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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) L2
管理番号 1093326 
判定請求番号 判定2003-60057
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2004-04-30 
種別 判定 
判定請求日 2003-07-29 
確定日 2004-02-26 
意匠に係る物品 水路構成用ブロック 
事件の表示 上記当事者間の登録第1052932号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真及び図面に示す「側溝用ブロック」の意匠は、登録第1052932号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
1.請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし第7号証を提出した。
2.本件登録意匠の手続の経緯及びその構成
(1)本件登録第1052932号意匠(以下、「本件登録意匠」という。甲第1号証)は平成5年11月25日に出願(同年意匠登録願第35416号)され、平成11年6月3日に登録すべきものとする旨の審決があり、同年7月23日に前記登録番号により登録されたものである。
(2)その構成は正面図やA…A線およびA′…A′線における各断面図に示される如く、長方形状ブロックに、頂辺が大径であり、底辺が該頂辺よりも小径とされた縦長の内孔を形成して排水内孔域とすると共にその頂面は正面図に示される如く中央部が若干低くなるように対向した傾斜頂面とされた上面部に各列所定数の方形突出模様を配設し、また該上面部の中間部に平面図に示されるような溝状中央スリットをブロックの長さ方向にそって形成し、しかも該スリットによってA′…A′線断面図に示されるように排水内孔に対する落し込みを図り、該落し込み孔から落し込まれた水をブロックの排水内孔における小径化底面にそって排出するもので、その大径化頂面側は、水量が増大した条件下において小径化底面部よりも同一高さにおいて大量の排水が得られるようになるものである。
なお上記した平面的に長方形ブロックにおける底部には底面図と共に右側面図やA′‐A′線などの断面図に示されるように両端側面部の底部に傾斜した切欠部を相当の長さおよび深さを採って対設し、設定基礎部上における該ブロック底面部の設定を容易化すると共に安定な設定を得しめるように成っている。
3.イ号意匠の説明
イ号意匠は被請求人が平成13年〜14年頃より製造販売したと推定されるもので、被請求人が「AQUA DRAIN(スリット側溝)」と称して配布したカタログ(発行日等は明かにされていない)の2枚目表(頁数なども示されていないが、右端部中間に「2/14」と抜き文字で印された頁)における下段に「乗り入れタイプ」として掲載された内容であって、中央部に断面図として、またその右側に側面図と平面図、左側には斜面図が示されたものである。
4.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
このような路面側溝の如きにおいてはその上面から突出した立体模様を施すようなことは車両等の走行する路面で従前において一般的に存在しなかったのが通例であったのに対し、本件登録意匠の場合においては明かに立体的な突出模様であるから側面や傾斜方向からの観察で充分に確認できることとなったのであり、従前の製品とは本質的に異質であって、このことのみでも大きな特段性を有している。ところがそうした関係は本件登録意匠のものとイ号意匠とにおいて全く差異がないから看者に与える感覚は殆んど差のないこととなることは当然である。
5.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
本件登録意匠およびその類似意匠のものとイ号意匠のものは水路構成用ブロックの全般的構成関係、その上面におけるこの種路面形成部体としては異例の立体的方形突出模様の配設状態、本体における水路や上記水路に対する該方形突出模様面からのスリットを介した雨水等の落し込み構成、本体水路の流水構成、更にはそれらによる路面水の適切な落ち込みを図りつつ歩行者の滑り止め効果も確保する如きの何れにおいても略一致しており、両意匠間の差異点はその類否判断に与える影響が何れも軽微であって、上述したような両意匠の共通点を凌駕するようなものは求められず、全体として両意匠の類否判断に影響を来すようなものを求め得ない。
