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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効とする D1
管理番号 1081549 
審判番号 無効2002-35447
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-18 
確定日 2003-07-30 
意匠に係る物品 壁面用パネル材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1103326号「壁面用パネル材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1103326号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、登録第1103326号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第3号証を提出し、また、乙第4号証(「甲第4号証」とする。)及び乙第5号証(「甲第5号証」とする。)を提出した。
1.請求人適格ないし請求の利益の有無
請求人は、アルミ壁面パネルのメーカーであって、同族会社である販売元、加藤秀金属株式会社へ納品しているものである。甲第5号証のカタログは、同社のカタログである。
したがって、請求人は本件無効審判事件について利害関係を有するものであって、当然請求人適格ないし請求の利益を有するものであることは判然としている。
2.意匠登録無効の理由
本件登録意匠は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証ないし甲第3号証の刊行物に記載された下記の意匠に類似するものであり、また、公知の意匠から容易に創作できたものであるから、意匠法第3条第1項第3号及び同条第2項の規定に該当し、意匠登録を受けることができないものであり、その登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し、当然無効とされるべきものである。
甲第1号証に記載の意匠:実開平6-24564号公報の明細書及び図面特に図2に記載された壁面用パネル材の意匠
甲第2号証に記載の意匠:2000年1月発行のカタログ「フックライン」に記載の22ミニフラットタイプの商品陳列用パネルの意匠
甲第3号証に記載の意匠:意匠登録第1049204号公報(平成11年9月16日発行)に記載の商品陳列棚用構成部材の意匠
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1.請求人適格ないし請求の利益の有無
請求人は、請求人適格ないし請求の利益の有無について何ら明らかにしていないので、この点について争う。
2.無効理由に対する反論
本件登録意匠は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の意匠に類似するものではなく、また、本件登録意匠は、引っ掛け部が「隅部を垂直としたL字状を呈している」のに対して、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の意匠の引っ掛け部はこの態様を有しておらず、これら公知の意匠から本件登録意匠は容易に創作できたものでもないので、意匠法第3条第1項第3号及び同条第2項に規定する意匠に該当せず、意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきものではない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書及び願書に添付の図面の記載によれば、平成12年4月18日に意匠登録出願をし、平成13年1月12日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1103326号意匠であり、意匠に係る物品を「壁面用パネル材」とし、その形態を、願書及び願書に添付の図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。
2.請求人適格ないし請求の利益の有無
請求人は、本件登録意匠の意匠に係る物品である「壁面パネル材」と共通する物品であるアルミ壁面パネルの製造をしている者であるから、本件登録意匠について利害関係を有する者と認められ、本件について請求人適格を有する者と認められる。
3.当審の無効理由の通知
本件について、当審は、要旨以下のとおりの無効理由を請求人及び被請求人に通知し、期間を指定して意見を申し立てる機会を与えた。
本件登録意匠は、「壁面用パネル材」に係るものであり、その形態は、(1)壁面等に取り付ける長尺平板状の基板の表面に一端(上端)付近から他端(下端)寄りにかけて、基板前方に一体に突出して横溝状のスリットを設けた、フック等の係合具を支持する帯状被係止部数本を、上下に互いに平行で等間隔に長手方向全長に亘って形成し、基板の他端(下端)側に余地面を残し、さらに、基板の一端(上端)には、連結用の帯状小突起部を、基板の他端(下端)には、一端(上端)の帯状小突起部位置より前方に若干突出した後に連結用の帯状小突起部を、それぞれ長手方向全長に亘って形成して、対向する帯状小突起部を嵌合することにより壁面用パネル材複数枚を上下に連結使用可能なものとし、(2)帯状被係止部を、下面板と屈曲連続する前面板とから成る側面視L字状のものとし、(3)帯状被係止部において、基板との突出基部角隅及び下面板と前面板との屈曲部内側の角隅には丸み付けをし、(4)基板の他端(下端)付近にビス取り付け位置を示す溝筋を長手方向全長に亘って形成した態様としたものである。
