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審決分類 審判 無効   無効としない L2
審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L2
管理番号 1116255 
審判番号 無効2004-35078
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-02-09 
確定日 2005-04-25 
意匠に係る物品 マンホール蓋 
事件の表示 上記当事者間の登録第1154092号「マンホール蓋」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び請求の理由
請求人は、「登録第1154092号の意匠登録を無効とする、審判の費用は、被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。
1.理由の要点
(1)理由1
意匠登録第1154092号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された意匠公報に記載の意匠登録第785049号の意匠(以下、「引用意匠」という。)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、その登録は、無効とされるべきものである。
(2)理由2
本件登録意匠は、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる技術的思想の創作であり、本来、意匠法が保護を予定していないものであるから、意匠法第5条第3号の規定に違反して登録されたものであって、同法第48条第1項第1号により、その登録は、無効とされるべきものである。
2.本件登録意匠の登録が無効とされるべき理由1
(1)本件登録意匠と、引用意匠における本件登録意匠に相当する部分(以下、「引用意匠における相当部分」と略す。)との形態上の対比
本件登録意匠と引用意匠における相当部分は、その要部において、以下の共通点及び差異点が認められる。
(ア)要部における共通点
a)マンホール蓋の周縁部の外縁端からマンホール蓋の中心へ向けて平面視略U字状の開口部を形成している点、
b)前記開口部を包囲する程度に底広な略直方体状の袋穴部をマンホール蓋の裏側に形成している点、
c)マンホール蓋を受枠に装着するための嵌合部を垂直下向きに折り曲げた略倒L字状の態様で、マンホール蓋の外縁端に形成している点。
(イ)要部における差異点
本件登録意匠は、引用意匠における相当部分に対し、
d)前記開口部は、外縁端の開口縁が他の部分よりもやや幅広となるように、外方に開放した点、
e)前記嵌合部につき、その先端部分は、開口部以外の部分において、内側にほぼ直角に折り曲げてマンホール蓋の外縁端から内側にわずかに突出した点において、
要部とされた構成態様が相違する。
(2)要部における差異点が類否判断に与える影響
(ア)差異点d)は、開口部の形状についての差異であるが、本件登録意匠は、外縁端からマンホール蓋中心に向かうやや内側寄りの部位に傾斜状の浅い段部を左右対称に設けて、段部から外縁端側の開口幅が、段部からマンホール蓋中心側の開口幅に対してやや幅広となるように形成した態様のものである。
ところで、この種の物品分野においては、本件登録意匠の出願前には、開口部の形状が、引用意匠及び甲第8号証のように略U字状のもの以外に、甲第6号証のようにT字状のもの、甲第7号証のように開口部が略方形状のものであるもの等、使用する治具に応じて種々の形態のものが開示されている。
これらの開口部の形状に対し、略U字状の開口部は、引用意匠等に示されるように、一般的に見られる態様であって、本件登録意匠の開口部の形状は、当該開口部の外縁端側における開口幅をわずかに幅広にした程度のもので、軽微な差異に止まり、本件登録意匠及び引用意匠の観察の際にその差異が与える影響も微弱である。
このように、上述の形態上の差異点d)は、一般的に見られる態様に軽微な差異を加えて形成したものにすぎないから、本件登録意匠と引用意匠との類否判断において、重要な要素となるものではない。
(イ)差異点e)は、嵌合部の先端部分の形状についての差異であるが、その先端部分の突出の程度は、半径の長さに比べて極く僅かである。従って、差異点e)についても、本件登録意匠と引用意匠との類否判断において重要な要素となるものではない。
(3)両意匠の総合的な比較
上記したように、本件登録意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通する。