即ちイ号意匠は本件登録意匠およびこれに類似する意匠の範囲
に属するものと言わざるを得ず、請求の趣旨通りの判定を求めるものである。
第2.被請求人の答弁
1.被請求人は、「イ号意匠(甲第8号証の3枚目下段に「乗り入れタイプ」として掲載された意匠)は、登録第1052932号意匠の類似範囲に属さない、との判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし第10号証を提出した。
2.答弁の理由
(1)請求人が請求の理由(2)で主張する本件登録意匠の構成について答弁する。
A.の長方形状ブロックの長手方向に内孔を貫通した側溝用ブロックないし排水用ブロックは、乙第1号証から乙第4号証に示すように、本件意匠の出願前に周知である。
B.の頂辺が大径で底辺が小径とされた縦長の排水内孔は、乙第2号証に示すように、本件意匠の出願前に周知である。
C.頂面中央部が若干低くなるように対向した傾斜頂面は、乙第1号証第1、第2、第9及び第10図並びに乙第4号証に示すように、本件意匠の出願前に周知である。
D.上面部に各列所定数の方形突出模様を配設したものは、乙第5号証に示すように、本件意匠の出願前に周知である。この点は、本件意匠登録出願に対する拒絶査定において、「ブロック上面にタイル模様を施すことは、本願意匠の属する側溝ブロックの分野では普通に行われていることであり、本願意匠のようにブロック上面全体にタイル模様を施すことに何ら創作的価値は見いだせず、」とされている(乙第9号証)。
E.の上面中間の溝状中央スリットによって排水内孔に対する落し込みを図ることは、乙第1号証第9及び第10図に示されており、本件意匠出願前に周知である。
F.の落し込まれた水をブロックの小径化底面にそって排出すること、その大径化頂面側は、水量が増大した条件下において大量の排水が得られることは、乙第2号証及び乙第4号証に示すように、本件意匠の出願前に周知である。
G.の両端側面部の底部に傾斜した切欠部を対設することは、特に証拠を挙げるまでもなく周知であって、このことは、請求人自らが審判請求理由補充書において、「底部における両端を一部残した切欠きを設けることについても…普通のものである。しかも…両側面底部における一部残した切欠きは…その価値は何もない(平坦底面の場合と同じ)ものである…」と主張しているところでもある(乙第10号証)。
(2)請求人は、本件意匠の拒絶査定不服審判における審判請求理由補充において、本件意匠が登録されるべきであるとする理由を縷々述べているが、その内容は要するに、(イ)ブロックに設けた内孔の断面は、下方が小さい半径で上方が大きな半径の円弧を採用し、内孔両側辺と下方の円弧とは曲線で連続したものであるのに対し上方の円弧は両側辺に対し明確な稜線をもって接続した特異な形状をなしていることにデザイン的な大きい特徴を有していること、(ロ)方形突出模様にしても、唯抽象的に方形突出模様というものではなしに上記したような11×52個という特定の小型で、しかもびっしり密接した状態に配設された特定の状態であることに意匠としての価値があると共に上記したような作用効果を確保するものであって、単なる方形模様となし、査定で挙げてある実開平2-97479号(乙第5号証)のように僅かに4×4個が大きな間隔を採って帯模様的に設けられたこととは全然異なっていること、(ハ)集水孔は、両端および中央部の板面が連結された、分割して配設された特殊なものであること、が本件意匠の特徴であり、登録されるべき理由である、というものである。
(3)審判請求理由補充書における上記(イ)(ロ)の主張を容認して成された登録審決及び類似意匠を考慮したときの意匠の要部は、いずれも整合しており、類否判断の要点となる本件意匠の要部は、審判請求理由補充書で請求人が主張したとおりの、上記(イ)(ロ)の点であると認められる。
(4)そこで、本件意匠の要部である上記(イ)〜(ロ)について、本件意匠とイ号意匠との異同をみると、(イ)について、内孔の断面は、底辺が両側辺と滑らかに連続する円弧辺である点で共通するが、上辺は、本件意匠が両側辺に対し明確な稜線をもって接続した大きな半径の円弧辺であるのに対し、イ号意匠が両側辺に対し曲線で連続した緩い下向きV形辺である点で異なる。(口)について、中央部が若干低くなるように対向した傾斜上面に複数列の方形突出模様が配設されている点で共通するが、本件意匠の突起が11×52個という小型の突起が全面に隙間なくびっしり密接した状態に配設されているのに対し、イ号意匠では一見して正方形と認められる大きさの突起が 6×36個配置されてタイル模様を形成している点、及び、上面幅方向中央に方形突起の略2列分に相当する幅広い溝状の平坦面が形成されて上面のタイル模様が左右に分割されている点で異なる。(ハ)について、内孔に通ずるスリットが長さ方向両側に対設されている点で共通する。と認められる。
