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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) J7 |
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管理番号 | 1108094 |
判定請求番号 | 判定2004-60027 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2005-01-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2004-04-06 |
確定日 | 2004-11-09 |
意匠に係る物品 | 座骨矯正用座具 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1164432号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「座骨矯正用座具」の意匠は、登録第1164432号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
第1.請求の趣旨及び理由 請求人は、結論同旨の判定を求める、と申し立て、その理由として判定請求書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として意匠登録第1164432号の原簿謄本及びその意匠公報の写し並びにイ号意匠とその説明書の書証を提出したものである。 第2.被請求人の答弁の趣旨及びその理由 被請求人は、イ号意匠は、意匠登録第1164432号とは類似しない、との判定を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をし、証拠方法として乙第1号証乃至乙第5号証の書証を提出したものである。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成14年3月22日の意匠登録出願に係り、平成14年12月6日に登録の設定がなされたものであり、その願書の記載及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「座骨矯正用座具」とし、形態を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりのものである(別紙第1参照)。 2.イ号意匠 本件判定請求の対象とされるイ号意匠は、判定請求書によれば、意匠に係る物品が本件登録意匠と同様の「座骨矯正用座具」であり、その形態はイ号写真版に現されたとおりのものである(別紙第2参照)。 3.両意匠の比較検討 本件登録意匠とイ号意匠を対比(イ号意匠は平面図における上下を逆にして対比)すると、両意匠は、意匠に係る物品がともに「座骨矯正用座具」であって共通し、その形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。 すなわち、共通点として、基本的構成態様を(1)偏平幅広厚板状の中央部(座板)をその両側の中央部板幅より長く、板厚より径の大きい概略円柱形状で平行にして挟み、正面視(正面図)形状を概略H形状とし、全体の外周を座板上下座面を除いて曲面で構成した点、具体的には、上記各部構成態様、つまり、(2)正面視全体の縦横比を約4:5、座板と概略円柱形状の長さ比を約7:10、平面視座板厚を概略円柱形状の直径(高さ)の約半分弱の構成態様とした点、(3)両側の概略円柱形状の平面視(平面図)形状を丁度卵様形状とし、幅広厚板座板の両側に両上部を内側にやや傾斜させ、つまり逆ハの字状に傾けて並べ、全体の表面側(座板上面側)をやや幅広、裏面側をやや幅狭にして両面を使用することができるようにした点、が認められる。 一方差異点は、イ号意匠には座板中央縦(正面視)に細長い紡錘形の浅い凹部形状を設け、両側横中央(側面視)に僅かな高さの偏平凸条形状をほぼ横幅一杯に設けたのに対して、本件登録意匠にはそのような凹凸形状を設けていない点、が認められる。 そこで上記の共通点と差異点につき、イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かの判断に及ぼす影響について、以下に検討する。 まず、両意匠において共通する基本的構成態様の(1)については、両意匠の全体の骨格を成し、(2)及び(3)の各態様と一体となって全体の基調を形成している。とりわけ両意匠の差異点を除く全体及び具体的な構成態様の酷似性は、両意匠の共通感を看者に強く印象づけており、意匠全体として、これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きいといわなければならない。 これに対して前記差異点の凹凸形状は、ともに、僅かに細長い浅い凹形状、僅かな高さの凸形状としたものであり、それは注視して見なければその形状の相違に気づきにくいと言っても良いほどのものであって、両意匠の全体及び具体的な構成態様が酷似する前ではその凹凸形状の有無はほんの僅かな差異にしか過ぎず、まして、その凹凸形状のみを形態上の特徴として大きく評価できず、両意匠においても具体的な表現の共通性を凌いで形態を特徴付けるものとは到底いえず、類否判断に及ぼす影響は微弱で、共通する構成態様の中での微差に止まる。また、仮に、これらの差異点が相俟って表出する効果を勘案したとしても、各共通点から惹起される両意匠の共通感を凌ぐ効果を認めることができない。 