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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) J2
管理番号 1076649 
判定請求番号 判定2002-60092
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-06-27 
種別 判定 
判定請求日 2002-10-29 
確定日 2003-05-06 
意匠に係る物品 置時計 
事件の表示 上記当事者間の登録第1094065号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠である「置時計」の意匠は、登録第1094065号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は意匠登録第1094065号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
なお、請求人は、被請求人の答弁を受け、検乙第1号証の意匠を、イ号意匠検証物として認める、乙第7号証は正面図を示すだけでイ号意匠を特定するものではないから、これをイ号意匠としては認めない旨申し立てた。
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、全体形状がまったく同一であり、僅かに次の相違点が認められるだけである。
本件登録意匠では「前面蓋が透明」であるのに対し、イ号意匠では「前面蓋が不透明」である点。
次に、この相違点について検討する。
確かに、前面蓋を閉じた状態で正面視した場合、本件登録意匠では、文字板及び4本の時計針が見えるのに対し、イ号意匠では文字板及び4本の時計針が見えないという差異は生じる。
しかし、意匠に係る物品が「置時計」であることに鑑みれば、看る者は、前面蓋の背後に文字板及び時計針を表象する筈である。
更に、開扉状態では、もはや、前面蓋の「透明」及び「不透明」の相違点は消滅し、両意匠は、ほぼ同一の意匠的美観を呈している。
また、被請求人が論じる文字板についての相違は、全体形状を同一にする両意匠においては、微差にすぎず、類否判断に影響を及ぼすものではない。
以上のとおりであるので、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。
第2 被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証、及び検乙第1号証(イ号意匠に係る置時計)を提出した。
1.本件登録意匠と公知意匠及び先願意匠との比較
本件登録意匠の出願日以前に存在する「置時計」の意匠のうち、乙第1号証及び乙第2号証の各公知意匠と、乙第3号証及び乙第4号証の各先願意匠は、「時計本体部」と「前面蓋」から構成されているものであり、「前面蓋を開閉可能とした置時計」が示されている。
本件登録意匠の新規な構成態様は、公知意匠及び先願意匠に表されない点に求めることになるが、本件登録意匠とこれらの公知意匠及び先願意匠とを比較すると、公知意匠及び先願意匠が「前面蓋の一部を透明にし、或いは、前面蓋の全体を不透明にしている」のに対して、本件登録意匠は、「前面蓋の全体を透明にしている」ことのみが相違しているにすぎない。
従って、本件登録意匠が有効に存在することを考慮すれば、本件登録意匠の要部は「前面蓋の全体を透明として、閉蓋時においても文字板及び時計針を見えるようにした点」にあると認定される。
2.イ号意匠の特定
請求人が特定したイ号意匠につき、被請求人が販売している意匠とは不当に異なって特定されていることから、乙第7号証及び検乙第1号証に示されている真の意匠に修正を求める。
すなわち、イ号意匠の文字板において、大小の正方形形状の枠線の間における時刻表示部はピンク色に、文字板のその他の部分は白色に着色されている。また、短針及び長針の2本の時計針が濃ピンク色に、秒針及びアラ-ム時刻針は灰色に着色されている。
3.本件登録意匠とイ号意匠の類否判断
本件登録意匠の願書に前面扉(蓋)は透明である旨を記載即ち主張して本件登録を受けたということは、前記公知意匠の存在等を勘案して当該部分に審美的価値があることを自認したものである。そうであるとすれば、本件登録意匠の範囲は、「前面蓋の全体を文字板及び時計針が見えないように前面蓋の全体を不透明にした構成態様」を意識的に排除したものである。
一方、イ号意匠を観察すると、「前面蓋の全体は不透明であり、閉蓋時において、文字板及び時計針を見えなくなるようにした構成態様」であるから、本件登録意匠の範囲に属するものではない。
4.結論
本件登録意匠とイ号意匠とは、前面蓋が透明であるか、不透明であるかによって異なっているとともに、文字板も大きく異なっている。従って、本件登録意匠とイ号意匠とは、閉蓋時及び開蓋時に全体観察をした場合において共通の美感を奏するものではないことから、両者は非類似の意匠であり、イ号意匠は、本件登録意匠の類似範囲に属しない。
第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年9月17日に意匠登録出願をし、平成12年10月13日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1094065号意匠であり、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「置時計」とし、その形態を願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである(別紙第一参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付のイ号意匠説明書並びに図面、及び、イ号意匠の対象とすることについて当事者間に争いのない、判定請求答弁書に添付の検乙第1号証のイ号意匠見本により示されたものであり、同説明書の記載によれば、意匠に係る物品を「置時計」とし、その形態を同説明書並びに図面の記載、及び、同見本に現されたとおりとしたものである(別紙第二参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が「置時計」であるから一致し、その形態については、主として以下に示す共通点及び差異点がある。
