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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) K7
管理番号 1109727 
判定請求番号 判定2004-60057
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-02-25 
種別 判定 
判定請求日 2004-07-15 
確定日 2005-01-12 
意匠に係る物品 金属管の接合部用裏当て金具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1045194号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面に示す「金属管の接合部用裏当て金具」の意匠は、登録第1045194号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、イ号図面に示す意匠(以下、イ号意匠という)は、意匠登録第1045194号及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証(枝番を含む)を提出した。
1.本件意匠の構成態様
A.基本的構成態様
A-I:建築用または構築用の金属管の端部に金属板を溶接一体化する際、溶接強度を高めるために金属管の端部開口に嵌合する金属管の接合部用裏当て金具であって、
A-2:片面の一側縁近くに横長短隆起の多数個が相互間に所要の間隔が形成されるように一線上に配列してある細巾の帯鋼を、前記した横長短隆起が内側となるようにして角枠状に折り曲げて成形された高さの低い四角形の枠体であり、
A-3:この枠体の四辺のうちの一辺の中間には、帯鋼の両端部が近接する間隔調整用の隙間を備えており、
A-4:枠体の各辺の前側縁近くにはそれぞれ前記した横長短隆起が配置されて金属管の開口端部との係止部を形成してある。
B.具体的構成態様
B-I:枠体の各辺は、その長さと前後巾の比が略8:1であり、B-2:横長短隆起は、長さが枠体の各辺の長さの略1/12、前後巾が長さの略1/6、高さが前後巾の略1/2であり、B-3:各辺の前側縁の表面が、横長短隆起にわたる縁取り面とされており、B-4:横長短隆起の数は全部で6個で、前辺に2個、後辺に2個、左右辺にそれぞれ1個設けられている。
2.イ号意匠の説明
a.基本的構成態様
a-I:建築用または構築用の金属管の端部に金属板を溶接一体化する際、溶接強度を高めるために金属管の端部開口に嵌合する金属管の接合部用裏当て金具であって、
a-2:片面の一側縁近くに横長短隆起の多数個が相互間に所要の間隔が形成されるように一線上に配列してある細巾の帯鋼を、前記した横長短隆起が内側となるようにして角枠状に折り曲げて成形された高さの低い四角形の枠体であり、
a-3:この枠体の四辺のうちの一辺の中間には、帯鋼の両端部が近接する間隔調整用の隙間を備えており、
a-4:枠体の各辺の前側縁近くにはそれぞれ前記した横長短隆起が配置されて金属管の開口端部との係止部を形成してある。
b.具体的構成態様
b-1:枠体の各辺は、その長さと前後巾の比が略10:1で、
b-2:横長短隆起は、長さが枠体の各辺の長さの略1/18、前後巾が長さの略1/4、高さが前後巾の略2/3であり、
b-3:各辺の前側縁近くの表面は垂直面であって、横長短隆起の周縁が縁取り面とされており、
b-4:横長短隆起の数は全部で11個で、前辺に3個、左辺に2個、右辺に3個、後辺に3個設けられている。
3.本件意匠と、イ号意匠との対比
(共通点)イ号意匠の基本的構成態様a(a-1、a-2、a-3、a-4)と、本件意匠の前記した基本的構成態様A(A-1、A-2、A-3、A-4)とは共通しており、両者間には実質的に相違するところがない。
また、イ号意匠の具体的構成態様bのうち、前記したb-1、b-2と、本件意匠の前記した具体的構成態様B-1、B-2とは略共通しており、両者間にも実質的に相違するところがない。
(相違点)一方、イ号意匠の具体的構成態様bのうち、前記したb-3と本件意匠の前記した具体的構成態様B-3とでは、前者の各辺の前側縁の表面が垂直面で、横長短隆起の周縁が縁取り面とされているのに対して、後者の各辺の前側縁の表面は、横長短隆起にわたる縁取り面とされており、また、イ号意匠の具体的構成態様bのうち、前記したb-4と本件意匠の前記した具体的構成態様B-4とでは、短隆起の数が前者は6個、後者が11個で数が異なるうえに、配置位置が異なっており、前記した2点において両意匠は相違している。
4.イ号意匠が本件意匠の範囲に属する説明