上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態において共通する態様は相俟って両意匠全体に共通する基調を形成しており、これに対して差異点は、いずれも類否判断に及ぼす影響が微弱なものであってこの基調を覆すに至らず、全体として共通点が差異点を凌駕して類否判断を支配するというべきものであるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似することを免れない。 なお、被請求人は、乙第1号証乃至乙第3号証を提出して本件登録意匠出願前に公知意匠として「平面視両端部に瘤状部を有し、全体として略双眼鏡形状を呈する基本的構成態様を採用している」ものが知られており、また、「この種の座骨矯正効果を有する座具は、座骨を矯正する効果を得るためには、着座される部分の両端に骨盤を押し圧する瘤状部を設けることが技術的に不可避であり、その点で平面視両端部に瘤状部を有し、全体として略双眼鏡形状を呈する基本的構成態様を採用することも、また技術的に不可避なもの」であり、この点に創作の要部が存在するものとは判断し得ず、「どのような具体的構成態様を採用しているかにこそ創作の要部が存在するものと確信」するところであって、本件登録意匠とは異なるイ号意匠の「着座される部分の中央部には、略笹の葉形状の凹部が設けられている点」「瘤状部の外側曲面には、突部が設けられている点」の具体的構成態様に創作の要部があり、「両意匠はその具体的構成態様の相違に起因して美感を全く異にする非類似の意匠である」と主張するので、平面視両端部に瘤状部を有し、全体として略双眼鏡形状を呈する基本的構成態様が既に公知の形状であり、この種物品においては技術的に不可避な形状か否かについて検討すると、まず、公知意匠は、正面視外周形状をいわゆる「空豆」形状とし、座部の上面をやや小さな湾曲面、下面をやや大きな湾曲面の二面で構成し、その湾曲面上下両端部と両側端部略半円弧状の湾曲面形状との境に稜線形状を表した形状(いわゆる銀杏の葉形状)を両端に表したものであり、本件登録意匠は、正面視外周形状を概略H形状とし、偏平幅広厚板座板の両側に概略円柱形状を並行に設けた形状としたものである。そこで、両意匠をともに平面図(平面視)に表された形状にのみ限って対比すると、たしかに両意匠ともに一見同様に「瘤状部」形状を有した「略双眼鏡形状」と言えないこともないが、両意匠には、「瘤状部」形状を概略いわゆる銀杏の葉形状としたものと、略卵形形状としたものとの差異が認められ、そして、それらの端部形状を有した「略双眼鏡形状」においては、座部を上下大小凹湾曲形状の中央を薄厚にし、両側をいわゆる銀杏の葉形状としたものと、座部を偏平幅広厚板形状にし、両側をいわゆる卵形形状にしたいわゆる骨形状とも言える形状にしたものとの差異が認められ、それらの部位及び全体形状において共通するものとは言いえず、両意匠は別異の形状を表したものと言っても過言ではない。しかしながら、立体的な両意匠を対比する場合通常は、六面図により表された形態により対比するものであって、一面図のみに表された形状で対比することはあり得ないので、平面図以外の図を参照にして総合的に両意匠を検討することが必要である。そうすると、両意匠の全体形状は、正面視いわゆる空豆形状と概略H形状の基本的な構成に差異が認められ、平面視は、前述したとおりの相違が認められることからすれば、瘤状部形状及び略双眼鏡の中央部にあたる座部形状は明らかに相違し、両意匠は、基本的構成態様及び具体的な構成態様において顕著な差異が認められる。また、仮にこの種物品を形成する場合において、両端部に瘤状部形状を有し、その中央部に座部を形成する平面視全体が略双眼鏡形状を呈する基本的構成態様が技術的に不可避の形態であるとしても、上述したように被請求人が示した公知意匠と、本件登録意匠及びイ号意匠の共通する形態とは、同一物品でありながら既に基本的構成態様である形態において明らかに相違するところであってみれば、被請求人の主張は採用することができない。 さらに、ここで付言するならば、技術的に不可避な形態とは、技術的或いは機能的に現在の技術、生産レベル等においてどうしてもその共通する形態を用いなければ物品の形状等の創作をすることができない場合であって、同一物品である公知意匠と本件登録意匠をみた場合、部分的な形態を異にするとともに、全体を対比しても非類似である意匠が存在することからすれば、平面視両端部に瘤状部を有し、全体として略双眼鏡形状を呈する基本的構成態様とは概念的な意味でのある部位を有する全体形状を一側面からのみみた形状であって、技術的に規制された同様な形態を言うものとは認められず、被請求人の主張は採用することができない。 また、被請求人は、基本的構成態様に創作の要部はなく、具体的構成態様に創作の要部があり、「両意匠はその具体的構成態様の相違に起因して美感を全く異にする非類似の意匠である」と主張するが、この本件登録意匠と基本的構成態様において共通するとした公知意匠との差異については、前述したとおりであるので、これもまた被請求人の主張は採用することができない。 以上のとおりであって、被請求人の主張は採用することができず、両意匠は類似するというべきである。 従って、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 よって、結論の通り判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2004-11-05 |
出願番号 | 意願2002-7481(D2002-7481) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 生亀 照恵 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
山崎 裕造 杉山 太一 |
登録日 | 2002-12-06 |
登録番号 | 意匠登録第1164432号(D1164432) |
代理人 | 吉田 芳春 |