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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) J7
管理番号 1114750 
判定請求番号 判定2004-60086
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-05-27 
種別 判定 
判定請求日 2004-10-26 
確定日 2005-03-24 
意匠に係る物品 医療用コルセット 
事件の表示 上記当事者間の登録第0993591号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「医療用コルセット」の意匠は、登録第0993591号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠及びその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第993591号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証1〜3ないし甲第5号証を提出した。
両意匠は、意匠に係る物品が同一又は類似であり、形態について、下方に若干湾曲した横長の腰帯部と、その下に連接され且つ左右外側に向けて高くなるように傾斜した左右一対の横長の脚帯部とを有し、左右一対の脚帯部は、連結部で腰帯部の下部に繋がり、互いに交差部で重なっている点等の共通点は、両意匠の類否判断に大きな影響を与えており、他方、身体に装着された使用状態を十分に考慮すると、相違点が相俟っても、両意匠に及ぼす影響はその結論を左右するまでには至らないので、イ号意匠は、本件登録意匠に類似する。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
イ号意匠は、左右に突起状帯部を備えた変形中央部材の上方左右及び下方左右に、手足を広げた人間の両手両足のように、それぞれ斜めに半巻分の細幅帯状先丸帯体を縫合連結した縫製上「5分割構成」のものから成る「ヒトデ」のように看取されるものであるのに対し、本件登録意匠は、一枚の広幅横長方形状の腰帯の下辺左右位置に、左右対称に現れるように腰帯部の半分程度の幅と長さの不定形に湾曲した脚帯部を湾曲長辺側で縫いつけた縫製上「3分割構成」のものから成る、あたかも逆さにした折り紙の「カブト」のように看取されるものであって、本件登録意匠とイ号意匠の間には截然とした差があるから、これを類似と認定する余地はない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7年11月17日に意匠登録出願をし、平成9年6月20日に意匠権の設定の登録がなされた登録第993591号意匠であり、その意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「医療用コルセット」とし、形態を、願書及び願書に添付の図面に記載したとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち、以下展開した状態(使用状態でない図面)において、基本的な構成態様は、腰帯部(腰部を包囲して装着する部分)と脚帯部(左右大腿部を包囲して装着する部分)を連結部で上下に連接し、腰帯部は、横長帯であり、脚帯部は、左脚用(図面の右方のもの)の斜め変形「く」の字形の斜めに長い半帯とこれと対称に表れる右脚用の半帯を横方向真ん中辺りで交差するように左右一対設けて成るものである。
各部の具体的な構成態様は、腰帯部については、上辺を下方に緩やかに湾曲させ、下辺は緩やかなV字状に膨出させ、装着端には普通の隅処理を施した横長帯であり、正面図と背面図の右端にはそれぞれ方形のファスナー部(腰部用)を添設し、中央部分に4条の細幅傾斜線を施したものである。
脚帯部については、全体の左右長は腰帯部より短く、これを構成する左右一対の斜め変形「く」の字形の斜めに長い半帯は、その幅と長さ(大腿部を包囲して装着する両端の間の長さ)とも腰帯部の略半分で、装着端には普通の隅処理が施してあり、腰帯部と半帯との間に現れる外方開放の浅いくさび状の隙間が閉じる部位から真ん中付近までは半帯上辺を連結部を介して連接し、そして真ん中付近からは半帯を反対面側に斜めに垂下させて左右互いに交差させ、この交差部と腰帯部との間には縦長楕円状の隙間部が現れ、半帯下辺(及び全体)を斜め上方に緩やかに湾曲させたものである。更に、正面図に現れる左脚用(図の右方のもの)の半帯の上方装着端と、背面図に現れる同半帯の下方装着端には、方形のファスナー部(脚部用)を添設し、右脚用にも同様なファスナー部を添設したものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、意匠に係る物品が腰部及び左右大腿部を包囲するように装着するものであり、その形態は判定請求書に添付のイ号図面(写真)及びその説明書により示されたおりとするものである(別紙第2参照)。
