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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) K9 |
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管理番号 | 1079876 |
判定請求番号 | 判定2003-60028 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2003-08-29 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2003-03-31 |
確定日 | 2003-06-18 |
意匠に係る物品 | 動力伝達用軸継手 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第0810603号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面に示す「動力伝達用軸継手」の意匠は、登録第0810603号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
第1.請求人の申立及び理由 請求人は、「結論同旨の判定を求める。」と申し立て、参考資料1乃至5を提出している。 1.参考資料1 特開昭52-112042号公報の第1図および第2図 2.参考資料2 意匠登録第81603号の類似1の意匠公報 3.参考資料3 意匠登録第81603号の類似2の意匠公報 4.参考資料4 意匠登録第81603号の類似3の意匠公報 5.参考資料5 意匠マップ 第2.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、昭和61年2月1日に出願(意願昭61-3375号)され、平成2年12月14日に設定の登録がなされ、平成3年4月10日に意匠公報が発行された意匠登録第810603号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「動力伝達用軸継手」とし、その形態を願書添付の図面に記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。 2.イ号意匠 イ号意匠は、判定請求書によれば、意匠に係る物品を「動力伝達用軸継手」とし、その形態を判定請求書の「イ号図面」に記載のとおりとしたものである(別紙第2参照)。 3.本件登録意匠とイ号意匠の対比 本件登録意匠とイ号意匠とを対比すると、両者は、意匠に係る物品が一致し、その形態については、以下に示す共通点と相違点が認められる。 [共通点] (1)外周中央部にフランジを設けた筒状の軸接続部の両端に、フランジの外径と略同径の円環状の締付リング部を嵌着した動力伝達用軸継手であって、フランジ及び締付リング部に形成した貫通孔に締付ボルトを嵌通した全体の基本構成。 (2)軸接続部の態様について、フランジから開口部までの左右外周部分を開口部に向かって縮小するテーパー状とし、両端開口部にスリットを等間隔に4条形成している点。 (3)締付リング部の態様について、厚みが等しい両締付リング内周部分をテーパー状とし、円孔状のボルト穴を6つ穿設している点。 (4)締付リング部と軸接続部との配置態様について、左右締付リング部の中間にフランジを並設し、各締付リングのテーパー状内周部分と軸接続部のテーパー状外周部分とを嵌合している点。 (5)締付ボルトを左側締付リング部からフランジを貫通して右側締付リング部まで挿通し、右側締付リング部に形成したボルト穴部分で螺着している点。 [相違点] (イ)締付リング部及びフランジの外周縁部の態様について、本件登録意匠においては、該部位を面取りにより切り面状に形成しているのに対し、イ号意匠においては、丸面状に形成している点。 (ロ)ボルトの態様について、本件登録意匠においては、六角穴付きボルトとしているのに対し、イ号意匠においては、六角ボルトとしている点。 (ハ)フランジ外周部分の円孔の有無について、本件登録意匠においては、外周面に円孔を形成していないのに対し、イ号意匠においては、外周上面中央部及び底面中央部に円孔を穿設している点。 (ニ)締付リング部のボルト穴の配置態様について、本件登録意匠においては、同一円周上の0°、60°、120°、180°、240°、320°の位置にボルト穴を6つ形成しているのに対し、イ号意匠においては、同一円周上の0°、45°、135°、180°、225°、315°の位置に6つ形成している点。 (ホ)締付リング部の外径に対する全長の寸法比率について、本件登録意匠においては、略1:0.8程度であるのに対し、イ号意匠においては、略1:1程度である点。 (ヘ)締付リング部の厚みに対するフランジの厚みの寸法比率について、本件登録意匠においては、略1:0.5程度であるのに対し、イ号意匠においては、略1:1.4程度である点。 4.類否判断 上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す全体の基本構成は、意匠全体の骨格を成す特徴的なものであり、これに共通点(2)に示す軸接続部の態様、共通点(3)に示す締付リング部の態様、及び、共通点(4)に示す締付リング部と軸接続部との配置態様が加わることによって意匠の基調が形成され、さらに共通点(5)に示す態様における共通性も加味されて、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。 これに対し、相違点(イ)の締付リング部及びフランジの外周縁部の態様における差異については、外側縁部分に面取りを施すことは常套的な改変の域を出ない加工態様である上に、本件登録意匠の該部位の態様も、ありふれた形状である切り面状であるから本件登録意匠を特徴付けるものとは成し得ず、その差異は、共通点(1)乃至(5)に示す全体的で顕著な共通性を凌ぐものではない。 つぎに、相違点(ロ)のボルトの態様における差異については、該部位は意匠の構成要素としては付随的なものにすぎず、イ号意匠の六角ボルトの態様は言うまでもなく、本件登録意匠の態様もボルトとしてはありふれた形態の一つにすぎない六角穴付きボルトであるから、本件登録意匠を特徴付けるものとは成し得ず、意匠全体としての類否判断においては、その差異は局所的微差に止まり、両意匠の類否を左右する程のものではない。 つぎに、相違点(ハ)のフランジ外周部分の円孔の有無の差異については、例えば、公開特許公報昭52-112042号第1図の軸継手の意匠(別紙第3参照)にみられるように、フランジ外周部分に円孔を形成したものはこの種物品において既に存在している上に、イ号意匠の円孔の配置態様も単に上面中央部及び底面中央部に配設したにすぎないものであるから、該部位はイ号意匠を特徴付けるものとは成し得ず、その有無の差異は、各共通点に示す全体的な共通性を凌ぐものではない。 つぎに、相違点(ニ)の締付リング部のボルト穴の配置態様における差異については、該部位は意匠の構成要素としてはさほど評価することはできず、両意匠のボルト穴の数も共に6つであって共通するため、全体的に見れば、その差異は局所的微差に止まるものであり、両意匠の類否を左右する程のものではない。 つぎに、相違点(ホ)の締付リング部の外径に対する全長の寸法比率の差異、及び、相違点(ヘ)の締付リング部の厚みに対するフランジの厚みの寸法比率の差異については、例えば、意匠登録第810603号の類似第1号意匠(別紙第4参照)、類似第2号意匠(別紙第5参照)及び類似第3号意匠(別紙第6参照)にみられるように、この種物品分野においては、嵌着する軸の外径、伝達する回転力の大小等に応じて当該各部の寸法を適宜変更することは、極普通に施されるありふれた改変の域を出ないものであって、特筆すべきものではないため、それら寸法比率の差異は、共通点(1)乃至(5)に示す態様により形成された意匠の基調を成す共通性を凌ぐものではない。 さらに、これらの相違点に係る態様が相俟って表出する効果を勘案しても、前記各共通点から惹起される両意匠の類似性を凌ぐ視覚効果を認めることはできない。 したがって、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものである。 第3.むすび 以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2003-06-06 |
出願番号 | 意願昭61-3375 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(K9)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 矢田 千代子 |
特許庁審判長 |
藤木 和雄 |
特許庁審判官 |
岩井 芳紀 江塚 尚弘 |
登録日 | 1990-12-14 |
登録番号 | 意匠登録第810603号(D810603) |
代理人 | 宮崎 栄二 |