しかしながら、(1)の態様は、例えば、乙第1号証(意匠登録第909402号公報。別紙第2参照)、乙第2号証(意匠登録第1003281号公報。別紙第3参照)等に見られるように、この種物品分野において本件登録意匠の出願前に広く知られた態様であり、そして、(2)の態様は、物品分野を限らず、係止するための態様としてL字状等の鉤状の態様を採用すること自体はありふれたことである上に、例えば、特許出願公開昭58-112513号公報の第2図(別紙第4参照)に見られるように、この種物品分野において本件登録意匠の出願前に広く知られた態様であり、(3)及び(4)の態様も広く知られており(乙第1号証、乙第2号証等参照)、以上の点を総合して判断すると、本件登録意匠は、壁面用パネル材の形態につき、(1)ないし(4)の広く知られた態様を組み合わせた程度にすぎないものであって、当業者であってみれば、これらの態様を組み合わせることについて格別の創意を要さず、容易に想到できるものである。
したがって、本件登録意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに含まれるものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当し、本件意匠登録は、同法同条同項の規定に違反してなされたものであるので同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
4.当審の無効理由の通知に対する被請求人の主張
当審の無効理由の通知に対し、被請求人は、意見書を提出し、要旨以下のとおり主張した。
(A)本件登録意匠に係る物品「壁面用パネル材」の当業者は、それを扱う専門業者である取引者等であり、これら専門業者は、当該物品を壁面に取り付けた場合の壁面全体に展開される外観、取付方法、ディスプレーとしての機能等に特に注意が及ぶから、微細な点についても見逃さず、注意深く観察するものであり、かかる観点から、無効理由の通知において本件登録意匠の態様として合議体が判断した(1)ないし(4)について、以下の点が看過されている。
(a)連結用として基板の上端に形成したものは帯状小突起部ではなく、凹溝であり、基板の下端に形成した連結用のものは帯状小突起部ではなく、前記凹溝に挿入される挿入片である。挿入片を凹溝に挿入することにより、壁面用パネル材複数枚をガタつきなく確実に壁面に固定できるものである。
(b)溝筋に螺入したビスの頭は最上段の帯状被係止部の前面板に隠蔽されるように、溝筋の位置を特定しており、ビスが正面からは見えにくくしている。溝筋は、上下に2本平行に形成しており、ビスを下方の溝筋に螺入することにより、ビスの頭はより隠蔽できるようにしており、また、ビスを上方の溝筋に螺入することにより、アンダーカバー嵌着の際にビスが邪魔にならないようにしている。
(c)帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅とを同寸としている。かかる態様により、上下に平行かつ等間隔な横方向のラインが現出し、この単純なラインを背景としてディスプレーした商品を引きだたせると共に、上下長さに対する帯状被係止部の数が増え、ディスプレー効率も高まる。
(d)帯状被係止部において、基板との突出基部下側角隅に丸み付けしたことにより、角張ると目立ちやすい下側角隅がファジーに見えるようになり、目立ちにくい。
(e)最下段の帯状被係止部の下面板下面に突条を長手方向全長に亘って形成すると共に、下端の挿入片の上方を前方に若干突出し、その突出上面を斜め上方に傾斜させている。かかる態様により、特にビス等の固着具を用いることなく、最下段の壁面用パネル材の下端を、アンダーカバーを嵌着するだけで容易に隠蔽できる。
(B)本件登録意匠は、上記の如く側面視L字状とした帯状被係止部の態様及び帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅とを同寸とした態様、そして上端及び下端の態様においても特徴があるところ、引用意匠はこれらの態様を有しておらず、特に特許出願公開昭58-112513号公報の第2図に見られる意匠は帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅とが同寸ではない点において極めて相違しており、したがって、本件登録意匠は、広く知られた態様を組み合わせたとしても、容易に想到できるものではない。
5.被請求人の主張に対する検討
本件登録意匠の創作容易性について、さらに被請求人の主張を検討する。
(A)の主張について
被請求人は、当業者である専門業者は微細な点についても見逃さず注意深く観察するという観点によれば、無効理由の通知において当審が認定判断した本件登録意匠の態様には看過されている点がある旨主張する。
しかしながら、(a)の基板の上下端の態様につき、一方が凹溝で他方が挿入片である旨の被請求人の主張については、本件登録意匠は、上段の帯状被係止部において基板との突出基部上側角隅を注視すると凹溝状に形成しているが、基板の上端を見ると、上段の帯状被係止部の下面板上面位置より若干上方位置まで延びる帯状小突起部が顕著に表れており、基板の下端には、凹溝状の部位に挿入して基板の上端の帯状小突起部と嵌合する相手方の帯状小突起部が表れているものであること、また、物品分野を限らず、連結するための造形手法として一方を凹部(雌部)とし、相手方を凸部(雄部)とすることは、ありふれた手法であり、そのうち、一方を溝で他方を突片とした態様もこの種物品分野において広く知られており(例えば、乙第5号証:意匠登録第764927号公報参照。)、本件登録意匠の連結部位において一方を凹溝状とし他方を凹溝状の部位に挿入するものとした態様自体は、ありふれた造形手法を採用した程度のものといえ、当業者において特に創作困難であったとすることができないこと、以上の点を考慮すると、本件登録意匠の連結部位において一方を凹溝状とし他方を凹溝状の部位に挿入するものとした態様については、創作容易性の判断をする場合に、あえて俎上に載せるまでもなく、基板の上下端に顕著に表れる帯状小突起部について認定判断することをもって足りる程度のものである。