すなわち、基本的な構成態様は、イ号図面(写真)において、全体の右半分の斜め変形「F」字形とこれと対称に表れる左半分とが左右一体となったような帯から成り、斜め変形「F」字形の帯が二股に分かれた上部部分(以下「帯上部」という。)左右の横長な腰帯部、それ以外(以下「帯下部」という。)が左右一対の斜めに長い脚帯部としての用をなすもの(両部には明確な境がない。)であり、脚帯部を成す左右一対の「帯下部」は横方向真ん中辺りで左右互いに交差するものである。縫い合わせの観点からこの基本的な構成態様をみると、腰帯部を成す左右「帯上部」の二股分岐辺りから装着端までの部分と脚帯部を成す左右一対の「帯下部」の横方向真ん中辺りから下方装着端までの部分は中央シート部に縫着され、イ号図面(写真)において、その縫い目がそれぞれハの字状に現れるもの(写真では、一方の「帯下部」の縫い目が隠れて見えない。)である。
各部の具体的な構成態様は、腰帯部(「帯上部」)については、腰帯部の上辺を下方に緩やかなV字状に湾曲させ、腰帯部の下辺は「帯上部」と「帯下部」との間に現れる外方開放の深いU字状の隙間が閉じる部位(「帯上部」と「帯下部」の境部)まで緩やかなV字状に膨出させた横長帯で、装着端には隅処理を施してあり、そして背面図の「帯上部」の左端には半円形のファスナー部(腰部用)を添設したものである。
脚帯部(「帯下部」)については、全体の左右長は腰帯部よりかなり短く、これを構成する左右一対の「帯下部」は、その幅が腰帯部(「帯上部」)と同程度あり、その長さ(大腿部の装着端の間の長さ)は腰帯部より短いが、それでもかなり長く、上方装着端、下方装着端とも普通の隅処理が施してあり、そして腰帯部より短いがそれでもかなり長い「帯下部」を反対面側にかけて斜めに垂下させて左右互いに交差させ、この交差部と腰帯部との間には縦長楕円状の隙間部が現れ、「帯下部」下辺(及び全体)を斜め上方に緩やかに「バナナ」様に湾曲させたものである。背面図の「帯下部」の左右の上方装着端には半円形のファスナー部(脚部用)を添設したものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、イ号意匠の説明資料等総合すれば、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
(共通点)
まず、基本的な構成態様における共通点として、(1)腰帯部と脚帯部から成り、腰帯部は横長であり、脚帯部(イ号意匠にあっては左右一対の「帯下部」)は左右大腿部をそれぞれ包囲して装着するもので、斜めに長い帯である点、具体的な構成態様における共通点として、(2)腰帯部(イ号意匠にあっては左右の「帯上部」)につき、横長帯が下方に湾曲する態様であり、脚帯部との間に外方開放の切り込みを設けた点、(3)脚帯部(「帯下部」)につき、腰帯部より左右長が短く、左右一対の斜めに長い半帯(「帯下部」)を真ん中辺りで左右互いに交差させ、この交差部と腰帯部との間には縦長楕円状の隙間部が現れ、半帯(「帯下部」)下辺(及び全体)を緩やかに斜め上方に湾曲させている点、(4)装着端につき、普通の隅処理が施してある点、腰部用及び左右脚部用の装着ファスナー部を添設した点その他が挙げられる。
(差異点)
一方、基本的な構成態様における差異点として、(イ)本件登録意匠は、腰帯部と脚帯部を連結部で上下に連接し、脚帯部は、右脚用の斜め変形「く」の字形の斜めに長い半帯とこれと対称に表れる左脚用の半帯を横方向真ん中辺りで交差するように左右一対設けて成るものであるのに対し、イ号意匠は、全体の右半分の斜め変形「F」字形とこれと対称に表れる左半分とが左右一体となったような帯から成り、斜め変形「F」字形の帯が二股に分かれた「帯上部」左右が横長な腰帯部、「帯下部」が左右一対の斜めに長い脚帯部としての用をなすものであり、左右一対の「帯下部」は横方向真ん中辺りで左右互いに交差させたものであり、縫い合わせの観点からこの基本的な構成態様をみると、腰帯部を成す左右「帯上部」の二股分岐辺りから装着端までの部分と脚帯部を成す左右一対の「帯下部」の横方向真ん中辺りから下方装着端までの部分は中央シート部と縫着され、その縫い目がそれぞれハの字状に現れるものである点が挙げられる。
具体的な構成態様における差異点として、(ロ)腰帯部につき、本件登録意匠は、上辺を下方に緩やかに湾曲させ、下辺は緩やかなV字状に膨出させた横長帯で、この横長帯は脚帯部とは独立して形成されており、そして中央部分に4条の細幅傾斜線を施したものであるのに対し、イ号意匠は、上辺を下方に緩やかなV字状に湾曲させ、下辺は「帯上部」と「帯下部」との間に現れる外方開放の深いU字状の隙間が閉じる部位まで緩やかなV字状に膨出させた横長帯で、脚帯部(「帯下部」)との区分けがない点が挙げられる。
また、(ハ)脚帯部につき、本件登録意匠は、左右一対の斜め変形「く」の字形の半帯の幅と長さ(装着端の間の長さ)が腰帯部の略半分で、外方開放の浅いくさび状隙間が閉じる部位から真ん中付近まで半帯上辺を連結部を介して連接し、そして真ん中付近からは半帯を反対面側に斜めに垂下させて左右互いに交差させたものであるのに対し、イ号意匠は、左右一対の「帯下部」の幅が腰帯部(「帯上部」)と同程度あり、その長さ(大腿部の装着端の間の長さ)は腰帯部より短いが、それでもかなり長く、そして腰帯部より短いがそれでもかなり長い「帯下部」を反対面側にかけて斜めに垂下させて左右互いに交差させた点、その他イ号意匠のU字状隙間が本件登録意匠のV字状隙間より深い切り込みである点が挙げられる。
