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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効としない D2
管理番号 1101321 
審判番号 無効2004-35051
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-01-30 
確定日 2004-07-12 
意匠に係る物品 ロッカー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1163602号「ロッカー」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、登録第1163602号意匠の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
本件登録意匠は、その出願前に日本国内において甲第1号証〜甲第7号証(審決注:「甲第7号証」は本件登録意匠公報であるから、「甲第6号証」の誤記と認められる。)により公然知られた意匠に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、よって本件意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定により無効にされるべきである。
すなわち、本件登録意匠に係る「ロッカー」は、正面から見て縦長の長方形をなす一の筺体による収納部を、高さ方向中間の上方寄りにおいて上、下に2分し、2分した上方部分を左右方向で2つの収納区画に等分すると共に、2分した下方部分を左右方向で3つの収納区画に等分して、各収納区画の前面に夫々に扉を設けたことを基本形態とする5人用ロッカーであり、各扉の前面側には、扉開閉用の丸い「ハンドル」と「シリンダー錠」を設けると共に、「表示窓(カード差し込み部)」と「名刺(ネームカード等)入れ」が所望の位置に配置された形態が付与されている。しかしながら、本件登録意匠の上記基本形態は本件登録意匠の出願前に日本国内において刊行された甲第1号証に記載された5人用ロッカーの基本形態と共通すること、ロッカーの扉に設けられている丸い「ハンドル」、「表示窓(カード差し込み部)」、「テンキー」、「名刺入れ」はいずれも甲第2号証〜甲第6号証により公知のロッカー用付属品であること、並びに、それらの付属品は扉前面に縦列配置するというありふれた手法により配置したものに過ぎないことに鑑みれば、本件登録意匠は当業者が容易に創作できる程度のものに過ぎない。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、要旨以下のとおり主張した。
本件登録意匠の構成は以下のとおりである。
(a)正面視において縦長長方形の筺体の収納部を、上方寄りにおいて上下に2分割し、上方部分を左右2等分に、下方部分を左右3等分にそれぞれ収納区画してそれぞれ前面に扉を設けてなる。
(b)正面視において本体前面の上下両端に、横長の壁面部分を設けてなる。
(c)上方の扉部には、中央において左端に近接した位置に丸いハンドルを、左上端寄り角部分に名刺入れをそれぞれ配置し、その中間部に表示窓を配置するとともに、中央からやや右寄り部分にテンキーを配置し、全体としてこれらの構成要素がL字型になるように構成している。
(d)下方の扉部には、中央において左端に近接した位置に丸いハンドルを、左上端寄り角部分に名刺入れをそれぞれ配置し、ハンドルの上方近くに表示窓を、名刺入れの下方近くにテンキーを設けることにより、構成要素を中央から左寄りにまとめ、下方と右上方において大きく余白を構成している。
(e)上方及び下方の扉部において、名刺入れ・表示窓・ハンドル等の各左端部がほぼ垂直に揃うように構成している。
本件登録意匠の構成は、甲第1号証ないし甲第6号証のいずれにも全く開示されておらず、これらの結合によっては容易に創作し得ないものである。
また、本件登録意匠は公知の形態に基づいて当業者にとってありふれた手法により構成できるとする請求人の主張は、具体的事実に基づいた根拠が全く示されていないため採用できないものである。
そうすると、請求人の主張は、意匠を個々の構成要素に分解し、各構成要素が出願前公知であると主張しているのに等しいが、意匠は分解すれば結局のところ公知形状に帰すのであって、かかる主張が許されないことは当然である。