したがって、当審が、無効理由の通知において、(1)の中で、「基板の一端(上端)には、連結用の帯状小突起部を、基板の他端(下端)には、一端(上端)の帯状小突起部位置より前方に若干突出した後に連結用の帯状小突起部を、それぞれ長手方向全長に亘って形成して、対向する帯状小突起部を嵌合することにより壁面用パネル材複数枚を上下に連結使用可能なものとし」とした点に誤りはない。
(b)の被請求人の主張については、溝筋の位置及び数を特定した理由について述べているにすぎない。溝筋の位置及び数を特定する理由が何であれ、溝筋はビス取り付け位置を示すものであることに変わりなく、その溝筋を基板の他端(下端)付近に長手方向全長に亘って形成した態様は広く知られているところである。なお、ビスの頭が帯状被係止部の前面板に隠蔽されるように溝筋の位置を特定することは常套的な造形手法である(乙第1号証及び乙第2号証参照)。
(c)の帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅とを同寸としたこと、及び、そのことによるディスプレーの効果と効率についての被請求人の主張については、帯状被係止部前面板上下幅を前面板間上下幅より広くしたもの、狭くしたもの、あるいは、近似した幅としたもの(甲第1号証参照)、さらには、同寸としたもの(甲第2号証参照)等、帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅との構成比率については様々なものがこの種物品分野において従来から見られるところであって、基板表面において基板前方に一体に突出して横溝状のスリットを設けた、フック等の係合具を支持する帯状被係止部数本を、上下に互いに平行で等間隔に長手方向全長に亘って形成した態様であることを前提として、帯状被係止部の前面板間上下幅は係合具を係止するのに困らない程度の十分な幅が要求される中で、帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅との具体的な構成比率は適宜選択し決定されるものにすぎず、さらに具体的に見ると本件登録意匠の帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅とは同寸としたものではあるが、そうすることは、そのことによるディスプレーの効果と効率がいかなる程度のものであるかにかかわらず、当業者であってみれば何ら創意を要するものではない。
したがって、本件登録意匠の帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅との具体的な構成比率は、さらに具体的に見た場合の態様に係るところ、創作容易性の判断をする場合に、検討したとしても、上記のとおり、何ら創意を要するものではないことから、俎上に載せなかったからといって、さほど問題とならないものである。
(d)の被請求人の主張については、帯状被係止部において、基板との突出基部下側角隅に丸み付けしたことによる視覚的効果について述べているにすぎない。丸み付けしたことのよる視覚的効果がいかなるものであろうが、突出基部下側角隅に丸み付けした態様自体は、広く知られたものである。
(e)の壁面用パネル材の下端を、ビス等の固着具を用いることなくアンダーカバーを嵌着して隠蔽できる態様としている旨の被請求人の主張については、最下段の帯状被係止部の下面板下面に形成した突条の突出の程度、基板の下端の帯状小突起部の前上端の前方への突出の程度、及び、その突出上面の傾斜の程度は、いずれも極僅かなものであって、局部的になされた形態処理であるから、全体形態に及ぼす影響が弱く、その態様は、全体形態の創作容易性を検討する場合には、さほど問題とならないものであり、あえて検討したとしても、壁面用パネル材の一端を、ビス等の固着具を用いることなくカバーを嵌着して隠蔽できる態様とすること自体は、例示するまでもなくこの種物品分野において従来から見られる造形手法であり、本件登録意匠の突条と傾斜上面とを形成してカバー嵌着が可能となる態様とすることが、当業者において特に困難であったとすることができない。
(B)の主張について
被請求人は、側面視L字状とした帯状被係止部の態様、帯状被係止部前面板上下幅と前面板間上下幅とを同寸とした態様、及び上端と下端の態様において特徴がある旨主張するが、上記のとおり、被請求人の主張するこれらの態様は、広く知られたもの、あるいは、当業者においてそのような態様とすることが特に困難であったとすることができないものであって、特徴とはいえず、本件登録意匠は創作容易なものではないとの判断を導くほどの効果を発揮するものではない。
以上によれば、本件登録意匠は、壁面用パネル材の形態につき、無効理由の通知における(1)ないし(4)の広く知られた態様を組み合わせた程度にすぎないものであって、当業者であってみれば、これらの態様を組み合わせることについて格別の創意を要さず、容易に想到できるものとせざるを得ない。
6.結び
以上のとおりであって、無効理由の通知で通知した理由のとおり、本件登録意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに含まれるものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当し、本件意匠登録は、同法同条同項の規定に違反してなされたものであるので同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-05-29 
結審通知日 2003-06-03 
審決日 2003-06-18 
出願番号 意願2000-10063(D2000-10063) 
審決分類 D 1 11・ 121- Z (D1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 伊藤 晴子
木村 恭子
登録日 2001-01-12 
登録番号 意匠登録第1103326号(D1103326) 
代理人 大矢 須和夫 

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