建築用または構築用の金属管の端部に金属板を溶接一体化する際、溶接強度を高めるために金属管の端部開口に嵌合する金属管の接合部用裏当て金具であって、片面の一側縁近くに横長短隆起の多数個が相互間に所要の間隔が形成されるように一線上に配列してある細巾の帯鋼を、前記した横長短隆起が内側となるように折り曲げて成形されたもので、その各辺の前記した横長短隆起を金属管の管端との係止部としたものは、請求人が所有する意匠登録第639319号、意匠登録第639332号、意匠登録第951147号、意匠登録第951149号、意匠登録第951152号、意匠登録第951154号(甲第3号証の1〜6)などがあるように、新規なものではないが、前記した既登録の意匠はいずれも2個以上を組み合わせて四角枠状として金属管の開口端の内面に沿わせて用いるものである。
これに対して本件意匠は、単独で金属管の開口端に嵌着できるように、全体として高さが低い四角形状をした枠体としてあり、しかも、金属管の開口端への嵌合が容易なように、枠体の四辺のうち一辺の中間に帯鋼の両端部を近接させた隙間を備えたものとしている。
このように、全体として高さの低い四角形の枠体であって、その四辺のうち一辺のみの中間には、金属管の開口端への嵌合が容易なように、帯鋼の両端部を近接させた所要幅の隙間を備えており、また、四辺の全ての前端縁近くにはそれぞれ横長短隆起を一定間隔をおいて配列してこれを金属管の開口端との係止部に形成し、これにより金属管の端部に簡単且つ安定して嵌着保持できるようにした基本的構成態様A(特に、A-3、A-4)は公知のものには見られないから、これが本件意匠の特徴的構成である。
なお、イ号意匠と本件意匠とでは、(相違点)として前記したように、各辺の前側縁近くが垂直面で、各横長短隆起の周縁が縁取り面とされているか、各辺の前側縁近くが各横長短隆起に達する縁取り面とされているかの差異(b-3とB-3)や、横長短隆起の数とその配置位置が異なる(b-4とB-4)ことは認めるが、前記したような縁取りの有無は意匠の審査基準においても創作性が乏しいとされているように、意匠の類否の要因としては決定的な差異として認められないことは勿論であり、また、横長短隆起の数や配置位置の違いも、多数個を相互間に所要の間隔をおいて配置した点で共通し、看者が両意匠を識別できる程度の強い印象を与えるものではない。
このようにイ号意匠は、本件意匠の特徴的構成を含む大略において共通しており、わずかな相違点はいずれも全体意匠に別異な印象を与えるほどの新規なものではないから、両意匠は類似する意匠とするのが相当である。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
本願意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、両意匠の差異点は、本願意匠の特徴的構成(要部)に係り、特に両者の該部における各態様の差は明らかであり、そして、この差異を先行意匠の該部又はこれに相当する部分に照らせば顕著なものである。
一方、共通点は、いずれも本願意匠の特色あるところといえず、この種意匠にとって、意匠の類否判断を左右する要素としては極めて弱いものである。
両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、意匠の要部に係る顕著なものであるから、両意匠に前記の共通点があっても、両意匠はその支配的態様が異なるというべきで、両意匠は全体として類似しない。
第4.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9(1997)年3月10日に意匠登録出願され、その後平成11年(1999)4月30日に、意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1045194号の意匠であって、意匠に係る物品を「金属管の接合部用裏当て金具」とし、形態は、願書の記載及び願書に添附された図面の記載のとおりである(本件判定書に添付の別紙第1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書の記載によれば、意匠に係る物品を「金属管の接合部用裏当て金具」とし、形態は、判定請求書に添付されたイ号図面に記載のとおりである(本件判定書に添付の別紙第2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠を、意匠全体として対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については、主として、以下に示す共通点及び差異点が認められる。
すなわち、両意匠は、基本的構成態様について、全体を、肉薄の帯状板を折り曲げて奥行きの浅い前方視略方形状の枠体とした点が共通し、各部の具体的構成態様について、(1)枠体の上辺部中央に僅かな隙間を形成した点、(2)枠体の前端寄りに隆起片部を一線状に設けた点が共通する。
