処として改造により作出されたものであるが(甲20)、この程度の改造で引用意匠の創作の範囲から脱し、独自に保護されるのであれば、もはや、意匠の保護、創作者の保護は達成されないといわざるを得ない。
本件登録意匠と引用意匠とは各部の寸法比率が同一であり、この点も、本件登録意匠と引用意匠の美感が共通する原因となる。尚、この寸法比率の同一性は、現実には、本件登録意匠の実施品と引用意匠の実施品の互換性を意味し、この互換性により、被請求人が請求人の取引先に営業し得ることになり、よって、先発の請求人の実施品と後発の被請求人の実施品とは市場において競合・混同するのである。
第四 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年7月31日の意匠登録出願に係り、平成12年2月18日に設定の登録がされたものであって、意匠に係る物品を「穀類搬送機用中間排出管」とし、その形態が、願書及び願書添付図面に示されるとおりである(別紙第一参照)。
2.甲号意匠
甲第1号証は、本件登録意匠の出願前の昭和63年10月18日に特許庁が発行した意匠公報に記載された登録第746814号意匠(以下、「甲号意匠」という。)であり、その形態が、同意匠公報に示されるとおりである(別紙第二参照)。
3.本件登録意匠と甲号意匠の対比
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
[共通点]
基本的構成態様において、全体が、略半截円筒状の切截部側の両側寄りに、同径の幅の狭い略半截短円筒状を、それぞれ重合させてボルトにより合着したものであって、両側部が帯状の環状をなし、その間の正面視下半分が開口状に形成されている点、
また、具体的態様において、
(1)全体の寸法比率について、上部の略半截円筒状の幅(長さ)が、その径の3倍強であり、下部両側の略半截短円筒状の幅が、全幅の略1/8のものである点、
(2)略半截円筒状及び両側の略半截短円筒状について、共に、切截部から外側に、切截部に沿って細幅帯状の突出片部を形成し、その突出片部により重合されるものであり、また、略半截円筒状の突出片の左右寄り、及び略半截短円筒状の突出片にはそれぞれ3個の小孔を穿っている点、
(3)上部の略半截円筒状の左右寄り、及び略半截短円筒状の外周中央部に、断面凸弧状の膨出部を形成し、それが繋がって外周に環状の膨出部を形成している点、が共通している。
[差異点]
その具体的態様において、
(イ)補強板の有無について、本件登録意匠は、上方の略半截短円筒状の中央及び左右に側面視略台形の帯板状の補強板3個を、円弧状面に接して取り付けているのに対し、甲号意匠は、補強板を設けていない点、
(ロ)滑接材の有無について、本件登録意匠は、左右の帯状の環状部の内周部に滑接材を貼着しているのに対し、甲号意匠は、それを有しない点、
(ハ)上部の略半截円筒状について、本件登録意匠は、切截部から外側に折曲して細幅帯状の突出片部を形成しているのに対し、甲号意匠は、切截部に、断面倒「L」字状の細幅帯状の突出片部を接合したものであり、正面視において、その接合部が、細帯状に現れている点、
(ニ)接合部のボルトナットの数について、本件登録意匠は、各1個であるのに対し、甲号意匠は各3個である点、に差異がある。
4.類否判断
そこで、上記共通点と差異点が、両意匠の類否の判断に及ぼす影響について検討する。
両意匠に共通する基本的構成態様の点は、すなわち、全体が、略半截円筒状の切截部側の両側寄りに、同径の幅の狭い略半截短円筒状を、それぞれ重合させてボルトにより合着したものであって、両側部が帯状の環状をなし、その間の正面視下半分が開口状に形成されている点は、両意匠の骨格を形成し、両意匠の大部分を占めるところであり、類否判断の支配的要素というべきである。また、具体的態様の共通点、特に、(1)の全体の寸法比率について、上部の略半截円筒状の幅(長さ)が、その径の3倍強であり、下部両側の略半截短円筒状の幅が、全幅の略1/8のものである点、また、(3)の上部の略半截円筒状の左右寄り、及び略半截短円筒状の外周中央部に、断面凸弧状の膨出部を形成し、それが繋がって外周に環状の膨出部を形成している点は、基本的構成態様の共通点と相俟って、両意匠の類似感を表出しており、その類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきである。
被請求人は、「穀類搬送機」の先行意匠例として、乙第2号証乃至乙第7号証を提出し、「共通するとした全体の基本的形態は、穀類も含む粉粒状物の搬送手段としてスクリュウコンベヤの存在は周知であり、そのスクリュウコンベヤの搬送パイプが円筒状であることも周知であり、この円筒筒状の搬送パイプの途中から穀類を取り出すことになると、搬送パイプが円筒状であるが故に、その形態の決定において、接続目的及び機能に照らして、パイプの下側半分を切除し、上体の下側左右両端にはパイプの上半分が切除された短尺の下体をそれぞれ接合し、上体の前後下縁及び下体の前後上縁に夫々突出片が上体長さ方向及び下体長さ方向に延設し、両者を重合し、突出片の重合部分左右端部寄りに連結緊締用の孔を設け、この孔にボルトナットを設け、上体及び下体の左右端部寄りに連結用の環状の膨出部を設けることになり、これら形態は常套的範囲に留まるものであり、目的及び機能から自ずと導き出される程度の形態といわねばならず、引用意匠独自の格別の特徴をなすところとはいえず、両意匠の類否判断に影響を及ほすものではないといわねばならない。」と主張する。しかしながら、乙第2号証ないし乙第7号証には、両意匠に共通する基本的構成態様の意匠は存在せず、被請求人の主張は採用できない。
一方、差異点(イ)の補強板の有無による差異について、本件登録意匠は、上方の略半截短円筒状の中央及び左右に側面視略台形の帯板状の補強板3個を、円弧状面に接して取り付けているが、この種のパイプ材の補強手段としては、普通に見られる態様のもので格別の特異性がなく、類否判断の要素として高く評価することができず、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。また、(ロ)の滑接材の有無による差異であるが、機能的効果はさておき、意匠の外観としては、さほど目立たない部位についてのものであり、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものというほかない。さらに、(ハ)の上部の略半截円筒状について、本件登録意匠は、切截部から外側に折曲して細幅帯状の突出片部を形成しているのに対し、甲号意匠は、切截部に、断面倒「L」字状の細幅帯状の突出片部を接合したものであり、正面視において、その接合部が、細帯状に現れている点であるが、その細帯状は、極く幅の狭いものであり、突出片に沿って現れていることから、さほど目立たないことを勘案すると、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。(ニ)の接合部のボルトナットの数の差異は、接合時に適宜選択されるもので、その類否判断に及ぼす影響は、微弱である。
そうして、上記の差異点が相俟って、相乗効果を生じることを考慮しても、本件登録意匠は、意匠全体として、甲号意匠にない格別の特異性が認められず、前記の差異点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品が共通しており、その形態について共通点が差異点を凌駕する両意匠は、結局のところ類似するというほかない。
第五.むすび
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠登録を受けることができない意匠であるにも拘わらず意匠登録を受けたものであるから、他の無効理由について審理するまでもなく、意匠法第48条第1項第1号の規定により、その登録は、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2001-05-23 
結審通知日 2001-06-01 
審決日 2001-06-19 
出願番号 意願平11-20573 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (K3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森 則雄 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 岩井 芳紀
温品 博康
登録日 2000-02-18 
登録番号 意匠登録第1070529号(D1070529) 
代理人 黒田 勇治 
代理人 吉井 剛 
代理人 吉井 雅栄 

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