そして、本件登録意匠の要部と引用意匠の要部は、上述のとおり極めて微弱な差異点を除いて共通するものであって、いわば同一性の範囲内のものである。
従って、本件登録意匠は、引用意匠に類似するものであると確信される。
3.本件登録意匠の登録が無効とされるべき理由2
(1)甲第9号証(特開2003-55996号公報)の説明
(ア)甲第9号証は、本件登録意匠の出願日とほぼ同時期の平成13年8月17日に、本件登録意匠の出願人が特許出願したものの公開特許公報である。
(イ)当該発明は、「発明の名称」に示されるように、「地下構造物用蓋」であり、当該発明の内容は、請求項1に記載されているように、「地下構造物の開閉口を塞ぐ蓋であって、手かぎに設けられた係止部を差し込む開口をマンホール蓋の縁部上面に有しており、開口は手かぎの係止部を受け入れる袋穴に通じるとともに、マンホール蓋の縁部において側面に位置する切り欠き状の切欠口に通じており、手かぎの係止部を開口から袋穴内に差し込みマンホール蓋を取り外す際に支点となる支持部を開口の縁部よりの袋穴部に突設したことを特徴とする」ものである。
(ウ)甲第9号証の発明の具体例が、図1〜図12に示されているが、そのうち、図1〜図4に示された実施例1の形状は、図2(b)を除き、本件登録意匠の形状と一致する。
(エ)上記の甲第9号証の発明の効果として、第2頁右欄の段落番号【0008】に、「マンホール蓋は、その縁部上面に、手かぎに設けられている係止部を差し込むための開口を有している。開口は係止部を差し込むための口であり、それ以上のものでもそれ以下のものでもない」と記載されている。
従って、開口の形状は、甲第9号証に開示された実施例に限らず、物品の技術的機能を確保するために必然的に決まる形状であると認められる。
また、第3頁左欄の段落番号【0010】に、「このような構成において、手かぎの係止部を開口から袋穴内に差し込み、マンホール蓋を取り外す際に、支点となる支持部が開口の縁部よりの袋穴部に突設される。・・・支持部を支点として開蓋する場合、力点は手かぎの他の部分であり、作用点はマンホール蓋即ち開口の内方のどこかということになる。この支持部は、開口及び切欠口のどちらをも塞ぐことがなく、かつそれらの間に隙間を保つように設けられる。この隙間により、袋穴に溜まっている土砂やごみなどを掻き出すことが容易になる。」という効果を有することが記載されている。
従って、本件登録意匠の構成態様の一つである「マンホール蓋表側に向かって突出させた略四角柱状の凸状部を開口部の外縁端に設け、該凸状部は、上記開口部よりも幅が小さく、開口部との間に隙間が形成されるようになっている」点は、上記の甲第9号証の発明の効果を発揮させるために必要不可欠な要素であると認められる。
(2)よって、本件登録意匠は、形状に基づく機能の発揮を主たる使用の目的とし、物品の技術的機能を確保するために必然的に決まる形状のみによって構成される一方、意匠評価上考慮すべき形状を含まないと認められる。
第2.被請求人の答弁及び答弁の理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下のとおり主張し、立証として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1.請求理由1(意匠法第3条1項3号)について
(1)答弁理由の要点
意匠登録第1154092号意匠(以下「本件登録意匠」という。)は、意匠登録第785049号意匠(以下「引用意匠」という。)のうち本件登録意匠に相当する部分(以下、「引用意匠相当部分」という。)と、基本的構成(公知意匠の意)が共通するも、引用意匠部分には本件登録意匠の要部を有していないことから、両者は顕著に相違する、つまり非類似であることが明らかであるため、無効理由である意匠法第3条1項3号に該当しないものである。
(2)本件登録意匠の要部の認定
本件登録意匠の要部とは、
「受枠に収められているマンホール蓋を開蓋する際に、開蓋工具の先端に設けた係止部を差し込み、該係止部をマンホール蓋に係止させる部分としての用途に用いられ、マンホール蓋の開蓋作業を可能とする機能を有すると共に、蓋本体を取り外す際に、支点となる支持部を開口の縁部より内側の袋穴部に突設することにより、『てこの原理』から簡単に開蓋作業をすることを可能とする機能、またこの支持部の形状により、開口及び切欠口のどちらをも塞ぐことがなく、かつそれらの間に下コの字型の隙間を保つように設けられているため、一つ穴では詰まりやすかった土砂やゴミを、詰まらせることなく、簡単に掻き出すことを容易とする機能」の為に構成された、「b)前記開口部は、外縁端の開口縁が他の部分よりやや幅広となるように、外方に開放した態様とし(平面図参照)」・「d)前記袋穴部の外縁端附近には、上側に突出させた方形状の凸状部を設けており(正面図中央部参照)」・「e)上記凸状部は、開口部との間に隙間が形成される程度に、開口部の幅寸よりも小さい形状であって(正面図中央部及びD-D’線拡大断面図参照)」・「f)上記凸状部の側面の一部には、袋穴部の底面まで緩やかに傾斜するように形成されており(A-A’線断面図参照)」の部分である。