また、(二)ファスナー部につき、本件登録意匠は、ファスナー同士が接着する方式の態様であるのに対し、イ号意匠は、ファスナー部と生地とが接着する方式の態様である点が挙げられる。
(比較検討)
そこで、上記の共通点と差異点について意匠全体として総合的に検討するに、基本的な構成態様における(1)の共通点は、横長な腰帯部と左右大腿部をそれぞれ包囲して装着する斜めに長い脚帯部から成るものとした概念上の共通点に止まるものであり、具体的な構成態様における(2)の腰帯部につき、横長帯が下方に湾曲する態様であり、脚帯部との間に外方開放の切り込みを設けた点、及び(3)の脚帯部の左右長が腰帯部より短く、左右一対の半帯(「帯下部」)を真ん中辺りで左右互いに交差させ、この交差部と腰帯部との間には縦長楕円状の隙間部が現れ、半帯(「帯下部」)下辺(及び全体)を緩やかに斜め上方に湾曲させている点の共通点が、とりわけ、基本的な構成態様における(イ)の差異点、すなわち、本件登録意匠は、腰帯部と脚帯部を連結部で上下に連接し、脚帯部は、右脚用の斜め変形「く」の字形の斜めに長い半帯とこれと対称に表れる左脚用の半帯を横方向真ん中辺りで交差するように左右一対設けて成るものであるのに対し、イ号意匠は、全体の右半分の斜め変形「F」字形とこれと対称に表れる左半分とが左右一体となったような帯から成り、斜め変形「F」字形の帯が二股に分かれた「帯上部」左右が横長な腰帯部、「帯下部」が左右一対の斜めに長い脚帯部としての用をなすものであり、左右一対の「帯下部」は横方向真ん中辺りで左右互いに交差させたものであり、縫い合わせの基本的な構成態様が、腰帯部を成す左右「帯上部」の二股分岐辺りから装着端までの部分と脚帯部を成す左右一対の「帯下部」の横方向真ん中辺りから下方装着端までの部分は中央シート部と縫着され、その縫い目がそれぞれハの字状に現れるものであるというものである差異点、つまり、形態全体の基調が異なる両意匠の差異点を打ち破るものとは到底いえず、その他(4)を含めた共通点が相俟った効果を考慮してもなお、共通点が両意匠の類否判断を左右する要部にあたるとはいい難い。
これに対し、差異点につき、基本的な構成態様における(イ)の点は、上記したとおり、形態全体の基調が異なるものであり、そして両意匠の別なる特徴をよく表出しているところであるから、この点だけをもってしても両意匠の類否判断を左右するに十分であるといえ、さらに具体的な構成態様における(ロ)腰帯部につき、本件登録意匠は、上辺を下方に緩やかに湾曲させ、下辺は緩やかなV字状に膨出させた横長帯で、この横長帯は脚帯部とは独立して形成されたものであるのに対し、イ号意匠は、上辺を下方に緩やかなV字状に湾曲させ、下辺は「帯上部」と「帯下部」の間に現れる外方開放の深いU字状の隙間が閉じる部位まで緩やかなV字状に膨出させた横長帯で、脚帯部(「帯下部」)との区分けがない点および脚帯部の共通点(3)に比べるとさ程目立つものではないが脚帯部の差異点(ハ)は、基本的な構成態様における差異点(イ)を更に助長させるものであり、差異点(ニ)はありふれた態様差であるけれども、(イ)ないし(ニ)が相俟って、差異点は、両意匠の類否判断を決定づけるに十分であるといえる。
請求人は、使用状態を十分に考慮する必要がある旨を主張するが、使用状態の正面形態(別紙第3の請求人提出の参考資料2)は、腰帯部と左右大腿部をそれぞれ包囲して装着する脚帯部から成るものとした概念上の共通性を表しているにすぎないものであり、使用状態の背面形態(同参考資料2)の交差部に縦長楕円形の隙間が現れる点は、一応注意を惹く部分であるといえるけれども、中央シート部との縫着その他の基本的な構成態様が異なる中での共通点にすぎずないものであり、そしてこの種物品が柔軟な素材で構成されている点等を考慮しても、上記した両意匠の総合的な類否判断が覆されることはない。
上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態について、両意匠の共通点及び差異点を意匠全体としてみたときに、共通点は、形態全体の基調が異なる両意匠の差異点を打ち破るものとは到底いえず、両意匠の類否判断を左右する要部にあたるとはいい難いのに対して、差異点については、とりわけ形態全体の基調が異なり、両意匠の別なる特徴をよく表出している基本的な構成態様における(イ)、さらに(イ)の違いを助長する(ロ)(ハ)等が相俟って、差異点は、両意匠の類否判断を決定づけるに十分であるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しないとするのが相当である。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲

判定日 2005-03-11 
出願番号 意願平7-34846 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (J7)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 足立 光夫 
特許庁審判長 森 則雄
特許庁審判官 伊藤 敦
市村 節子
登録日 1997-06-20 
登録番号 意匠登録第993591号(D993591) 
代理人 伊藤 真 
代理人 奥野 隆夫 
代理人 福迫 眞一 
代理人 宮崎 栄二 

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