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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H4
管理番号 1096440 
審判番号 不服2003-5905
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-09 
確定日 2004-04-12 
意匠に係る物品 デジタルスチルカメラ 
事件の表示 意願2001- 35265「デジタルスチルカメラ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願の意匠
本願は、平成13年(2001年)11月30日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願の意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「デジタルスチルカメラ」とし、その形態は、願書に添付した図面代用写真により現されたとおりのものである(別紙第一参照)。
第2 引用の意匠
これに対して、原審において、本願の意匠が類似するとして、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用の意匠」という。)は、本願の出願前、日本国特許庁が平成12年(2000年)4月10日に発行した意匠公報に記載の意匠登録第1066823号の類似第1号の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「電子スチルカメラ」とし、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第二参照)。
第3 両意匠の対比
本願の意匠と引用の意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。
すなわち、両意匠は、全体を、奥行きの浅い横長略直方体形状の筐体として、前面視右上角を傾斜面状に切り欠き、前面の左側を前方に膨出させてグリップ部とし、前面にレンズとファインダー、背面に矩形表示部、ビューファインダー、及び操作ボタン、上面にシャッターボタンを設けた基本的な構成態様において共通し、また、各部の具体的な態様においても一部共通している点はあるが、一方、具体的な構成態様において、主に、以下の点に差異がある。
(1)筐体右上角の切り欠きの態様について、本願の意匠は、筐体の高さの略二分の一にわたる幅広の傾斜面を形成し、その前面側の縁をやや幅広に面取りしているのに対して、引用の意匠は、筐体の高さの略六分の一程度の幅狭な傾斜面として、前面側の縁に面取りを設けていない点、
(2)上面の態様について、本願の意匠は、上面の右側略三分の二を略四角錐台形状の突出部として、左側略三分の一の平坦面にシャッターボタンと偏平円柱状のモードダイヤルを設けているのに対して、引用の意匠は、上面の略中央から右端寄りにかけて、奥行きの前側略半分のみを緩やかな弧面状に膨らませ、その余を周囲の縁に面取りを設けた平坦面として、左側にシャッターボタンのみを設けている点、
(3)レンズ周囲の台座部について、本願の意匠は、レンズ周囲を短円筒状
に前方へ突出させた台座部としているのに対して、引用の意匠は、レンズ周囲及びレンズ上方の筐体上端までを一体的に前方へ突出させた、前面視略方円形状の台座部としている点、
(4)前面のファインダーの態様について、本願の意匠は、外形を矩形状としたものを、レンズの上方に筐体とほぼ同一面状に設けているのに対して、引用の意匠は、円柱状に突出した形状としたものを、レンズの右斜め上方に設けている点、
(5)フラッシュの態様について、本願の意匠は、右側面の上側に収納可能に設けているのに対して、引用の意匠は、前面のレンズ上方にフラッシュ窓を固定して設けている点、
(6)筐体の部材構成について、本願の意匠は、前面部材、後面部材とその間に挟まれた中央帯状部分とで、前後に三層の部材構成として、中央帯状部分を暗調子としているのに対して、引用の意匠は、前後の層構造としていない点、
第4 両意匠の類否の判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討すると、まず、両意匠に共通するとした基本的な構成態様及び各部の具体的な態様の一部については、本願の意匠の出願前、この種物品の属する分野において、他にも見受けられる態様であって格別看者の注意を引くものとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、さらに、それらの共通点を纏めても、特段際立った特徴を奏するとはいい難いものであるので、類否判断に及ぼす影響はなお微弱の域を超えるものではない。
一方、前記各差異点について検討すると、
(1)の筐体右上角の切り欠きについては、本願の意匠が、片側の角部に広い傾斜面を形成しているのに対して、引用の意匠は、上面周囲の縁のほぼ全体に設けた面取りの一部を成す程度の幅狭な傾斜面を設けているにすぎず、この種物品の目立つ部分において形態が異なるものであり、筐体全体の基本的な形態上の基調を別異のものとし、看者の注意を十分に惹くものであるから、類否判断に影響を及ぼすものといえる。
(2)の上面の態様については、本願の意匠の略四角錐台形状の突出部が、この種物品の比較的目立つ部分である上面において、広い面積を占めて評価すべき形態上の構成要素を成しているのに比して、引用の意匠の弧面状の膨出は、上面の一部を僅かに膨出させた程度の小さなものであって、上面の全体を平坦面状としている基調に影響を与えるほどの要素ではなく、上面左側の偏平円柱状ダイヤルの有無の差異も相まって、上面全体の基本的な形態の基調を異なるものとしており、類否判断に影響を及ぼすものといえる。
(3)ないし(5)のレンズ周囲の台座部、ファインダー、及びフラッシュについては、この種物品において一際注目される前面の態様について、本願の意匠がレンズ周囲のみを円筒状に突出させているにすぎないのに対して、引用の意匠が筐体上端までを一体的に突出させ、さらにレンズ右上方に円柱状のファインダーも設けた複雑な突出態様としている点で、形態上の基調を異にするものであり、ファインダーの位置及び形状の違い、フラッシュ窓の有無も勘案すると、注視される前面の態様を特徴付け、形態全体の基調に影響を与える差異であって、看者の注意を十分惹くものであるから、類否判断に影響を及ぼすものといえる。
(6)の筐体の部材構成については、本願の意匠が、筐体を前後に三層の部材構成とすると共に、中央帯状部分を暗調子として構成を際立たせていることにより、本願の意匠と引用の意匠との間に顕著な視覚的差異が生じており、全体の基調に影響を与えているので、類否判断に影響を及ぼすものといえる。
そうすると、前記(1)ないし(6)の差異点は、何れも、両意匠に共通するとした態様を翻す程の印象を看者に与えるものであり、その余の差異点と相俟って、両意匠の醸し出す形態全体の印象を異にするほどの差異感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は共通するが、形態において、差異点が両意匠の共通点を凌駕して類否判断を左右するという外ないから、本願の意匠は、意匠全体として観察すると、引用の意匠に類似する意匠とはいえない。
第5 むすび
本願の意匠は、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願の意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2004-03-30 
出願番号 意願2001-35265(D2001-35265) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 鍋田 和宣
永芳 太郎
登録日 2004-05-14 
登録番号 意匠登録第1210361号(D1210361) 
代理人 西野 吉徳 

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