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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない D4
管理番号 1081547 
審判番号 無効2002-35144
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-04-15 
確定日 2003-07-14 
意匠に係る物品 かいろ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1110945号「かいろ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立ておよび理由
請求人は、意匠登録第1110945号の意匠(以下本件登録意匠という)を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由として審判請求書および弁駁書に記載のとおりの以下の主張をし、証拠方法として、甲第1号証および甲第2号証を提出した。
本件登録意匠は、意匠登録第971829号の意匠(以下甲号意匠という)と類似する意匠であるから意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をし、証拠方法として資料1(本件意匠と引用意匠の比較図)及び乙第1号証ないし乙第7号証を提出したものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年6月27日に意匠登録出願し、平成13年4月6日に設定の登録がされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面並びに図面代用写真によれば、意匠に係る物品を「かいろ」とし、その形態を別紙第一のとおりとするものである。
その構成態様は、略平板状とした全体を略横長楕円形の上辺中央を内側に向けた緩やかな凹湾曲状とし、下辺中央を内側に向けた上辺よりやや大きな緩やかな凹湾曲状として左右両側辺を上隅のやや広い範囲で浅い弧状とする凸曲線で繋いだ態様とした、縦中央が幅狭で、全体が左右対称で、上下に非対称としたものであり、裏面部に剥離シートを設け、表面部は、外周に沿う一定幅の部分を薄肉状とし、その内側を盛り上げて厚みを持たせたものである。なお詳細に観ると縦中央がやや薄肉状であることが認められるものである。
2.甲号意匠
甲号意匠は、平成9年1月13日特許庁発行の意匠公報に記載の意匠登録第971829号の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「温熱外用材」とし、その形態は別紙第二に示すとおりのものである。
その構成態様は、略平板状とした全体を略横長楕円形の上辺中央を直線状とし、下辺中央を内側に向けた偏平逆V字状とする緩やかな凹湾状とし、左右両側辺を下方に向けて徐々に幅狭とする極浅い円弧として上下両隅でやや角張った態様を成す凸曲線で繋いだ態様とした、縦中央が幅狭で、全体が左右対称で、上下に非対称としたものであり、裏面部に剥離シートを設け、表面部は、外周に沿う一定幅の部分を薄肉状とし、その内側を盛り上げて厚みを持たせたものであり、さらに縦中央に、外周の薄肉部と等幅の浅い溝部を形成したものである。
3.本件登録意匠と甲号意匠との比較検討
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について以下に示す共通点及び差異点が認められる。
すなわち、(A)略平板状とした全体を略横長楕円形の下辺中央を内側に向けた緩やかな凹湾状とし、左右両側辺を凸曲線で繋いだ態様とした、縦中央が幅狭で、全体が左右対称で、上下に非対称としたものである点。(B)裏面部に剥離シートを設け、表面部において、外周に沿う一定幅の部分を薄肉状とし、その内側を盛り上げて厚みを持たせたものである点、さらに詳細にみた場合の、(C)表面部縦中央がやや薄肉状である点、が共通するものである。
一方差異点として、(ア)本件登録意匠は、上辺中央を内側に向けた凹湾曲状にしたのに対して、甲号意匠は、直線状である点、(イ)下辺中央の凹湾部が、本件登録意匠は、全体が曲線状であるのに対して、甲号意匠は、中央(凹角部)が丸味付けられた偏平逆V字状である点、(ウ)左右両側辺の凸曲線について、本件登録意匠は、上隅のやや広い範囲で浅い弧状とするものであるのに対し、甲号意匠は、全体を下方に向けて僅かに幅の狭い極浅い円弧状として、上下両隅がやや角張った態様のものである点、(エ)縦中央の薄肉部について、甲号意匠は、外周の薄肉部とほぼ等幅のものが浅い溝状に形成されているが、本件登録意匠は、縦中央を上下幅狭としたことにより自ずと盛り上がりが少ない薄肉状をなしているものと認められ、特に段差のある溝部は形成されていない点、が認められる。

