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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L5
管理番号 1096466 
審判番号 無効2002-35529
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-12-13 
確定日 2004-04-07 
意匠に係る物品 建屋用枠付きドア 
事件の表示 上記当事者間の登録第1028842号「建屋用枠付きドア」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1028842号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯及び本件登録意匠
本件登録意匠は、平成8年8月26日に出願され、その後、平成10年10月23日に意匠権の設定の登録がなされ、平成11年1月6日に意匠公報が発行された登録第1028842号意匠(意願平8-25406号)であり、当初の願書及び願書添付の図面(別紙1参照)によれば、その意匠は、意匠に係る物品「建屋用枠付きドア」の形状に関する創作物であって、その形態を同図面記載のとおりとしたものであるが、設定の登録前、平成10年7月8日に手続補正書を提出し、当初の図面を補正したものである(別紙2参照)。
当初の図面と補正後の図面を対比して補正内容を検討すると、補正後の意匠は、消火器収容箱上部の形態(正面図及び背面図参照)を変更し、ドアパネル及びガラスを嵌め込んだ検針用覗窓の断面形状を新たに開示し、検針用覗窓のガラスについては、薄墨による彩色を新たに施したものであることが図面上明らかであるため、この補正は、当初の図面の要旨を変更するものである。
したがって、意匠法第9条の2の規定により、本件登録意匠は、該手続補正書を提出した平成10年7月8日に出願したものとみなすべきものであり、補正後の図面によれば、その意匠は、意匠に係る物品「建屋用枠付きドア」の形状及び色彩(覗窓部に限る)の結合に関する創作物であると認められる。
2.無効の理由
当審が通知した意匠登録無効の理由は次のとおりである。
本件登録意匠は、その出願日とみなされる平成10年7月8日前、平成8年12月23日〜29日に奈良県広域地場産業振興センター常設展示コーナーにおいて、平成8年12月6日〜8日に奈良ファミリー6F円形ドーム広場においてそれぞれ展示され、その後、(財)奈良県広域地場産業振興センターが発行したカタログ「96年 なら・グッドデザイン選定品カタログ」に掲載された「消火器箱付きPS金枠」の意匠に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条の規定により、意匠登録を受けることができないものである。
したがって、その意匠登録は、同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
3.被請求人の主張
被請求人は、平成15年10月31日付で意見書を提出し、概ね次のとおり主張している。
(1)平成10年7月8日に提出した手続補正書が意匠の要旨を変更するものであれば、法上、審査官が決定を以てその補正を却下すべきところ、意匠の要旨を変更しないと認定されたものである。
(2)出願人は、当初の願書及び図面の記載では、覗窓がドアを切除して空所としたものと認定される恐れがあると危惧し、空所ではなく、常識的に電気メーター等を視認し易い透明なガラスを覗窓に嵌め込んだものであることを願書の意匠の説明の項及び参考図を以て明白にしたものであり、係る補正は意匠の要旨を変更するものではない。
(3)本手続補正書において、覗窓のガラスを薄墨による彩色を施した意匠の一部であると即断するのは不当である。
(4)立証された「96年なら・グッドデザイン選定品カタログ」の「消火器箱付きPS金枠」は、そのドア前面に設けられている縦長の矩形部分は不透明で且つ矩形網目を連続させた金網入りの窓硝子形状を呈し、防犯的には有効ではあるが、本来の機能である各種メーターの検針用としては不向きな、本件登録意匠に係る物品とは非類似物品であり、非類似物品間について意匠の類否判断をするのは不当である。
4.当審の判断
本件登録意匠と無効の理由に引用した意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、該物品の形態については、以下に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)縦長の長方形状枠内に蝶番を介して扉を組み込んだ片開き状の枠付きドアであって、扉の上辺寄り中央に円形孔を形成し、下半部の中央から右端にかけて、周囲を細く縁取った縦長の消火器箱を配置し、その左側に該消火器箱の上下と水平に端部を揃えた上下一対の矩形覗窓を配置し、左端寄り中央にドアノブを設け、扉の下辺に沿って横幅一杯に多数の短い縦長スリットを等間隔に並列した全体の基本構成。
(2)消火器箱の形態について、正面の縦横比を略5:2程度とし、開口部上方に一定幅の幕板を設け、その下方に正面を縦長に開口させて奥部を平面視台形状にすぼめた消化器収納部を形成。
(3)覗窓の縦横比を略2:1程度としている点。
[相違点]
(1)上下の覗窓の中間部におけるスイッチ部の有無について、本件登録意匠は、該部位に正面視縦長楕円形のスイッチ部を設けているのに対し、引用意匠は、該部位に何も設けていない点。