上記(イ)(ロ)における相違点は、意匠の要部の相違点であり、需用者がその相違を明確に認識することができる相違点である。従って、需用者が本件登録意匠とイ号意匠とを彼我混同する虜は全くなく、イ号意匠が本件意匠に類似しないことは明らかである。
(5)以上のことから明らかなように、請求人の主張は、すでに公知ないし周知事項に属することを本件意匠の特徴であるかの如く繰返し主張し、本件意匠とイ号意匠との要部の形状ないし模様を対比してその異同を論ずることなくイ号意匠が本件意匠の類似範囲に属することを主張するに留まるもので、その結論には全く理由がない。
前述したように、本件意匠とイ号意匠は、その要部における形状ないし模様を異にし、その相違は看者が注意を持って観察する部分における明確でかつ特徴的な相違であることが明らかであるから、イ号意匠は本件意匠に類似しないことは明らかである。よって、答弁の趣旨通りの判定を求めます。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠公報、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成5年11月25日の出願に係り、平成11年7月23日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「水路構成用ブロック」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、全体を、内部に流路を形成し、所定の長さを有する断面縦長長方形状の管状体とし、各部の具体的な態様は、(ア)上面の態様について、長手方向に沿って対向する緩やかなV字状の傾斜面を形成し、その中央部の長手方向に細長いスリットを2個設け、そのスリットを除いてその余全体に僅かに突出する一辺の大きさが上面全幅の約11分の1の正方形状の突部を僅かな間隔をあけて縦横に規則的に配列し、(イ)両側面の下方の態様について、下方約3分の1を両端部及び中央部にリブ状の余地部を残して、底面に向けて斜状に切り欠き、側面視横長長方形状の凹部を並列に形成し、(ウ)内部の流路の形状について、上辺を緩やかな弧状、左右辺から下方を略U字状に形成し、上辺と左右辺は明確な稜線で接続したものとし、(エ)両端面部の流路の周囲には、4隅を面取りした略長方形状の細幅凹溝を設けている。
2.イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出した被請求人発行のカタログ「AQUA DRAIN(スリット側溝)」第2/14頁(第3枚目)下段所載の写真版及び図面によって表された「乗り入れタイプ」の意匠であって、意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とし、その形態については、次のとおりとしたものである(別紙第2参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、全体を、内部に流路を形成し、所定の長さを有する断面縦長長方形状の管状体とし、各部の具体的な態様は、(ア)上面の態様について、長手方向に沿って対向する緩やかなV字状の傾斜面を形成し、その中央部の長手方向に細長いスリットを2個設け、そのスリット及び中央部寄りの長手方向に細幅帯状に形成した平坦面部を除いてその余全体に僅かに突出する一辺の大きさが上面全幅の約8分の1の正方形状の突部を僅かな間隔をあけて縦横に規則的に配列し、(イ)両側面の下方の態様について、下方約3分の1を両端部及び中央部にリブ状の余地部を残して、底面に向けて斜状に切り欠き、側面視横長長方形状の凹部を並列に形成し、(ウ)内部の流路の形状について、上辺を緩やかな逆V字状、左右辺から下辺部を略U字状に形成し、上辺と左右辺は小さな弧状で接続し、下辺部は、中央がやや尖ったものとし、(エ)両端面部の流路の周囲には、流路の左右辺から下辺に沿って略U字状の細幅凹溝を設けている。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠は共に雨水等の水路を連結して構成するために使用される一単位のブロックであるから共通している。
(2)形態については、両意匠は、全体を、内部に流路を形成し、所定の長さを有する断面長方形状の管状体とした基本的構成態様が共通するものである。