[共通点]
(1)全体は、正面視四角形状の時計本体部と、その正面側に下辺を軸に回動可能に設けた四角形状の前面蓋部とから構成している点。
(2)時計本体部につき、
ア.正面視においては、外周に沿って帯状に四角枠状の枠体部を設け、その内方に設けた四角形状の透明なカバ-部を通して、その背後に設けた同大の四角形状の文字盤とその中央の4本の時計針とが見える点。
イ.枠体部は、側面視で正面側に湾曲した細幅帯状の緩い弧状に表れ、周側面の中央全周に亘って細い溝を有するものとし、枠体部より一回り小さな側面視略扁平倒四角錐台状の機構収納部を枠体部の背面側に膨出して連設している点。
ウ.正面視において、枠体部は、外周側の下辺を除く3辺に帯状面を残して、内周側に、カバ-部の外周に沿って帯状に四角枠状の凹状面を形成したものとし、カバ-部は、凹状面に対してわずかに前方に突出して設けている点。
(3)下辺を軸に回動可能に設けた前面蓋部は、正面視やや縦長の四角形状とし、側面視では弧状に表れる枠体部及びカバ-部に適合するように正面側に湾曲した薄板状のものとし、閉蓋時は、枠体部凹状面及びカバ-部の部位に嵌め込み、前面蓋部の下辺を除く3辺を囲むようにそれと面一状に枠体部の外周側の帯状面が表れる点。
[差異点]
(1)前面蓋部について、本件登録意匠は、透明とし、閉蓋時においても文字盤及び時計針が見えるのに対して、イ号意匠は、不透明としているため閉蓋時においては文字盤及び時計針が見えない点。
(2)文字盤及び時計針について、イ号意匠は、検乙第1号証によると、文字盤は、外周と相似形の大小2つの正方形状区画間を、ピンク色面とした時刻表示部を形成し、その他の面を白色として、全体を2つに色分けし、また、短針及び長針を濃ピンク色に、秒針及びアラ-ム時刻針を灰色として、各時計針を2組に色分けしているのに対して、本件登録意匠の文字盤及び時計針にはそのような色分けがない点。
1.類否判断
そこで、上記共通点と差異点が、両意匠の類否の判断に及ぼす影響について検討する。
両意匠の共通点(1)の、全体は、正面視四角形状の時計本体部と、その正面側に下辺を軸に回動可能に設けた四角形状の前面蓋部とから構成している態様は、両意匠の骨格に係るところであるが、この態様は、被請求人が提出した乙号証のうちにも存在する[例えば、公知意匠としては乙第1号証(意匠登録第931045号意匠)及び乙第2号証(外国カタログ第300頁所載の置時計 特許庁意匠課公知資料番号第HD08010424号)、先願意匠としては、乙第3号証(意匠登録第1059249号意匠)]ことを参酌すると、この種置時計の分野でさほど目新しいタイプのものではないから高く評価できない上に、これに共通点(2)の時計本体部、及び同(3)の前面蓋部の各具体的態様を合わせた両意匠の全共通態様を具備した公知意匠が、上記した乙第2号証として存在することを勘案すると、なおのこと両意匠に共通するとした態様は、本件登録意匠のみの特徴といえないことから、イ号意匠は本件登録意匠に共通する態様を有するとしても、この共通点をもって、両意匠の類否判断を支配するものとは到底いえない。
一方、差異点について、(1)の前面蓋部について、本件登録意匠は、透明とし、閉蓋時においても文字盤及び時計針が見えるのに対して、イ号意匠は、不透明としているため閉蓋時においては文字盤及び時計針が見えない差異は、前面蓋部が透明か不透明であるかの差に過ぎないものの、前面蓋部は時計本体部とともに全体の構成に大きくかかわる部分であること、及び、前記の乙第2号証である、前面蓋部が不透明である点以外本件登録意匠と略同一態様の公知意匠の存在を勘案すると、本件登録意匠の特徴は、前記両意匠共通するとした態様とした上で、さらに前面蓋部を透明とした態様にあるとせざるを得ないところであって、この差異を意匠全体として観た場合、特に閉蓋時においての前面蓋部背後の文字盤及び時計針が見えるか否かの態様差は、看者に両意匠について意匠効果上の顕著な差異感を与えるものといい得ることから、その類否判断に及ぼす影響は大きいというべきであり、これに、差異点(2)の文字盤及び時計針の各態様差も相俟って両意匠には別異の印象が生じており、これら差異点が相俟って類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきである。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品は一致しているが、その形態について、両意匠の共通点(1)ないし(3)は、その相俟った効果を考慮しても、この共通点をもって両意匠の類否判断を支配するものとは到底いえないのに対し、差異点が相俟って類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきであり、差異点が共通点を凌駕する両意匠は、類似するものということができない。
第4 むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判決する。
別掲
判定日 2003-04-22 
出願番号 意願平11-25143 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (J2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 則雄 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 木村 恭子
伊藤 晴子
登録日 2000-10-13 
登録番号 意匠登録第1094065号(D1094065) 
代理人 阿部 美次郎 
代理人 磯野 道造 

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