(2)覗窓の具体的な仕様について、本件登録意匠は、覗窓全体に正面図等の彩色部に見られるスモークガラス様の透明ガラスを嵌め込み、背面側に設けた取付枠で固定しているのに対し、引用意匠は、覗窓にガラスを嵌め込んでいるか否か等、具体的な仕様が判然としない点。
(3)背面の形態について、本件登録意匠は、平成10年7月8日付手続補正書の図面に記載されたとおりの形態であるのに対し、引用意匠は、背面形態が判然としない点。
(4)蝶番の取付位置及びドアの縦横比について、本件登録意匠は、中間に位置する蝶番を消火器箱上端部の下方に位置づけ、引用意匠に比べてドアの横幅の比率をやや大きめにしているのに対し、引用意匠は、中間に位置する蝶番を消火器箱上端部の上方に位置づけ、本件登録意匠に比べてドアの横幅の比率をやや小さめにしている点。
これらの共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す全体の基本構成は、意匠全体の骨格を成すものであるとともに、共通点(2)に示す消火器箱の形態における共通性を併合することによって、両意匠の支配的な基調を形成し、さらに共通点(3)に示す覗窓の縦横比における共通性も加わって、観察者に共通の美感を起こさせるとともに、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。
これに対し、相違点(1)のスイッチ部の有無の差異については、本件登録意匠のスイッチ部が意匠全体から見れば微細な部分であって、本件登録意匠を特徴づけるものとは成し得ないものであるため、その差異は、上記共通点に基づく圧倒的な類似性を凌ぐものではない。
つぎに、相違点(2)の覗窓の具体的な仕様における差異については、共通点(1)及び(3)に示すところの、覗窓の配置及び寸法比率が両意匠の支配的基調を決定づける要素の一部を構成しているのに比べ、本件登録意匠の覗窓におけるスモークガラス様の透明ガラスのもたらす視覚効果は月並みなものであり、窓の開口部にガラスを嵌め込んだ形態も窓部のありふれた仕様であるため、引用意匠の覗窓の具体的な使用が判然としない点を考慮しても、全体的に見ればその差異は微弱であって、上記共通点に基づく圧倒的な類似性を凌ぐものではない。
つぎに、相違点(3)の、引用意匠の背面形態については、本件登録意匠の背面形態が正面形態に重点を置くこの種の折板構造ドアにおいては付随的に出現する形態の域を出ないものであるため、意匠の構成要素としては格別評価できず、また、この種のドアの背面側が通常では人目に触れにくい状態にあるとともに、引用意匠のドアの背面側にも同様の形態が出現することが不可避であると推量されることからすれば、引用意匠のドアの背面形態が判然としない点を考慮しても、その差異は両意匠の類否を左右するものとは成し得ないものである。
また、相違点(4)の蝶番の取付位置及びドアの縦横比における差異については、それぞれの差異が外観上の視覚効果及び技術的改変の点からみても僅かなものであるため、両意匠の類否を左右するものとは成し得ないものである。
さらに、これらの相違点に係る本願意匠の形態が相俟って表出する視覚効果を勘案しても、上記共通点からもたらされる両意匠の圧倒的な類似性を凌ぐほどの差異を認めることはできない。
すなわち、本願意匠は引用意匠に類似するものと認められる。
なお、被請求人提出の意見書中、3.(1)の、審査官が当該補正書を却下しなかったことは意匠の要旨を変更しないと認定されたものであるとする点については、審査官の認定はともかくとして、前記1に示すように、意匠権の設定の登録があった後に願書の記載又は願書に添付した図面についてした補正がこれらの要旨を変更するものと認めらる本件登録意匠は、当該手続き補正書を提出したときに出願したと見なすべきものであることは、意匠法第9条の2に規定するとおりである。
また、3.(2)の、覗窓が空所ではなく、電気メーター等を視認し易い透明なガラスを覗窓に嵌め込んだものであることを願書の意匠の説明の項及び参考図を以て明白にした補正は意匠の要旨を変更するものではないとする点については、前記1に示すとおりであって、当初の願書の記載及び添付図面に記載されていない形態が新たに開示されている当該手続補正書による補正は、願書に添付した当初の図面の要旨を変更するものであることは明らかである。
また、3.(5)の、引用意匠に係る物品と本件登録意匠に係る物品は非類似物品であり、非類似物品間で意匠の類否判断をするのは不当であるとする点については、上記のとおりであって、両者は一致するものである。
したがって、被請求人の主張は採用できない。
5.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条の規定に違反して登録を受けたものであるから、その意匠登録は、同法第48条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2004-02-09 
結審通知日 2004-02-13 
審決日 2004-02-25 
出願番号 意願平8-25406 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (L5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 足立 光夫遠藤 京子 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 岩井 芳紀
江塚 尚弘
登録日 1998-10-23 
登録番号 意匠登録第1028842号(D1028842) 

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