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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) C3
管理番号 1113158 
判定請求番号 判定2004-60087
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-04-28 
種別 判定 
判定請求日 2004-10-28 
確定日 2005-03-14 
意匠に係る物品 モップ用柄 
事件の表示 上記当事者間の登録第0966892号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「モップ用柄」の意匠は、登録第0966892号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、イ号意匠並びにその説明図に示す意匠は登録第966892号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由を判定請求書に記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む)を提出した。
その主張の要点は以下のとおりである。
i)両意匠の共通点
両意匠はともにその基本的構成態様において、横長板状の台部と竿状部を連結してなり、横長板状台部の上面に、横長の雑巾装着部を4カ所設けてなる。両意匠はともにその具体的構成態様において、
(a)断面を円形とする竿状部が、台部中央から、垂直に立設されている。
(c)持ち手部は、上方を絞り上端を凸弧状にまとめている。
(d)横長矩形の板状台部には、上面にその外周よりも一回り小さい横長矩形の板状部を設けてなり、その左右はなだらかに傾斜している。
(e)横長板状台部の長手方向に平行に横長の雑巾装着部が4カ所あり、同じく長手方向に平行に、ギザギザの切り込みがあり、その中央からやや長めの切り込みが設けられている。横長の雑巾装着部外周は左右に丸みがある。
(f)板状台部の中央には、円形部があり、その中央には、左右の板状部をヒンジ部として、面取りした球状の保持部材が収容されている。
(g)前記球状部材には、竿状部の末端部の受け部が上方から嵌合している。前記球状の保持部材は、竿状部の末端部にある二股状の受け部の間に上方から収容されている。
ii)両意匠の差異点
(イ)本件登録意匠の竿状部は、その長さの3分の1強を持ち手部としているのに対し、イ号意匠の竿状部は、その長さの4分の1強を持ち手部としている。
(ロ)本件登録意匠は、持ち手部の中央部をやや膨出させているのに対し、イ号意匠の持ち手部は上方部を除き略等幅である。
(ハ)本件登録意匠は、雑巾装着部のギザギザの切り込みにやや長めの切り込みがY字状に設けられているのに対し、イ号意匠は、当該部分の切り込みが略X字状である。
(ニ)本件登録意匠の切り込みの端部には孔がないが、イ号意匠の切り込みの端部には微細な円形の孔が設けられている。
(ホ)本件登録意匠の雑巾装着部外周はカプセル形状であるのに対し、イ号意匠の雑巾装着部外周は楕円形である。
なお、イ号意匠の中間部材を全てつなぎ合わせた場合には、以下のような差異点がある。
(へ)本件登録意匠は、台部の横幅に比して3倍程度の長さの竿状部が立設されているのに対し、イ号意匠は、台部の横幅に比して4倍強の長さの竿状部が立設されている。
(ト)本件登録意匠の竿状部は、その長さの3分の1強を持ち手部とし、組み立て用の連結部を2ヵ所設けてなるのに対し、イ号意匠の竿状部は、その長さの7分の1弱を持ち手部とし、組み立て用の連結部を4カ所設けてなる。
iii)本件登録意匠の要部
本件登録意匠は、「台部の切り込み部分に・・・不織布や紙などからなる雑巾部材をはさみ込んで装着して使用する」ものである。また、本件登録意匠に係る物品の需要者は、主として家庭内において清掃を行う者であるが、その用途に照らし、実際に手を触れて雑巾をはさみ込む台部の切り込み部分が需要者の注意を引く部分であるといえる。
また、摘示した先行周辺意匠に照らせば、清掃用具の台部の四隅に、略*形の切り込みを設けた構成は公知となっている(甲第8号証、甲第10証、甲第11号証)が、本件登録意匠の具体的構成態様のうち、横長板状台部の長手方向に平行に横長の雑巾装着部が4カ所あり、前記雑巾装着部にギザギザの切り込みが設けられている点が従来の意匠にない極めて斬新な構成であるといえる。
したがって、本件登録意匠の要部は、横長板状の台部と竿状部を連結し、横長板状台部の長手方向に平行に横長の雑巾装着部を4カ所設け、前記雑巾装着部にギザギザの切り込みを構成した点にあるといえる。
このことは、本件登録意匠の類似意匠に照らしても明らかである。
すなわち、登録意匠の要部は登録意匠と類似意匠との共通点に限定されるものではないが、その認定にあたってはかかる共通点が参酌されるべきところ、本件登録意匠とその類似意匠3件は、前記の要部を共通にしている。
一方、摘示した先行周辺意匠に照らせば、イ号意匠の要部も、本件登録意匠の要部と同様であり、かかる要部と異なる特徴的な部分は存しない。
iv)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
両意匠は前記(iii)で述べた通り、その要部において一致する。
一方、前記(ii)に記載した具体的構成態様(イ)乃至(ト)における差異点については以下のように評価される。
(イ)の差異点は、竿状部に持ち手部が占める割合についての常識的範囲内の差異であり、意匠全体から見れば部分的な差異に過ぎない。