また、各部の具体的な態様において、(ア)上面の態様について、長手方向に沿って対向する緩やかなV字状の傾斜面を形成し、その中央部の長手方向に細長いスリットを2個設け、その余のほぼ全体に僅かに突出する比較的小さな正方形状の突部を僅かな間隔をあけて縦横に規則的に配列し、(イ)両側面の下方の態様について、下方約3分の1を両端部及び中央部にリブ状の余地部を残して、底面に向けて斜状に切り欠き、側面視横長長方形状の凹部を並列に形成し、(ウ)内部の流路の形状について、上辺を緩やかに膨出させ、左右辺から下辺部を略U字状に形成し、(エ)両端面部の流路の周囲には、細幅凹溝を設けた態様が共通するものである。
一方、各部の具体的な態様において、以下の点に差異が認められる。
(a)上面の正方形状の突部について、本件登録意匠は、正方形状の突部をスリットを除いてほぼ全体に配列しているのに対して、イ号意匠は、スリット及び中央部寄りの長手方向に細幅帯状に形成した平坦面部を除いてその余全体に配列している点、(b)内部の流路の形状について、本件登録意匠は、上辺を緩やかな弧状とし、上辺と左右辺を明瞭な稜線で接続しているの対して、イ号意匠は、上辺を緩やかな逆V字状とし、上辺と左右辺は小さな弧状で接続し、下辺部を中央がやや尖ったものとしている点、(c)両端面部の流路の周囲に設けている細幅凹溝の形状が、本件登録意匠は、4隅を面取りした略長方形状であるのに対して、イ号意匠は、流路の左右辺から下辺に沿った略U字状である点。
(3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
まず、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、この種物品分野においては、本件登録意匠の出願前に見受けられるものであるが(例えば、乙第3号証の意匠登録第703304号の意匠、乙第4号証の意匠登録第736714号の意匠)、意匠全体に係るところであり、骨格的要素となるものであるから、類否判断に影響を与えるものと認められる。
次に、両意匠の具体的な態様において共通するとした(ア)ないし(エ)の各点が両意匠の類否判断に及ぼす影響についてみると、共通点(ア)のうち、まず、上面の長手方向に沿って対向する緩やかなV字状の傾斜面を形成し、その中央部の長手方向に細長いスリットを2個設けた点については、スリットは1個であるが、同様の態様のものが、例えば、乙第1号証の実開昭47-30529号公開実用新案公報に記載の第9図及び10図の排水用ブロックに見られるように、本件登録意匠の出願前に見受けられるものであるから、類否判断を左右する要素としては、微弱なものである。次に、上面ほぼ全体に僅かに突出する比較的小さな正方形状の突部を僅かな間隔をあけて縦横に規則的に配列した点について、被請求人は、乙第6号証(公開実用平成2-97479号の明細書)により、ブロック上面に複数の方形突出模様を配置することは自明の事項に過ぎないと主張するが、意匠は、個別の形状、配置の態様等を単に概念的に採り上げて判断すべきものでなく、あくまでもそれらが具体的に表された態様を意匠全体として比較検討し、類否判断をするのが相当である。そうすると、乙第6号証に記載された側溝用ブロックの上面の具体的な態様と本件登録意匠の態様を比較すると、乙第6号証の正方形状の凸部の大きさ、その間隔がいずれも本件登録意匠よりも大きい点、また、その正方形状の凸部の配置が、乙第6号証は、両端部長手方向にやや大きな余地部を残して中央部のみに配列しているのに対して、本件登録意匠は、ほぼ全体に配列している点において異なるものである。したがって、本件登録意匠のように、僅かに突出する比較的小さな正方形状の突部を僅かな間隔をおいて縦横に規則的に上面ほぼ全体に配列した態様は、被請求人が提出した乙第6号証には見られないこと、また、それ以外に本件登録意匠の上面の態様が、本件登録意匠の出願前に見受けられないことから、本件登録意匠の特徴といえるものであり、また、この種物品の最終設置状態において露呈する部分は上面であるから、上面が最も看者の注意を引くところとするのが相当であることを考慮すると、この点は、類否判断に及ぼす影響は大きいものである。共通点(イ)については、下方約3分の1を底面に向けて斜状に切り欠いたものが、乙第2号証の実開昭59ー47789号公開実用新案公報記載の第1図に見られること、また、両端部及び中央部にリブ状の余地部を残して切り欠いて凹部を並列に形成したものが、実開平2-33886号の公開実用新案公報記載の第1図及び第2図(別紙第3参照)に見られること、さらに、当該部位が側面の下方で、やや見えにくい部位であることから、本件登録意匠の斜状に切り欠いた点は、さほど評価することができないものであり、この点は、類否判断を左右する要素としては、微弱なものである。共通点(ウ)については、本件登録意匠と同様のものが、本件登録意匠の出願前に、実開昭62-176277号公開実用新案公報記載の第1図(別紙第4参照)に見られることから、類否判断を左右する要素としては、微弱なものである。共通点(エ)については、この種物品において、両端面部の流路の周囲に細幅凹溝を設けることは、本件登録意匠の出願前より普通に見受けられ、また、凹溝が細幅で視覚的効果が小さいことから、意匠上格別評価することができず、類否判断を左右する要素としては、微弱なものである。
