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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 K1
管理番号 1108032 
審判番号 不服2003-24742
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-22 
確定日 2004-10-28 
意匠に係る物品 工具吊り具 
事件の表示 意願2002- 19906「工具吊り具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、本意匠を意願2002-19901とする、平成14年(2002年)7月25日の関連意匠に係る意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「工具吊り具」とし、その形態は、願書に添付した図面代用写真に現されたとおりのものである(別紙第一参照)。

第2 原審の拒絶理由
原審において、本願に対し、本願意匠は願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないから意匠法第10条第1項の規定に該当しない旨の拒絶理由を通知し、これに対して、出願人は、意見書を提出して、本願意匠は本意匠に類似するから意匠法第10条第1項の要件は満たされている旨主張したが、本願について当該拒絶理由により拒絶査定を受けた。

第3 本意匠
前記の本意匠は、本願意匠と同日付で出願された意匠登録第1172920号の意匠であり、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「工具吊り具」とし、その形態は、願書に添付した図面代用写真に現されたとおりのものである(別紙第二参照)。

第4 本願意匠と本意匠との対比
本願意匠と本意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。
基本的構成態様の共通点は、以下の通りである。
(1)全体は、やや肉厚のある織布状の帯状体を略中央で山折りしてベルト挿通部とし、その帯状体の両下端付近に、略横長矩形状の板体である連結金具を挟んで取り付け、その連結金具の下端に大リングを有するリング状係止部を前方に垂直状に接合させて、ベルト挿通部とリング状係止部を略L字状に配したものである。正面から見て、帯状体は略縦長矩形状であり、帯状体と連結金具を取り付ける二つの円形状ピンを帯状体の下端寄りに水平に並べて設けている。側面から見て、ベルト挿通部の開口部の幅を中央から上端寄りにかけて次第に幅広とし、下端寄りには連結金具を細幅の略縦長矩形状としている。
具体的構成態様の共通点は、以下の通りである。
(2)ベルト挿通部の構成態様についての共通点
ベルト挿通部の帯状体の正面及び背面には水平の編み目模様が複数形成され、正面部下端はリング状係止部の存在によって背面部下端よりもやや上側に位置している。
(3)大リングの構成態様についての共通点
大リングは、平面から見て、内径がベルト挿通部の帯状体の幅と略同大であり、連結金具と一箇所で接合されている。
(4)連結金具の構成態様についての共通点
連結金具は、正面及び背面部の殆どが覆い隠されており、正面下端部のみが僅かに水平状に現れている。
(5)円形状ピンの位置及び厚みについての共通点
円形状ピンは、正面及び背面から見て、それぞれ左端寄りと右端寄りに設けられており、両側面からみて、各円形状ピンの厚みは薄く表されている。
一方、具体的構成態様の差異点は、以下の通りである。
(イ)リング状係止部の構成態様についての差異点
平面から見て、本願意匠のリング状係止部の構成態様は、大リングを右方に配しており、左方には、内径が大リングの略1/2である小リングが二つ設けられており、大小3つのリングが互いに外接して表されているが、本意匠では、大リングは中央に配されており、小リングも設けられていない。
(ロ)円形状ピンの径の大きさ及び形状についての差異点
本願意匠の各円形状ピンの径の大きさは本意匠のそれよりも僅かに大きく、本願意匠の正面の二つの円形状ピンの形状が緩やかな球面形状であるのに対して、本意匠のそれは略扁平円錐台形状であり、本意匠の背面の二つの円形状ピン内部に細かい凹凸が表されているのに対して、本願意匠の当該部位にはそのような凹凸はなくフラットに表されている。
(ハ)ベルト挿通部の正面上方の構成態様についての差異点
本願意匠のベルト挿通部の正面上方には、上端及び左右端に余地を残して略横長矩形状で無模様の布地が張り付けられているが、本意匠にはそのような布地は見られない。

第5 両意匠の類否の判断
両意匠の共通点及び差異点を総合し、意匠全体として両意匠の類否を検討すると、前記の共通するとした全体の基本的構成態様及び各部の具体的構成態様は、両意匠の形態上の基調を成すものであって、両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものと認められる。
とりわけ、(1)で示したように、側面から見て、ベルト挿通部とリング状係止部との略L字状の構成態様の共通点が、看者に共通の視覚的印象を与えるものであり、(2)ないし(5)で示した具体的構成態様の共通点と併せて、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと言える。
これに対して、具体的構成態様の差異点については、以下のように、類否判断を左右する要素としては微弱なものであると言わざるを得ない。
(イ)のリング状係止部の構成態様の差異については、確かにリングの数、配置が相違しているのであるが、本願意匠に表された大小のリングは、互いに外接し合っていてまとまっており、それらが一体となって連結金具に接合していることから、リング状係止部と連結金具との側面視略L字状の接合の態様の共通点を損ねる程のものではなく、また、大リングの内径がベルト挿通部の帯状体の幅と略同大であるという(3)で示した共通点が、ベルト挿通部とリング状係止部との構成上の視覚的親和性を高めていることから、両意匠の形態上の基調に影響を与える程には到らず、したがって、その差異は、両意匠の類否判断を左右する程のものとは言い難い。なお、請求人も、この点の差異について、リング状係止部がベルト挿通部に対して略水平に突設するという意匠全体の特徴を何ら変更してはいないので、本願意匠には本意匠のデザイン特徴はそのまま残されており、本意匠の創作同一性の範囲の域を出ない旨主張されている。
(ロ)の円形状ピンの径の大きさ及び形状の差異については、径の大きさ及び形状の差異が僅かなものであること、当該部位の意匠全体に占める面積が比較的小さいこと、そして、背面の円形状ピンの凹凸の有無の差異もピンの内側という限られた小さい範囲の差異にすぎないことから、いずれも意匠全体の類否判断に与える影響は小さいと言える。
(ハ)のベルト挿通部の正面上方の構成態様の差異については、ベルト挿通部の表れ方に影響を与える程のものではなく、看者に別異の感を与える程のものでもないので、その差異は類否判断を左右する要素としては微弱であると言える。
そうすると、前記(イ)ないし(ハ)の差異点は、いずれも類否判断に与える影響は微弱なものであって、これらが相俟って生じる効果を総合したとしても、類否判断を左右するほどの影響を与えるものとは認められない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、共通点が形態全体に係わる基調を形成して差異点を凌駕しているので、本願意匠は、本意匠に類似するものと言わざるを得ない。

第6 むすび
本願意匠は、意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当し、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。


審決日 2004-10-14 
出願番号 意願2002-19906(D2002-19906) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (K1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 温品 博康 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 鍋田 和宣
小林 裕和
登録日 2004-12-03 
登録番号 意匠登録第1228444号(D1228444) 
代理人 吉井 雅栄 
代理人 吉井 剛 

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