(ロ)の差異点については、極めて微細な形態上の差異であり、格別の意匠的効果をもたらすものとはいえない。
(ハ)の差異点については、やや長めの切り込み部分が各部において1本多いか少ないかという差異は、意匠全体から見れば部分的な差異に過ぎず、板状台部にギザギザの切り込みが4カ所設けられているという両意匠の具体的構成態様における共通点に包摂され、格別の意匠的効果をもたらすものとはいえず、看者の注意を引くものではない。
(ニ)の差異点は、切り込み端部の微細な孔の差異であるが、薄い素材に設けた切り込みが広がらないように端部に微細な孔を設けるのはありふれた構成であり看者の注意を引くものではない上に、板状台部にギザギザの切り込みが4カ所設けられているという両意匠の具体的構成態様における共通点に包摂され、格別の意匠的効果をもたらすものとはいえない。
(ホ)の差異点についても同様に、板状台部にギザギザの切り込みが4カ所設けられているという両意匠の具体的構成態様における共通点に包摂され、格別の意匠的効果をもたらすものとはいえない。また、カプセル形状も楕円形も周知でありふれた形状であり、かかる差異は看者の注意を特別強く引くものではない。
(へ)の差異点については、竿状部の長さの差異は、この種の物品にあっては単なる設計上の差異にすぎない。また、本物品の用途に照らし竿状部の長さの差異は常識的範囲内のものであり、特に意匠的効果をもたらすものとはいえない。
(ト)の差異点については、連結部の数及び持ち手部の比率の差異は、中間部材の数を任意に変更して使用するこの種の物品にあっては、中間部材の数を変更すれば、連結部の数及び持ち手部の比率も自動的に変更されるのであって、その変更には創作力を要しない上、格別の意匠的効果をもたらすものではない。
従って、総合的に判断すると、両意匠はその要部において一致し、上記の基本的構成態様及び具体的構成態様における共通点は、前記差異点を圧倒的に凌駕するものであるから、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似する。
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
第2.被請求人の答弁
被請求人に対して、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても被請求人からは、何ら応答がなかったものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成5年11月10日に意匠登録出願をし、平成8年8月1日に意匠権の設定の登録がなされた、登録第966892号の意匠であり、登録原簿及び願書の記載によれば、意匠に係る物品が「モップ用柄」であり、形態については、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである(別紙1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書添付の甲第3号証(イ号図面並びにその説明図)により示されたものであって、意匠に係る物品は、判定請求書の記載によれば台部の切り込み部分に雑巾部材を挟み込んで装着して使用する本件登録意匠と同種の物品であり、形態については、イ号図面並びにその説明図に示されたとおりのものである(別紙2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討と類否判断
両意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が共通し、形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
すなわち、両意匠は、共通点として、
(1)雑巾部材を取り付け支持するための横長方形板状としたモップ基板部(台部)の上面中央に、細棒状柄体部(竿状部)を、回動自在に連結したものである点、
(2)柄体部につき、丸棒状部と該丸棒状部より僅かに太くした上部側把持部(持ち手部)からなるものであって、丸棒状部につき、着脱可能、かつ、増減可能な中間部材が填め込まれたもので、その中間部材単体の長さはモップ基板部の左右幅とほぼ同じであって、継ぎ目部が横筋状に表れている点、
(3)上部側把持部につき、モップ基板部左右幅よりやや短く、その上部周側面を緩やかな凸弧状曲面により窄め、上端を凸弧状に丸めたもので、上端付近には縦長長孔を設けた点、
(4)丸棒状部と基板部の連結部につき、丸棒状部下端結合部付近は側面視において斜状にやや幅を広げて透孔を設け、該透孔にモップ基板部側コ字状結合部を填め込んだ、自在継手(ユニバーサルジョイント)様としている点、
(5)モップ基板部につき、前後幅に対する左右幅の比をほぼ1:3とした薄板状のもので、上面周縁に同一細幅の段落ち部を設け、下段の上周縁を丸面状とし、上段左右両側辺側段差部をやや幅広の凹弧状曲面で前後方向に抉った態様とした点、
(6)モップ基板部上面につき、中央には円形状とした該上面と面一状の継手基台部が填め込こまれ、その左右両余地部には、横長長円状の雑巾部材装着部が前後に1つずつ計4箇所設けられた点、
(7)円形状継手基台部の直径は、モップ基板部の前後幅の6割程度とし、横長長円状雑巾部材装着部の左右幅は、モップ基板部の左右幅の2割ほどとし、長径幅は短径幅のほぼ倍とした点、
(8)長円状雑巾部材装着部につき、装着手段として5ないし6本の放射状切り込みが設けられ、長軸方向は連続したギザギザ状とし、他の3ないし4本の短い切り込みは直線状とした点、がある。
一方、差異点として、