本件登録意匠は、公知の構成要素を含みつつも、従来意匠に開示されていない新規な構成・配置によって、新たな美感を有する意匠を創作したものであり、出願前の公知形態に基づいて容易に創作できないものであるから、意匠法第3条第2項の規定には該当しない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年4月2日に意匠登録出願をし、平成14年11月22日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1163602号意匠であり、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「ロッカー」とし、その形態を願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(甲第7号証:別紙第1参照)。
すなわち、その形態は、(A)正面視縦長の直方体の前面を開口した筺体の上寄りで上下に2分し、上段を左右に2等分し、下段を左右に3等分して、5個の収納区画を設け、それぞれの前面一杯に片開きの扉を設け、上段扉上方に筺体頂部の前面板が、下段扉下方に筺体底部の前面板が、それぞれ筺体全幅に亘り正面視横帯状の段状に表れる基本態様とし、(B)各扉には、横長矩形状の名札入れ、縦長矩形状のテンキー、横長矩形状の表示窓、縦中央が突出する円形状のハンドル、及び、小円形状のシリンダー錠鍵穴部を配置し、これらの配置構成態様について、(C)各上段扉では、左端寄りにおいて、上端(隅)寄りに名札入れを、中央にハンドルを、その直下にシリンダー錠鍵穴部を、ハンドルの上方近く(ハンドルと名札入れとの中間)に表示窓を、これら全体で縦一列に配置すると共に、ハンドルの右方の中央からやや右寄りにテンキーを配置し、(D)各下段扉では、左端寄りにおいて、上端(隅)寄りに名札入れを、中央にハンドルを、その直下にシリンダー錠鍵穴部を、ハンドルの上方近くに表示窓を、その上方で名札入れの下方近くにテンキーを、これら全体で縦一列に配置したものである。
2.甲各号証
(1)甲第1号証は、平成12年11月27日に特許庁が発行したロッカーについての意匠登録第1092195号公報である(別紙第2参照)。
(2)甲第2号証は、平成2年11月27日に特許庁が発行したスキー収納用ロッカーについての意匠登録第800775号公報である(別紙第3参照)。
(3)甲第3号証は、平成2年11月27日に特許庁が発行したスキー靴収納用ロッカーについての意匠登録第800776号公報である(別紙第4参照)。
(4)甲第4号証は、平成2年12月5日に特許庁が発行したスキー収納用ロッカーについての意匠登録第800775号類似第1号公報である(別紙第5参照)。
(5)甲第5号証は、昭和64年1月6日に特許庁が発行したスキー収納用ロッカーについての意匠登録第751840号公報である(別紙第6参照)。
(6)甲第6号証は、平成10年5月15日に特許庁が発行したロッカーについての意匠登録第1009882号公報である(別紙第7参照)。
3.本件登録意匠の創作容易性について
請求人は、本件登録意匠はその出願前日本国内において甲第1号証ないし甲第6号証により公然知られた意匠に基づいて容易に意匠の創作ができたものである旨主張するので、以下、この点について検討する。
本件登録意匠の形態全体は、前記の(A)ないし(D)の各態様により構成されている。
甲各号証によると、まず、甲第1号証の公報には、正面視縦長の直方体の前面を開口した筺体の上寄りで上下に2分し、上段を左右に2等分し、下段を左右に3等分して、5個の収納区画を設け、それぞれの前面一杯に片開きの扉を設け、下段扉下方に筺体底部の前面板が筺体全幅に亘り正面視横帯状の段状に表れた態様のロッカーの意匠が記載されているから、本件登録意匠の(A)の基本態様のうち、上段扉上方に表れる筺体頂部の前面板の態様以外は本件登録意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
次に、甲第2号証ないし甲第6号証の公報には、縦中央が突出する円形状のハンドルと小円形状のシリンダー錠鍵穴部が記載されており、甲第2号証ないし甲第5号証の公報には、縦長矩形状のテンキーと横長矩形状の表示窓が記載されており、甲第2号証ないし甲第4号証の公報には、横長矩形状の名札入れが記載されているから、(B)の、名札入れ、テンキー、表示窓、ハンドル、及び、シリンダー錠鍵穴部の態様は本件登録意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
