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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) C3
管理番号 1083355 
判定請求番号 判定2003-60022
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-10-31 
種別 判定 
判定請求日 2003-02-21 
確定日 2003-09-17 
意匠に係る物品 電気掃除機 
事件の表示 上記当事者間の登録第1124258号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明書に示す「電気掃除機」の意匠(登録第1124258号に対応する部分の意匠)は、登録第1124258号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下「イ号意匠」という)は、登録第1124258号の意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を判定請求書の記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む)を提出した。そして、その大要は以下のとおりである。
本件登録意匠についての意匠の創作の主たる対象は、まず、基本的な構成態様にあり、本件登録意匠における基本的構成、すなわち、
・本体と、吸い込み流路と、ハンドル部と、ダストカップ部とからなり、吸い込み流路の下端に吸い込みブラシ部が取り付けられる構成である点、
・吸い込み流路は、本体の背面から後方に大きく凸設すると共に、下方に向かって真っ直ぐに延びる態様である点、
・ハンドル部は、本体の正面側から立設すると共に、上方に向かって形成される態様である点、
・ダストカップ部は、カップ部と、カップ部の底部に固着される底部材と、ダストカップ部を本体に着脱する際に使用される着脱レバーとからなる構成である点、
・ダストカップ部の外側より、フィルターが視認される点、の構成態様全てを併せ持つ意匠は、他に見られず本件登録意匠特有の特徴と云うべき要部である。
次に、本件登録意匠についての意匠の創作の主たる対象である本体と吸い込み流路の形状における、
・本体は、下端が径大で上方に向かって漸次径小となると共に、上面が湾曲面で構成された万年筆のキャップ状の形状に表れる点、
・吸い込み流路は、本体の背面側に、平面視ほぼ蒲鉾形に表れるように大きく凸設して形成され、それが背面視本体の下方ほぼ1/3長の地点を極大点とする下向き幅の狭い放物線状に表れると共に、全体の長さはほぼ本体と同じに表れる形状である点、の特徴を併せ持つ意匠は、他に見られず本件登録意匠特有の特徴と云うべき要部である。
さらに、ダストカップ部の構成と形状、すなわち、
・やや底部に向かって径小となる透明なカップ部の底部に皿状で不透明体の底部材を固着し、ここに不透明体からなる着脱レバーを配した点、にも本件登録意匠に特有の創作というべき特徴を有する。
本件登録意匠とイ号意匠は、共に、意匠に係る物品が電気掃除機であって、物品が同一であり、本件登録意匠に特有の特徴である基本的構成態様、本体並びに吸い込み流路の形状、ダストカップの構成と形状において完全に同一といえないまでも、極めて同一に近い構成と形状を有する。そして、「本件登録意匠の要部」並びに「看者が最も注目する点」双方において著しい共通点を有する一方、具体的な差異を有するハンドル部は、本物品を構成する部位の中で最も注目度の低い部位といわざるを得ないから、具体的態様の差異があっても、ハンドル部全体の共通性並びに物品全体の共通性の中に埋没する程度の差異にすぎず、イ号意匠は本件登録意匠と見間違うほどに、多くの共通点を有するものであり、本件登録意匠に類似する意匠である。
第2.被請求人の答弁
判定請求書の記載によれば被請求人は不明であり、答弁を求めることができない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年12月18日に意匠登録出願をし、平成13年8月31日に意匠権の設定の登録がなされた、物品の部分に係る登録第1124258号の意匠であり、登録原簿及び願書の記載によれば、意匠に係る物品が「電気掃除機」であり、形態については、願書の記載及び願書に添付した図面において実線で表されたとおり(別紙第1参照)のものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書添付、甲第2号証の1及び2の書面により示されたものであり、意匠に係る物品については、その書類の記載によれば「電気掃除機」であり、形態については、同書面により示されたとおり(参照、別紙第2)の本件登録意匠に対応する部分の形態である。
なお、請求人は「イ号意匠」を甲第2号証の1及び2により表されたものとしているが、本件登録意匠は、部分意匠として登録されたものであるから、「イ号意匠」についても判定の対象となるものは、これに対応する部分に係る意匠と認める。
3.両意匠の対比検討
両意匠を対比するに、意匠に係る物品について、両意匠は「電気掃除機」であるから、意匠に係る物品は共通する。また、形態については、主として以下の共通点と差異点、がある。
すなわち、共通点として、
(1)全体の概略につき、本体部は縦長楕円の長軸を中心に回転させ形成される縦細長球体状のものの上下中央最大直径部のやや下の位置から下方を水平方向に切り落とした態様とし、その下面側には、上端の径を本体部下端と一致させ、下方に向け極く僅かにすぼめた本体部の長さよりやや短い縦長円錐台状であって、周面を透明としたダストカップ部を設け、背面側には、ダストカップ下面と同じ下端位置から本体上下中央よりやや下の位置まで達する吸い込み流路部を後方側に凸設させ、本体の上部側には、本体頂部からの長さを、ダストカップ下端から本体頂部までの長さと略同じとした縦細長のハンドル部を立設した点、
(2)ハンドル部につき、正面側下部は本体部の正面側に被さった態様とし、背面側下端位置は本体頂部付近とし、上方に向け左右幅及び前後幅共に漸次狭め、後方側に僅かに湾曲させた態様としたもので、上端付近を把持部とした点、