(4)一方、差異点については、(a)上面の正方形状の突部の態様の差異であるが、この差異は、中央部寄りの細幅帯状に形成した平坦部の有無であるが、イ号意匠の該平坦部は、上面全体に占める割合が小さいものであり、その余は、比較的小さな正方形状の突部を僅かな間隔をあけて縦横に規則的に配列していることから、両意匠の共通するとした上面のほぼ全体に比較的小さな正方形状の突部を僅かな間隔をあけて縦横に規則的に配列した態様に包摂される程度の部分的な差異にすぎないものであり、類否判断を左右する要素としては、微弱なものといわざるを得ない。(b)内部の流路の形状の差異であるが、すなわち、上辺、上辺と左右辺との接続部及び下辺中央部の形状の差異であるが、イ号意匠の形状と同様のものが、例えば、平成4年6月25日特許庁意匠課受入れの国内カタログ「クリーン側溝」(関東帝国ヒューム管株式会社発行)第2頁所載の側溝管ブロックの流路の形状(別紙第5参照)に見られること、また、流路の形状は、ブロックを埋設した状態では見えなくなることから、その態様は、上面の態様に比べて類否判断に及ぼす影響は小さいものであることを考慮すると、格別評価することができないものであるから、両意匠を全体として観察すると、これらの差異は、上辺を緩やかに膨出させ、左右辺から下辺部を略U字状に形成した共通する態様に包摂される程度の部分的な差異にすぎず、類否判断を左右する要素としては、微弱なものというほかない。
(c)両端面部の凹溝形状の差異であるが、両意匠共に、凹溝が細溝であり、ほぼ流路の形状に沿っていることから、意匠全体として観察した場合、全体に及ぼす視覚的効果は小さいものであり、類否判断を左右する要素としては、微弱なものといわざるを得ない。
(5)以上を総合すれば、両意匠の基本的構成態様は、両意匠の類否判断に影響を与えるものと認められ、具体的な態様における共通点(ア)のうち、上面の長手方向に沿って対向する緩やかなV字状の傾斜面を形成し、その中央部の長手方向に細長いスリットを2個設けた点、及び(イ)ないし(エ)は、両意匠の類否判断を左右する要素としては微弱なものに止まるものの、共通点(ア)のうち、上面に配列した正方形状の突部の態様の共通点は、本件登録意匠において新規な態様であって、類否判断に及ぼす影響が大きいものであるから、それらの共通点が相俟って両意匠の類否判断を左右する要素といわざるを得ないのに対し、両意匠の具体的な態様における差異点は、いずれも類否判断を左右する要素としては微弱なものであるから、両意匠を全体として観察した場合、いまだ類否判断に与える影響は小さいものといわざるを得ない。
そうすると、意匠全体として観察した場合、両意匠間における前記の共通点は、前記差異点を大きく凌駕して、看者に共通の美感を与えているものと認められる。
(6)したがって、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても、イ号意匠は、本件登録意匠の新規な態様、その他の共通する基本的構成態様及び具体的な態様と相俟って形成したまとまりにおいて共通しているものであるから、本件登録意匠に類似しているものというほかない。
4.むすび
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるから、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2004-02-16 
出願番号 意願平5-35416 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (L2)
最終処分 成立  
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 内藤 弘樹
西本 幸男
登録日 1999-07-23 
登録番号 意匠登録第1052932号(D1052932) 
代理人 西 孝雄 
代理人 白川 一一 

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