(イ)丸棒状部につき、本件登録意匠は中間部材が1本のみであり、全体の長さがモップ基板部の長辺に対して1.5倍ほどであるのに対して、イ号意匠は中間部材を1ないし3本任意に選択しうるもので、中間部材が1本の場合は本件登録意匠とほぼ同じ1.5倍ほどであり、2本とした場合には2.5倍、3本とした場合には3.5倍ほどに変化する点、
(ロ)丸棒状部の太さにつき、イ号意匠は本件登録意匠よりも僅かに太く、結合部の上部付近でテーパ状に僅かに細めている点、
(ハ)把持部につき、本件登録意匠は長さをモップ基板部の左右幅に対して僅かに短くし(ほぼ4/5)、下部側も緩やかな弧状に窄めており中央部がやや膨出した感を呈しているのに対し、イ号意匠はその長さを1/2程度のやや短いものとし、下部側もほぼ同径としている点、
(ニ)雑巾装着部の長円形状につき、本件登録意匠は長方形の両短辺を半円とした構成であるのに対し、イ号意匠は正楕円状とした点、
(ホ)雑巾部材装着部の長軸側以外の放射状切り込みにつき、本件登録意匠は何れも外側は2本、内側は1本とし、Y字状に表れているのに対して、イ号意匠は、何れも2本ずつであって、切り込み位置が左右に離れ倒V字状のものが左右対称的に表れている点、がある。
そこで、両意匠の共通点と差異点を比較、検討し、意匠全体として類否判断に及ぼす影響を総合的に検討する。
まず、(1)の共通点については全体の基本的構成態様に関するもので、形態全体の骨格に係わり、(5)ないし(8)は両意匠の特徴を最もよく表すモップ基板部の基本的構成態様及び具体的構成態様に係わり、後述するように差異点は極く微弱なものでモップ基板部の強い共通感を生じさせるものであるから類否判断に及ぼす影響は極めて大きく、(2)および(3)については柄体部の基本的構成態様に関するものであり、(5)の結合部の共通点を含むこれら(1)ないし(8)の共通点に係る構成態様は、意匠全体として相互に関連し合って共通した基調を形成しているから類否判断に支配的影響を及ぼすものである。
これに対して、前記のように両意匠の特徴を最もよく表すとしたモップ基板部の差異点から検討すると、(ニ)の差異点については、両意匠共長円状とした点は共通しており、モップ基板部に対する左右幅がほぼ共通しその縦横比も近似しており、その差異点は、前記(5)ないし(7)の共通点に係る構成態様により形成されたモップ基板部の上面全体の視覚的まとまりに吸収されてしまう程度の微弱な差異にすぎず、(ホ)の差異点については(8)の共通点が生じさせる共通感を僅かに減じているとしても、(8)の共通点とした構成態様が生じさせる共通感の方が勝っており、これらを総合するとモップ基板部全体としては酷似するといわざるを得ず、これらモップ基板部における差異は、意匠全体の類否判断に及ぼす影響はほとんど無い。
次に柄体部について検討するが、(イ)の差異点については、1本の中間部材を取付けたものが本件登録意匠の内容を直接構成するものであり、両意匠における差異は形式的には大きいといわざるを得ないものであるが、棒状体の長さの調整手段として両意匠のように中間部材の本数を増減することは慣用的手段であり、本件登録意匠においても「柄が任意の数の中間部材をつなぎ合わせて構成し得るものであり」と記載されており、イ号意匠についても中間部材を1本とした場合には本件登録意匠と共通することになるから、その差異は実質的にさほど大きいものとすることはできず、(ロ)の差異点については、丸棒状部全体からみれば極めて微弱なもので、まして柄体部全体の視覚的印象に及ぼす影響は極く僅かにすぎず、(ハ)の差異点については、両意匠の把持部は前記(3)のようにモップ基板部左右幅よりやや短く、その上部側を緩やかな弧状にすぼめ、上端を凸弧状に丸め、上端付近には縦長長孔を設けた点は共通しており、この(3)の共通点に係る構成態様により差異感はかなり減殺されている。柄体部における(2)及び(3)の共通点を総合したものと(イ)ないし(ハ)の差異点を総合したものとを比較すると(イ)の差異点は実質的にはさほど大きくはないものの形式的には微差とはいえず、柄体部全体としてみた場合には(イ)ないし(ハ)の差異点を総合したものが僅かに勝っているといわざるを得ないが、その差異は前記のごとく大きいものとすることはできず、意匠全体における類否判断に及ぼす影響もさほど大きいものではない。なお、甲第1号証の4によれば、本件登録意匠に対して把持部及び丸棒状部何れもが明らかにイ号意匠よりも大きく異なる意匠が本件登録意匠の類似意匠として登録されていることからも是認されることである。
このように、両意匠は(1)の全体の基本的構成態様が共通し、両意匠の特徴をよく表すモップ基板部のみを比較すると、モップ基板部全体は酷似しているといわざるを得ないもので、柄体部のみを比較すると、(2)および(3)の共通点を総合したものよりも(イ)、(ロ)、(ハ)の差異点を総合したものの方が僅かに勝っているとしても、意匠全体としてみた場合、(1)ないし(8)の共通点に係る構成態様が形成する基調を凌駕することができないないから、結局、両意匠は類似するというほかないものである。
4.結び
以上のとおりであって、両意匠は意匠全体として類似するものであり、したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2005-03-02 
出願番号 意願平5-33801 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (C3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
杉山 太一
登録日 1996-08-01 
登録番号 意匠登録第966892号(D966892) 
代理人 三好 秀和 

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