また、上記構成以外の部分で、「マンホール蓋の周縁部の外縁端からマンホール蓋の中心に向けて平面視略U字状の開口部を形成」・「開口部を包囲する程度に底広な略直方体状の中空の袋穴部をマンホール蓋の裏側に形成」・「袋穴部には、開口部の外縁端から底面にかけて傾斜面を形成」する構成は、「マンホール蓋」の開蓋作業として必要な、従来からありふれた形態であることが、明らかに理解できる。請求人の証拠にも、それが示されている(甲第6号証乃至同8号証)。
(3)要部の対比
上記で認定された本件登録意匠の要部は、いずれも引用意匠相当部分に存在しないことが、上記表から明らかである。要部は、意匠の類否に与える影響が大きいものであることは、ご存知の通りである。
(4)まとめ
よって、上記理由で述べたごとく、両意匠は、マンホール蓋の開蓋作業として必要な基本的構成としてありふれた形態を有しているも、引用意匠相当部分は、本件登録意匠の要部である「b)前記開口部は、外縁端の開口縁が他の部分よりやや幅広となるように、外方に開放した態様とし(平面図参照)」・「d)前記袋穴部の外縁端附近には、上側に突出させた方形状の凸状部を設けており(正面図中央部参照)」・「e)上記凸状部は、開口部との間に隙間が形成される程度に、開口部の幅寸よりも小さい形状であって(正面図中央部及びD-D’線拡大断面図参照)」・「f)上記凸状部の側面の一部には、袋穴部の底面まで緩やかに傾斜するように形成されており(A-A’線断面図参照)」・「h)前記嵌合部は、その先端部分が、前記開口部以外の部分において、内側にほぼ直角に折り曲げてマンホール蓋の外縁端から内側にわずかに突出した態様(B-B’線断面図参照)」の構成部分を全く有していないことから、両意匠は非類似であることが明らかであり、本件無効審判請求理由1の意匠法第3条1項3号には該当しないものである。
2.請求理由2(意匠法第5条3号)について
(1)答弁理由の要点
本件登録意匠は、物品の機能を確保するために不可欠な形状「のみ」からなる意匠でない事が明白であるため、無効理由である意匠法第5条3号には該当しない。
(2)理由
確かに、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠について物品の機能を確保するために不可欠な形状は、技術的思想の創作であって、本来特許法又は実用新案法によって保護されるべきものであり、そのような形状が意匠法により保護されることになれば、意匠法が保護を予定しない技術的思想の創作に対して排他的独占権を付与するのと同様の結果を招くこととなるため、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠は、意匠登録を受けることができない。
しかし、意匠が法5条3号に該当するためには、厳格的な要件が必要である。
なぜなら、意匠が有する美的外観には、機能美であるか装飾美であるかの区別が困難であるからであるため、美的外観の備えていない物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなるとは、以下のいずれかに該当する意匠に限定されるものである。
(ア)物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状(必然的形状)からなる意匠
意匠登録出願に係る意匠が必然的形状に該当するか否かは、意匠の構成要素である模様、色彩の有無を問わず、物品の技術的機能を体現している形状のみに着目して判断することとするが、その際には、特に次の点を考慮するものとする。
1)その機能を確保できる代替的な形状が他に存在するか否か。
2)必然的形状以外の意匠評価上考慮すべき形状を含むか否か。
(イ)物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(準必然的形状)からなる意匠
本件登録意匠は、(ア)物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状(必然的形状)からなる意匠及び(イ)物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(準必然的形状)からなる意匠、でもなんでもない。