(3)吸い込み流路部につき、下端に吸い込みブラシ部を取り付けるものであって、本体ほぼ最大直径部を上端とした本体部の長さとほぼ同じ長さであり、左右幅はダストカップより僅かに狭く、前後幅は左右幅より僅かに広く、背面側は丸面状としたもので、下端から真っ直ぐ立ち上げ上端に近づくに従い徐々に湾曲させた態様で前後幅を狭め、側面視放物線状に表した点、
(4)ダストカップ部につき、透明のカップ周面部と、着脱可能な不透明体の皿状底部からなり、カップ周面部の外側から、内側上部に設けられた短円柱状フィルター部が視認され、なお、底部材前側に横長着脱レバーを設けた点、
(5)本体背面側の上寄り1/2強の部分に蓋体が面一状に設けられ、これに多数の横長孔が左右対称に配されている点、
(6)ハンドル部正面側上端把持部の僅か下に操作スイッチを設けた点、がある。
次に差異点として、
(イ)ハンドル部の正面側、本体頂部の高さ位置から下方につき、本件登録意匠は、正面視下方に向け極く僅かずつ幅を狭め本体部の下端から1/4程度の高さ位置まで被さっており、下端付近を弧状に丸め細長半楕円状に表れているのに対して、イ号意匠は、その上方からそのまま延長する態様で下方に向け漸次幅を広げ、本体部の下端から2/3程度の高さ位置まで被さっており、下端が正面視凹弧状に表れている点、
(ロ)ハンドル部上端付近の把持部につき、本件登録意匠は、正面視においてその下方からそのまま延長した態様で左右幅を漸次均一に狭め、上端を水平方向で切り落とした方形状の態様としているのに対して、イ号意匠は、把持部中央を中心として極く僅かの膨らみを持たせ、先端を細めた丸棒状とした点、
(ハ)ハンドル部の背面側下端付近につき、本件登録意匠は、本体頂部からハンドル部の前後幅を急激に狭め側面視凹弧状に表れているのに対して、イ号意匠は、本体頂部付近からほぼ真っ直ぐ立ち上がっている点、
(ニ)ハンドル部の両側面及び背面側の形状につき、イ号意匠は、両側面前後に凸条を有し、断面を略台形状としているのに対し、本件登録意匠は凸条に相当するものがなく、背面側全体を丸面状としていると認められる点、
(ホ)本体部の長さに対するダストカップ部の長さにつき、本件登録意匠は、1/2程度としているのに対して、イ号意匠は、2/3程度とし、本件登録意匠よりやや長くしている点、がある。
そこで意匠全体として比較検討すると、前記共通するとした、(1)ないし(3)の共通点に係る構成態様は、互いに関連し合って訴求力の強い共通した一定の視覚的まとまりを形成しており、また、これらの共通点を併せ持った点に関しては、請求人が提出した甲第3号証ないし甲第8号証、及び当審が調査した本件登録意匠の出願日前に出願され登録されたこの分野の意匠と照らし合わせてみると、本件登録意匠の特徴を構成しているものと認められるから、類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められ、また(4)ないし(6)の共通点は、更に共通感を高めるものであり、これら(1)ないし(6)の共通点に係る構成態様は、意匠全体として共通した基調を表出しているものと認められる。
これに対して、(イ)の差異点については、目に触れやすい正面側の差異であり、類否判断に一定の影響を及ぼすものであるが、(ロ)の差異点については、その部分のみを比較した場合は別として、意匠全体としてみた場合には、(2)の共通するとした構成態様から形成されるハンドル部の共通した視覚的まとまりに埋没してしまう程度の部分的なものにすぎず、類否判断に及ぼす影響は極く僅かであり、(ハ)の差異点については、背面側の格別着目されない限られた部位に関するものであり、類否判断に及ぼす影響は極く僅かであり、(ニ)の差異点については、細長いハンドルの側面及び背面形状に関するものであるから視覚的に微弱なものにすぎず、類否判断に及ぼす影響は極く僅かに過ぎない。そして、これら(イ)ないし(ニ)の差異点を総合し、ハンドル部全体を比較した場合には、これらの差異点の相俟った効果として本件登録意匠とイ号意匠のハンドル部は、やや別異の感を生じさせているものと認められるが、ハンドル部は、その他の主たる構成要素、すなわち、本体部及びダストカップ部、吸い込み流路部と比較してやや細長い部分であり、一方、前記共通するとした(1)ないし(3)の共通点から形成される視覚的まとまりは訴求力が強いもので、ハンドル部全体としては別異の感を呈しているとしても、その差異はハンドル部に止まるもので、意匠全体としてみた場合には、共通した視覚的まとまりに埋没してしまう程度の部分的なものと認められる。また、(ホ)の差異点については、下端位置を同じとした吸い込み流路部の長さにも影響を及ぼすものであるが、一方、前述のごとく、吸い込み流路部の長さは本体部の長さと略同じとしている点は共通しており、この本体部の長さに対するダストカップ部の長さの差異は、この点のみに着目したとしても単にイ号意匠のダストカップ部の長さが本件登録意匠よりやや長い感を呈するに止まり、(1)の共通点として述べたように他の構成要素相互の長さ関係に関しては共通する点が多いから、意匠全体としてみた場合、極く微弱な差異にすぎず類否判断に及ぼす影響は極く僅かに過ぎない。また、(イ)ないし(ニ)のハンドル部における差異点と、(ホ)のダストカップ部の差異点との相俟った効果を考慮したとしても、前記共通するとした基調を凌駕し、別異の視覚的まとまりを生じさせているとは到底云えないものである。
このように、両意匠の共通点に係る構成態様が表出する共通するとした基調を、差異点が凌駕することができないから、意匠全体として、イ号意匠は本件登録意匠に類似する。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2003-09-04 
出願番号 意願2000-36072(D2000-36072) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (C3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 外山 雅暁原田 雅美 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2001-08-31 
登録番号 意匠登録第1124258号(D1124258) 

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