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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない J1
管理番号 1101317 
審判番号 無効2003-35320
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-29 
確定日 2004-07-12 
意匠に係る物品 標尺 
事件の表示 上記当事者間の登録第0994608号「標尺」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、意匠登録第994608号の意匠(以下「本件登録意匠」という)を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由として審判請求書に記載のとおりの以下の主張をし、証拠方法として、甲第1号証、参考資料1乃至12及び別紙1,2の書証を提出した。
本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内で頒布された刊行物である甲第1号証に記載された意匠(以下「甲号意匠」という)に類似する意匠であるから意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をしたものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7年12月29日に意匠登録出願し、平成9年6月27日に設定の登録がされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「標尺」とし、その形態を別紙第1のとおりとするものである。
2.甲号意匠
甲号意匠は、平成5年5月25日特許庁発行の刊行物である意匠公報に掲載の意匠登録第868475の類似1号の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「測量用帯尺」とし、その形態は別紙第2に示すとおりのものである。
3.本件登録意匠と甲号意匠との比較検討
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について以下に示す共通点及び差異点が主として認められる。
すなわち、共通点として、(1)縦長平板状の標尺であって、正面及び背面に目盛線と目盛数字を付し、長手方向の両端に金具を取り付けてなる基本構成、(2)目盛線について、側縁に一定間隔毎に、先端を先尖三角状とする半裁矢印状の目盛線を配してこれを一単位とし、この間にさらに4本の目盛線を櫛目状に配して、その下から3番目の目盛線の内側に三角形の小さい目印を付したものとし、なお背面においてはこの目盛線を右側縁のみに表している点、(3)目盛数字について、目盛線の余幅中央に大きく「1」から「9」までのゴシック体状の数字を、正面においては縦向きに、背面においては横向きに、下端より上方に向かって単位毎に順次繰り返して表し、10単位毎に1桁の加算表示としている点、(4)目盛線の余地面につき、正面においては2単位毎に、背面においては10単位毎に暗調子で表した点、(5)上端の金具を、断面逆U字状の上下狭幅のものとし、下端の金具をこれより稍幅広の、中央に短い舌状片を横水平に突出させたものとした点、が認められる。
一方差異点として、(イ)全体の長さについて、本件登録意匠は20単位であるのに対して甲号意匠は50単位である点、(ロ)正面の目盛線について、本件登録意匠は正面につき左右両側縁に表しているのに対して、甲号意匠は右側縁のみに表している点、(ハ)正面の暗調子の態様について、本件登録意匠は、左右の目盛線及び目印との間に一定幅の余白を残して、両側辺を凹凸状として2単位毎に目盛数字を取り囲む態様で枠取状に表し、更に枠取内において、目盛数字の外周に一定幅の余白を設けて枠取り、その内側の目盛数字を濃調子で表している(10単位毎の加算表示を除く)のに対して、甲号意匠は、左側縁に余白がなく、暗調子部が標尺の左側端に及び、右側辺は目盛線の櫛目状の部分の先端との間に一定幅の余白を残して略直線状に表し、また暗調子部分の目盛数字を反転した白抜き状としている点、(ニ)下端の金具について、本件登録意匠は、舌状片が回動可能の側面視L字状のものであるのに対して、甲号意匠は、舌状片が固定された側面視逆T字状のものである点、が認められる。
そこで上記の共通点と差異点につき、類否判断に及ぼす影響を検討する。
まず、両意匠の共通点につき、(1)の点については、この種の物品においては不可欠の形態要素、或いは極普通にみられる形態要素で、(2)の点についても、目盛線として、先端が先尖三角状の半裁矢印状のものを一定間隔毎に一単位として配し、その間に櫛目状に目盛線を配し、更にその中間に小さい目印を付す態様は、目盛線の態様として先行意匠に広く認められ(実開昭62-3011号、意匠登録第751748号、意匠登録第595482号の類似1号)、またこれを標尺の片方の側縁にのみ配することも普通である。更に(3)の点についても、目盛線の余幅中央に大きくゴシック体状の数字を順次表すこと、またこれを標尺の一方の面において縦向きとし、他面において横向きとすることも広く認められる(請求人提出の参考資料1乃至12)。更に(4)の点についても、標尺の分野においては、所定の間隔毎に暗調子と明調子を繰り返して表すことも極普通に行われており、またその単位についても適宜の単位が選択されており(請求人提出の参考資料8ないし12、実開昭61-17602号、実開昭63-19210号、意匠登録第595482号の類似1号等)、また標尺の一方の面を2単位毎とし他面を10単位毎としたものも先行意匠に認められる。(平成6年6月21日タジマツール営業部発行の「7タジマツール ホットニュース 雨・錆なんのその」第2,3頁掲載の製品名「シムロンロッド」とする標尺)。更に金具についての(7)の共通点も、小さな部分での共通点で、しかも両意匠のものとも独自性はない(実開昭63-19210号、意匠登録第751748号)。即ち両意匠の共通点は何れも従前態様の域を出ず、類否判断に及ぼす影響をさほど大きく評価することができず、これら共通点をもって直ちに両意匠の類否を決定付けるまでのものとすることができない。
一方差異点について、(イ)の点は、この種の標尺においては、長さ、或いは単位数の差異は形態上の特徴としてさほど大きく評価できず、また(ニ)の点についても、前述のとおり限られた部分についての差異に止まる。
しかしながら(ロ)及び(ハ)の差異、とりわけ(ハ)の、正面の暗調子の態様について、本件登録意匠が、左右の目盛線及び目印との間に一定幅の余白を残して、標尺の幅中央に、目盛数字を取り囲む態様で枠取状に表している点は、(ロ)の目盛線の配置の差異と一体化して、両意匠の間に、正面全体が左右対称に構成されているか非対称に構成されているかの構成上の違いを強く印象付けており、さらに、本件登録意匠の暗調子部の表現の具体的な態様、即ち、全体を枠取状とし、目盛線及び目印の先端に沿う態様で枠取りの四隅が鈎型に切り欠かれ、枠取りの左右両辺に各々3箇所の凹部が左右対称状に形成されている点、はそれ自体が看者の注意を惹くと共に正面全体の左右対称性を更に強調し、また枠取内においても目盛数字の外周に一定幅の余白が枠取られてその内側に目盛数字が表されている点と相関連して、本件登録意匠の特徴をよく表すところに係わり、これら暗調子の部分の具体的な表現についての両意匠の差異は、正面の目盛り線の配置の差異、また暗調子部分の目盛数字の反転表現の有無等と相関連して、全体として、看者に両意匠の別異感を強く印象付けている。
そして前述のとおり、両意匠の共通点は、先行意匠に極普通にみられる態様の域を出ず、類否判断に及ぼす影響を大きく評価できず、これに対して両意匠の差異は、本件登録意匠の特徴をよく表すところに係わり、両意匠の別異感を看者に強く印象付けており、共通点の類否判断に及ぼす影響を凌駕するに十分で、両意匠は全体として類似するものとすることができない。
以上のとおりであるので、本件登録意匠は、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するとしてその登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2004-05-18 
結審通知日 2004-05-20 
審決日 2004-06-01 
出願番号 意願平7-39640 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (J1)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鍋田 和宣 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 1997-06-27 
登録番号 意匠登録第994608号(D994608) 
代理人 木村 高明 
代理人 杉村 興作 

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