一方、各部の具体的構成態様において、(1)枠体の前縁部について、本件登録意匠は、その前縁部全体を僅かな幅の傾斜する縁取り面としているのに対し、イ号意匠は、縁取り面としていない点、(2)隆起片部の形状について、本件登録意匠は、隆起片部の長手方向の両端部を垂直面とし、その短手方向の断面を略直角三角形状としているのに対し、イ号意匠は、長手及び短手方向の各端部を傾斜面とし、その短手方向の断面を略台形状としている点、(3)隆起片部の設置態様について、本件登録意匠は、その断面視の斜辺部面と枠体の縁取り面が面一状となるようにしているのに対し、イ号意匠は、隆起片部と枠体の前縁部を段差状としている点、(4)隆起片部の数について、本件登録意匠は、上辺部及び下辺部に各2個、左右辺部に各1個の合計6個設けているのに対し、イ号意匠は、上辺部及び下辺部に各3個、左辺部に3個、右辺部に2個の合計11個設けている点に差異がある。
4.本件登録意匠とイ号意匠の検討
両意匠の共通点及び差異点について、類否判断に及ぼす影響を、意匠全体として検討する。
先ず、両意匠に共通するとした全体の基本的構成態様については、形態全体の基調を表象するものであるが、従来より、既に一般化している構成態様にすぎないから、格別評価できないものであって、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、また、両意匠に共通するとした各部の具体的構成態様のうち、(1)の枠体の上辺部中央に僅かな隙間を形成した点、および、(2)の枠体の前端寄りに隆起片部を一線状に設けた点については、従来より、例を挙げるまでもなく、極普通になされるものであって、格別看者の注意を引くものとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、さらに、それらの共通点を纏めても、格別特徴的な構成態様を表すとはいい難いものであって、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないといわざるを得ない。
そうして、両意匠の共通点が、前記に示すように、微弱の域を超えないことを考慮すると、両意匠の差異点は、次に示すように、前記の両意匠に共通するとした構成態様の共通感を凌駕して、両意匠の醸し出す形態全体の印象を異にする程の、著しい差異感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
すなわち、差異点とした、各部の具体的構成態様のうち、(1)の枠体の前縁部については、枠体の前縁部全体を傾斜する縁取り面とすることもしないことの何れも、従来より、極普通になされるものであり、また、(4)の隆起片部の数については、使用目的に応じて適宜増減するものであって、それら(1)及び(4)の差異点は、格別看者の注意を引くものとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎないが、(2)の隆起片部の形状については、本件登録意匠が隆起片部の長手方向の両端部を垂直面とし、その短手方向の断面を略直角三角形状とし、イ号意匠が長手及び短手方向の各端部を傾斜面とし、その短手方向の断面を略台形状としている点で、形態全体から観れば、本件登録意匠は楔板状を呈し、イ号意匠は台形台状を呈するものであり、形態上の基調が異なるものであって、看者の受ける印象が大きく異なるといわざるを得ず、また、(3)の隆起片部の設置態様については、本件登録意匠が隆起片部の断面視の斜辺部面と枠体の縁取り面が面一状となるようにしている点で、隆起片部と枠体の前縁部を段差状としているイ号意匠とは、設置態様が著しく異なるものであり、看者の注意を引くに十分な差異を有するといわざるを得ず、それら(2)及び(3)の差異点は、(1)及び(4)の差異点と相俟って、形態全体から観れば、前記の両意匠に共通するとした構成態様の共通感を翻して、別異の構成態様を表す程の印象を与えるという外ないから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態において、差異点の(1)ないし(4)は、両意匠に著しい差異感を生じて、類否判断を左右するといわざるを得ないから、意匠全体として観察すると、両意匠それぞれに別異の意匠を表しているという外ない。
第5.むすび
イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲には属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2004-12-24 
出願番号 意願平9-7021 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (K7)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 小林 裕和
鍋田 和宣
登録日 1999-04-30 
登録番号 意匠登録第1045194号(D1045194) 
代理人 綿貫 達雄 
代理人 山本 文夫 
代理人 柳野 隆生 
代理人 名嶋 明郎 

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