さらに、甲第2号証ないし甲第5号証の公報には、扉の左端寄りにおいて、中央寄りにハンドルを、その直下にシリンダー錠鍵穴部を、ハンドルの上方に表示窓を、その上方にテンキーを、これら全体で縦一列に配置した態様が記載されているから、(C)の配置構成態様のうち、表示窓とハンドルとシリンダー錠鍵穴部との配置構成態様、及び、(D)の配置構成態様のうち、テンキーと表示窓とハンドルとシリンダー錠鍵穴部との配置構成態様は本件登録意匠の出願前に公然知られたものと認められる。
以上を総合すると、甲各号証によれば、本件登録意匠は、その形態において、本件登録意匠の出願前に公然知られたものを包含し、当業者が容易に創作をすることができたとする態様を有するものといえる。
しかしながら、そうであるとしても、この種ロッカーの意匠の分野において、基本態様、各扉の構成各部の態様及びその配置構成態様を具体的に決定し、それらの組み合わせにより全体の形態についてどのように具体化するかの選択は多様にあると認められるところ、本件登録意匠の形態について、基本態様及び各扉における構成各部全体の配置構成態様それぞれは、その一部についてのみ本件登録意匠の出願前に公然知られているに止まり、その全体について本件登録意匠の出願前に公然知られたものとする証拠がなく、そして、本件登録意匠は、その創作の過程において、各扉全面の中で構成各部を互いにどのような位置関係で配置構成するかについて創意工夫の結果、各扉における構成各部全体の配置構成態様を具体化し、これらの態様と基本態様の組み合わせにより、一定のまとまりを表出するに至ったものであり、この全体としてのまとまりを形成した点についても、当業者が容易に創作をすることができたとする証拠が認められない。
すなわち、甲各号証に記載の公然知られた態様に基づいて本件登録意匠の創作を試みたとしても、まず、基本態様についても、甲第1号証に記載の意匠の基本態様に対して上段扉上方に筺体頂部の前面板が筺体全幅に亘り正面視横帯状の段状に表れる態様を有するものに改変した上で、次に、各扉に配置する名札入れ、テンキー、表示窓、ハンドル、及び、シリンダー錠鍵穴部の態様を甲第2号証ないし甲第6号証に記載の態様とし、また、各扉における構成各部全体の配置構成態様について、上段扉においては表示窓とハンドルとシリンダー錠鍵穴部との配置構成態様を、下段扉においてはテンキーと表示窓とハンドルとシリンダー錠鍵穴部との配置構成態様を、それぞれ甲第2号証ないし甲第5号証に記載の配置構成態様とし、さらに、上段扉においては残りの名札入れとテンキーを含めた構成各部を、下段扉においては残りの名札入れを含めた構成各部を、互いにどのような位置関係で扉全面において配置構成するかを検討して、各扉における構成各部全体の配置構成態様を具体化する過程を経て、甲第1号証に記載の意匠を大きく改変し、やっと本件登録意匠に至るのであって、本件登録意匠は甲各号証に記載された態様の単なる組み合わせを優に超えるものであるから、本件登録意匠はこれらの態様に基づいて容易に意匠の創作ができたものとは到底いえず、結局、本件登録意匠の形態全体を前記の(A)ないし(D)の各態様により構成した点について当業者が容易に創作をすることができたものとは、提出された証拠のみでは認めることができないから、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当するものではない。
4.結び
以上のとおりであって、請求人の提出した証拠及び主張によっては、意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものとして、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2004-05-14 
結審通知日 2004-05-19 
審決日 2004-06-01 
出願番号 意願2002-8800(D2002-8800) 
審決分類 D 1 11・ 121- Y (D2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 市村 節子
渡邊 久美
登録日 2002-11-22 
登録番号 意匠登録第1163602号(D1163602) 
代理人 樋口 盛之助 
代理人 小泉 良邦 
代理人 三好 秀和 

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