上記(ア)(イ)にあたる部分は、請求理由1の答弁の理由で述べた、「ありふれた形状」部分である。
(3)まとめ
よって、本件登録意匠は、意匠法第5条3号の「形状のみ」でないことが明らかであるため、本件無効審判請求理由2の意匠法第5条3号には該当しないものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠と引用意匠の類否について
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類の記載によれば、平成13年8月10日の意匠登録出願に係り、平成14年8月2日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1154092号であって、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、願書に「部分意匠」の欄を設け、意匠に係る物品を「マンホール蓋」とし、その形態は、意匠登録を受けようとする部分を実線で表したとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち、実線で表した部分は、円形のマンホール蓋の周縁部の一部分で、マンホール蓋を開ける際に用いる工具の先端部を差し込んで係止する部分であって、その形態は、上面外縁端から下方へ僅かに内側に傾斜させて一定の幅狭な外周面を形成し、上面から外周面にかけて切り欠いて開口部とし、その上面側は、外縁端からマンホール蓋の中心へ向けて、外縁端側がやや幅広な上面視略逆U字状に切り欠き、外周面側は、下端寄りまで正面視四角形状に切り欠いて、その外周面側の開口部のやや内側に開口部よりやや幅狭な正面視四角形板状の突起片を垂直状に設けたもので、その開口部より周囲がやや大きい略直方体状の中空の袋穴部を裏側に突出して設けた態様のものである。
(2)引用意匠
引用意匠は、本件登録意匠の出願前の平成2年4月5日に特許庁が発行した意匠公報(甲第1号証)に所載の意匠登録第785049号の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「マンホール蓋」とし、その形態は、本件登録意匠の部分に相当する部分としたものである(別紙第2参照)。
すなわち、円形のマンホール蓋の周縁部の一部分で、マンホール蓋を開ける際に用いる工具の先端部を差し込んで係止する部分であって、その形態は、上面外縁端から下方へ僅かに内側に傾斜させて一定の幅狭な外周面を形成し、上面から外周面にかけて切り欠いて開口部とし、その上面側は、外縁端からマンホール蓋の中心へ向けて、上面視略逆U字状に切り欠き、外周面側は、下端寄りまで正面視四角形状に切り欠いたもので、その開口部より周囲がやや大きい略直方体状の中空の袋穴部を裏側に突出して設けた態様のものである。
(3)本件登録意匠と引用意匠の比較検討
(ア)意匠に係る物品については、両意匠は、ともにマンホール蓋であるから共通している。
(イ)形態については、上面外縁端から下方へ僅かに内側に傾斜させて一定の幅狭な外周面を形成し、上面から外周面にかけて切り欠いて開口部とし、その上面側は、外縁端からマンホール蓋の中心へ向けて、上面視略逆U字状に切り欠き、外周面側は、下端寄りまで正面視四角形状に切り欠いたもので、その開口部より周囲がやや大きい略直方体状の中空の袋穴部を裏側に突出して設けた点が共通している。
一方、両意匠には、以下の差異点が認められる。
(a)上面側開口部の形状について、本件登録意匠は、外縁端側がやや幅広な上面視略逆U字状に切り欠いているのに対して、引用意匠は、上面視同幅で略逆U字状に切り欠いている点。
(b)外周面側の開口部のやや内側に、本件登録意匠は、開口部よりやや幅狭な正面視四角形板状の突起片を垂直状に設けているのに対して、引用意匠は、そのような突起片を設けていない点。
(ウ)そこで、本件登録意匠と引用意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
両意匠において、共通するとした態様は、この種物品分野において、一般的な態様であるから、格別高く評価することができないものあり、類否判断に及ぼす影響は小さいものと認められる。