そこで、これらの共通点及び差異点を総合して両意匠を全体として考察する。
先ず共通点について、(A)の点については、この種の身体に当てて使用されるパット材、或いは保温、保冷等のための当て具の分野においては、全体を横に長い平板状のものとすること、上下辺の一方若しくは双方の中央を凹湾状とし、平板状の縦中央を幅狭とすること、左右両側辺を凸曲線で繋いだ態様とすることは何れも従来より普通にみられる態様であり(例えば登録意匠第333036号、登録意匠第339436号、登録意匠第832131号、登録意匠第832133号等)、また、その具体的な態様において上記(ア)ないし(ウ)の差異が認められることを考慮すると、左右に対称で上下に非対称という共通性を加えても全体としては概念的な共通性の域に止まり、類否に及ぼす影響はさほど大きいものとは言えない。また、(B)の点については、この種の物品において裏面部に剥離シートを設けること、表面の外周に沿う一定幅の部分を薄肉状としてその内側に厚みを持たせることは極普通にみられる態様であり(後者については、例えば、実開平5-84317号)、類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。さらに、(C)の点については、詳細にみれば、共通点として挙げることができたとしても、差異点(エ)のとおり、その具体的な態様に顕著な差異が認められ、共通点として働く効果は弱い。
してみると、これら共通点が相関連する効果を考慮しても、共通点をもって直ちに両意匠の類否を決するまでのものとすることはできない。
これに対して差異点について、(ア)の点は、上辺中央の比較的大きい部分についての差異であり、両側辺についての(ウ)の差異と相関連して本件登録意匠については上辺部に二つのなだらかな山がやや中央寄りに並んで膨出するという甲号意匠と異なる外周形状を形成しており、(イ)の点は、甲号意匠においても中央(凹曲部)が丸味を設けた緩やかな凹湾状という点では共通するとしても全体としてはその凹湾状は、偏平逆V字状とする直線的な印象が強く、そして(ウ)の点は、本件登録意匠は両側辺が全体として丸味を帯びた凸曲線状に膨らむ印象を与えるものであるのに対し、甲号意匠は、上下の角張りとその間の極浅い円弧とがむしろ全体として方形状(逆台形状)に近い印象を与えており、これら(ア)ないし(ウ)の差異点は、それぞれが両意匠の全体形状に一定の影響を及ぼすとともに、さらに相互に相関連して、本件登録意匠についてその外周形状に甲号意匠と異なる独自の特徴を生じさせているものと認められ、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。さらに(エ)の点は、乙第1号証及び甲第2号証(甲号意匠を本意匠とする類似意匠)に照らせば、縦中央に外周の薄肉部とほぼ等幅の溝を段差状に形成したという点が、甲号意匠の特徴を表すところに係わると認められ、その溝の有無は類否判断に与える影響は大きいと言わざるを得ない。
そうして、これらの差異があいまったところは両意匠の共通点がもたらす共通感を越えて、本件登録意匠について、甲号意匠とは異なる独自の視覚的まとまりを形成していると認められ、両意匠は、類似するものとすることはできない。
なお、請求人は、甲各号が、上辺中央部が水平形状と、湾曲形状との差異を有しながらも、相互に類似する意匠として登録されたことから、本件の場合においても両意匠が類似する旨主張するが、意匠の類似判断には、2つの意匠の間での異なる構成要素を含む全体の形態についての個別判断があるから、従前のある差異形状を含んだ類似する意匠登録例が存在するからと言って従前と同様の差異形状を含んだ他の意匠の間の類否判断を直接拘束するものではないから、請求人のこの点に関する主張は採用することができない。
4.むすび
以上のとおりであるので、本件登録意匠は、甲号意匠と類似するものとすることができない意匠であるから、意匠法第3条第1項第3号の規定する意匠に該当しないものである。
したがって、請求人の主張および提出した証拠によっては、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2002-12-10 
結審通知日 2002-12-13 
審決日 2002-12-25 
出願番号 意願2000-17300(D2000-17300) 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (D4)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 市村 節子
山崎 裕造
登録日 2001-04-06 
登録番号 意匠登録第1110945号(D1110945) 
代理人 柳野 隆生 
代理人 牛木 理一 

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