一方、差異点について、(a)上面側開口部の形状の差異及び(b)外周面側開口部の突起片の有無の差異は、蓋全体の意匠であればともかく、部分意匠として当該部位のみを全体として観察した場合には、外から見える部位であり、使用者が蓋を開ける際に、最も注意して観察する部位であること、また、差異点の部分の開口部に占める割合がごく小さいものともいえず、さらに、本件登録意匠のような態様が、従前に見受けられず、本件登録意匠の特徴といえるものであることから、これらの差異点の類否判断に与える影響は大きいものというほかない。
そうすると、両意匠の差異点は、相まって、前記共通点を凌駕して、看者に両意匠が別異の印象を与えているものといえるから、これらの差異点は、両意匠の類否判断を左右するところと認められる。
(エ)したがって、本件登録意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、形態については、共通する点があっても、類否判断を左右する差異点があるから、本件登録意匠は、引用意匠に類似しているものということはできない。
(4)むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、引用意匠に類似しないものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当する意匠ではないから、その意匠登録を無効とすることはできない。
2.本件登録意匠は、意匠法第5条第3号(物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠)に該当するかについて
(1)請求人は、本件登録意匠の出願日とほぼ同時期の平成8月17日に、本件登録意匠の出願人が特許出願したものの公開特許公報(特開2003-55996号:甲第9号証)を挙げて、まず、当該発明の具体例として図1〜図4に示された実施例1の形状が本件登録意匠と一致し、発明の効果の記載から、開口の形状は、甲第9号証に開示された実施例に限らず、物品の技術的機能を確保するために必然的に決まる形状である旨主張する。
そこで、意匠法第5条第3号を適用するにあたっては、物品の形態は、機能的な要請に基づくものであっても、同時に、その意匠的効果をもたらすことは当然であるから、意匠審査基準にも記載されているが、「その機能を確保できる代替的な形状が他に存するか否か。」を考慮して、厳格に適用するのが相当である。これを前提に請求人の主張を検討するに、同公報の図5に示されているように、実施例2の開口の形状として、実施例1の形状と異なるものが表されていること、また、原告も「開口の形状は、甲第甲9号証に開示された実施例に限らず、」として、その他の形状も存することを認めているところであるから、本件登録意匠の開口部の形状は、物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状に該当するものとはいえないものである。
(2)また、請求人は、本件登録意匠の構成態様の一つである開口部外縁端に設けた略四角柱状の凸状部の態様についても、前記公開特許公報記載の発明の効果を発揮させるために必要不可欠な要素である旨主張するが、前記した前提に検討するに、凸状部の形態は、必ずしも略四角柱状である必然性も見いだすことができないものであり、また、その大きさ、構成比も限定されるものではないから、本件登録意匠の凸状部の態様も物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状といえないものである。
(3)したがって、これらの請求人の主張は、採用することができないから、本件登録意匠は、意匠法第5条第3号に該当しないものであり、その意匠登録を無効とすることはできない。
3.以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当せず、また、意匠法第5条第3号の意匠にも該当しないから、請求人の主張及び証拠方法によっては、その意匠登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2005-02-28 
結審通知日 2005-03-02 
審決日 2005-03-15 
出願番号 意願2001-23872(D2001-23872) 
審決分類 D 1 11・ 26- Y (L2)
D 1 11・ 113- Y (L2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 西本 幸男
内藤 弘樹
登録日 2002-08-02 
登録番号 意匠登録第1154092号(D1154092) 
代理人 福田 賢三 
代理人 井澤 洵 
代理人 井澤 幹 
代理人 福田 武通 
代理人 福田 伸一 

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